2020年9月5日(日本時間6日)にドイツ・デュッセルドルフで開催された「Elite MMA Championship 5」で、「初代EMCヘビー級王座決定戦」に臨み、5R判定で敗れた石井慧が判定に不服。現地コミッションに異議を申し立てた。
試合は同大会のメインで行われ、191cmの長身を誇るスチュアート・オースチン(英国)に対し、181cmの石井はシングルレッグ(片足タックル)、大内刈、大外刈などで再三テイクダウン。オースチンは金網まで這い、金網を背に立ち上がり、石井の背中に鉄槌を落とすが、その上体をコントロールして威力を殺す石井は、スタンドでも左オーバーハンドを振り、至近距離ではダーティボクシングも当てるなど、オースチンをドミネートしたかに見えた。
しかし、判定はまさかの3-0(48-47×3)でオースチンが勝利。信じられないという表情の石井。解説が「ビッグアップセット」と驚きの声をあげるなか、新王者がベルトを腰に巻いた。
2020年5月に古傷の大手術を行ってからの復帰戦となる今大会は、石井にとってさらなるステップアップのための大事な試合だった。
2019年3月に石井を起用し、今後の大会への出場オファーもしていたKSWのマルティン・レバンドフスキー代表も生観戦。判定に不服を表明し、EMCプロモーターでクロアチア人のイヴァン&トミ・ディヤコビッチ兄弟自身もコミッションにプロテストを行うとしている。
あらためて判定に不服を申し立てた石井慧に話を聞いた。
海外で戦う日本人選手のためにも、引き下がらない
──テイクダンアテンプトもあり、終始、試合をコントロールしていたのは石井慧選手でした。オースチン選手は金網に押し付けられ、後半に背中に鉄槌を落としてはいましたが。
「相手の鉄槌と言っても背中に細かいのを打っているくらいで、何もしていなかったに等しく、僕はUFCのカマル・ウスマンの戦いぶりを参考にしてる部分もあって、あの技術を繰り返し研究し、今回も挑んで勝ったと思いました。たとえテイクダウンに至らなくてもケージでコントロールする。ウスマンはそういう試合をしているのですが、僕の場合は各ラウンドでテイクダウンも奪っていて、僕が勝っていたんじゃないかなと思っています」
──試合後、周囲の反応はいかがでしたか。
「ミルコ(・クロコップ)も判定にはすごく怒っていて、『これはコンプレイン(クレームを入れる)した方がいい』と言ってくれていて、コミッションに提訴することになりました。KSWの(マルティン・)レバンドフスキー代表も判定がおかしいと言っていましたし、EMCのプロモーターもコミッションにプロテストを行うそうです」
──ジャッジはどのようにとらえていたのでしょうか。
「事前のルールミーティングもなく、ジャッジの判定基準の説明も特に無くて、UFCと同じユニファイドルールだと。試合後、聞いたところによると、相手が『ダメージを与えていた』というのですが、コントロールしていて打撃を当てていたのは自分の方だと思っています。またあの鉄槌でダメージは負っていないです」
──目に見えないダメージ、というのは難しい。ケージレスリングでも、レフェリーは手を叩いて『動け』とうながしますが、アタックしているのは押し込んでコントロールしている石井選手の方で、その状況を打開して動かなければならないのはオースチンの方とも言えます。そこで相手が動くことで石井選手にとっても、次の展開が生まれると思いました。
「そうですね。それに……ケージの下のマットがビニールのようなマットで、最終ラウンドは汗ですごく滑ったんです。相手に背中を着かせてもコントロール出来ないくらいで」
──なるほど、それは映像では分かりにくい部分ですね。今後についてはどのように考えていますか。
「まずは、結果を待ちたいと思います。僕は大きな手術も経て、再起の一戦でした。ミルコのもとでいちから練習し、UFCのアレクサンダー・ラキッチ(UFC世界ライトヘビー級ランキング5位)ともクロアチア合宿を積んできました。ウスマンの試合も研究して試合に臨んで遂行した。……このジャッジは何なのか、今後の日本人選手の海外での試合が心配になるくらいの不可解なジャッジでした。今後の日本人選手のためにも、ここは引き下がらずに戦うつもりです」