ベルナルドの剛腕を浴びてマットに沈んでいくアーツ。まさに最強神話が崩壊した瞬間だった
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。19回目は1996年5月6日、神奈川・横浜アリーナで開催された『K-1 GRAND PRIX決勝戦』にて、無敵を誇っていたピーター・アーツ(オランダ)が新鋭マイク・ベルナルド(南アフリカ)にKOされた衝撃の一戦。
(写真)流血したアーツは右ハイで必死の抵抗を試みる
アーツは『K-1 GRAND PRIX』の世界ヘビー級トーナメントで1994・1995と連覇を達成しており、その後のワンマッチでも連戦連勝。1993年4月の第1回『K-1 GRAND PRIX』1回戦でアーネスト・ホーストに敗れて以降、19連勝とその勢いはもう誰にも止められないと思われていた。
4回目となる今回の『K-1 GRAND PRIX』でも三連覇は間違いなしと言われ、3月のトーナメント開幕戦ではジャン・クロード・リビエールを1Rにハイキックでマットに沈め、手の付けられない強さを見せつけた。
(写真)丸太のような太い腕を振り回してアーツに襲い掛かるベルナルド。復讐の一撃が決まった
そのアーツの前に準々決勝で立ちはだかったのが、新鋭のベルナルドだった。ベルナルドは1995年の『K-1 GRAND PRIX』に初来日し、開幕戦でアンディ・フグをKOする番狂わせを起こし、準々決勝ではベテランのスタン・ザ・マンをも撃破。準決勝でジェロム・レ・バンナにKO負けして第3位となった。
(写真)ベルナルドの「全てを投入した」左フックでアーツはKO負け、場内総立ちの大番狂わせに
この活躍でK-1常連メンバーの仲間入りを果たしたベルナルドは、同年9月にアンディのリベンジを跳ねのけるも12月のアーツ戦では1Rわずか40秒、右ショートフックでKO負け。ただしこの敗北は、ダウンカウント3でのストップは早すぎた、後頭部へのパンチで反則だったとベルナルドは納得がいっていなかった。今回の『K-1 GRAND PRIX』では3月の開幕戦でジェフ・ルーファスにTKO勝ちし、アーツとのリベンジマッチに臨むことに。
試合開始から、ベルナルドの弱点とされるローキックを蹴っていくアーツ。対するベルナルドは成長の跡がうかがわれるディフェンスで、そのローをスネでカットして一打必倒のフックを振り回していく。
(写真)全てを使い果たした、という表情のベルナルド
アクシデントは1R中盤に起こった。中へ潜り込もうとするベルナルドの頭が当たり、アーツが右目上から流血してしまったのだ。実はこのバッティングで「記憶が途切れてしまった」と試合後に明かしたアーツは、無謀にもパンチの打ち合いをベルナルドに仕掛ける。
2R、ついにベルナルドの拳がアーツを捉えた。ベルナルドの右フックでアーツはダウン。まさかの展開に横浜アリーナが揺れた。場内が騒然とする中、3Rが始まってすぐに右フックからの左フックで連打でアーツがもんどりうってマットに沈み、ベルナルドが最強神話を粉砕した。3R13秒でのKO劇だった。