1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。29回目は2000年5月1日、東京ドームで行われた『PRIDE GRANDPRIX 2000 決勝戦』より、藤田和之(フリー)vsマーク・コールマン(アメリカ)の意外すぎる結末。
(写真)万全にしてPRIDEへ戻ってくることを約束する藤田 PRIDE2戦目にしてマーク・ケアーを撃破する快挙を成し遂げ、無差別級トーナメント準決勝進出を決めた藤田。そこで待ち受けていたのは、準々決勝で小路晃を一蹴したコールマンだった。
UFCでトーナメント連覇、1997年には初代UFCヘビー級王座に就いたコールマンだが、時の勢いはケアーを破った藤田にある、かに思われた。
藤田が再びリングに登場すると会場のボルテージは頂点に達した。準決勝第1試合で桜庭和志が敗れた直後だけに、藤田は日本人優勝の最後の砦だった。
しかし花道を歩く藤田の表情は苦し気で、左脚をテーピングでガッチリ固めている。一方コールマンは準々決勝同様、リングに上がると軽々としたフットワークで跳ね回る。
そしてゴングが鳴った。コールマンがタックルに行く。と、この瞬間、藤田のセコンドからタオルが投入された。藤田はしゃがんだままうなだれている。何が起こったのか分からず、場内はざわめく。
藤田はケアー戦で左脚の靭帯を損傷し、もはや戦える状態ではなかったのだ。だが「期待してくれているファンのためにリングにだけは上がろう」と決意し、痛み止めを打って入場したのである。試合時間は“2秒”であったが、ケアーとの熱戦もあり、観客は藤田を拍手と歓声で労った。