RIZINの誰もが強豪だった。特に印象深いのは...
──イリー自身も、2015年12月から2019年12月まで4年間、RIZINに参戦していたね。RIZINはリングだったけどUFCはケージで、ルールもユニファイドルールとなる。どのようにアジャストしようとしているのかな。
「RIZINに来る前はケージで戦っていたから問題ないよ。僕にとっての大きな違いはグラウンドになると考えている。ケージ際での攻防やヒジ打ちがあるとよりハードになる。固定できることでエネルギーのロスが減るんだ。RIZINでは同じ衝撃を与えるために反動をつけなければいけなかった。ケージだとエネルギーをロスなく伝えることが出来る。僕のファイトスタイルにも合っていると思うよ。
いずれにしても、RIZINでの素晴らしい経験を踏まえながら、一から仕切り直すつもりでUFCに向かいたいと思っている。なぜなら、自己反省をすれば、RIZINの時はちょっとスロースターター過ぎたと思うから。UFCでは序盤からペースを握られないように、マットに立った瞬間にスイッチが入るようにしないといけない」
──イリーにとってRIZINでの経験は、UFCでどのように活きるだろうか。
「RIZINでの全てのファイトがとても貴重なものだったよ。RIZINで僕は“生徒”だった。RIZINで多くのことを学んだんだ。サトシ・イシイ(KSW、PFL参戦中)、ワジム・ネムコフ(Bellator4連勝中)、フジタ(藤田和之)、カール・アルブレックソン(Bellator参戦中)、ジェイク・ヒューン(RIZIN3連勝中)、ブランドン・ホールジー(Bellator&PFL)、ファビオ・マルドナド(元UFC)、CB・ダラウェイ(元UFC)……誰もが強豪だった。お陰で『世界のどの選手とでも戦える』と自信をつけることが出来た。何より、タイトル戦も含め、2度戦ったキング・モーとの試合が忘れられない。
2015年の年末には3日で3試合を戦い、モーに敗れた。彼にリヴェンジするために多くのことを学んだし、2019年にモーに勝利しベルトを巻くことができた。最も印象深い試合だよ。
そして、RIZINのMr.サカキバラ(榊原信行CEO)とMr.カシワギ(柏木信吾・渉外担当)、RIZINスタッフのみんなに心より感謝したい。僕に素晴らしいチャンスと成長する機会を与えてくれたし、戦うべき相手がいなくなったいま、快くUFCに送り出してくれた。そして、応援してくれたファンの皆さん、アリガトウゴザイマシタ。ほんとうにすべてのRIZINでのファイトが僕を成長させてくれました」
UFCと大学の2度の試験をクリアしなければ…(笑)
──UFCでの目標を教えてほしい。
「まずはUFCのデビュー戦に勝つこと。そしてタイトルを目指す(※現ライトヘビー級王者はジョン・ジョーンズ)。すべてのファイトに向けて、自分の肉体と精神を鍛え、熟達した“マーシャルアーツ”を皆さんにお見せできればと考えているよ。
それに実は……僕はまだ学生なんだ。チェコのカレッジのスポーツアカデミーで学んでいる。ただ、忙しくてなかなか勉強する時間が取れなくて、カレッジの先生たちが配慮してくれて、『試験は試合後でいい』と言ってくれて、とても助かっているよ。つまり、僕はUFCと大学の2度の試験をクリアしなければいけない(笑)」
──学生!? 君はもしかしたら世界最強の大学生かもしれないね(笑)。ところで、地元で君はチャリティー活動にも積極的に取り組んでいるようだね。自転車をプレゼントしている写真を見たよ。
「地元の病院の小児病棟で難病と闘う子供たちが少しでも笑顔になってもらえるよう、プレゼントを持って慰問したり、寄付をしているんだ。所属するJetsaam Gym Brnoの皆を始め、ファイターの自分が前に出ることによりメディアでも取り上げられ、寄付に賛同してくれる人々も現れ始めた。
Facebookに投稿したのは、最近、18歳の難病の寝たきりの青年のために、外に出られるような特注のリカベント(電動自転車)のチャリティーに参加したときのものだよ。僕も多くの人に支えられて夢を実現させることが出来た。だから僕自身も子供たちに少しでも夢を与えられるように活動していきたいんだ。
病院の中で寝たきりの彼が、外の世界を自転車で見て回ることが出来るんだ。とても喜んでくれて嬉しかったし、僕にとっても力となったよ」
──良いことをしたね。君の人柄を感じるよ。最後に、日本のファンにメッセージをお願いできるかな。
「もちろん。自分にとって日本の『武士道』はとても大切なものです。子供のころは感情に任せた暴れん坊の少年でした。でも『武士道』と出会ってから精神の大切さ、自分自身を制することの大切さを知ることが出来ました。このような教えを与えてくれた日本と、応援してくれている日本のファンの皆さんに、心より感謝しています。
これからはUFCで戦いますが、RIZIN出身のファイターがUFCでも活躍することで、RIZINのスタッフの方々、日本のRIZINファンの皆さまに恩返しが出来ればと思っています。私はこれからも戦います。是非これからも見守ってください。応援をよろしくお願いします!」