RISEの公開練習でなぜかパウンドを放つ魚井(C)RISE
2020年11月1日(日)エディオンアリーナ大阪で開催される『RISE DEAD OR ALIVE 2020 Osaka』で、初のキックボクシングルールに挑戦する、修斗世界バンタム級7位の魚井フルスイング(和術慧舟會HEARTS)が公開練習を行った。
第6代DEEP☆KICK-60kg級王者で“人獣”の異名を持つ中村寛(BK GYM)との対戦に向けて魚井は、元キックボクサーのMMAファイター・涌井忍が持つキックミットにパンチや蹴りを打ち込むも、なぜか、テイクダウン&パウンドありのシュートボックススタイルの練習に。涌井にスイープされて下になりながらも満足そうな表情で、3分の公開練習を終えた。
練習後のインタビューで魚井は、「最初は“無理だろう”と思って断ったんですね。でも試合を終えた後、得るものがあるかと考えると、やっぱり“やったほうがいいな”。“やりたくないから、やろう”と思った」と立ち技ルールに挑む気持ちを語った。
先に行われた公開練習で、中村が「相手は下を向いて打って、きしょいでしょう? 相手の顔を見てないで。いくらフルスイングしても当たらないと意味ない」と挑発してきたことについて、「もうトラッシュトークじゃなく、悪口ですよ」と苦笑しながらも、「フルスイングは当たるときは当たる」と、自信ものぞかせた。
会見での一問一答は以下の通り。
“こんなことを立ち技の選手たちはやっているんだな”と刺激になる
──RISEではベイノア選手以来のMMAでのミット打ちでした。今回のRISEの試合前もMMAの練習をしているのでしょうか。
「そんなことはないんですけど、ちょっと打ち合わせの間違いで、MMAっぽくなりましたね」
──しかもミットを持つ涌井忍選手にスイープされていました。
「(やられている場面については)……カットで」
──久しぶりの地元関西での試合で気持ちも変わりますか(※兵庫県出身。1019年6月の「RIZIN.16」神戸大会でカナ・ハヤットに3R TKO勝ち)。
「そうですね。地元から見てくれる知人友人もいますし」
──これまでキックルールでの試合は?
「アマチュアで1回、やったような記憶があります。アマチュアだったんで、判定で勝手にドローだったと思います」
──今回、初のキックルールに挑戦する気持ちは?
「何でこんなことになったんだろうな、と(苦笑)。すごい緊張しています。まあ、でも楽しみですね」
──「楽しみ」というのは?
「やっぱり全くMMAとは別物なんですけど、打撃という部分では、コンタクトするのは一緒なので。まあ試合中に楽しむ余裕は無いと思うんですけど、まあ、すごいいい経験に、大きな経験値になるかなと思います」
──最初にオファーを受けた時の気持ちは?
「最初は“無理だろう”と思って、断ったんですね。やっぱりなかなか難しいものがあるなと。いきなりプロ興行に出てる選手相手だと、やりたくないなとすごく思って断ったんですけど、何日かしたら、自分の中ですごくモヤモヤして。結局、MMAが好きなんで、これを断った結果、プラスになるのか。(オファーを)受けて試合終えた後、得るものがあるかと考えると、やっぱり“やったほうがいいな。やりたくないから、やろう”という感じになり、大沢代表を通じて『やっぱりちょっとオファーを受けたいです』と言い、RISEさんにお願いしました」
──この試合でどんなことを得たいですか。
「打撃の距離感とかルールの違いで、自分はやっぱり戸惑うと思うんですね。試合当日に。グローブの違いや、向き合ったときのリズムとか、会場の雰囲気や御客さんの層も。全部が違う経験を糧に出来れば、たぶんMMAでも打撃面だけじゃなく全体的にレベルアップ出来るかなと」
──MMAのオープンフィンガーグローブではなく、ボクシンググローブになります。そのあたりの違和感は?
「そうですね。どういう風にインパクトが伝わるか、あるいは伝わってくるのか、練習を通じてある程度イメージとかは出来てきているんですけど、やっぱりほぼ未経験なので、そのへんはやってみないと分からないですね」
──中村寛選手の試合映像は確認してどんな印象ですか。
「ちょくちょく見ています。どんな選手だろう、と。フィジカルがあって、盛り上げようと。天然なところもあるんですかね。盛り上げるいい選手じゃないですか」
──中村選手は、魚井選手のフルスイングについて、「向こうが振って来てる間に俺の方が先に当たる」と自信のようですが、どのように考えますか。
「気を付けます!」
──さらに中村選手は「相手は下を向いて打って、きしょいでしょう? 相手の顔を見てないで。いくらフルスイングしても当たらないと意味ない」と言っています。この発言については?
「えーと、それさっきトレーニング中にも話が出たんですけど、それ、もうトラッシュトークじゃなく、悪口ですよ。笑わないでくださいよ(笑)。まあまあまあ、何ですかね。自分も、立ち技に知人が出ているので観に行ったことがあるんですけど、RISEは華やかで、キャラが立ってる選手は多いですよね。なんで……傷ついてはいるんですけど、『そういう感じのキャラだな』ってことで。でも……“きしょい”はダメですよね(笑)」
──煽り動画でも“陰キャ”だといじられていましたが。
「まあ関西なんで、それで笑いが、笑われたらダメですけど、笑わせたら勝ちじゃないですか」
──対戦相手も“人獣”として名前のあるキックボクサーなんで、勝てば美味しい、という想いもありますか?
「まあ、キック初参戦で勝ったら……そうですね、美味しいですよね。都合よくポカン! と当たってKO出来たら、それが一番いいですよね」
──大沢ケンジ代表は中村選手の試合を解説してこともあります。からはどんなアドバイスを?
「そうですね……まあ『前に出ろ』という感じですかね。(いつものように『行け、行け』と?)大きな声が会場に響くと思います。『前に出ろ』と言われて“そうだよな”“難しいな”と思いながら(笑)戦っています。だからそのへんがセコンドと選手でうまく動きたいですよね。せっかく指示を言ってくれてるので。バチッとハマれば結構いい感じになるんじゃないですか」
──現在、MMAでは3連敗中ですが、どんなテーマでこのRISEルールを戦いたいと思っていますか。
「やっぱり、最近メンタル的な部分で思う所があって。そこを意識したらまた負けるんじゃないかなと、自分自身に。前回のRIZIN(2020年8月、元谷友貴に一本負け)でも思ったんですけど、お客さんの前で見せる価値のある、内容のある試合をしたい、そこに尽きますね」
──サウスポー構えの魚井選手ですが、相手もサウスポー構えなのは、手塚基伸選手はグラップラーだったので、それ以外ですと、2010年の「CAGE FORCE」(杉島大輔に1R KO勝利)以来となるでしょうか。
「古ッ(笑)。どっち利きでも苦手とか感じたことはないですね。(オーソでもサウスポーでもフルスイングは)当たるときは当たります」
──手の位置が低い構えの中村選手の打撃は、比較的MMA寄りで違和感が無いでしょうか。
「そうですね……距離が遠かったりする方が、普段向き合っているMMAの感覚に近いのかなと思います」
──中村選手のローキックに関しては、むしろ蹴ってきてくれた方がフルスイングを合わせやすいでしょうか。
「そこもあまり気にしないですね。好きにしてくれ、と。蹴られたら嫌というのはあまり無いですね」
──クリンチで投げてくることも多い中村選手に、望むところという部分もありますか。
「そうですね。組んだりするのは嫌な感じは無いですね。いつもHEARTSでメンバーにひきずり回されてるんで(笑)」
──立ち技の練習環境は、元キックボクサーのMMAファイター・涌井忍選手(元APKFミドル級王者)らとやっているのでしょうか。
「そうですね。キックでひとつ極めた選手が幸いジムにいるので、特に多めに練習に付き合ってもらっています。“こういう動きはキックだとMMAと違うので気を付けた方がいいですよ”といろいろアドバイスをもらっています。レスリングの時間を少し減らして、その分、シャドーとかを増やしています」
──キックの練習で新たに掴んだことは?
「あー、ありますね。遠いところやすごく近い距離でも“こんなことを立ち技の選手たちはやっているんだな”と。MMAだと距離が離れ切ると結構リセット的なところがお互いあると思うんですけど、でもキックを満遍なく意識して見直したら、ものすごく遠い、手が触れない位置とかや、逆に密着して殴ったり蹴ったり出来ない距離でも、いろんなことをやっていることが新たな発見としてありましたね」
──今回の試合が決まり、反響がありました。どのような試合を見せたいですか。
「……試合を観てください、という感じですね。観てもらえたら分かるんじゃないですかね。前回のRIZINの試合でも、得るものは大きかったですけど、試合内容は自分自身悔しかったのが一番ですけど、観に来てくれた人にとって面白くない試合しちゃったというのが悔いとしてあるので、今回他競技だけれど、“フルスイングを観たい”とRISEで言ってもらって、こういう機会を用意してもらってるんで、熱い試合を、自分自身が入り込めるような試合をしたいと思っています」
──リング上でのバットを持ったフルスイングのパフォーマンスはボクシンググローブだとやり辛そうですが、それでも持ち込みますか?
「いま気づきました……(苦笑)。でも立ち技の人も起用にマイク持ったりするじゃないですか。練習しときます!」