決勝戦は渡邊(左)vs金子の再戦。延長戦の末、渡邊がリベンジに成功して女王の座に就いた
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。39回目は2004年5月7日、東京・ディファ有明で行われた「女子総合格闘技最強女王決定トーナメント」。TBSの番組の企画で、試合は地上波のゴールデンタイムに放映された。
TBSの人気番組『黄金筋肉』で女子格闘技の大会が開催された。2003年にスポーツタレントの水野裕子が総合格闘技にチャレンジしたのに続き、2004年にも開催されることになったのだ。
今回用意されたのは「女子総合格闘技最強女王決定トーナメント」。ルールは3分2Rで延長1R、体重無差別、グラウンドでの頭部への打撃は禁止。優勝賞金は当時の女子格闘技では破格と言ってもいい100万円(準優勝30万円)で、KOか一本で完全決着勝利した場合はボーナスが10万円。
(写真)1回戦第1試合では元レースクイーンで女優でもある女子プロレスラーの石川(上)vs格闘技界のアイドル羽柴といういかにも地上波らしい試合も組まれた
大会は2004年5月7日に東京・ディファ有明にて、観覧募集の当選者のみが観客となって行われた。いわばスタジオマッチのような形だ。
トーナメント出場選手は羽柴まゆみ(BBdoll)、石川美津穂(JDスター)、金子真理(禅道会)、ASAMI(士心館)、星野久子(勇心館)、上田朱理(和歌山拳法連盟)、渡邊久江(AJジム)、酒井真紀(禅道会飯田レディース)の8名。
(写真)渡邊は1回戦で酒井に1R1分7秒でKO勝ち
1回戦は、元レースクイーンにして映画に主演した女優でもある女子プロレスラーの石川が、格闘技界のアイドルとして売り出していた羽柴にチョークで一本勝ち。優勝候補の金子が2002年新空手全日本大会王者のASAMIにチョークで一本勝ち。最年長の星野が最年少の上田に腕十字で一本勝ち。そして渡邊が酒井に右ストレートでTKO勝ちと、全試合完全決着で進む。
(写真)準決勝で渡邊は1R2分7秒、腕十字で一本勝ち
準決勝は渡邊vs星野のストライカー対決となったが、星野が渡邊の蹴りをつかんでテイクダウン。寝技に持ち込んだが攻めあぐねている内に、渡邊が下からの三角絞め→腕十字のコンビネーションで一本勝ち。金子vs石川は、金子がテイクダウンしてパスガードから腕十字と流れるような動きで47秒の圧勝で決勝へ進出した。
決勝は渡邊vs金子。両者は2002年8月に女子総合格闘技『SMACKGIRL』で対戦し、金子が腕十字で勝利している。渡邊は2002年4月にSMACKGIRLでプロデビューし、2003年1月からは女子キックボクシングイベント『Girls SHOCK!』のエースとしても活躍。総合格闘技とキックボクシングの二足の草鞋を履いていた。渡邊にとっては成長を見せつけたいリベンジ戦となった。
序盤からスタンドの打撃で攻めたい渡邊に対し、寝技に持ち込みたい金子の図式。1Rは渡邊の蹴りにタックルを合わせた金子が寝技に持ち込み、終盤には腕十字であわやの場面も。2Rは渡邊が距離を取ってパンチと左ローを当てに行き、金子のテイクダウンを防いでドローに持ち込む。
延長戦になると渡邊がパンチを上手く使いながら左ローキックを効かせ、優勢となって判定勝ち。リベンジを果たすとともにトーナメント優勝を飾った。この模様はTBSの『黄金筋肉』にてゴールデンタイムで2週(5月11日、18日)にわたって放映され、渡邊の知名度は飛躍的にあがった。
渡邊は後日、「あの日、集った選手の中で最強女王を決めるとなると、私以外にいないじゃんって、エントリーされた選手だと私なら勝てると思った。タイ修業で身に付いたことなんだけど、言葉が通じない分、視界を広げて相手の動きがよく見えた。上手く言えないけど、目の能力が発達したという感じ。そのせいか相手の穴が不思議と見えるようになった。勝って当たり前というか、自分の負ける姿が想像できないくらい気持ちが高ぶっていた結果でしょうね」と振り返り、「これまで女子格闘技だけで突き進んでやっていこうと思っても、正直、胸を張って言い切れない部分があった。甘えから自分を苦しめることもあった。でも、こうやって形にできたことで本当に自信を持てた」と心境を語った。