2020年3月28日(土)東京・後楽園ホール『Krush.112』で、Krushクルーザー級王者K-Jee(K-1ジム福岡チームbeginning)に挑戦する加藤久輝(ALIVE)が、愛知・岡崎市のMEIBUKAI格闘技ジムにて公開練習を行った。
加藤はハンドボール出身で日本代表も経験。2009年から大道塾で空道を始め、2010~2014年全日本体力別重量級5連覇と2010・2012・2013全日本無差別優勝を達成。2013年からはMMAに参戦し、HEAT、Bellator、RIZINで活躍。2018年6月からはK-1にも参戦し、K-1 WORLD GPクルーザー級王者シナ・カリミアンには3月のタイトルマッチで敗れたが、これまで3勝1敗の戦績。
K-Jeeとは2019年12月のK-1名古屋大会で参戦し、2R1分17秒、左ハイキックで2度のダウンを奪った加藤が最後は左ストレートでKO勝ちしている。
試合まで約10日、追い込み真っ最中で疲労が溜まっているかと思いきや「コンディションはバッチリです」と笑う加藤。その言葉通り、シャドーボクシングから2Rのサンドバッグ、さらにパンチのみ、パンチと蹴りの2Rのミット打ち。いずれの練習でも自慢のパワーで快音を響かせ、まさに普段通りの練習を公開するようなワークアウトとなった。
K-1ルールでの戦いに集中することを決めて以降、加藤は今回の公開練習が行われたMEIBUKAIを中心に練習に励んでいる。加藤は「K-1と総合格闘技はリズムが違うのでK-1のリズムに慣れる。K-1のリズムはムエタイやキックボクシングともまた違うので、それに慣れることが一番重要」という考えのもと練習を続け、昨年12月のK-1名古屋大会ではK-Jeeから圧巻のKO勝利を収めた。
「カリミアン戦から9カ月で大分K-1ルールに慣れて、選手としても成長を感じた。自分の長所を伸ばしながら、K-1の中でその武器を出すことが出来たと思います。例えばリングは(総合の)金網と違ってコーナーがあるから、それを上手く利用して戦えたなと思いますね。
最初は(ボクシング)グローブが大きい分、パンチが出しにくいなと思って、自分の武器を活かせるルールだとはあまり感じなかったんですけど、最近はそれが全然ない。テイクダウンを意識しなくていい分、自由に攻められるし、色んな角度でパンチを出せる。最近は自分に合うルールだなと思ってますね」
自らのパンチの軌道を独特だと自認している加藤だが、その拳はキックボクシングだけでなく、既存のMMAファイター達とも大きく異なる印象がある。「自分のようにMMAファイターでハンドボール全日本代表の経験があるプロ選手は少ないと思うので、最初から変わった打ち方だった。元々サウスポーだったし、色んな点で独特のやり方で練習してきたけど、それも今は上手くK-1ルールに合わせてやれていると思う」と語る加藤。
ハンドボール出身という経歴も加藤にとっては自分の強さを支えるバックボーンになっている。
「ハンドボールは5歳~6歳からやってきたスポーツなので、その動きが身体に染みついている。ハンドボーラーはけっこうコンプリートなアスリートだと思うんですよ。走るしパワーもいるし、瞬発力や反応はもちろん、1試合60分なので持久力もいる。それを子供の頃からやってきたおかげでどんなスポーツでもやれちゃいます。
ハンドボールは自分が飛んでゴールキーパーと勝負をしなきゃけない。観客から見ると一瞬の出来事ですけど、自分の頭の中ではキーパーと自分の動きの駆け引きが10秒、20秒ぐらいに感じるんです。こちらが色んなフェイントを入れれば、キーパーもフェイントをかけてくる。その駆け引きをやりながら上手く開いたところにシュートを打つんです。そうやってギリギリまで相手を見て、ためて打つという点では格闘技と似てるなと思いますね。格闘技でもハンドボールと同じようにパンチを打ちながら空いているところを一瞬で見えるように意識してますね」
その武器をK-1ルールに適応して活かせるようになり、K-1のルールでも頂点に登る自信に満ち溢れている加藤。その中で今回は前述の昨年12月以来のダイレクトリマッチでK-Jeeの持つKrushのベルトを狙う。
以前は「日本で一番強いコンプリートな選手」と評価していた加藤だが、今回は「この前の会見であまり深く考えていないんじゃないかなと思った。対策はやってるかもしれないですけど、僕より日本語上手いはずなのに会見の時は口下手だし、盛り上げるという意味でプロ意識が足りていない」とK-Jeeを一刀両断。
“格闘技の聖地”とも言われる後楽園ホールでの試合は意外にも初めて、状況次第では最初で最後の試合になる可能性もある。加藤は「Krushのベルトを獲れば防衛戦もあるし、これが最後になるかは分からない。初めて試合する会場はテンションが上がるし、いつも通り自分のペースで試合を運んで鮮やかなKO勝ちをしたい」と意気込みを語る。 総合時代から映画・スターウォーズの悪役ダースベイダーのテーマを入場曲として使用しているが、「自分は怒りでテンションを上げていくタイプなので、ジェダイよりダークフォースの方かなと思っています(笑)」という加藤は、常に“侵略者”の立場でありたという。
「敵役というか、元々自分はどこに行ってもよそ者。アメリカで総合をやってた時も『フランス?日本?から来てるヤツ?』ってクエッションマークをつけられてたし、日本で試合している時も『何人だ?』と見られてきました。何をやってもよそ者という感じはあるので、今後もダークフォースで生きて行こうと思ってます(笑)。いつも自分はアウェイでやってきたし、僕はアウェイの方が強いです」。
タイトルマッチの1週間前にはK-1クルーザー級のタイトルマッチも行われるなかでの試合。加藤は「1回カリミアンに負けてるので、カリミアンが勝てばベルトをかけてリベンジ戦が出来る。愛鷹選手が先に新チャンピオンになれば、それはそれで燃える。やったことのない選手、しかも僕が負けたカリミアンに2回勝ったことになるので僕のプライドの部分もあって、絶対に新チャンピオンを沈めてやる気持ちになる」と、どちらがチャンピオンになってもモチベーションにつながると話す。
最後に「初めてのKrushでいきなりタイトルマッチ。もちろんそれに相応しい勝ち方をしたいと思ってます。12月には1回チャンピオンのK-JeeにKO勝ちしてますけど、今度も同じ結果でベルトを巻きたいと思います」と再びK-Jeeを返り討ちにしてベルトを巻くと宣言した加藤。Krush初侵略でベルトを巻き、K-1征服に向けて突き進むか。