『ゴング格闘技』1987年6月号の巻頭カラーで掲載された大山倍達総裁と当時28歳の前田日明との初対面
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去4月にあった歴史的な試合や出来事を振り返る。8回目はゴン格誌上で初めて実現した夢の顔合わせ、極真空手の創始者・大山倍達総裁と当時UWFで大人気だった前田日明の対談企画について。
世界の空手愛好者から“ゴッドハンド”(神の手)と敬愛された極真会館・大山倍達総裁と、UWFのエースでこの当時“新格闘王”と呼ばれていた前田日明の対談が、1987年4月のある日に実現した。その模様が『ゴング格闘技』1987年6月号に掲載されている。
大山総裁の「きみぃ、牛と戦ってみたまえ」との提案に前田はタジタジに
前田は中学生時代に大山倍達著『わが空手道人生』を読み、これが格闘技の世界に入るきっかけとなった。それだけに前田は長い間、“心の師”として大山倍達を仰ぎ見てきた。プロレスラーになってからもそれは決して忘れず「いつの日か大山先生に会ってみたい」と思い続けてきたという。
はからずもその長年の前田の夢が本誌の企画で実現することになった。4月某日…前田は憧れの人と会うというので、集合20分前には極真会館総本部近くの喫茶店に現れていた。10分後に、総裁室で大山総裁と劇的に初対面した。
憧れの人との初対面に前田はいささか緊張気味。「よくいらっしゃいました」大山総裁は、執務中のデスクを離れ、歩み寄って前田と握手を交わした。「忙しい中、お邪魔してすみません」と前田は格闘技の大先輩に丁寧な挨拶。
極真会館総本部道場の稽古を総裁と並んで見学する前田
「大きいね。君の姿をちょっと見ただけで、強いだろうなと分かったよ。羨ましいね…いまいくつ? 28歳か。まだまだこれから強くなるよ」大山総裁は椅子に座るのも忘れ、手振り身振りを交えて優しい微笑みを浮かべながら語りかける。前田も「あの時、極真空手の道場が近くにあったら、今頃プロレスはやっていなかったと思いますよ」と、本当は極真空手を学びたかったと話した。
大山総裁はさらに「それはそうと、どうだい? 前田君、一発で牛を倒す稽古をして1回スペインへ行って牛と戦ってみたまえ! あちらは牛祭りがあるから、道路を牛が突っ走ってくるんだ。それを捕まえて倒してぶん殴るんだ。倒したら大変だ。トラックで金を集めなくちゃいけないよ(笑)」と、前田に牛と格闘することを提案。
これには前田も「困ったなぁ…」と戸惑い気味だった。