MMA
ニュース

【RIZIN】朝倉海戦の敗北から復活勝利の扇久保博正「まだ諦めていない」×敗れた瀧澤謙太「スタイルチェンジが必要」

2020/11/25 13:11
 2020年11月21日(土)大阪城ホールにて、「Yogibo presents RIZIN.25」が開催され、メインイベントで斎藤裕と朝倉未来が対戦。セミファイナルのバンタム級(61.0kg契約)では、扇久保博正(パラエストラ松戸)と瀧澤謙太(フリー)が対戦した。  前戦で朝倉海にTKO負けした扇久保と、金太郎に判定勝ちした瀧澤。組みの扇久保と打撃の瀧澤と見られたが、ともにフルコンタクト空手出身のスタンドで先制したのは、扇久保。左ハイで瀧澤からダウンを奪うと、一気にギロチン、リアネイキドチョークと畳みかけて決定機を作り、ユナニマス判定で扇久保が瀧澤を退けた。 ▼61.0kg契約 5分3R ※ヒジあり○扇久保博正(パラエストラ松戸)[判定3-0]×瀧澤謙太(フリー)  試合後の会見で扇久保は「負けたら辞めようと思っていた」と悲壮な決意を抱いて試合に臨んでいたことを語り、自身のYouTube「おぎちゃんねる」では、ダウンを奪った左ハイは、瀧澤が左の攻撃を被弾していることを研究しての攻撃だったことを明かしている。  一方で、敗れた瀧澤は「左ハイは見えなかった」と振り返り、「スタイルチェンジしないとこれ以上は勝てない」と、よりMMAとしての戦い方を模索する必要があることを語っている。  両者は試合中、何を思い、勝利を目指したか。試合後の扇久保のコメントと「おぎちゃんねる」での振り返りから試合を紐解く。 「煽り映像の撮影依頼なども断って、試合に集中するようにしていました。前回、集中しきれていなかったんで、そことの戦いでした。負けたら終わりというか。マジで辞めなきゃいけないと思っていたんで。瀧澤選手には申し訳ないけど、瀧澤選手に負けてるようなら修斗のベルトもダメだし、それくらいの覚悟で挑んでいました」「修斗世界王者」として、PANCRASEバンタム級3位の瀧澤と対戦した扇久保。身長差16cm。向かい合うと体格差が際立つように、実際修斗ではフライ級(-56.7kg)王者である扇久保にとって階級差も感じさせるマッチアップだが、扇久保は「瀧澤選手に負けてるようなら修斗のベルトもダメ」と、力量に差があると踏んでいた。  作戦は、「大まかに言うと打倒極をちゃんとやる。鶴屋(浩・パラエストラ千葉ネットワーク代表)さんと『打撃もやるしタックルもやるし、そのなかで僕の強みである寝技でチョークを取る』という作戦でした」という。  打撃に関しては、本誌の取材に「向かい合ったときに、距離が僕の距離だったので打撃でもいけるかなと思いました」と語っていた通り、左ジャブ、左ハイと左の攻撃で先制した。 「自分でも映像を見て分析して、細かいことを言うと、瀧澤選手、こっち(相手の左の攻撃)を結構もらっているんです。相手の左の蹴りとかフックとか。金太郎戦でも左ストレート、左ミドルをもらってたりしたんで、右側の反応が少し悪いのかなって。だからジャブ、左フック、あとは左ハイが入るだろうなと思って狙っていました。1発目のジャブが目に入って嫌がっているような感じだったので、これで組み立てていけるなと思いました」と、左の攻撃を軸に組み立てたという。  組みに関しては、「僕のタックルにヒザを狙っているのを感じたので、1R目は打撃をやって様子を見ようと思っていました。自分も警戒してかなり今回は無理はしないというか(苦笑)。攻撃に入るときが一番もらう可能性もあるので、リスクを負わないよう、集中して勝ちに徹していました」と、慎重に組むタイミングを計っていた。  しかし、「1R目にコーナーに帰ったときに、鶴屋さんが明らかに“なぜタックルにいかないんだ”っていう雰囲気は感じて、何回も『お前のタイミングで行けよ』って。“やべえ、鶴屋さん怒ってるかな”ってちょっと(苦笑)」と、鶴屋代表からのフィニッシュのプレッシャーを感じながらも、もう1人のセコンドである内藤のび太の存在に「のび太さんが何を言ったか?……覚えてないです(笑)。のび太さんは居てくれるだけでいいんで」と、絶妙なバランスのコーナーマンたちのおかげで集中力を高められたという。  テイクダウンのチャンスは2Rに到来した。しかし、そのトライは成功しなかった。 「1Rで温まってきたんで行こうと。瀧澤選手はもっと“関係ねぇ”っていう感じで振り回して、そのなかでヒザを当ててくると思ってたんですけど、意外とタックルを警戒して、僕の打撃も入っていたので、これでタックルが取れるなと思っていました。2Rのテイクダウントライは、(右足前に)スイッチして(右)アッパーからタックルに入って。すぐに(脇)差しに行けたんですよ。投げたときに切られてバックについて。離れ際に(ワンツーから左ハイを)打って。(これでテイクは取れると)思いましたね」と、巧みなスイッチからの打撃を散らして組んだことに手応えを感じていたが、その際でリフトしてのテイクダウンが、瀧澤のロープへの腕のひっかけで阻まれたことは「気づかなかった」という。 「(瀧澤の)ロープ掴みは気付かなかったですね。2R終わったときに審判から『場外逃避で(瀧澤に)注意出すから』と言われて、“いつ場外逃避したかな”と分からなかった(苦笑)」 「勝利」の2文字のために、最後まで集中力を切らさないことを心掛けていた扇久保は、3Rに勝利を決定づける大事な局面を迎える。 「3R目に(瀧澤が)追い上げるイメージで、やられてもいいから打ち合うみたいな印象で来るなと思って、退かないようにしていました。とにかく集中してました。観客の人には悪いですけど、今回はつまんなくても、とにかく僅差でも勝てればいいと」  集中して積み上げた先にチャンスは訪れる。ダウンを奪ったのは「練習していた」というパンチから蹴りのコンビネーションだった。瀧澤の左の蹴りにカウンターの右フックを当て、左フックを出しながら、見えない軌道で左ハイを打ち込んだ。 「左フックのフェイントでその後ハイキックでした。1R、2Rと進むにつれて結構、(瀧澤が)疲れているなと感じて、(左ハイを当てたら)初めて倒れたんで“おぉっ倒れた、ヤバい、ヤバい”と思って(苦笑)。フロントチョーク、これ行けると一瞬思ったんですけど、(首まわりを)思いっ切りガードしてきて、血で滑って無理かなと思って両足に行きました」  ダブルレッグから尻下でクラッチし、セコンドの「中に持って来い」の指示通り、リング中央に向けてテイクダウン、立ちがる瀧澤になおもボディロックからテイクダウンを奪い、リアネイキドチョークの体勢となった。 「3R目でやっと身体が無意識に動くようになりました。去年の大晦日ぶりくらい。僕の長所は“打倒極”が勝手に動くところ。その無意識を意識して出そうとして無理をしていた。やっと自信が取り戻せた。一本を取りたかったですけど。バックのときもフロントのときも一瞬迷ったんで、そのコンマ何秒で取れなくなる。(瀧澤も)バック逃げは上手でした。あとちょっとで勝てる、と思って。3R目はその一心でした」  最後は両者が跳び蹴りで交錯。この動きも扇久保が狙っていたものだったという。 「今回、ヌルマゴ(メドフ・UFC世界ライト級王者)がやる、跳びヒザからの両足タックルを練習していて、最後の最後でそれを思い出して跳びヒザに行ったんですけど……瀧澤選手もジャンプしてきて、なかなかあれは良かったです。心が通じ合った瞬間」と、笑顔を見せる。  残り1分の攻防で、一瞬、動きを止めた扇久保。そのとき“おぎちゃん”は何を考えたか。「おぎちゃんねる」ではその真相も語られている。  バンタム級“四天王”の1人として、新鋭からの突き上げを見事跳ね返した扇久保。「瀧澤選手、いい選手でした。前蹴りもいいしパンチの威力もあった。お互い極真なんで極真魂を見せられたかな。廻し蹴りに廻し蹴りを返すのは絶対にやろうと思ってました。蹴りが強いですけど、僕も蹴りが得意なので、結構、練習してました」と、空手の蹴りの対決でも譲らなかったという。  2018年7月の堀口恭司戦の判定負けから、修斗で清水清隆、RIZINで元谷友貴、石渡伸太郎を下してきた扇久保は、海戦での1R TKOでの敗北からの再起に、「マジで嬉しかったです。ほんとうに。今までで一番嬉しかった。8月からいろいろあったんで。ほんとうに勝てて良かった。映像を見返したら、やっぱり極めなきゃダメだなと感じましたけど、とにかく勝ちたかった。戦えるのかなと不安で不安でしょうがなかったから」と、胸をなでおろす。  今後については、「来年に向けてまたやって行こうかなと思います。まだベルトを諦めていないんで全然、狙っていくんで、勝ち続けて」と、2021年もし烈な戦いが予想されるバンタム級戦線でトップを目指すことを誓った。  同大会では、同じ修斗王者でパラエストラ所属の斎藤裕も勝利し、「お互い修斗の現役チャンピオンで、すごい嬉しいです。斎藤くんが勝ってくれて。良かったです」と喜びを表したが、メインで朝倉未来に勝利した斎藤のYouTubeチャンネルの登録者が開設から1カ月で2万人を超え、おぎちゃんねるが一気に抜き去れらたことについては、「勝って(登録者)3千人くらい伸びるつもりだったんですけど、150人くらいでした(苦笑)。でも増えたので感謝です。(斎藤裕選手のYouTubeに一気に抜かれ)もう潮時ですか?(苦笑)。コツコツやっていきます。勝って(リング上で)『チャンネル登録お願いします』って言おうと思ってたんですけど……完全に忘れてました(苦笑)。そこらへんの本気度が足りないのかな……」と反省しきり。  それでも「ファンの方々、負けた後も温かいコメントをいただいて、応援し続けていただいたんで、ものすごい力になりました。メンタル落ちているなかで『頑張れ、扇久保、信じてるぞ』というコメントもあって、それがすごい励みになってここまで来れました。感謝しています。前回、周りの人にも悔しい思いをさせてしまって、負けても変わらずいつも通り支えてくれたんで、周囲の皆さんのおかげで勝てたと思っています。これからも応援、よろしくお願いします。おぎちゃんねるの登録もお願いします」と、ファンへの感謝を語った扇久保。  敗戦で振り出しに戻ったかに見えたが、落陽は次の日に繋がる夕景だ。堀口、朝倉へのリヴェンジ、そして悲願のベルトへ、扇久保は、再びコツコツと前へ進む。 [nextpage] 扇久保博正「負けたら辞めようと思っていた」 ──試合を終えた率直な感想からお聞かせください。 「本当に今回負けたら辞めようと思ってたんで、勝ててよかったです。本当に嬉しいです」 ──試合前と相手の印象は違いましたか。 「うーん、もっとガンガンくるかなと思ってたんですけど、そこが少しだけ違いました」 ──今後の展望を教えて下さい。 「今後ですか……まだちょっと何も考えられないです。また頑張っていこうと思います」 ──どのような作戦だったのでしょうか。 「いつもどおり打撃もやりながら、テイクダウンして一本狙っていくという作戦でした」 ──あれほど身長差のある滝澤選手に最初から左の蹴りが当たっていました。 「向かい合ったときに、距離が僕の距離だったので打撃でもいけるかなと思いました。ハイキックは常に狙っています」 ──実際のところ、全体の完成度としても、ご自身のほうが上回っていると感じていましたか。 「そうですね。でもやってみなければ分からないとも思っていたので、かなり警戒はしていましたね」 ──テイクダウンの際で、腕をひっかけられてテイクダウン出来なかった場面がありました。あそこは動揺はしなかったですか。 「いやもう、全く手が引っかかったとかも気づいてなかったので、ただ(テイクダウンを)切られたなという感じで、それはあとで聞きました」 ──負けたら辞めようと思っていた、というのは? 「本当に、ここで負けているようでは、先には進めないと思っていたので、それぐらいの覚悟で臨んでいました」 ──勝利後のマイクで、バンタム級グランプリ開催を要求していましたが、それはどんな気持ちからでしょうか? 「言えば盛り上がるかなと思って、一応、言っときました(笑)。あんまり盛り上がってなかったですかね?」 ──いえいえ(笑)。今後のところはグランプリ開催よりも、「まだ何も考えられない」というのが本音のところですか? 「本音のところは、ちょっと今は考えてないです。ご飯いっぱい食べたいです」 ──メインで斎藤裕選手が勝利しましたが、修斗出身の二人がこういった大事な試合で勝ったことについてはどう感じていますか。 「お互い修斗の現役チャンピオンで、すごい嬉しいです。斎藤くんが勝ってくれて。良かったです」 ──扇久保選手は今日の勝利によって、日本のバンタム級が盛り上がっているなかで、ご自身がまだトップ戦線でやれるということを証明しましたが、年末の朝倉海vs.堀口恭司選手の試合も含めて、この先どうなると思いますか。 「朝倉選手や堀口選手とやるには、まだもうちょっと勝ち続けないといけないと思っているので、別の選手とやって勝ち続けて、また2人と戦えればいいなと思います」 瀧澤謙太「左ハイは見えなかった。スタイルチェンジしないとこれ以上は勝てない」 ──試合後の率直な感想をお聞かせください。 「めちゃくちゃ悔しいですね。最後、左ハイは見えなかったですね」 ──対戦を終えて、相手の印象は違いましたか。 「違いはなかったですね。考えていたのと同じでした」 ──今後の展望を教えて下さい。 「もちろんベルトを目指してやります! で、スタイルチェンジも考えます。今回ちょっと。これじゃダメだと思ってるんで、スタイルチェンジします」 ──スタイルチェンジというのは、よりMMAとして戦う必要があるということでしょうか。 「MMAの練習をずっとしてきたんですけど、僕はテイクダウンを切って打撃で倒すというスタイルでやってきたんで、そうじゃなくて、自分からテイクダウンに行く、ちゃんとしたMMAをこれからもっとやっていかないと、これ以上は勝てないなと思いました」
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.335
2024年11月22日発売
年末年始の主役たちを特集。UFC世界王座に挑む朝倉海、パントージャ独占インタビュー、大晦日・鈴木千裕vs.クレベル、井上直樹、久保優太。武尊、KANA。「武の世界」でプロハースカ、石井慧も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント