代名詞のカカト落としを繰り出すアンディ(左)だが、マーブの顔面にはわずかに届かず
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。20回目は1996年5月6日、神奈川・横浜アリーナで開催された『K-1 GRAND PRIX決勝戦』にて、アンディ・フグ(スイス)がトーナメント1回戦で南アフリカの巨人を秒殺KOした一戦。
『K-1 GRANDPRIX'96~20万ドル争奪格闘技世界最強トーナメント』は4回目を迎え、アンディにとっては3度目のチャレンジ。過去2回はいずれもKO負けで1回戦に散ったが、今回は開幕戦でプロレスラーのバート・ベイルをKOし、初の決勝トーナメント進出を果たした。
当初はスタン・ザ・マンと準々決勝を争うはずだったが、マンが負傷欠場となり、リザーブマッチでマイケル・トンプソンを初回KOした“南アフリカの大巨人”バンダー・マーブと対戦することに。マーブはマイク・ベルナルドに続いて南アフリカから参戦した、身長210cm、体重115.2kgの巨漢だ。アンディとの身長差は30cm、体重差は18kg。
ファーストアプローチはサウスポーに構えるアンディが放った内股へのローキック。マーブも巨体に似合わぬ躍動感溢れる動きでハイキックを繰り出すが、アンディはガッチリとブロック。その直後にコーナーへ詰められてパンチのラッシュを見舞われるも、冷静に顔面の防御を固め、ダメージを喰うことなく脱出した。
そして首相撲からの離れ際、ショートレンジでアンディの左拳が唸りを上げた。まさに一撃必倒、クリーンヒットを許したマーブは、崩れるように後方へ倒れ、そのまま試合は終了した。KOタイムは1Rわずか40秒だった。
アンディは拳を突き上げ、次いでカカト落としのポーズも披露。ゴールデンウィークの最後の休日をアツく過ごそうと横浜に集結した超満員の観衆を大いにヒートアップさせた。
「左フックの手応えは十分だった。でも、レフェリーに手を上げられた直後に、すぐに次の試合のことを考えたよ」とアンディ。初のK-1GP制覇へ向けての好発進だった。