引退試合で逆転の一本勝ち、王座防衛というドラマティックなラストを迎えた前澤
2020年10月31日(土)東京・ニューピアホールで開催された『skyticket Presents DEEP JEWELS 30』。
メインイベントのDEEP JEWELSアトム級タイトルマッチ5分3Rで 挑戦者・青野ひかる(ストライプル新百合ヶ丘)を3R57秒、ギロチンチョークで破り2度目の防衛を果たすと同時に、引退試合を勝利で飾った王者・前澤智(リバーサルジム 立川 ALPHA)が試合を振り返った。
「1Rは厳しかったです」と前澤。「でも3Rあるので焦らずチャンスを狙っていました。それでも危ないと思っていたんですが、組んだ感じそこまで力負けしなかったので、少しずつ自分の展開に持っていければいいなと思っていました。自分は柔道出身なのでアームロックを狙っていたし、返し技としても使っているんですが研究されているなと思いましたね。バックも上も取られる時間が多かったですし、一本勝ちを狙っている迫力というか、ベルトへの執念を感じました」と、1Rは青野の猛攻に劣勢に追い込まれながらもチャンスをうかがっていたという。
「2Rはスクランブルになった時に相手の息遣いが聞こえて、攻め疲れてきたかなと思ったんです。セコンドの金原代表も『もっと動け、グチャグチャにしろ、お前の好きにしろ』と言ってくれましたし、もっと動こうと。私には柔道があるので投げとか、柔術もあるので潜りが決まってきたので、流れが来ていると思っていました。1Rは焦りましたが、2Rは流れが来たって感じました」と、青野の呼吸が乱れてきたことを察知し、徐々に流れを自分の方へ手繰り寄せた。
そして3R、片足タックルでテイクダウンしようと頭を下げた青野の首に腕を巻き、ギロチンチョークでタップを奪った。前澤の師である金原正徳は「練習でも極めたことないのに」と前澤をからかったが、「半分嘘で半分は本当です(笑)。金原代表の前で極めたことがなかったんですが、絞めはよく練習していたし、最後の試合で一本で勝てたのは思い出に残ります」と、今まで練習してきたものがとっさに出たと説明した。
勝利後はあふれる涙を抑えきれなかったが「UFCでヌルマゴ(ハビブ・ヌルマゴメドフ=10月24日のUFCでタイトル防衛後に引退)が泣いていたじゃないですか、気持ち的にはそれくらいでした(笑)。負けたら第2の人生始められないなって思ったので。勝てたことでジムのみんなにも伝えられるものがあったと思いますし、金原代表に恩返しができたと思います」と、第2の人生を笑顔で迎えられることと、周りの人たちへの感謝の気持ちを伝えられたことが嬉しかったようだ。
金原からは「引退を撤回してもいいよ」との言葉もあったが、「今はやり切った感じ。その気持ちで今日を迎えたので。でも、金原代表は『勝ったら何をしてもいいんだ』と言うので、本当に私が格闘技界に必要とされているんだったらもう一回くらいは頑張れるかなって思うけれど…うそぴょんです。誰かのためならという気持ち半分と、やりきった思いの半分です」と、やり切った気持ちが強い。
試合前には、結婚したことが引退の理由のひとつとも明かしており「結婚は5月の防衛戦で言おうと思っていたんですが、コロナで大会が流れてしまってそういう形になりました。入籍はしています。ゆっくり式を挙げられればと思うけれど、今はこのために生活してきたので。(お相手は)元ジム関係者です」と、落ち着いたら結婚式をあげたいと話した。
そして「本当はKAIさん(同門選手で第6試合にてさくらに敗れた)と笑って帰りたかったけれど格闘技は甘くない。KAIさんと金原代表の2人がいて、リバーサルジム立川ALPHAのみんながいて今日を迎えられました。出会ってくれたファンの皆さん、格闘家を引退してもまた別の形でやっていきたいと思いますし、さよならですがこれからもまたよろしくお願いします。ありがとうございました」と、ファンにメッセージを送った。