2020年11月28日(日本時間29日)に開催される「UFC Fight Night: Smith vs. Clark」で、日本の佐藤天(サンフォードMMA)が、MMA9戦無敗(UFC2勝、7KO)の強豪ミゲル・バエザ(米国)と対戦。
メインイベントに出場予定だったカーティス・ブレイズ(米国)が新型コロナウイルス感染症検査で陽性反応となり、デリック・ルイス(米国)とのヘビー級戦が延期に。アンソニー・スミス(米国)とデヴィン・クラーク(米国)の一戦がメインイベントとなり、佐藤とバエザの試合がセミメインイベントとして行われた。
日本人として稀有なウェルター級で、世界最高峰の舞台UFCで2勝1敗をマークしている佐藤は、今回の試合がUFC4戦目にして契約最終試合となる。次なるステップのために連勝なるか。佐藤は「UFCにいて厳しくないカードはない。契約最終戦だからというわけではなく、常に崖っぷちだと思ってやっているし、それは自分がデビューしてから今まで変わりないこと。その中でも勝負にこだわって一つひとつ上にいくことが大事」と意気込みを語っている。
UFCファイトナイト・ラスベガス15:スミス vs.クラーク
現地時間2020年11月28日(土)、日本時間29日(日)米国ネバダ州ラスベガス/UFC APEX
【メインイベント】
▼ライトヘビー級 5分5R○アンソニー・スミス(米国)205lbs/92.99kg[1R 2分34秒 三角絞め]×デビン・クラーク(米国)204.5lbs/92.76kg
1R、いきなりハイキックのクラークが右ストレートで詰めるが、スミスはボディロックテイクダウン! サイドを取る。背中越しにクラークの右手首をコントロールするスミスはハーフバックからツイスター狙い。腕を外し反転し上を取るクラーク。しかし、スミスは下から右手首腕をコントロールし、左足を首にかけて三角絞め! 絞められながら鉄追を落としたクラークだが、タップした。
試合後、公式インタビューでアンソニー・スミスは、「いい気分だ。負けたことは一生忘れないものさ。2007年に何を感じたのか今でも覚えている。勝ったときの気分は忘れてしまうんだけどね。俺の最後の勝利はグスタフソン戦。1年間、ケガで戦えず、その後、グローバーに負けて、ラキッチにも負けた。だから1年半ぶり。こういう気持ちなんだと思い出せて良かったよ」と勝利に安堵の表情。
続けて、「特に何も心配はしていなかった。過去にも、どう感じるべきかを考えないといけないことはあったしね。とにかく、気持ちのままに、思いと友達になるような感じかな。昔、緊張したり、ナーバスになったりして、自分を納得させようとしたことがある。今日は起きて、調子も良かったけど、少しだけ不安だった。自分自身に、大丈夫だと言い聞かせたんだ。太陽が昇って、沈み、それから試合だ。自分がどう感じようとも、試合に臨む。心配したって時間の無駄。とにかく今、自分が何を感じているのか受け入れるしかない」と試合への不安を感じながらも「心配しても時間の無駄、感じたことを受け入れるしかない」との境地で試合に臨んでいたことを明かした。
そして最後に、「俺以上に、デビンは悪い気分を味わっていたんだろうね。自分にとってはでかい。誰しも、とにかくこの2020年を抜け出したがっている。俺も違わない。ただ、俺は勝利で1年を終えたかった。もっとうまくなって、走り続けたい。焦るつもりはない。誰かを指名するつもりもない。1試合ずつ受けていく。2021年を迎えて、いろいろとうまく回せられればと思っている。結果を残さないといけなかった。メディアが言うようなバカはできない。ファンが何と言おうと気にしない。誰が何を言っても気にしない。自分のために結果を残すことがすべてだ。もう何年も言い続けているけど、俺は世界王者になるつもりだ」と、あらためて戴冠への決意を語っている。
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【セミメインイベント】
▼ウェルター級 5分3R○ミゲル・バエザ(米国)171lbs/77.56kg[2R 4分28秒 肩固め]×佐藤 天(日本)170lbs/77.11kg
MMA16勝3敗(11KO・TKO)の佐藤はUFC4戦目(2勝1敗)。バエザはMMA9戦無敗(UFC2勝、7KO)。
2019年4月にベン・サンダースに2R TKO勝ちでUFCデビュー戦を白星スタートした佐藤は、同9月に、ベラル・ムハメドに3Rチョークで一本負け(※現在ムハメドはUFC3連勝中)。2020年6月には、新型コロナウイルスの影響で対戦相手が三転四転するなか、ジェイソン・ウィットを1R、わずか48秒でTKOに下している(※UFC参戦の日本人UFCファイター史上最短勝利)。
2020年8月にも同じラスベガスでダニエル・ロドリゲスを相手に試合に臨む予定だった佐藤だが、計量をパスしたものの、その後のドクターチェックで2週間前に発症したという帯状疱疹の跡が見つかりドクターストップ。3カ月の間を置き、今回がオクタゴン4試合目となる。
対するバエザは2019年ダナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ出身。UFCでは2019年10月にヘクター・アルダナに2R TKO勝ち。2020年5月にマット・ブラウンに2R TKO勝利を収めている。
バエザがカウンターの左フックで沈めたブラウンは、佐藤が勝利しているサンダースに2R TKO勝利しており、UFCランキング入りを目指す両者にとって競り合いのマッチメークとなっている。
サウスポー構えの佐藤に対し、オーソドックス構えのバエザは、初戦のアルダナ戦では、遠い間合いからの右ハイ、右ローと上下に蹴り分け、右カーフキックを効かせてダウンを奪いパウンドアウト。
2戦目のマット・ブラウン戦でも右のカーフを効かせ、ブラウンの左右を浴びながらもシャープなワンツーで1Rからダウンを奪取。2Rもブラウンの左の入りに右から左の返しを当てると、右前蹴り、右カーフを効かせて、ブラウンの左にカウンターの左フックでダウンを奪い、パウンド1発。KOに下している。
左右のどちらもカウンターが巧みなバエザは、コンテンダーシリーズでは、サウスポー構えのヴィクター・レイナの左フックにカウンターの右でダウンを奪っており、ともに位置取りが重要な試合となってくる。また、相手の頭を下げさせるがぶりの動きを得意とし、首相撲からのヒザ蹴りにも注意が必要だ。
組み技では、金網まで這い立とうとしたレイナにバックテイクを選択しているバエザは、引き落としからのアナコンダチョークも狙っているが、極めには至らず、逆に後半にレイナの反撃を許している。
バエザのカーフはサウスポー構えの佐藤には遠いが、リーチがあり左右どちらも破壊力があるパンチ、そして柔術黒帯のグラウンドとウェルラウンダーの強豪を相手にする佐藤。上位を目指す佐藤にとっては、今回の契約最終試合でスタンドで主導権を握り、ケージレスリングでも優位に立ちたいところだ。
1R、サウスポー構えの佐藤、オーソドックス構えのバエザ。遠い間合いを取るバエザ。中央を取る佐藤から圧力をかける。大きな右オーバーハンドはバエザもかわす佐藤。左から右を打ち込み離れる。
右のミドルはバエザ。詰める佐藤に前蹴りで牽制する。右の蹴りから右で前に出るバエザ! さらにガード上に鋭い右ハイを打つ。さらに右ミドル、ハイ。ブロックする佐藤は右が交錯。左ボディストレートを狙う。
バエザの右に組みに行った佐藤。四つに持ち込むが、バエザの右ヒザが股間に入りローブローに。中断。立ったまま跳んで回復させる佐藤、再開。
長い右ミドルのダブルはバエザ。さらに左ボディ狙いも。さらに右ストレート! 下がる佐藤に詰めるバエザは足を滑らせる。右ミドルはかわす佐藤は右に動きながら左ストレートを狙う。右ハイをガードした佐藤は右ジャブを突くと、バエザがバランスを崩す。右の攻撃を当てたバエザのラウンドか。
2R、外足の取り合い。リーチあるバエザは右ミドルを突く。さらにスーパーマンパンチ狙い。右ボディストレートも。迎撃する佐藤も左ストレートで入るが足を滑らせる。右ミドルハイをガードする佐藤。いきなりの左ストレートを2度。ブロックするバエザは入りに合わせて右をカウンターで当てる。右ジャブを突いてから左ストレートは佐藤! しかしバエザは右ミドル! 右ボディストレート、ワンツーに佐藤は下がる。
シングルレッグからハイクラッチで持ち上げテイクダウンはバエザ! 背後からリアネイキドチョーク、正対する佐藤だがバックマウントを奪われている。半身で凌ぐ佐藤だが、バエザは正面を向かせて肩固めへ。佐藤がタップした。バエザはMMA無傷の10連勝をマーク。
試合後、バエザは公式インタビューに、「彼はサウスポーだ。それを一番の武器にこれまで相手をフィニッシュしてきている。だから、とにかく腕、頭、ボディを攻めていった。左を打てないように封じ込めたかったんだ」と佐藤の左を研究していたことを明かした。
さらに、「自分は正しいことをしたと思っている。勝ち続けて、もっともっと成長している。正しい方向に進んでいるという実感もある。この階級が俺をどう思っているか? どうだろうね、俺は彼らじゃないから。自分の試合全体で多様性を見せられたはずだ。他のファイターにしてみればいろいろと思うところがあるんじゃないかな。自分には素晴らしいコーチがついていてくれるし、チームも俺を信じてくれている。俺はただチームを信じる。彼らは耐えれば俺のものになるって言い続けてくれた」とチームメイトへの信頼を語った。
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【メインカード】
▼ヘビー級 5分3R×ジョシュ・パリジアン(米国)265.5lbs/120.43kg[判定0-3] ※26-30、27-30、28-29○パーカー・ポーター(米国)263lbs/119.30kg
▼フェザー級 5分3R×スパイク・カーライル(米国)145.5lbs/66.00kg[判定0-3] ※27-30×3○ビル・アルジオ(米国)146lbs/66.22kg
カーライルは、2020年2月のUFCデビュー戦でアーロン・クルーズに1R TKO勝ちも、2020年5月にUFC1勝のビリー・クアランティーロに判定負け。
アルジオは、Ring of Combatでの連勝を経て、2019年6月のContender Series 2019で判定負けも、8月に欠場選手の代役でUFCと契約。初戦でリカルド・ラマスとファイト・オブ・ザ・ナイトの激闘の末、判定負けとなっている。
1R、サウスポー構えのカーライル。オーソドックス構えのアルジオ。ともに手の位置は低め。半身気味のアルジオは左前足でサイドキック、右ハイ、後ろ蹴りも。ワンツースリーの左フックを当てる。
ブロックするカーライルは左右で詰めてボディロックテイクダウン。立ち上がるアルジオのバックに回り、正対してきたアルジオの首投げに逆にブルドッグチョーク! ケージウォークで極めに行くが、首を抜いたアルジオはバックマウントに。それを落として潜るカーライル。
2R、テイクダウン奪うアルジオは肩固め狙い。うつ伏せから亀になるカーライルのバックマウントを奪い、身体を伸ばしてリアネイキドチョーク狙い。亀に戻したカーライルは上のアルジオの腕を手繰りリバーサル。
3R、右ハイキックはアルジオ。しかしカーライルも右フックを返す。互いにスタミナ厳しいなか、テイクダウン狙いのカーライルにヒザを当てるアルジオ。四つでテイクダウン狙いはカーライルも凌ぐアルジオは両脇差すがここはテイクダウン奪えず。
判定は3-0でアルジオが勝利。ラマス戦の判定負けから再起を果たした。
▼女子バンタム級 5分3R×アシュリー・エバンス・スミス(米国)135.5lbs/61.46kg[判定0-3] ※26-30×3○ノルマ・ドゥモン・ビアナ(ブラジル)139.5lbs/63.28kg*
※ドゥモン・ビアナが体重超過。試合は予定通り行われるものの、対戦相手のエバンス・スミスに報奨金の30%を支払う。
スミスはUFC3勝4敗。2019年2月の前戦でアンドレア・リーに判定負け。今回、フライ級からバンタム級に上げた。1年9カ月ぶり再起戦。
今回、3.5ポンドオーバーのビアナは、フェザー級からバンタム級に転向も計量失敗。前戦はミーガン・アンダーソンに1R KO負けで9カ月ぶり再起戦となる。
1Rともにオーソドックス構え。スミスの前進や右ローにカウンターの打撃はビアナ。圧力を強め金網に詰めるとそこにダブルアンダーフックはスミス。しかし両脇を差しながらもビアナに突き放される。逆にビアナは小外からテイクダウン&パウンド!
2R、左ミドルはスミス。その蹴り終わりに左右を振るビアナ。スミスは首投げでテイクダウンも、すぐに首を抜いたビアナがバックを奪いマウントに。下からブリッジするスミスを潰すビアナはパウンド。亀になり立ち上がるスミスは右で前進もビアナのカウンターの左を被弾する。
3R、左右で詰めて左アッパーから左フックでダウンを奪うビアナ。体重超過でパワフルなビアナが終始パンチで攻め込み、スミスの苦手な近距離で優勢に。差して組んでの払い腰はスミスも上になるのはビアナ。ホーン。判定は3-0でビアナが勝利した。
▼フェザー級 5分3R○ジョナサン・ピアース(米国)145.5lbs/66.00kg[2R 4分28秒 TKO]×カイ・カマカ(米国)145lbs/65.77kg
ピアースは、2019年7月のコンテンダーシリーズでLFAのジェコブ・ロサレスをKOに下し、10月にUFCデビュー。ジョー・ローゾンに1R TKO負けした。
対するカマカは親子鷹。Bellator、LFAから、2020年8月にUFCデビュー。トニー・ケリーに判定勝ちしている。
1R、サウスポー構えのピアースはスイッチ。右ストレートを当てるカマカ。蹴り足を取って先にテイクダウンはカマカも、立ち上がったピアースがダブルレッグテイクダウン。ここはカマカも立ち上がる。
2R、ボディロックテイクダウンからバックに回るピアース。背負って立ち上がるカマカは、すぐに落としながら正対して立ち上がる。右アッパー、左で前に出るピアースはパンチの回転を上げ、ダブルレッグテイクダウン。パウンドを入れて、亀から立ち上がろうとするカマカを崩しながら背後からパンチを入れ、リフトしテイクダウン。バックマウントから身体を伸ばしたピアースがパウンド。
カマカはあえて首を狙わせたか、ピアースのリアネイキドチョーク狙いに正対し上に。しかしここも立ち上がるピアースは右アッパーを突いてすぐにダブルレッグテイクダウン。すぐにバックマウントを奪いパウンド。打たれるままのカマカを見て、レフェリーが間に入った。 ピアースはUFC初勝利。カマカはMMA6連勝でストップとなった。
【プレリム】
▼バンタム級 5分3R×マーティン・デイ(米国)135.5lbs/61.46kg[1R 4分35秒 ギロチンチョーク]○アンデルソン・ドス・サントス(ブラジル)135lbs/61.24kg
※ともにUFC2連敗中。ボディロックテイクダウンからパウンドしたドスサントスの振りかぶりのスパースに立ち上がり、リフトしてダブルレッグテイクダウンを奪うデイ。しかしそこでドスサントスがアームインギロチンをセットアップ。タップを奪った。
▼女子フライ級 5分3R○ジーナ・マザニー(米国)125.5lbs/56.93kg[3R 4分10秒 TKO]×レイチェル・オストビッチ(米国)125.5lbs/56.93kg
サウスポー構えのマザニーはバンタム級からフライ級に転向。先に小外がけでテイクダウン、バックを奪うも、オストビッチはスクランブルから立ち上がる。ジャブを突き、またも先に左で差して組むが、オストビッチも正対する。
2Rもテイクダウンからパスガード、ノースサウスチョークを狙うなどパワフルなマザニーだが、オストビッチは後転からバックを奪いかけるも前方に落とされてしまう。
3R、ダブルレッグテイクダウンはマザニー。すぐさまマウントを奪うとパウンド。オストビッチは亀から立ち上がる。しかし左の前蹴りをみぞおちに喰らったオストビッチがくの字になりヒザを着くと、立ち上がって来たオストビッチにマザニーは左ヒジ、さらに左前蹴りでTKO。オストビッチは3連敗。階級転向のマザニーは前戦の22秒TKO負けから再起を果たした。
▼フライ級 5分3R○ス・ムダルジ(中国)126lbs/57.15kg[1R 0分44秒 KO]×マルコム・ゴードン(カナダ)126lbs/57.15kg
※バンタムからフライ級に転向したチベットのムダルジ。サウスポー構えから左ストレートを効かせると、ゴードンはガードを固めて下を向いてしまう。左フックをテンプルに当て、右アッパーでダウン奪い、パウンド1発KO。ムダルジはオクタゴン2連勝。
▼キャッチウェイト 140ポンド契約 5分3R×ルーク・サンダース(米国)140lbs/63.50kg[2R 2分29秒 リアネイキドチョーク]○ネイト・マネス(米国)139.5lbs/63.28kg
※マネスはUFC2連勝。