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2020年11月22日(日)、GENスポーツパレスにて「ZST.69」が開催される。
同大会では、伊藤盛一郎(リバーサルジム横浜グランドスラム)と浜本”キャット”雄大(クロスポイント大泉)のMMA戦のほかに、関鉄矢(SONIC SQUAD)を王者とするフェザー級で、「王座挑戦者決定トーナメント」が行われる。
なかでも5連勝中でステージ4のがんと闘う高須将大(ストライプル茨城)のトーナメント出場に注目が集まっている。しかし、対戦相手で必殺技ローリングサンダーを持つ島村裕(総合格闘技宇留野道場)は、言う。
「闘病と試合は関係ない。まだ彼は厳しい試合は越えていないし、関に挑戦しベルトを巻くのは自分だ」と。
――11月22日(日)の夜大会で、「ZSTフェザー級王座挑戦者決定トーナメント」として、島村裕選手が、高須将大選手と対戦が決定(※もうひとつのトーナメントは浜松ヤマトvs.木下尚祐)と聞いたときは、島村選手はどのように感じましたか。
「正直、トーナメントになるというのはびっくりしました。高須くんとはやるんじゃないかなとは思っていたんですけど……トーナメントになるというのはびっくりしました」
――「びっくり」というのは「トーナメント」になったことに対してでしょうか。
「というところですね。手の届かなかったのが、なかなか遠くなっていく感じがしてびっくりしたという感じです」
――2017年9月に関鉄矢(現フェザー級王者)との試合で敗れ、その後、この2年で3勝1分けと負けなしです。
「新しい武器も手に入れているので、それが『チャンピオンに通じるもの』だと思っているので、その先も見据えて、今武器をつくって練っているところですね。もちろん、他の選手にも万能に使える動きです」
――極めの強い島村選手が苦戦する形にならないようなものでしょうか。
「そうですね。それにならないというのもあるんですけど。その展開にならないようにするためのものですね」
――高須選手とは「やるとは思っていた」と。
「そうですね。高須選手は本来、浜松選手と試合が決まっていましたが、試合が飛んじゃって、一応形としては(8月に平石公介に)勝ったので、けっこうタイトルに近くなっているのかなとは思っていました。あそこで、木下(尚祐)選手が再戦を要求していたのが気になっていたんですけど」
――でも自分だろうと?
「自分のほうがキャリアは長く積ませてもらっているので、一言言ったら変わるかなと思って、『ちょっと待てよ』という感じで待っていましたね」
――以前、高須選手の出稽古でグラップリングのスパーリングをしたことがあるそうですね。
「はい。でも全然そういうのはまったく何も思っていないですね」
――高須選手は、当時はやられました、と言っていました。どのような印象を持っていますか。
「そのときの印象は……別に総合じゃないので何も思っていないです。よくいるじゃないですか。柔術弱いけど総合でめちゃくちゃ強いという選手も。なので、別に何も思っていないし、そこで別に油断するとかはないですね」
――高須選手のストロングポイントをどうとらえていますか。
「気持ちですかね。テイクダウン、気持ちで。グラップラーだとは思っていますね。木下戦の打撃は交通事故みたいなものだと思っているので。なので、基本はグラップラーだけど、振り回していくのも厭わない感じで」
――とはいえ、いわゆる「寝技師」ではない。
「寝技師ではないですね。すごい上手な感じではないので」
――その点では、島村選手にアドバンテージがあると考えていますか。
「自分のほうがもちろん上な形ではあると思うんですけど、あまりその展開にならないかもしれないし」
――寝技にならないかもしれないと。
「そうですね」
――それが今の島村選手の進化とも通ずるところでしょうか。
「そうですね。ずっと試していた中で試しすぎちゃって、ちょっと判定が多くなっちゃったんですけど。試している過程がどんどん見えてきていたので、形になってきていると思います」
――ところで、島村選手の寝技は独特です。下になってもコムロック的に腕を巻く形、足を四角から三角と流れもあり、あれは国際武道大学柔道部の頃からやっていた動きなんでしょうか。
「腕巻き込みは、チョン・ブギョンとかが使っていた技なんです。青木真也選手との試合を見て、うちの先生とそれをちょうど話していて」
――当時、柏崎克彦先生と試していたと。
「宇留野道場の宇留野修一先生とも『極めながらパウンド打たれないならいいね』と話して練っていました」
――島村選手の場合、そこからの展開も。三角絞め、オモプラッタ……。
「めくるのもできますし。本来は下になっちゃいけないとも思っていますから」
――腕巻きと同時に上を取ったときの腕ひしぎ脚固め=ローリングサンダーは、研究されていても、形になれば回せるようですね。
「回せますね。形は間違いなくあるので。ただ、あれからさらに違う、ローリングにしないバージョンとかいろいろあるので。あれが珍しいからみんな取り上げてくれているんですけど、そんなに別にこだわっていないです。もっと違う技もあるんです(笑)。腹固め系とは異なり、スパーでもバンバン極めて試合でもめくったりするときには使ってたんですけど、まだ完成していなかった。今回は完成はしています」
――腹固めもカドワキチョークにいくことも出来ると。
「回さなくても、というのはそこに1個あるんですけど、他もカドワキじゃないのもあるバージョンとしてはあります」
――楽しみですね。たとえテイクダウンされても寝技という意味では負ける気はしないと。
「寝技のスキルでは間違いなくたぶん(優っている)。けっこう変わった寝技をするので、たぶん相手は受けたことがないと思います。ローリングサンダーひとつとっても、もし逃げられても、ハメる形があります」
――ところで、高須選手ががんと闘病しながら、ファイターとして活躍していることについて、島村選手はどのようにとらえていますか。
「すごいですね」
――その闘病自体は大変なことですが、対戦相手の一人としてとらえることに変わりないと。
「そうですね。試合とそれは別問題だし、本人が望んでやってるので、まず手心はないですね。関係ないです」
――たしかに。それが双方が望む試合でしょうから。ただ、一方に注目度が高まることでやり辛さはないですか。
「無いですね。向こうが取り上げられているからといって、別にそれは強くてフィーチャーされているわけじゃないので」
――実力を見せるだけだと。
「はい。格闘技をやってるので、そこは当然です」
――島村選手はデビューが2010年。ZSTから始めて10年になります。このトーナメントを勝ち抜き、ベルトという形がほしいところでしょうか。
「そうですね。ベルトはずっとデビューしたときから欲しかったので、まずはそこをしっかり取らないと盛り上がらないですね」
――RIZINでも、関選手、竿本樹生選手らZST勢が活躍しています。
「竿本選手と関選手が頑張ってるから。いいことですよね。団体がナメられないので。ZSTが弱いと言われるのはめちゃくちゃムカつくので」
――あらためて、ファイター高須翔大選手を見た場合、強みは気持ちの強さですか。
「そんなに思わないんですけど、気持ちは強いという話ですね。見て印象に残る選手っているんですけど、自分の気持ちにはちょっと響かなかった。関のほうが気持ち強そうだなと思ったし。まだ彼はあまり厳しい試合は越えていないと思うので、そういうのはそういうときに見えると思います」
――その厳しい試合が今回の島村選手との試合になると。
「そうですね。根性を見たら嬉しくて笑ってしまうかもしれないです」
――王者・関選手の気の強さとは?
「関は鈴木琢仁戦とか、神田コウヤ戦とかも、けっこう押されてもずっとペースが崩れないし、退かない。前に出るのが本当に強い。技術としては分からないですけど。あれは持っているものじゃないと出せない。ああいう闘争心が前に出るような形はすごい強い気持ちがないと無理だなと思っています。僕はあれに負けているので」
――それに今度は違う形でもう1度、挑戦したいと。
「そうですね。それを止めれるものが出来てきたので」
――その意味で言うと、高須選手とはまだレベルが違うと?
「はっきり、それは思っていますね。関と高須では違う。やっぱりチャンピオンはすげえなと思ってるし。思ってるから、RIZINで勝ってくれたら嬉しい反面、やっぱ悔しいですね。あのとき勝っておけば立場は変わったかなというのもあるので」
――関選手に勝っていれば、RIZINに上がっていたのは自分かもしれなかったと。では、島村選手と高須選手ではレベルは?
「もちろん違いますよ。それを試合で見てください」