原口との王座決定戦に敗れ、一度は引退もよぎった秀樹だが再びタイトルを目指して這い上がる。右は元女子キックボクサーの妻いつか
2020年8月23日(日)東京・後楽園ホール『RISE 141』のメインイベントで、RISEライト級4位で元HOOST CUPスーパーライト級王者・麻原将平(パウンドフォーパウンド)と対戦する、同級1位・秀樹(新宿レフティージム)のインタビューが主催者を通じて届いた。
7月25日に誕生日を迎えて29歳になった秀樹は「あと20代が1年しかないってことで、20代を思い残すことなく、キックボクシングに関してはめちゃくちゃ気合いを入れて1年練習に取り組んで試合もバンバンやっていきたいと思っています」と意気込む。
新型コロナウイルスの影響による自粛期間中は「ジムには全く行けていなかったので、基本的には自宅近くの川沿いを走って、実戦練習はいつかに協力してもらってミットを持ってもらったり、軽いマスで対人練習をしたりして、いつでも試合ができるよって状態にはしていましたね」と、妻である元WPMF女子世界フライ級王者いつかとマンツーマンでのトレーニングを行っていたという。
「僕は本当にありがたかったです。最初はミットを持つのがめちゃくちゃ下手で(笑)。だんだん日を追うごとに僕のミットの持ち方とかも慣れてきて、最後はしっかり持てるようになってくれたのでけっこう練習になりました。実戦練習ができたのはデカいと思いますね。どの選手も実戦練習はしたかったと思うので、その部分ではかなり先手を取ってできたかなと思います」
“鬼嫁”の異名で知られるいつか主導のラントレに関しては「完全には復活してないです。やはりコロナの影響があるので、ジムのメンバーを呼んでってことができないんですよ。なので僕単独で見てもらって、というような状況です」と言うが、「完全に100%自分に矛先が向くので、仲間がいてくれた方がやりやすいなって改めて感じました」と、より厳しくなったと苦笑い。
秀樹は1月に、原口健飛とRISEライト級王座決定戦を争ったが、1R2分23秒、KO負けを喫して悲願だった王座獲得ならず。
いつかは「本人も1回は折れたと思うんですが、とことん落ちるところまで落ちたらいいんじゃないのって言いましたね。そうじゃないとまた這い上がっていけないし、さすがにあんな状況では何も言えないなと思ってさして言わないで、見守る形にしました。このまま辞めるって選択はないよねって軽く話はして、あとは本人に任せるしかない。でも戻って来るとは信じていたので、そうしたら1カ月くらいかな、前向きになり始めたのは」と、口を出さず見守っていた。
秀樹自身は「どっちかと言えば、試合が終わった当初はやり切ったし、そんなに無念に思うような感情はあまり沸かなくて。やり切ったし、これを区切りにしてもいいかなってちょっと思い始めてたんですよね。でも、まだ辞めるなとかもう一度見たいとかっていう陰で支えてくれていた人たちの声を聞いて、これは自分だけでやっていることじゃないんだなっていうのをかなり深く感じて、もう一回頑張ろうって思うようになってきて。そう思うようになってからは、だんだんとスッキリしていたものが悔しさに変わってきました。それが1カ月くらい…期間でいうと分かりませんが、仲間の試合を見るたびに、あとは原口君とか白鳥君がRIZINとか別の試合に出て活躍するのを見て、やっぱりこのままでは終われないなって悔しさが芽生えて、もう一回やろうって立ち上がるきっかけになりました」と、当初は引退も考えていたと告白。
特に原口のRIZINでの活躍には「めちゃくちゃ強くなっているなって思いましたね。原口君はいつも距離を取って上手い戦い方をするのに、今回はジリジリ詰めて自分から攻めて倒しに行っていたので、両方できる選手なんだな、さすがRISEのチャンピオンだなって思いましたね」と感心しながらも、「モチベーションが上がりましたね。同じ階級である以上、越さないといけないと思っているので。その分、自分の弱い部分や課題を明確にしてもう一回挑戦したいと思いました」と、原口へのリベンジの気持ちが燃え上がってきたとする。
今回対戦する麻原については「大阪の選手でかなりベテランで、パンチが上手い選手だなって思いました。逆転勝ちもあったりするので最後まで気の抜けない選手だなって思いますね。パンチで一瞬の隙を狙っていると思うので、そういうのは気を付けないといけない怖さはあります」と評し、「メインなので勝ちにこだわる試合はしたくないです。やはり盛り上がる試合をしたいと思います」と、メインにふさわしい試合をしたいとした。
しかし、そこに待ったをかけたのはいつかだ。「私は勝ちにこだわれって思いますね。いいパンチを入れてくれるだろうなって思います。ただ麻原選手は堅く勝つイメージがあるので、あまり隙も作らせてくれないと思っているので。さっさと勝ってしまうとお客さんに申し訳ないので、3RくらいでKOして勝ってくれると思っています」とプレッシャーをかける。
すると秀樹は「なんか緊張してきました(苦笑)。でも3RでKOは一番ベストだと思っているので、理想の形としては思い描いて試合に臨みたいと思っています」と、3RでのKOを目指したいと話す。
13日に行われた会見では、当初WORLD SERIESに出場が決まっていた白鳥大珠(TEAM TEPPEN)、原口健飛(FASCINATE FIGHT TEAM)、直樹(BRING IT ONパラエストラAKK)が出場する-63kgワンデートーナメントの開催が発表された(10月11日または11月1日)。残り1名は調整中とのことで「その一枠が空いているなら、自分が入りたいなって率直に思います。僕の前にも北井(智大)君が試合をするので、その内容と比較されると思っていますね」と、北井と試合内容で出場権を争えたら、とした。
(写真)ZOOM取材中、秀樹といつかよりも目立っていた長男・太陽君
ZOOMで行われたこのインタビュー取材には息子の太陽君も登場していたが、「そろそろ記憶としても残って来る年齢だと思うので、もう倒れているところは見せられないし、自分が挑戦していく姿を見せたいというのは太陽が年齢を追っていく毎に強く思いますね」と、父の背中を見せたいとの想いも。
取材の最後には、いつかからサプライズ発表も。「報告がありまして。実はお腹にもう一人子供がいて。なので何が何でも勝たないといけないという、勝手にプレッシャーになっていると思うので多分大丈夫かな、何も言わなくても。今は4カ月と半ばです。お腹の子も応援してるよくらい言いますけれど」と、第二子が宿っているという。
ますます負けられない理由が増えた秀樹。「タイトルマッチへ3度目の挑戦に立ち上がろうと思うので、チャンピオンになるまで応援していただけると幸いです」と、ここから再びタイトル挑戦へ這い上がっていくと誓った。