転げまわるサップに藤田は容赦ないサッカーキックの連打
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。40回目は2004年5月22日、さいたまスーパーアリーナで1度だけ開催されたK-1の総合格闘技大会『K-1 MMA Championship ROMANEX』のメインイベントで行われた藤田和之(猪木事務所)vsボブ・サップ(アメリカ)。
「PRIDEさんとの協力体制が取れなくなったので」との理由から、K-1が総合格闘技の大会を開催することを発表。新大会は『ROMANEX』と命名され、5月22日にさいたまスーパーアリーナで旗揚げ戦が行われた。
当初はPRIDE GP開幕戦(4月25日)に出場する予定だったザ・プレデター、ドン・フライ、そして前年大晦日にPRIDEで引退試合を行ったゲーリー・グッドリッジがROMANEXに参戦。さらにはヘビー級エースの藤田までもが参戦することに。
PRIDEはマーク・ハント、ステファン・レコを参戦させ、両陣営とも「契約の切れた選手に声をかけているので引き抜きではない」と口をそろえたが、両団体の対立は浮き彫りとなっていた。
メインイベントは日米野獣対決と称された藤田和之vsボブ・サップ。
1R開始と同時に前へ出てジャブを放ったサップに藤田は片足タックル。不用意に前へ出すぎたサップを藤田は簡単にテイクダウン。場内がドッと沸く中、藤田は自分だけ立ち上がって猪木×アリ状態から、サップが立ち上がろうとした瞬間に抑え込みに行く。
そこでサップは下からまさかのアンクルホールド。さらにヒールホールドへ移行しようとしたが、藤田は足を抜いて中腰に。サップの両足を払うと同時に顔面へ蹴りを見舞っていく。
足を使ってディフェンスするサップだが、またも両足を払われて今度はサッカーキックをもろに頭部へもらい、頭を抱えて苦しむところへなおも藤田がサッカーキック。そしてパウンドとサッカーキックを交互に連打。
頭を抱えたまま転がるサップだが、何とか起き上がって藤田の脚を掴みにいくが、藤田は上からガブって小内刈りでテイクダウン。猪木×アリ状態からサイドポジション、立ち上がってのサッカーキック、ヒザ蹴り、そして鉄槌連打で、ついにサップがタップ。1R2分15秒、藤田のTKO勝ちとなった。
一方的に叩き潰したことについて藤田は「それだけ必死だったんですよ。普段とは違う緊張感もありましたしね。ボブのパワーは普通じゃないし、一瞬でも気を許したら潰されてしまう。だから、戦い方としてもああやるしかなかったし、身体が反応するままに動くしかなかったんです。こっちが攻撃をしていても襲われているって感覚が常にあった」と話した。
また、「人間というのは、立っている時と寝ている時の間、つまり立ち上がる瞬間が一番無防備になる。そこを制することが出来れば、なんとかなる。そこが今回のキーポイントでした」と戦略を明かした。