MMA
コラム

【RIZIN】キックを「あと10試合はやらない」という那須川のボクシングでの可能性は?

2020/09/26 14:09

識者が語る「どうなる!? 那須川vs.皇治」

 また、さいたま大会発表前の7月の時点でYouTubeで「RIZIN榊原社長に聞いてみた 那須川天心vs皇治は実現する!?」をアップしている京口は、今回メインイベントで実現する両者の戦いについて、「格闘技に絶対は無いけど、天心選手が負けるイメージっていうのは……うーんという感じ」と、那須川有利を予想。「皇治選手の打たれ強さは凄いけど、天心選手のような切れるパンチの方が倒れるかもしれない」と、これまでの皇治のタフネスさが、那須川のパンチには通用しない可能性があることも語った。

 一方で、「天心選手がKOを狙わずに、普通に戦ったら完封すると思うけど、フレームの差はある。60kgとかで戦っている皇治選手(今回は58.5kg契約)を相手に、“倒す倒す”と変に力んで空回りしちゃったら、泥試合になる可能性もある」と、契約体重の妙を指摘している。

 両者ともに前日計量はクリア。その契約体重について、那須川は、計量前日の時点で「起きて58.8。水抜き無し最高」とSNSでツイート。そして計量当日には「58.5ジャストでクリア。明日は全てを味方に次元を超えた力を出す」と力強いコメントを残した。

 一方の皇治も「起きて 58.8 水抜き無し 最高」と那須川のツイートを引用しながら、「#三途の川なんてバタフライで往復してきたる」と強気に計量前日に記すと、26日の計量でも「計量クリア。体重なんぞ盛り上がるならなんでもええ」と余裕の笑顔の写真とともにアップしている。

 皇治のボクシングパートを指導してきた内山高志は、今回の契約体重について、京口とは別の面も危惧している。

「普段60kgで戦う皇治に58.5kg契約がどう出るか。アスリート・格闘家にとって、その1.5kgを落とすのはなかなか大変。ものすごく身体にダメージも来るので心配でもある。天心選手にとっては、58.5kgはそんなに難しくない。ただ、皇治が前日計量でうまく落としてリカバリーして戻せれば逆に有利になる」と、利点と不利な点を語る。

 その上で、「皇治には打たれ強さがある。天心選手の攻撃力にどこまで通用するのか。普通にキックボクシングで対決したら、天心選手の技術は圧倒的に上なので厳しい」としながらも、「でも格闘技は勝った方が強い。皇治は練習ではいいパンチ打つが、試合では力みが入ってスピードが落ちることがある。パンチは相手が気が付かないときに効く。その力みをどう抜くか。それが抜ければもちろん皇治のパンチは当たれば倒せる」という。

 その「倒せる」パンチをいかに当てるか。

「天心選手はKO率も高い。相手との間合いを常に取る感覚の良さ。スピードがあり、打った後にも動いてすぐいなくなる。当てること自体が難しい。その当てることについて、皇治も作戦を考えているので、その作戦が出れば、面白い。ただ、天心選手はカウンターが上手い。攻撃を抜かれてカウンターを当てられると効いてしまうので、それをもらわないように戦うことが大事」と、内山氏は勝負の際を語る。

 皇治には“ダイナマイト”が覚醒させたパンチがあるという。

「雑誌でも言ったけど、皇治には1個だけいいパンチがあるんですよ。僕もいろんな格闘家の(ミットを)持っているけど、そのパンチだけは“うわっ、お前、これ強いな”っていうパンチがあるんで、それを当てることが出来れば、かなり面白い。皇治もその武器に自信を持っている。実際、僕が言ってから本人が気づいて“そんなに強いスか”と。“これは強いよ”とお墨付きをしたくらい」

 両陣営ともに、研究材料は豊富だ。盤石に見える“神童”にもつけいる穴はあると、内山は言う。

「もちろん戦い方は変えてくるだろうけど、天心選手はロッタン戦ではちょっと苦しそうになったり嫌がった。あれだけ穴が無いように見えても、選手には必ず穴があるもの。そこを皇治の気持ちと打たれ強さとファイティングスタイルで、試合中に天心選手の苦手な部分が見えれば、展開は面白くなりますね。皇治はものすごく気合いが入ってる。食ってやろうという気持ちの強さや思いは練習からも伝わってくる。試合では僕も熱くなると思う。雑草とエリートの戦いになる。いち格闘技ファンとしても楽しみ」と、皇治のファイティングスタイルが、その穴を大きくすると期待をかける。

 公開練習では皇治も、「あの子(那須川)は殴られずにここまで上がってきている。俺は殴られて上がってきた。そこがカギかなと。頑丈さは負けないんで」と、殴り合いに持ち込む自信を見せている。

 さいたまスーパーアリーナでの大一番に向け、両者の思いは交錯する。

 キックボクシングでは「あと10試合ない」という那須川だが、「僕は何をやってもキックが大好き」と、キックへの思いは強い。かつては、「海外でボクシングライセンスを取って、日本でキックをやって海外でボクシングをやるというチャレンジも出来るかもしれない」と二刀流への夢も語っている。

 また、父でありコーチでもある那須川弘幸TEPPEN GYM代表も、「キックを底上げして、しっかりした世界になってから、たとえばMMAをやろうが、ボクシングに行こうが、そういう夢は見れますよね」と、まだキックボクシングでやるべきことがあると語っている。

 ただ、アマチュアエリートが台頭する現在のボクシング界では、取り組みに「早い」ということは無く、別競技であるボクシングでは、蹴りが無い分距離が近く、蹴るための後ろ重心、立ち方さえもアジャストする必要がある。しかし、その点でも、那須川は恐るべき柔軟性で、すでに両競技に取り組んで来たともいえる。

 上記のように『ゴング格闘技』本誌の取材で語られている通り、殴ること・蹴ることが、究極の形で融合している“ミクストキックボクシング”が那須川天心というファイターだ。その芸術を観ることが出来るのが、あと10戦と見るか、まだ10戦と見るか。

 いずれにしても、この類稀なファイターの貴重な試合を、ひとときも見逃せないことだけは確かだ

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