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【ONE】松嶋こよみ「ゲイリー・トノンとタン・リーは避けては通れない」

2020/05/06 20:05
【ONE】松嶋こよみ「ゲイリー・トノンとタン・リーは避けては通れない」

(C)ONE Championship

 2019年8月にONE世界フェザー級王座に挑戦するなど、現在世界ランキング2位につけている松嶋こよみ(パンクラスイズム横浜)が、フェザー級戦線について語った。

 8月のONE Championship「ONE: Dawn of Heroes」では、フェザー級王者マーティン・ニューイェンに挑戦し、2R TKO負けも、2020年2月のインドネシア・ジャカルタ大会では、無観客ではなくまだ観客のいる目前で、韓国のキム・ジェウンを3R TKOに下し、再起を果たしている。

 27歳の松嶋は世界タイトル争いへの道のりは簡単ではないと分かっており、だからこそ、フェザー級トップ選手と対戦したいと考えているが、このコロナ禍のなかで試合から遠ざかっているのも事実だ。しかし、「余裕を持って、ちょっと一回気持ちを置いて、試合に向けて頑張れたら」と話している。

▼ONEフェザー級
世界王者|マーティン・ニューイェン(ベトナム/豪州)
1. クリスチャン・リー(シンガポール)
2. 松嶋こよみ(日本)
3. タン・リー(ベトナム/米国)
4. 山田哲也(日本)
5. ゲイリー・トノン(米国)

 2月、MMA4連勝中だったジェウォン(韓国)を相手に、序盤から払い腰やダブルレッグでテイクダウンを奪い続けた松嶋は3R、右ストレートでダウンを奪いパウンドアウトで勝利、再び世界の頂に挑むための道を歩み始めた。

 この勝利後、松嶋は対戦の可能性がある相手として、ゲイリー・トノンとタン・リーの名前を挙げている。いずれもランキングでは松嶋より下位の選手だが、トップを目指す上で、必ず通らなければならない道と考えているからだ。

 最先端グラップリングを志向するヘンゾ・グレイシー&ジョン・ダナハーを師に持つトノンは、ONEグラップリングマッチで青木真也に一本勝ち後、MMA転向を果たし5戦全勝。2019年5月の前戦では中原由貴を1R 55秒ヒールフックで極めている。

 一方、名将ケニー・フロリアンや組み技師ライアン・ホールらと練習する元LFAフェザー級王者のタン・リーは2020年1月に、それまで8連勝中だった高橋遼伍を1R TKO、ONE3戦全勝をマーク中だ。

 その両者について松嶋は、「『対戦したいか』と言われたらそんなにしたくもない。すごく強い選手たちなので『やりたい!』と言ってやるような感じではないんです。でも、タイトルマッチをもう一度目指す上で、避けては通れない選手だと思っています」

 トノンとリーは、対照的な戦い方のスタイルを持つ選手たちだ。このことも松嶋にとっての挑戦の一部となる。トノンは世界最高クラスの、サブミッションを得意とするグラップラーだ。ONE5連勝のすべてにおいて、TKOかサブミッションでのフィニッシュ勝利を決めている。

「どうやって勝つかと言ったら、寝技に持ち込まれないようにするしかない。それは相手も分かって戦ってくると思う。彼の寝技へのアプローチを見ると、例えば、遠い距離からのタックルがある。自分としてはそれを切って打撃をコツコツ当てて、5分3ラウンドを戦い切りたいと思います。相手が疲れてきたところを狙いたい。そういう粘り強い戦い方をしたいです」

 一方のリーは、ベトナム移民として米国にテコンドージムを開設した父のもとで格闘技を始め、MMA11勝2敗。うち10勝でKO・TKOをマークするなど全試合をフィニッシュしている。半身気味の構えで蹴りから追い突きなど、独特の打撃スタイルを持っている。松嶋のゲームプランも、対トノンとは異なってくるだろう。

「リー選手はトノン選手と対極です。勝負のポイントは、どれだけ相手の距離で戦わないか。蹴りや打撃が強い選手なので、近い距離で戦う方が望ましいです。相手にペースを握らせたらそのままやられてしまうと思うし、僕のペースで行けば、そのまま行けると思う。一瞬一瞬が勝負になる。もしリー選手との試合が決まったら、そういう部分を見て欲しいと思います」

 ONE4戦のうち2試合でKO・TKO勝ちしている松嶋だが、「僕は(リーを)KOは出来ないと思いますし、KOを狙いに行ったらやられると思うので、僕が勝つためには相手のいいところ、相手の光を消す試合にしないといけない」

 全く異なる特徴を持つ選手たちと対戦する可能性があるため、松嶋は、試合のあらゆる分野で効果的に戦う能力が重要になると見ている。各分野のスペシャリストたちがそのバックボーンを軸に戦うのに対抗するために、打撃や組み技、寝技などを上手く連携しミックスさせて戦うことに取り組んでいる。「最強の選手」を目指すよりむしろ、「最も順応性の高い選手になること」が、ONEフェザー級世界戦の挑戦者に再び戻る道なのかもしれない。

「大事なのは自分のレスリングや打撃、寝技をうまく組み合わせて、しっかり戦えるようになること。打撃だけで戦えば勝てない選手もたくさんいるし、寝技だけで戦えば勝てない選手もいる。だから、組み合わせて総合格闘技をやるという風になれば、幅も広がる。ミックスして戦っていきたい」

 そんな課題を掲げている松嶋だが、新型コロナウイルスの感染拡大により、「格闘技の試合ができない」非常時に、ABEMA格闘チャンネルの「『Fighter's Diary #3』格闘家たちは何を信じるのか? 」では、悩ましい気持ちも吐露している。

 現在の状況を、「やむをえない状態かなと。個人としては試合もやりたいし、しっかり練習も気持ちよくやりたい部分はあるんですけど、ほかの部分──周りのことだったり、試合をすることによって家族が観に来たりもするので(感染のリスクを考えると)、無観客や試合中止になって良かったかなと思っています」と語る松嶋。

「ウイルスは見えるものじゃないので、なおさら怖いですし、試合することによって(周囲が感染する)そこまでの責任は負えない。こういう状態でもいま自分ができることをやっていこうと思います」という。

 また、無観客試合については、「やっぱお客さんがいないと格闘技って価値が……無観客で試合をやっても“テレビの先にお客さんがいる”からやれてるので、ここで逆に変に試合をやってお客さんが減るようなことがあれば、更に格闘技の立場も良くないと思うんで、現状はこれがベストなのかなって思います」と、複雑な胸中を語る。

 それでも練習は出来る形で続けている。

「いま出来るのがここ(パンクラスイズム横浜)で自分で練習することだったら、それをやっていくしかないかなって。僕は試合が無くてもやることは変わらないと思うんで、これが一生続くっていうことは、まずありえないじゃないですか。悪い風にとらえず、気持ち的に余裕を持って、(前戦は)無観客だったり中止になる一個前の良いタイミングで試合は出来たんで、(いまは)ちょっと一回気持ちを置いて、試合に向けて頑張れたらなって思っています」

 レスリングのバックボーン、さらに空手の動きと心を持って「一回気持ちを置く」なかで松嶋は、普段とは異なるテーマを持って、練習に臨んでいるという。「試合用に全力でやってるっていうわけじゃないので、試合に向けての全力の練習とはまた別の、ちょっと気持ちを楽に色々なことを吸収しながら練習しているような感じで出来ていると思います」

 Life goes on──どんな状況であろうと生活は続くし、格闘技は松嶋にとって生活そのものと言える。「これが僕の生活の一部ですから、これが無いとなんか、生きてないっていうか……大袈裟に言えばそんな感じなので」。そう言いながらはにかんだ笑顔を見せた。

 日本格闘技界において数少ない“世界王座に最も近い男”は、今回の動画の公開後、「その後多少変化はありますが、試合が再開された時にスタートダッシュできるように心の準備はしていたいと思います」とSNSに綴っている。(協力:ONE ChampionshipABEMA

北岡悟がパンクラスイズム横浜で無観客大会開催を模索

 大会延期や中止が続くなか、2020年4月18日、パンクラスイズム横浜を主宰する北岡悟が、道場での無観客大会の開催を示唆するツイートを投稿した。

「俺自身がこのまま7月にMMAの試合が出来ないのならば、パンクラスイズムで無観客大会開催して自分自身が試合したい。ネット中継? 撮影してソフト化? 何でもいいから試合したい」「もし大会開催出来るなら近藤さんも試合したいと言ってくれた。俺と近藤さんのMMAの試合は対戦相手がいれば組める。これで2試合確実だ」

 格闘技の大会は、ネット等の「テレビマッチ」が無い場合、「無観客」でも大会を開催するのは困難な状況で、本格的には8月再開を目途としている団体もある。パンクラスイズム横浜では、これまでアマチュアPANCRASEの「横浜ケージファイト」等が開催されているが、北岡は、「これPANCRASEの関係者にチラッと言っただけでまだDEEPやRIZINの関係者には言えてません」「PANCRASEやDEEPが通常通りに開催出来るならそれでいいのだ。少なくとも試合予定や契約がしっかりある選手はそちらを崩すつもりは無い」ともツイートし、その後、関係者にヒアリングも行っている。

 政府は、新型コロナウイルス感染症対策として発令した緊急事態宣言を、全国を対象に5月31日まで延長すると発表。また、5月14日を目途に、専門家によるその時点での状況評価を得て、可能であると判断すれば、期間満了を待つことなく緊急事態を解除する考えを示している。

 選手にとっては、試合に向けて調整を続けながら延期に次ぐ延期のなかでコンディションを保つのは、肉体的にも精神的にも厳しいことだ。クラウドファンディングで資金を募り、安全面、さらに感染対策を最大限施した上での道場マッチはどんな形が考えられるのか。今後の動向に注目だ。

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