(C)ONE Championship
キックボクシングファンは先週、シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)のONE Championshipの立ち技部門「スーパーシリーズ」契約が発表されたことを受けて、歓喜に沸いた。
シッティチャイはプロ160戦と鉄人的な戦歴を持つ現役のムエタイレジェンド。キックボクシングとムエタイを合わせ、世界王者に9回輝く。過去10年間に渡り、キックボクシングとムエタイで、最も圧倒的な強さを誇る選手の1人として評価を築き上げてきており、ジャバル・アスケロフ(ロシア/オーストラリア)、アンディ・サワー(オランダ)、ソーグロー・ ペッティンディーアカデミー(タイ)、エンリコ・ケール(ドイツ)、スーパーボン(タイ)など、数々の世界トップクラスのストライカーを倒している。特に、元K-1 王者のマラット・グレゴリアン(アルメニア)には4勝1敗と大きく勝ち越している強豪中の強豪だ。
今、世界中が特に待ち望んでいるのは、シッティチャイとある選手とのマッチアップだ。
タレント揃いのフェザー級の中でも、ONEフェザー級世界グランプリ王者のジョルジオ・ペトロシアン(イタリア/アルメニア)との対戦が、目下の最大の話題だ。
2019年10月の日本大会で行われたフェザー級ワールドグランプリ決勝でサミー・サナと対戦し、判定勝ちを収めトーメント優勝を果たすと共に優勝賞金100万ドル(約1億1000万円)を獲得したペトロシアン。ONEでは、ペットモラコット、ジョー・ナタウット、ソーグラーらムエタイ勢を下し、2018年のBellatorキックボクシングでは、元K-1王者のチンギス・アラゾフ(ベラルーシ)も判定で下している“パウンドフォーパンド”だ。
キックボクシングのコアなファンたちは、何年もの間その対決を願い続けてきた。両者がONE Championshipの本大会に名を連ねた今、その実現は必然に見える。
シッティチャイとしては、世界中のファンが望むものを提供したいと思っている。
「ONEと契約して以来、多くのファンが自分に注目しており、ペトロシアンとの戦いを期待されているのは分かっている。既にたくさんのキックボクサーと戦ってきた。中には何度も戦って退屈だと感じる選手までいる。でもペトロシアンは一度も戦ったことがない。いろいろなところで彼を追いかけているんだが、いつも逃げいてるみたいなんだ!」
シッティチャイが初めてペトロシアンと出会ったのは2013年頃。ペトロシアンの母国イタリア・ミラノで、シッティチャイがムエタイではなくキックボクシングのデビューを果たした時だった(※2015年の「Glory 25: Milan」でも両者は競演。シッティチャイはロヴィン・ファン・ロスマーレンに判定負け。ペトロシアンはジョシュ・シャンセイに判定勝ち)。
その時、彼はすぐにペトロシアンの巧みなスタイルに夢中になり、同じサウスポーとして、ペトロシアンの非の打ちどころのないテクニックから学び始めた。
「自分がまだ名もないキックボクサーだった時、彼の故郷で戦ったことがあった。自分はそのイベントのプレリムの2試合目。彼はメインイベントだった。ジョルジオが戦うのを見て『あぁ、これはすごい!』と思った。彼は素晴らしいキックボクサーであり、賢く、本当に鋭い」
当初、シッティチャイはペトロシアン独特のスキルやスタイルに畏敬の念を抱いていたが、2015年に完全にムエタイからキックボクシングに転向すると、すぐに力を蓄えていった。
これによりシッティチャイは、ペトロシアンに挑み、倒すことができるという自信をつけた。
「以前は彼が怖いと思っていたが、今はそうではない。彼の攻撃は鋭く、目も良いし、パンチは激しいし、正確だ。今までキックボクシングのルールで戦ってきたから、今では彼と戦うのに十分な経験がある」
両者がONEに名を連ねたことで、大注目の試合がすぐに組まれる可能性があり、シッティチャイは近い将来、ペトロシアンに挑戦する機会を楽しみにしている。しかし、キックボクシングとムエタイの世界チャンピオンのタイトルを12回獲得しているシッティチャイは、この仕事を甘く見てはいない。
史上最も偉大なキックボクサーと評されるペトロシアンを相手に、期待に応えられるようなパフォーマンスを見せるために、シッティチャイはまず、新しい環境に慣れる必要があると考えている。その後に、シッティチャイはペトロシアンに立ち向かうという危険なタスクに取り組むことができるだろう。
「ファンは多くの期待を抱いていて、自分にとってはかなりのプレッシャーだ。リングに足を踏み入れる時はいつもプレッシャーを感じるが、今はまだ戦ってもいないのにプレッシャーを感じている」とONE参戦を語るシッティチャイは、新たなリング、あるいはケージでの戦いを慎重にとらえている。
「キックボクシングのルールなら誰とでも戦える。だがもし選べるなら、最初に慣れるための試合をお願いしたいと思う。ONEのリングやルール、体重チェックに適応したい」
最終目標は、王者を倒すこと。
「(ペトロシアン) は自分の憧れの選手だ。いつも彼と自分を比較しようとしてきた。彼と同じくらい上手くなりたい。彼を相手に自分自身を試したい。そして倒したい!」(協力:ONE Championship)