(C)ONE Championship
3月31日(日)、「ONE:A NEW ERA-新時代-」両国国技館大会で、ミャンマーのアウンラ・ンサンが日本の長谷川賢と対戦する。
両者は、2018年6月にミャンマーで対戦。5R制のミドル級(※93kg)タイトルマッチにスクランブル発進で臨んだ長谷川に対し、王者ンサンはホームの大歓声の後押しを受け、倒し倒されの死闘を5R3分13秒、TKOで制している。
9カ月ぶりのリマッチの舞台は両国国技館。前回同様にミドル級のベルトが賭けられた、今回の試合に向け、挑戦者の長谷川は、あえてホームから離れ、米国ニューヨークのセラ・ロンゴ・ファイトチームで8週間にもおよぶキャンプに臨んでいる。
【写真提供】Hasegawa Ken
王者はそんな長谷川の進化を歓迎する。
「ハセガワは、ニューヨークでトレーニングを積んでいると聞いているよ。おそらく、高い集中力を持って取り組んでいるだろう。ハセガワはさらに進化していると思うよ。そして、それは素晴らしいことだ。ファンに素晴らしい試合を見せることができるからね」。
そう語るンサンもまた、米国での特訓を敢行している。米国フロリダ州フォートローダーデール。太陽が眩しい西海岸のリゾート地フロリダで、ONE世界ライトヘビー級及びミドル級世界王者であるアウンラ・ンサンは、「Hard Knocks 365ジム」で調整を行なっている。
先日、引退を表明したUFCのステファン・シュトルーフ、ヴォルカン・オズデミア、カマル・ウスマン、ヴィセンチ・ルケ、エウベウ・バーンズ、Bellatorのリントン・ヴァッセルのほか、日本から佐藤天らも出稽古に訪れる強豪メガジムだ。
前戦「ONE:SPIRIT OF A WARRIOR」での両者の初顔合わせは、2018年のグローバルアワードでバウトオブ・ザ・イヤーに選ばれるほどの熱戦だった。最終ラウンドまでもつれた壮絶な打ち合いは、最後はンサンが長谷川をアッパーカットに捉えてKOに至ったが、ンサンの33歳の肉体には課題も残ったようだ。
「前回の試合から1年も経っていないから、ハセガワは戦い方を大きくは変えて来ないだろう。僕もそれは同じだ。ただ、前回よりも強い気持ちで向かってくるだろうし、実際、強くなっていると思うよ。僕も前回の試合から多くを学び、修正を加えてきた」と、ンサンは話す。
「チャンスを逃した部分もあったし、もっと違う動きをすれば良かったと反省している部分はある。でも、その部分は既に修正できたから、次の試合はより良いものを見せられると思うよ」と、ンサンは再戦に向け自信を語った。
3月31日、ケージのなかで長谷川はより洗練された技術と、より迫力を増した肉体のンサンと対峙することになる。
「今回は、筋肉量を10ポンド上げたんだ。有酸素運動も積極的に取り入れ、さらにダイナミックな戦いができるようになった。打撃でも寝技でも日々、強くなっている自分を実感しているよ」
「Hard Knocks 365ジム」では、ンサンのトレーニングに最高の環境が用意され、実際キャンプを開始してから、本人も手応えを感じているようだ。
「ジムの環境は最高だ。良い指導者と環境が揃っているところには、良い選手が集まってくるものさ。だから充実したトレーニングを重ねているよ。みんなが献身的に働き、才能を最大限に伸ばせる環境だ。だからこそ、僕は家族でフロリダに移住したんだ」。
アウンラ・ンサンは母国ミャンマーの英雄である。そして、彼を見て、多くの若者がマーシャルアーツの道を志しているという。
「ミャンマーの若い世代が、マーシャルアーツを愛してくれて嬉しいよ。実際にMMAを始める人も多い。2016年に僕がONEに参戦して以来、ミャンマーにもいくつかの格闘技ジムができたんだ。将来、トップ選手が育ってくれることを願っているよ」。
33歳のンサンは、ONEに骨を埋める覚悟で挑んでいる。そして、その野望はまだまだ尽きない。
前回はンサンにとってホームでの試合、今回は長谷川のホーム・日本での対戦となる。ンサンは、「もちろん、ミャンマーで試合をするのは大好きだよ。でも、その分プレッシャーもある。だけど、次は日本でやるから試合に集中できると思う」と、これまでホームならではのプレッシャーがあったことも明かし、日本での試合に前向きだ。
「日本は武道発祥の地。ずっと、日本で試合がしたいと思っていたから、とても光栄に感じているよ。日本大会では、日本人選手が目玉になるだろう。でも、僕は主役の座を奪いたいと思っている」
絶対的な王者であるアウンラ・ンサンだが、その目は挑戦者のものだ。
また、ンサンは防衛に成功した暁には、さらに階級を上げてONEヘビー級世界王座を狙うという。
「ヘビー級挑戦の準備はできている。現王者のブランドン・ヴェラは素晴らしい選手だし、挑戦したいとも思っているよ」。
しかし、まず重要なのは次戦で長谷川賢を相手にミドル級王座の防衛を果たすことだろう。
「僕はハセガワを尊敬しているんだ。一度戦っているから互いに長所も短所も分かっている。次の試合もエキサイティングなものになるのは間違いない。そんな試合に向けて、トレーニングは万全でとても集中できている。自分の力を早く試したい──そんな風に思っているよ」
3月31日(日)、両国国技館でベルトを腰に巻くのは、長谷川賢か、アウンラ・ンサンか。
Aung La N Sang
ONEミドル級とライトヘビー級世界チャンピオンのアウン・ラ・ナサンは、ミャンマーで生まれ、2003年に米国に移住する前、ヤンゴンの学校ですでに優れた選手として頭角を現していた。翌年、ミシガンのアンドリューズ大学で農業科学を学ぶ間、ブラジリアン柔術などの格闘技を学び、すぐに格闘技の虜となった。卒業後、養蜂家として働きながら全国を旅したが、すぐに格闘技に人生を捧げる決断をすると、2005年にプロデビューを果たす。デビュー直後に、そのサブミッションのスキルが評価され、「ビルマの毒蛇」と呼ばれることに。10年以上にわたるキャリアで、ほぼすべての勝利がTKOで終わっており、彼それはウサンの才能を証明している。2014年にONE Championshipと契約後、2年後にミャンマーに戻り、「ONE:UNION OF WARRIORS」で勝利。国民的ヒーローとなった。ミャンマーの英雄は、2017年6月以降も伝説を作り続ける。ヴィタリ・ビッグダッシュを打ち負かし、ONE世界ミドル級王者となると、2018年2月にはアレクサンドル・マチャドをKO。ONE世界ライトヘビー級王者にもなっている。185cm、MMA24勝10敗1NC
【仙三が3.31ONE両国大会に緊急参戦】
3月31日(日) に両国国技館で開催される、ONEフライ級(61.2kg)GP一回戦でダニー・キンガド(フィリピン)と対戦予定だったアンドリュー・レオーネ(米国)が欠場。PANCRASEフライ級王者の仙三(パラエストラ松戸)のGP緊急出場が決定した。仙三はONE初参戦となる。
仙三がGP一回戦で対戦するダニー・キンガドはチーム・ラカイ所属。ONE8戦中、唯一の黒星は現ONE同級王者のアドリアーノ・モラエス相手に喫したもの。2018年9月に若松佑弥に、2019年1月に和田竜光にいずれも判定で勝利している。