2020年6月28日(日)、エイワスポーツジムにて、ムエタイ大会『BOM~The Battle Of MuayThai~』が「無観客」で開催された。
コロナ禍のなか、今回は大会支援のクラウドファンディングが事前に実施され、当初の目標としていた250万円を達成。大会の模様は、YouTube「BOMチャンネル」と「17LIVE」で無料生配信もされた。
▼メインイベント(第8試合)BOMスーパーフライ級王者決定戦 3分5R◯イッセイ・ウォー・ワンチャイ(=石井一成/ウォー・ワンチャイ・プロモーション/KING OF KNOCK OUT初代フライ級王者、WPMF世界フライ王者、IBFムエタイ世界フライ級王者)[判定3-0]※49-47×2, 50-47×HIROYUKI(RIKIX/第6代日本フライ級王者、第12代日本バンタム級王者)
メインイベントはBOMスーパーフライ級王者決定戦3分5Rとして、イッセイ・ウォー・ワンチャイとHIROYUKIが初激突。
イッセイ・ウォー・ワンチャイこと石井一成はジュニアキック出身で、アマチュアでは14冠王を達成。タイを主戦場に6連続KO勝利を飾り、2017年2月にはTrue4Uフライ級タイトルを高校生で獲得。2017年6月からは『KNOCK OUT』に参戦し、2018年12月、トーナメントを制してKING OF KNOCK OUT初代フライ級王座に就いた。那須川天心に対して“西の神童”と呼ばれている。
また、2019年2月にはKO勝ちでWPMF世界フライ王座も奪取。6月にもKO勝ちでIBFムエタイ世界フライ級王座を獲得している。当初は4月12日(日)エディオンアリーナ大阪・第一競技場で開催の『Cygames presents RISE WORLD SERIES 2020 1st Round』に参戦が決まっていたが、新型コロナウイルスの影響で大会が中止となっていた。
HIROYUKIは目の良さと身体能力の高さを活かし、打たせずに打つ試合を持ち味とする。時折、派手な蹴り技も見せるが、得意技はヒジ打ち。新日本キックボクシング協会の第6代日本フライ級王者&第12代日本バンタム級王者で、近年では他団体選手との試合を望んで実現させてきた。今年4月には『Road to ONE』でポン・ピットジム(タイ)にKO勝ちしている。軽量級実力者同士のスピード感あふれるテクニカルな試合に注目だ。
1R、圧力をかけていくのはHIROYUKI。胴廻し回転蹴りもイッセイはブロック。イッセイは足を使って回り、左右ミドルと回転の速いフック、レバー打ちで応戦。組みの強いHIROYUKIを回してコカすのはイッセイ。2R、ロープに詰まるとブロッキングするイッセイに、HIROYUKIはボディに散らして上下に突く。さらに左ミドルと三日月蹴りを打ち分けると、押し返してくるイッセイの入りにカウンターを狙うHIROYUKI。縦ヒジ、カウンターの右ストレートか右ハイの影響か、イッセイの左目が腫れる。
しかし、3R、左目下の腫れが大きくなりながらもイッセイは身体の強さを見せ、右ロー、左ハイと対角に蹴ると、ロープに詰めたHIROYUKIに前手を伸ばしておいて右ヒジ! HIROYUKIの左側頭部をカットさせる。ドクターチェック後、再開。勝負どころの畳みかけがイッセイの強さ。3R終了間際には、前がかりに反撃してきたHIROYUKIに跳びヒザ蹴り! HIROYUKIが後方にダウンする。
4R、後がないHIROYUKIは前に出るが、イッセイはその前足に左右ローで突き、左ミドルもヒット。HIROYUKIは右をヒットさせるがイッセイは追打を許さず。5Rはイッセイがムエタイの流儀でHIROYUKIの攻撃をしっかりさばいてフックをまとめてゴング。判定はダウンを奪ったイッセイが3-0(49-47×2, 50-47)で勝利。BOMスーパーフライ級のベルトを腰に巻いた。
激戦を制したイッセイは、生配信の視聴者や関係者に向けて、「このような状況で試合の機会を与えていただき、またクラウドファンディングで応援してくださった皆様、ありがとうございますた。今回、7カ月振りの試合で感覚もダメダメだったし、チャンピオンになったけど、まだまだ成長しないといけないなと思います。選手一同これからも頑張って行きますので、変わらず格闘技界を応援してくれたら嬉しいなと思います。また次の試合を楽しみにしていて下さい」と語り、メインを締めた。
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▼セミファイナル(第7試合)BOM50kg契約 3分5R◯名高・エイワスポーツジム(エイワスポーツジム/元ラジャダムナン&ルンピニースタジアム認定ミニフライ級王者)[判定3-0]※50-45×2, 50-47×タクト・ウォー・ワンチャイ(ウォー・ワンチャイ・プロモーション)
セミファイナルではBOMのエース、名高・エイワスポーツジム(エイワスポーツジム)がタクト・ウォー・ワンチャイ(ウォー・ワンチャイ・プロモーション)と対戦。
名高は2018年12月、ラジャダムナンスタジアム認定ミニフライ級王座を奪取し、日本人として7人目の同スタジアム王者になり、2019年4月15日にはルンピニースタジアム認定同級王座も獲得。日本人初のルンピニー王者になると同時に、ムエタイの2大殿堂であるルンピニーとラジャダムナンの王座を同時に保持した史上2人目の外国人(タイ人以外)選手となった。
また、2017年4月にWMC世界ピン級王座、2018年4月には日本人4人目の快挙となるWBCムエタイ世界タイトル(ミニフライ級)を獲得。さらに同年9月にはIBFムエタイ世界ミニフライ級王座もKOで獲得し、日本人初のIBFムエタイ世界王者となっている。2019年12月のBOMではBOMフライ級初代王座決定トーナメントを圧倒的な強さで制した。
対する16歳のタクトは2018年2月にラジャダムナンでプロデビューを果たし、タイを主戦場にキャリアを積んできた選手。戦績は8勝(3KO)2敗1分。名高とは本格的なムエタイスタイルながらもKOを狙いに行く試合となりそうだ。
序盤からサウスポーの名高は、オーソドックス構えのタクトの前進や右のパンチを、鋭い左のテンカオで迎撃。さらに左ミドルを腕の上に効かせると、早くもタクトの腕を赤く腫れさせる。
タクトも巧みに位置取り右ミドルを当てるが単発。序盤のカウンターが効いたか、タクトは中に入れなくなる。名高は左ボディストレートも突き、腹も攻める。
中盤以降、縦ヒジも狙う名高だが、カウンターはタクトの入りが慎重になったため、容易に合わせられず。タフさを見せるタクトの攻撃を見切り、攻める名高だがフィニッシュには至らず。フルマークで判定勝利した。
試合後、“日本ムエタイ界の至宝”名高は「4年ぶりの日本人選手との対戦で、タイで試合をしている選手でもやっぱりちょっとタイ人とはリズムが違うのでそこを掴み切れず、相手も気持ちが強くて、倒しきれなかったのが反省点です。相手が来たときに倒そうというプランがあったので、(出て来なくて)それが狂ってしまって……。でも自分から仕掛けても倒せるのが一流の選手なので、そこを目指して頑張っていきたいと思います」と試合を振り返ると、今後について、「本場のタイでラジャダムナンとルンピニーのミニフライ級のベルトを巻いたのですが、その一階級上のライトフライ級(49kg)でもラジャダムナンのベルトを巻いて、日本のほかの大きな舞台、RISEとかRIZINで試合をしていけたらいいなと思っています」と、2020年下半期の展望を語った。
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▼第6試合 BOM 56kg契約 3分5R×知花デビット(エイワスポーツジム/WMAF世界スーパーバンタム級王者)[判定0-3]※48-50×2, 48-49◯加藤有吾(RIKIX)
現WMAF世界スーパーバンタム級王者・知花デビット(エイワスポーツジム)と、現WMC日本スーパーバンタム級王者・加藤有吾(RIKIX)が対戦する王者対決。
知花はこれまでにINNOVATIONバンタム級王座、WMC日本バンタム級&フェザー級王座、WMAF世界スーパーバンタム級王座を獲得してきた実力者。パンチ&ローを得意とする。加藤は元ラジャダムナンスタジアム認定スーパーライト級王者・石井宏樹が手塩にかけて育てた愛弟子で、2019年12月のBOMでWMC日本王座を奪取した。パンチのコンビネーションを得意とする。
1R、序盤から積極的に仕掛ける知花。右ローをカーフに効かせ、加藤のバランスを崩す。カウンター狙いの加藤。2Rも右ストレートをヒットさせる知花はコーナーに詰めて右ヒジも。しかし加藤は防御を固め、反撃の機をうかがうとワンツーをヒット。ロープ際に詰めてラッシュに知花は防戦一方となる。
中盤以降も細かいパンチを上下に打ち分ける加藤は、左ジャブを縦拳でガードの隙間から打ち込む。鼻血を出した知花も右ローなどを返すが、パンチの手数で勝る加藤が、知花のパンチの内側をカウンターで突いてヒット。組んでも両脇を差してのこかしは加藤。最後まで動きを止めずに判定勝利。王者対決を制した。
▼第5試合 BOMフェザー級 3分5R◯渡辺優太(エイワスポーツジム/元J-NETWORK・WMC日本・MA日本・WPMF日本スーパーバンタム級王者)[2R 3分00秒 KO]×昭彦(尚武会)
渡辺優太(エイワスポーツジム)が昭彦(尚武会)とフェザー級で対戦する。渡辺は2018年6月にTKO勝ちでWPMF日本スーパーバンタム級王座を獲得した、ムエタイスタイルのサウスポー。2019年3月のONEミャンマー大会に参戦経験を持つが、同年9月の『Road to ONE:CENTURY』では内藤大樹に敗れた。昭彦は飛びヒザ蹴りやハイキックを得意としてアグレッシブに攻めるファイタータイプ。2月のBOMではパンチで攻めるところをヒジでカットされ、TKO負けを喫した。
1R、サウスポー構えの渡辺とオーソドックス構えの昭彦。互いにローの打ち合いから長いコンパスを活かして前足のみならず奥足ローキックも当てる昭彦。渡辺も同じく奥足ローを打ち返す。2R、オーソから左フックをひっかける昭彦はボディにも打ち分けるが、こつこつローを突く渡辺は、昭彦の右ミドルにカウンターの左ストレート! ダウンした昭彦は立ち上がれず。レフェリーがカウント途中で試合をストップした。
リング上でマイクを握った渡辺は、「僕はONEに出ていて、そこで1勝するために頑張ってきたんですけど、いまのところ連敗続きで、後が無い状態だったんですが、こんな時期に試合を組んで下さった中川会長にとても感謝しています。ちゃんとKOで倒せて、次に繋げるために勝ててよかったです」と、安堵の笑顔を浮かべた。
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▼第4試合 WMC日本スーパーフライ級王座決定戦 3分5R×誓(ZERO/NJKFフライ級1位)[判定0-2]※47-49, 48-48, 48-49◯佐藤九里虎(FAITH/WMC日本バンタム級5位、RISEスーパーフライ級11位)
WMC日本スーパーフライ級(52.16kg)王座決定戦として、NJKFフライ級1位・誓(ZERO)が、WMC日本バンタム級5位&RISEスーパーフライ級11位・佐藤九里虎(FAITH)と対戦。
本場タイの修行経験があり、ミドルキックを得意とする誓だがムエタイスタイルに固執せずパンチの打ち合いも辞さない。佐藤はパンチ、キックをバランスよく組み立てるタイプ。
蹴りを主体に圧力をかけていく誓に対し、パンチの精度は佐藤が優位に。誓は左右のローで佐藤を削るが、佐藤は伸びる右ストレート、オーバーハンドフックと打ち分けて反撃。接戦は2-0の僅差判定で、佐藤がWMC日本スーパーフライ級のベルトを巻いた。
▼第3試合 WMC日本バンタム級王座決定戦 3分5R◯稔之晟(TSK ジャパン/MuayThaiOpenスーパーバンタム級王者)[判定3-0]※50-48, 49-48×2×佐野佑馬(創心會/WMC日本バンタム級6位)
WMC日本バンタム級王座決定戦。稔之晟は、MuayThaiOpenスーパーバンタム級王者。対する佐野は、WMC日本バンタム級6位。両者は2020年年2月に行われたトーナメント1回戦を勝ち上がっての決勝戦となる。
長身の稔之晟は左ミドルを得意とし、手足の長さを利したストレートや首相撲からのヒザ蹴りで戦うタイプ。1回戦では藤九里虎に判定勝ち。左ミドルを得意とする佐野は1回戦で延長戦の末に奥脇一哉を左フックで仕留めている。
オーソドックス構えの稔之晟、サウスポー構えの佐野。序盤の稔之晟の右ローがローブローとなるが、コンパスが長い稔之晟は、ローからミドルと上下に打ち分け。佐野は飛び込んでの左フック、ロープに詰めて右アッパーをヒットさせるが、稔之晟はミドルを左右で打ち込み、佐野の腕を削っていく。終盤にはミドルから右ストレートもヒットさせ、主導権を渡さず稔之晟が判定勝利。WMC日本バンタム級王座に就いた。
▼第2試合 WMC日本スーパーバンタム級 3分5R×奥脇 一哉(エイワスポーツジム/WMC日本バンタム級2位、RISEスーパーフライ級6位)[2R 2分47秒 KO]※左右ラッシュ◯中村 空(尚武会/WMC日本バンタム級7位)
WMC日本バンタム級2位&RISEスーパーフライ級6位・奥脇一哉と、WMC日本バンタム級7位・中村空の対戦。
奥脇はジュニアキック出身で2016年1月にREBELS-MUAYTHAIフライ級王座に就いたが、その後は不調が続き勢いに乗れていない。持ち前のアグレッシブさで再浮上を狙う。対する中村もジュニアキック出身で、本場タイのMAX MUAYTHAIでも勝利して勢いに乗る若武者だ。
試合は一進一退の攻防のなか、2R、中村がテンプルに右をヒットさせてダウンを奪い、ロープに詰めて左右ラッシュ。レフェリーを呼び込んだ。
▼第1試合 BOM 50kg契約 3分5R◯響・PKセンチャイジム(P.K.ムエタイジム)[判定3-0]※49-48×3×ダイヤ・ウォー・ワンチャイ(ウォー・ワンチャイ プロモーション)
第1試合は響・PKセンチャイジムvs.ダイヤ・ウォー・ワンチャイの高校1年生対決。
響は中学校1年生の頃よりタイの名門PKセンチャイジムで修行し、若年ながら既にタイで10戦以上の試合を経験。通常日本国内ではエイワスポーツジムで日々の練習をしており、アマチュア大会では70戦以上もの試合経験がある。
対するダイヤもまたタイのエグシンディコンジムで修行を積み重ね、タイでの試合経験数も響に引けを取らない。今回が日本デビュー戦となる。
接戦の試合はオーソドックス構えから左ミドルを当て、組みでも負けなかった響が判定勝利した。