4月21日(日)『RIZIN.15』横浜アリーナ大会に向け12日、東京・千歳烏山のロータス世田谷にて北岡悟(パンクラスイズム横浜)が公開練習をおこなった。
2017年ムンジアル(世界柔術選手権)黒帯ライト級準優勝、MMA7戦無敗の実力者ホベルト・サトシ・ソウザとの1戦に向け、北岡は「この2年ほど試行錯誤して形になってきた」ことを、“鍋”に例えて語った。
「1、2個のいい素材でもっていってしまう」サトシの鍋と、これまでに仕込んできた「出汁が効いてきた」北岡の鍋は、MMAという何でもありの試合のなかでどんな味わいを見せるのか。
年末の前戦では川尻達也に競り勝った。毎試合、北岡悟として生き残るために戦っている。今回の試合も「“最終回”かもしれないような試合だと思っています」と、北岡は気負うことなく語った。一問一答は以下の通り。
──事前の公開練習のPRツィートでは「お茶濁しシャドー」とつぶやいていましたが、そのシャドーも拝見すると独特のものに見えました。
「疲れないようにというのと、でも最低限の動きは見せようかなと」
──シャドーのためのシャドーというものではなく、ステップやタイミングが実際の動きを想定されているようでした。いつもやられている動きでしょうか?
「ああ、そうですね。力まず、でしたけど、習っていることを多少意識しながらやっています」
──それは呼吸とかも?
「はい、呼吸とムーブメントなど色々あるんですけど、たくさんの人に習っているので、それを混ぜているのは自分、という感じです」
──今回は71kg契約ですが、調整はいつもと変わらずという感じですか?
「70kgの時はその1kgがいつも苦しいからそれが無い分、とは思ってましたけど。自分の体がちょっと大きいとは思います。帳尻は合うでしょう。あと10日切りましたけど、超細かく体重計に乗るタイプではなくて最終的に体重は合うので」
──対戦相手が決まって、相手に合わせた対策練習が多くなるのか、それともこれまで通りの練習をされているのでしょうか?
「今回は寝技・組み技が強いというのがもちろんあるんですけど、それを言ったら去年の10月の武田(光司)選手がレスリングが強いと思ってやったけど、結局打撃で攻められて見事に負けたから、そういうことではないなと思っています。自分が、強くなることを大事にしてきたと思います」
──「自分が強くなることを大事に」というのを具体的に言うと?
「この2年間くらい四苦八苦してきたのが年末に向けてやってる最中にちょっとまとまってきて、形になったので、それをより伸ばすような意識でやってきました。この3カ月半は」
──まとまってきたというのは技術的な事でしょうか?
「色々です。技術的なこともそうだし、考え方もそうだし。MMAなので……これはマニアしか喜ばない話なんですけど……パーツを磨かなきゃ全体の力は伸びないんですけど、自分の形であることが大事だということに行き着いて、ハマらずに途中で負けたり、戦績が振るわなかったり、失敗しているように見えたけど、やってきたことは活きていて、みたいな。それは自分の形に戻ったから意味がわかるというか。
最近これを人に説明するのが難しくて。『鍋』って表現をしているんですけど、鍋の具材で、入れてみて合わなかったと思っても、実は出汁がきいて残ってて、それが意味があるみたいな。例えばネギが嫌いでも、鍋で煮ているからこそ出る味があって、鍋から出してもネギの味は残っている。僕はネギ好きですけどね(笑)。……というように僕は『鍋』って表現をしています」
──それは試合・練習を重ねてきて分かった事ですか?
「練習もそうだし、僕の場合は試合でも試してミスして、ていうのが大きい。試合でミスするっていうのは大失敗の事なんですけど、それがあるからこそだとは思っています」
──今回対戦するサトシ選手はMMAでは7戦無敗ですが、近代MMAと比べると特徴的な動きをするように感じます。どのようにとらえていますか。
「スタイル的にそう見えやすい。結局、人として格闘技選手として強いという風にしか思わないというか。戦績が綺麗なのは、やりようかなと。逆に失敗していないから、さっきの鍋の話に通じる事ですけど、1個、2個いい素材があってその味でもっていっちゃうみたいな感じですかね」
──それでも強い選手と認める?
「はい、強いでしょう」
──決定力があると?
「決定力……有無を言わさず強いんでしょう、たぶん。オギャーと生まれた時点で強いでしょうし、詳しく知らないし、知りたくも無いけど、生まれ育ちの部分で鍛えられているものもあるでしょうし、そういったものに対して、別に侮るような気持ちは一切ないですね。強い、覚悟がある人間なんだろうなと思っています」
──青木選手がONEでベルトを巻きましたが、メンタル的に何か変わったことは?
「関係ないです。良かったねと思います。あれ、まずいですか?(笑・ジムにいた青木に声をかける)」
──鍋の話になってしまうんですけど、完成形ってなかなかないと思うのですが。
「完成形はないですね。終わりがないから面白い。人によってはくたくたで、この鍋飽きたよと言われるから淘汰されていくんでしょう。それを創意工夫するから楽しんでもらっているんだと思います。世の中には出汁が分からないやつもいっぱいいるから、そういう人の口には合わないとは思うけど、そういう人には接客しないでどうぞ帰ってくださいって感じです。ソースの味が出汁だと思っているやつにいちいち説明しない」
──この試合がライト級GPの査定試合になるかと思いますが?
「別にそれも気にしていなくて、単なる試合。トーナメント、GPとかじゃなくて、単純に今年生き抜いていくという思いがあるので、もちろん勝ちたい。どんどん試合はしていきたいけど、そんな先のことを考えるような相手じゃないと思っているし、“最終回”かもしれないような試合だと思っています」
──相手はバックを取るのが強い選手ですが、北岡選手はこれまで極められたことがない。そういう意味での自信は?
「うーん、関係ないでしょう。取られる時は取られるでしょうし。6年前(2013年10月ADCC-77kg級)、ADCCでゲイリー・トノンとやっときはスイープされてバック取られた瞬間、もう無理だなと思って、早くタップしちゃった記憶があります。ダメな時はダメでしょう」
──でもそれはMMAの試合ではなかったです。
「ああ……そうですね、ラッキーなことに」
──今回横浜(アリーナ)で開催になりますが、何か特別な思いはありますか?
「一応ジムが横浜にあるので。あ、ジムのチラシを新しく作らせていただきまして(チラシを見せる北岡選手)。こういったジムをやってまして。全く商売っ気がないチラシなんですけど。別に横浜愛とかもないんですけど、一応ご当地、ジムが会場に近いということで、頑張ります(笑)」