1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。23回目は1996年5月6日、神奈川・横浜アリーナで開催された『K-1 GRAND PRIX決勝戦』から、ヘビー級トーナメント準決勝でマイク・ベルナルド(南アフリカ)を相手に大健闘した武蔵(正道会館)の戦い。 4度目の開催となるヘビー級トーナメントのK-1グランプリ。準決勝では、準々決勝で優勝候補筆頭のピーター・アーツをKOで下したベルナルドと、サム・グレコから金星を得たムサシ(武蔵=当時はカタカナ表記)の対戦となった。
3連覇を狙っていたアーツをマットに沈める大番狂わせを演じたベルナルドだが、体力の消耗とローキックによる足のダメージは明らか。一方、ムサシは1R終了時にアクシデントによる勝利を収めており、体力的には有利だ。
1R、サウスポーに構えたムサシはロー、ミドル、ハイキックと左の蹴りを多用し、ベルナルドの右のパンチを封じる作戦。ベルナルドの単発な攻撃に対し、ムサシはコンビネーションでローを蹴っていき、フェイントのステップも使うなど積極的に攻めてやや優勢に。
だが2R開始のゴングが鳴るや、ベルナルドは猛然とパンチを放ってきた。ストレートとハイ、ワンツーとハイのムサシにベルナルドは右フック、アッパーを叩き込む。ムサシは奇襲の後ろ廻し蹴りを放つがヒットせず、カウンターのフックを放つ。さらにハイキックを繰り出すと、超満員の観衆から「ウォー!」と驚きの声があがった。ムサシのハイキックもスピードがあり、切れ味は鋭いが、107kgのベルナルドとは18kgの体重差があり、蹴りの重さにも差が出てしまう。
ベルナルドはアッパーを多用し、ムサシはローで応戦するが1Rほど蹴ることが出来ない。次第にベルナルドペースとなり、ムサシは組み付いてのヒザ蹴りに活路を求める。終盤、強烈なローをヒットさせたのはムサシ。
3R、ムサシはハイ&ローキック、ベルナルドは右フックと対照的な攻め。ムサシがハイ、ヒザ蹴りにワンツーを放ってパンチが多めになってきたところで、ベルナルドは決定打を放った。左ストレートからの右フック。ムサシはたまらずダウンを喫する。
立ち上がったムサシは右ストレート、アッパーに苦戦するがヒザ、ハイキックで渡り合うと会場からムサシコールが沸き起こる。だが、ここで試合終了のゴング。ダウンが響き、判定3-0でベルナルドが初の決勝進出を決めた。
出場選手の中で最軽量だったにも関わらず、GP初出場で3位に入賞したムサシは「ベルナルドは凄いの一言。やはりK-1という舞台では自分も甘い。顔面攻撃の経験は浅いので、ベテランの上手さを見せつけられました。初出場でここまで来れた嬉しさはありますが、ここで喜んでしまうと次につながらないので気持ちは上に上げていかないと」と、3位という結果に満足はしていなかった。