バンナ(右)にロープを背負わせて左右のストレートで攻めるアーツ
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。17回目は1995年5月4日、東京・国立代々木競技場第一体育館で開催された『K-1 GRAND PRIX~20万ドル争奪格闘技世界最強トーナメント~』より、ピーター・アーツ(オランダ)vsジェロム・レ・バンナ(フランス)の決勝戦。
3回目のK-1 GRAND PRIXの決勝戦はアーツとバンナで争われた。アーツは前年のGPで初優勝して2連覇のかかった決勝戦、バンナはGP初出場初優勝がかかった決勝戦となった。
1R、右ローと右前蹴りで距離を取ろうとするバンナ。アーツは構わず右ストレートを出しながら前進し、バンナにロープを背負わせて左右のストレート。バンナもパンチで応戦し、左ハイまで繰り出すが再びコーナーに詰められる。アーツは得意の右ハイ、首相撲からのヒザ蹴りとバンナを崩していき、ストレートの連打からロープを背にしたバンナへ全体重を乗せた右ボディストレート一閃。バンナは「ウァーッ!」とうめき声を発し、崩れ落ちていった。
1R1分37秒、KO勝ちでアーツが勝利。準決勝の宿敵アーネスト・ホースト戦こそ延長戦までもつれ込む接戦となったが、初の16名参加のトーナメントを圧倒的な強さで制し、2連覇を達成した。
アーツは「今回はベストの状態で、良いトレーナーもついて最高のコンディションだった。3試合の中ではホースト戦が一番タフだったね。最初はホーストのペースだったから。ジェロムは非常に強い選手だったけれど、疲れが見えたのでボディを狙ったんだ。2年前まで僕はスロースターターだったけれど、今はもう克服した。できれば毎年…これから10年くらいは勝ち続けたい」とコメント。賞金で「今よりも大きいベンツが欲しいね」と笑った。
一方、GP初出場ながら準優勝と大健闘したバンナは「1カ月前から(アーツと同じ)チャクリキでトレーニングを積んでいたので、彼がいいファイターであることは知っていたけれど、もう少しいい試合をしたかった。最後はボディブローが効いたというよりも、準決勝(vsマイク・ベルナルド)で相手のヒザ蹴りをもらって鼻を折られていたので、顔を打たれた時に脳まで痛みが突き抜けた。それもあって立てなかったんだ。ベルナルドとは1年前に南アフリカのケープタウンで試合をしていて、その時も鼻を折られた。彼と戦うと、必ず鼻を折られてしまうよ(苦笑)」とトーナメントを振り返った。