2020年2月11日(火)東京・新宿FACEにて、女子だけのキックボクシング大会『RISE GIRLS POWER 2』が開催された。
第6試合の女子アトム級では、“天才ムエタイ少女”として名を馳せた伊藤紗弥(21)が、高校3年生のNJKFミネルヴァ・ピン級王者Ayaka(18)と対戦。最終ラウンド途中まで試合を優勢に進めていた伊藤が、生涯初のダウン&KO負けを喫するという波乱が起きた。
▼第6試合 アトム級(-46kg)3分3R延長1R×伊藤紗弥(尚武会/WBCムエタイ世界女子ミニフライ級王者、WPMF世界女子ピン級王者、WMC女子世界ミニフライ級王者)[3R 1分51秒 KO] ※左ボディから右ストレート○Ayaka(健心塾/NJKFミネルヴァ日本ピン級王者)
伊藤はジュニアキックで数々のタイトルを獲得。ほぼ男子選手を相手に勝利を収め、あの那須川天心とも対戦している。2012年12月には中学2年生にしてタイでWPMF女子世界ピン級暫定王者を獲得。2014年4月に国内で正式にプロデビューを果たすと、国内外の強敵を相手に快進撃を続けWPMF・WMC・WBCムエタイと女子世界ミニフライ級王座の三冠を制覇。
2018年12月の『KNOCK OUT』で新世代の小林愛三に判定負けを喫し、以後はリングから遠ざかっていたが今年12月8日の『BOM』で復活。奥脇奈々から大差の判定勝ちを収めた。戦績は17勝(4KO)3敗2分。今回がRISE初参戦でNJKFミネルヴァ・ピン級王者Ayaka(健心塾)と対戦となった。
関西より参戦するAyakaは、20歳の伊藤よりも若い18歳。現在高校3年生で、アマチュアではTOP☆RUN Girls-50kg第3代王座に就くなど、持ち前のアグレッシブさを武器に数々の勝利。2017年12月のアマチュアSBでは、那須川天心の妹・那須川梨々と対戦し、惜しくも判定0-2で敗れたものの、その強さを見せつけた。2018年4月にプロデビューし、今年11月にはぱんちゃん璃奈を苦しめた祥子を破り、ミネルヴァ王座に就いた。なぜか“ヒール系女子高生ファイター”の異名を持つ。
前日会見で伊藤は、「私は普段ムエタイの試合ばかりに出ているんですけれど、今回RISEで試合が決まって練習もヒジなし・ヒザなしでずっとやってきているのでいい試合を見せたい。相手の選手はガツカツ前に来るような選手ですが、私も今回キックボクシングの試合に出るためにパンチと蹴りを凄く練習してきたのでバチバチに打ち合いたいと思います」とキック仕様の自身を出すと宣言。
対するAyakaは、「対戦相手の伊藤選手は昔から知っている選手。ただ私は負けるつもりで来たわけではないので勝ちに行く。顔が可愛い選手でルックス負けしているので、試合では勝たないといけないと思います。あとは相手の選手は奇麗な試合をする選手なのでそれを崩していきたいと思います」と若きベテラン伊藤のペースにさせないとした。
1R、ともにオーソドックス構え。伊藤の蹴りの打ち終わりにローを当てるAyaka。左の高い前蹴りはAyaka。手の位置は低い伊藤は蹴り中心に。右ローも打ち終わりにAyakaはバックフィスト! 右ロー、横蹴りと伊藤のリズムに付き合わず右ロー&バックフィストのコンビネーション。伊藤も蹴り返すが変則的なAyakaの動きを見つつ、詰めて右ミドルを3連打で当てる!
2R、1RでAyakaの動きを見切ったか。ギアを上げ左右ミドルで前に出る伊藤。Ayakaも左ミドルを返すが、そこは掴んでこかす伊藤。左ミドル&ヒザを突き刺す伊藤! Ayakaの右はしっかり見切りバックフィストもブロック。組みにはヒザも突く。懐が深い伊藤。Ayakaは得意のステップが鈍くなる。
3R、ミドルの蹴り合いは伊藤が優勢。ワンツーローのAyakaも伊藤はクリンチ。Ayakaの打ち終わりに右ローを当てる伊藤。しかし、スタミナを切らさないAyakaは右のオーバーフックから左レバーブロー! 蹴り疲れもあったか、急激に動きが落ちた伊藤が後退! ロープに詰まりAyakaの右ストレートを受けた伊藤がまさかのダウン! そのまま立てず。Ayakaが逆転のKO勝利を決めた。
高校3年生のAyakaはリング上で、「今日は初のRIZINで……(笑)、すみません“RISE”で、相手はチャンピオンで緊張したんですけど、いいところを見せられて良かったです。またRISEに出させてください」と、まだあどけなさが残る表情と強心臓を見せて勝利を喜んだ。
試合後、RISE GIRLS POWERアンバサダーを務める神村エリカは、KO勝ちしたAyakaについて、「関西の選手らしい感じもあり、すごくイキイキしていて良かったです」と高く評価しながらも同時に、「本人にも言ったんですけど、あのなかで倒せる『より明確な1発があるといいね』って。46kgで倒せる選手は少ない。レベルの高いものを軽量級でも見せていかないと会場には足を運んでもらえないので」と、RISE初参戦同士の試合のなかでの勝負の綾もあったとした。
また、RISEに初挑戦し敗れた伊藤紗弥については、「本人にしか分からない部分はありますけど、そんなに効いているの、と一瞬何が起きているのか分からなかった。これを機に、伊藤選手が自分のバックボーンのムエタイに戻っていくのか、RISEにもう1回挑戦して自分に今まで無かった壁を越えようとするのか、は本人次第。すごくいい試合だったし、1R目後半から、このルールに対応し始めていたので素晴らしいなと思いました。もちろん、また出てほしいです」とエールを送った。