2020年9月10日(木)東京・渋谷O-EASTにて『ROAD to ONE 3rd:TOKYO FIGHT NIGHT』の開催が決定。8月17日(月)ABEMAにて記者会見が行われた。大会は19:00よりABEMAで世界同時生中継されるほか、数百人程度の有観客での開催が予定されている。
7月31日にタイ・バンコクにて約5カ月ぶりとなる大会『No Surrender』を開催したONE。一方、ONE日本人選手は海外渡航の許可が下りず、いまだ試合のできない状況が続いているが、今回、ONEとABEMAが協議を重ね、4月17日に実施した無観客大会『Road to ONE:2nd』に続き、『Road to ONE:CENTURY』以来、約1年ぶりとなる“スピンアウト”的な日本での観客動員大会『Road to ONE 3rd:TOKYO FIGHT NIGHT』の開催が決定した。
「覚悟を決めろよ」とのテーマで開催されるという今大会、メインイベントとコ・メインイベント(セミファイナル)のカードが8月17日に発表された。
メインイベントは第2代&第6代ONE世界ライト級王者・青木真也(Evolve MMA)vs江藤公洋(和術慧舟會HEARTS)のライト級ワンマッチ。
青木は2020年4月の前戦「Road to ONE:2nd」で、世羅智茂とグラップリングマッチに臨むも時間切れドロー(判定無し)。MMAの試合は2019年10月13日のONE Championship両国大会でのホノリオ・バナリオ戦(1R ダースチョークでの一本勝ち)以来、11カ月ぶりとなる。
対する江藤は、ONEのトライアウト「ONE Warrior Series」で3連勝し本戦昇格。本戦初出場となる2019年7月大会では、韓国のパク・デソンとの再戦に臨み、2R KO負けで返り討ちにあった。しかし、ONE2戦目となる2020年2月大会では、かつて練習を共にしたアミール・カーン(シンガポール)を相手に1Rリアネイキドチョークを極めており、本戦での連勝を目指す。
両者はロータス世田谷やTRIBE TOKYO M.M.Aでの練習で肌を合わせており、互いのストロングポイントを感じた上で、今回の試合に臨む。
会見で青木は「試合をすることも正解でしょうし、試合をしないことも正解だと思います。個々に正解があるからこそ戦争なんだろうし、いま非常に荒れた状態なんじゃないかなと思います。そんな中で今大会をやってもらえるABEMA・北野雄司(プロデューサー)に感謝したい。その強い気持ちはあります。言いたいことはいっぱいありますが、よかたばかりのこの世の中で自分が納得するものを作りたい自分が、信じたものを作りたいっていう強い気持ちでやっていますから、人の感情を揺さぶるいい表現ができたらなと思っております」とコメント。
また、司会から対戦相手の印象を聞かれた青木が、「なんで俺が(相手の)プロモーションしてやらないといけないの」と発言するなど緊張感を漂わせ、前回の囲み取材でも発言していた「いつの間にやら(周囲を)アップさせる仕事が多くなっている。みんな口を開けて(機会を)待っているだけ」という考えをあらためて示す場面も見られた。
同時に、11カ月ぶりの試合に向けて、「試合が無い状態で、この10カ月『なんとかしてよ』とずっと話をしてきて。4月にRoad to ONEがあって、組み技の試合をやらせてもらって、僕からするとラッキーですよね。こういう形で試合をさせてもらえると」と、これまでの取り組みが実を結んだことを語りながらも、8月1日の囲み取材で「言ったら全員顔じゃない」としていた対戦相手について、今回の江藤が役不足かどうかを記者から問われると、「その気持ちは強いし、いま何をしたら、どこで試合をしたらいいのかは、僕自身が一番見えていますから、それが状況的に出来ないなかで、いまあるベストではあると思いますけど、まあ、日本の格闘技界みたいなことを考えたときに、もうちょっと話題になる場所、話題になるカードはあったと思います」と、実現しなかったプランがあったことも明かしている。
それでも「みんな元気が無くなったときに奇策をやるけど、2人で試合していいものを作って、いい表現をして、人を集めて銭をもらう。一番基本に立ち返ってやることが今は大切なんじゃないかなと思います」と語った青木。「真っ当に当たり前に格闘技そのものをやりたい」と望むのには相応しい相手が用意されたといえる。
対する江藤は「青木選手という格上の選手とやらせていただくことになったんですが、そこに対する不安や恐怖心もあります。青木選手とは一緒に練習したこともありますし、強さは感じています。知名度だったりを考えると、普通ならありえない、コロナの状況だから組まれたカードで、自分がどれだけできて力を出せるのか。しっかり準備して、不安や恐怖を乗り越えて、試合に向かう中で何かを伝えられたら。試合当日は全力でぶつかりたいと思っています」と、青木に全力で挑みたいと意気込んだ。
コ・メインイベントはONE世界ストロー級1位・猿田洋祐(和術慧舟會HEARTS)vs同級2位・内藤のび太(パラエストラ松戸)のストロー級ワンマッチ。内藤は第2代&第4代ONE世界ストロー級王者、猿田は第6代同王者というストロー級最高峰の日本人対決が実現する。
元ONE世界ストロー級&修斗世界同級王者(2019年11月30日に返上)の猿田は、2019年4月のONEインドネシア大会でジョシュア・パシオとの再戦に敗れ、ONE王座陥落も、2019年10月のONE両国大会でPANCRASE王者の北方大地に2R TKO勝ちで復活。ベルト奪還を目指している。
対する内藤も猿田同様に元ONE世界ストロー級王者にして元修斗世界(フライ級)王者。2018年9月にジョシュア・パシオに判定負けを喫し、ONE王座から陥落。2019年3月には レネ・カタランにもTKO負けし、キャリア初の連敗となったが、2019年5月にアレックス・シウバに、11月にポンシリ・ミートサティートに、いずれも判定勝ちで、現在2連勝中だ。
また、内藤・猿田ともに現ONE世界ストロー級王者のジョシュア・パシオと1勝1敗のため、決着戦にこぎつけてベルトを奪還するためにも、今回の日本人対決は絶対に負けられない試合となる。
会見で猿田は「この試合はただのワンマッチではなく、自分が修斗の時代に4年前に(フライ級から)ストロー級に落としたきっかけがのび太選手と戦うためというのがあったので、そのカードが決まって嬉しく思っています。ONEで日本人対決って難しいと思っていて、このコロナの影響でなかなか海外で試合ができない状況になったからこそ実現したカードだと自分は思っています。のび太選手に勝つことによって(現王者の)パシオ選手への挑戦権を獲得できることになると思いますので、しっかりのび太選手に勝って壁を超えて日本代表として、日本ストロー級ナンバーワンとしてパシオ選手に挑戦したいと思っています」と、内藤を倒して王座を奪回したいと力強くコメント。
また内藤について「(自分が)タイトルに近づくことが出来ずにいた時に、のび太選手はほぼ負けなしでチャンピオンまで駆け抜けて、ONEでも活躍して凄いなと思っていました。自分は勝ち負けを繰り返して上がってきたので、羨ましい気持ちというか、この選手に勝つことで証明できる、救われる気持ちがあるので、ずっとやりたいと思っていました」と印象を語ると、試合スタイルについて「いつも毎回、自分から苦しい展開に持っていって、相手を削って最後はフィニッシュしたりドミネイトして勝利に繋げる気持ちの強い選手」と評した。その上で、猿田は「上手く戦おうとは思っていない。のび太選手と同じようなキツい試合をして、逆にのび太選手を疲弊させて、自分がパウンドアウトして勝とうと思う」と、内藤の土俵でも退かない構えを見せている。
対する内藤は、「こんな状況の中、自分にオファーをいただいて本当にありがとうございます。ランキングができて、自分より上の選手と戦えるってことで、とても光栄に思っています。その期待に応えられるような試合ができればなと思っています。日本で試合できることはとても嬉しいです」と、静かに答えた。
また、会見に出席したABEMA解説で、和術慧舟會HEARTS代表の大沢ケンジ氏は、自身のジムから江藤と猿田の2人を送り出す立場として、青木と対戦する江藤について「格闘技界にいる人間からしたら興味深い試合で『青木選手に誰か勝てる選手がいるか?』と聞いたときに名前が出てくるのが江藤。ウチとしては、江藤が力を出せるかどうか。青木選手が強いことは十分に分かっていること。そのなかで皆さんが思うのと逆の結果を出すことで格闘技が面白くなる。江藤には『まだ見せてないものがたくさんあるだろ』と言いたい」と期待を寄せ、猿田については、「テイクダウントライをし続ける内藤選手の粘り強さに猿田が根負けするようだと厳しい。フィニッシュしてほしい」とゲキを飛ばすと、猿田も「そのつもりです。期待してください」と力強く答えた。
なお、現在、ONE Championshipは7月31日のバンコク大会からフラッグシップイベントを再開させているが、現状では開催地の選手を中心にカードが組まれており、国際戦は渡航制限が緩和される今秋からシンガポールで再開されるという報道も出ている。
会見冒頭で、「大きな会場でも多くのお客さんに来ていただけない現状のなか、ABEMAのお膝元・渋谷から、タイトな会場で最新の演出でテレビマッチをお送りしたい」と、今大会の意義を語ったアンディ秦・日本支社長は、今後のONE Championship本大会の展望について、「開催国の規制緩和と安全面の徹底管理」、「渡航が可能かどうか」の二つの条件から検討されているといい、10月末のシンガポール大会に向け、「いつチャンスが巡って来るか分からないので、選手のみなさんには今日だけでなく明日に向けてのギアアップの準備をしておいてほしい」と語っている。
(C)ABEMA