11月28日(土)東京・後楽園ホール『SHOOT BOXING 2020 act.2』のメインイベントで、元新日本キックボクシング協会ミドル級王者・喜多村誠(ホライズン・キックボクシングジム)と70.0kg契約3分3R延長無制限Rのヒジ打ちありルールで対戦する、S-cup2018世界王者・海人(TEAM F.O.D)のインタビューが主催者を通じて届いた。
海人はSBの絶対的エースとして活躍、65~70kgと幅広い階級で国内外の強豪を次々と撃破してきた。2020年2月、ブアカーオからの刺客ピンペットと8Rに渡る激闘を繰り広げ、スプリット判定で惜敗したが、8月の『RIZIN』で自身の階級より5kg以上重い73kg契約での試合(vsルクク・ダリ)に臨み完勝。10月の『RISE』では国内70kg級のトップファイター・緑川創(RIKIX)からも勝利を奪った。
なお、同大会のチケットは全席完売となり、会場に来られないファンのために有料生配信が決定している。
ワシル・ロマチェンコの映像を重点的に見て研究
――シュートボクシング(以下SB)が11月から再始動、その一発目の大会の出場が決まりました。コロナの自粛時期でなかなか試合が決まらなかった時期はどういう練習をしていたのでしょう。
「特に変わったことをしていたわけではなく、自分のレベルアップのために穴をなくす練習をしました。スパーのために他のジムもなかなか行けなかったので、父と兄と一緒に身体作り、基礎から何から徹底して練習していました。出稽古に行く以外はいつもと同じ練習環境だったので黙々とできて良かったですね」
――こういう自粛期間だからこそ家での時間が多くなり、YouTubeなどで他の選手の試合映像を見て研究するといった選手がいたのですが、海人選手はどうでした?
「そうですね、僕もいつもより動画を見る時間は増えました、気になる選手の動きがあったらそれを練習に取り組めたのでそういう面でも新しい動きであったり、技は習得できているのかなと思います。僕は階級を上げるに連れて真正面に立ちすぎていたので、サウスポー構えでの練習もしていてボクサーのワシル・ロマチェンコ(世界最速の3階級制覇王者)の映像を重点的に見ていました。動きだったり、サウスポーのボクシングテクニックが参考にもなりました」
――いつ試合が決まるかわからない状況の中でモチベーションの持続は問題なかったですか?
「それは変わらずに保っていました。いつ試合が決まってもいいように準備しておくのがプロだと思うのでしっかり準備していましたね。家族が傍にいて、家族がいたからこそ変わらない練習環境があり、そのおかげでモチベーションが落ちることもなかったですね」――2月のピンペット・バンチャメーク戦以降、2試合を終えているのでその試合のこをも教えて下さい。まずは、8月のRIZINでのMMAファイターのルクク・ダリ戦では完勝でした。
「2018年にS-cup65kg世界トーナメントで優勝してからずっと、結果うんぬんより試合内容が良くはなかったのでそこにこだわっていて、ダリ戦では完勝でしたが自分のファイトスタイルをもう一回作り直さないといけないなと思いました。あの試合では、作戦通りカーフキックなどで下を崩していくことはある程度できたのですが、そこからの展開の持って行き方ができていなかったのでやりたかったことの10%ぐらいしか出せませんでした」
――そして10月、RISEでの緑川創戦では判定勝利でした。
「緑川選手は70kgトップ戦線で外国人選手とやりあって活躍している選手なので、接戦でしたが無事勝てたのは自信になりました。70kgでもやっていける手応えを掴めました。試合をやってみて自分の身体が大きくなってパワーが付いたのは当然ですが、パンチ、蹴りの威力が上がったというよりは身体の重心のぶれをあまり感じなかったですし、相手のパンチもそれほど重くは感じなかったので身体の芯の強さも70kgに合ってきているのかなと思いました」
シュートボクサーとして結果を残せないと納得がいかない
――次はようやく2月のSBで敗戦して以来のSBでの試合が決まりました。
「SBファンには負けたイメージのままです。相手は違えど、SBのリングで勝たないとそれは払拭できないので早くSBリングに戻って試合がしたい気持ちでした」
――9月大会で喜多村戦が決まっていてコロナの影響で大会が延期となりましたが、その時はどういう心境でした?
「喜多村選手もそうだと思いますが、準備はしっかりしていたので残念でしたが仕方のないことかなと。僕の場合、10月に緑川戦を用意してもらえたのですぐそっちにモチベ―ションを持っていけたことは良かったです」
――喜多村選手についてはどのような印象がありますか?
「ヒジのタイミングもうまいですが、蹴り、パンチが特別に速いかと言われたらそうでもありません。タイミングがうまいのか、うまく当てているのでそこは注意しないといけないと思っています」
――今回ヒジありルールとなりますが、ヒジなしの試合が続いて問題はありませんか?
「2試合連続でヒジなしでしばらくはヒジありはできていなかったのですが、コロナの自粛期間はヒジ打ちも入れて練習しており、そこの精度も落ちていないと思います」
――重い階級でやっていくとなるとヒジがあった方が戦いやすいとは思います?
「パンチ、蹴りで倒せなかったらヒジで斬ったりして倒せるのかなと思うのですが、一発で崩せる武器は65kgの時もなく、徐々に削っていって自分のリズムで相手を倒していくのが自分のファイトスタイルなので階級を上げてもそこは変わらないと思います」
――やはりヒジで斬って勝ちたいというのはありますか?
「最近はヒジで斬れてないですし、ヒジなしの試合も多かったので久々に斬りたいなと。70kgでのヒジありルールでの試合は初で、なおかつ相手もヒジを得意な選手なので自分の新しい姿を見せられると思います」
――ヒジありとなしだとモチベーションに違いはあります?
「モチベーション自体に変わりはないのですが、ヒジなしルールだと自分の武器を1つ制限しているということなのでヒジなしの時よりもヒジありとなると、もっと自由に、自分らしく戦えるのかなと思います。練習でもヒジの距離になった時に『今回は打てるんや!』と思ってコンビネーションにつなげられますし、自分のコンビネーションのバリエーションも凄く広がるのでヒジありの自由な感覚はいいなと思います」
――70kgでは3度目の試合ですが、身体作りの面などでタイミングは問題ありませんか?
「65kgや67.5kgでは国内に相手がいない状況で外国人選手だったらまだ呼べていたと思うのですが、今の状況では呼べないですし、もう相手は70kgにしかいないと思うのでこのタイミングなのかなとは思います。これからはその適正の階級の日本人をしっかり倒して世界のトップ戦線に踏み込んでいきたいと思います」
――喜多村選手は元新日本チャンピオンということで新日本キックの対抗戦をイメージするファンもいるかと思います。現在、対新日本キックでは植山征紀選手が江幡塁選手に、笠原弘希選手が重森陽太選手にそれぞれ敗れ、現在SB二連敗中です。
「SBを背負っている人間としてここで負けたらよその団体や競技が上だと思われるので僕はエースとしてしっかり勝ってSBの強さを証明していくだけです。ここのところ西岡蓮太選手、川上叶選手、植山選手と他団体に出撃して結果が残せていない状況を見ていると本当に悔しいし、信頼してチャンスを与えられた以上シュートボクサーとして結果を残せないと納得がいかないので、僕がもっともっと強くなってSBを引っ張って盛り上げていくつもりです」
――SB看板選手であるRENA選手は来年には残り数試合で引退といった発言もありました。
「女子選手でここまで引っ張り上げてくれたRENAさんの存在は大きいですが、RENAさんの引退関係なく、僕がSBを盛り上げていく存在にならないとダメだと思っていますし、いつまでもRENAさんの時代ではなく、格闘技界全体を海人の時代にしていく覚悟がなければいけないと思います」
――今回いい勝ち方をすれば、大晦日に開催のRIZIN参戦も考えています?
「そうですね。しっかり倒して勝ってチャンスがあれば参戦させていただきたいです。去年の大晦日も決まりそうで決まらなかったので今年こそは、というのはあります。ダリ戦では勝ちはしましたが、いい内容は見せれていないのでしっかりそういう意味でもいい試合を見せられるようにRIZINのリングにリベンジですね」
――お祭り的な意味合いもある興行ですが、対戦したい相手はいますか?
「70kg以上の選手だと厳しいのはありますけど、70kgの選手でMMAの選手でもいいですし、そういう組み合わせはRIZINでしかできないと思うのでチャンスがあればお願いしたいです」
――どの階級の選手とも戦えるのも海人選手の魅力のひとつですが、そういう戦いはもうこりごり?
「ダリ戦の73kgはやりすぎたかなと(笑)。コロナの時期もあってなかなか試合もなく出られるなら何キロでもいいかなと思ってその時は減量することなく73kg契約で試合をさせてもらいましたが、プロとして無謀なことでもありました。シュートボクシングという競技はしっかり階級を決めてやっている競技ですし、自分がしっかりといいパフォーマンスができて万全で戦える70kgや67.5kgならば試合したいと思います」
――ジムも移転されたそうで、その初戦でいい勝ち方で大晦日、来年につなぎたいですね。
「そうなんです。ジムは10月の試合前に移転しました。元々は僕も出稽古で行かせてもらっていたボクシングジムがあったのですが、そこが移転するということでリングやサンドバッグなどそのままの状態で引き継がせていただきました。前の場所にはリングがなく、リングがあるのはやっぱり練習環境としていいので移転しました。以前よりも広くてシャワーとかも完備していて、いいジムになったかと思います。一般会員さんを集めていくかは試合が落ち着いてから決める予定です」
――リングがあると練習感覚も違いますか?
「相手を詰めた時や自分が積められた時のイメージが凄くしやすいのでいいですね。あと入場の時のイメージや、勝った時にコーナーを上がる練習をしたり、どうカッコよくリングインできるかも考えてリングを利用しています(笑)。プロとしてそういうことも必要だと思っていますし、僕は入場時から自分だけのステージにしたいので魅せ方も意識しています」
なお、今大会チケットは全席種が完売となり、会場に来られないファンのために今大会の模様を「ローチケ LIVE STREAMING」にて有料配信することが決まった。