MMA
コラム

【2006年4月の格闘技】五味隆典の連勝がついに途切れる、PRIDE武士道で衝撃の結末

2020/04/27 12:04
 1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去4月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。55回目は2006年4月2日に東京・有明コロシアムにて開催された『PRIDE 武士道 -其の拾-』のメインイベントで行われ、衝撃の結末を迎えた五味隆典(木口道場レスリング教室)vsマーカス・アウレリオ(ブラジル)。  2004年2月の『PRIDE 武士道 -其の弐-』からPRIDEに参戦した五味は初回KO勝ちを重ねる快進撃で、一躍PRIDEの人気選手となった。連続初回KO勝ちは2005年7月のジーン・シウバ戦で「6」で途絶えたものの、9月に開幕したライト級トーナメントで川尻達也、ルイス・アゼレード、桜井“マッハ”速人を撃破して優勝。「PRIDE武士道のエースは五味」との評価を決定的なものとした。  2006年3月には初代PRIDEライト級王者に認定され、王者として迎えた2006年4月2日の『PRIDE 武士道 -其の拾-』。対戦相手は、2003~2004年に開催された『ZST GP』で優勝したアウレリオだった。柔術をバックボーンに持ち、徹底した寝技のスタイルで五味が苦手とするタイプではないか、と戦前から言われていたが、勢いに乗る五味の敵ではないという意見が大多数を占めていたと思われる。  1R開始から2分弱、五味の左アッパーを掻い潜ったアウレリオは完ぺきなタイミングで両足タックルに成功。「パンチへの恐怖心を打ち消すことだ。向き合って入ってしまえば未然に威力を殺せる。一瞬のタイミングに全神経を集中させたのがあのタックルだった」とアウレリオは振り返る。  テイクダウンを奪われた五味は下から抱き着くようなガードで守りに徹する。五味の首に頭を押し付けたアウレリオは、両腕のロックを固めたままサイドへと流れ、執拗にパスガードを狙う。五味もハーフの状態より先には行かせなかったが、アウレリオは上半身に体重を移動させて一度目の肩固めに入る。  ここはガードポジションに戻した五味だったが、上半身は完全に殺されたまま、ガッチリとロックされたアウレリオの両腕は五味の活路を確実に奪っていた。手立てを失った五味に対し、アウレリオはコツコツとパンチを当てていく。ブレイクはかからない。業を煮やしたセコンドから五味に「動いてみろ!」との声が飛んだ。  腰を浮かそうとした五味に対し、瞬時に反応したアウレリオは片足を大きくまたいでパスに成功。そのまま右足を五味の左腕に被せる。すると五味はその足を両手でつかんで一気にスイープを仕掛ける。しかし、アウレリオはこう振り返った。 「五味はやってはいけないミステイクを犯した。サイドを取った時の私の動きとは、反対の向きに反り返そうとした。柔術家のテクニックがあれば、こういう動きはしない」  パワーで逃れようとした五味を待っていたのは2度目の肩固めだった。瞬時にサイドへ流れ、五味を完全に射程に捕えたアウレリオは微調整をしながら蛇のように、少しずつ体重を押し付け絞め上げていく。 「タップもしたくないし、落ちもしないし…もうどうにも出来なかった」という五味は、1R4分34秒、敗北を受け入れた。PRIDE参戦以来続いていた、破竹の10連勝がついに途切れた衝撃の夜だった。
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