2020年1月10日(金)タイ・バンコクのインパクトアリーナにて開催されるONE Championship「ONE: A NEW TOMORROW」で、日本の高橋遼伍(KRAZY BEE)が、米国のタン・リーと対戦する。
MMA10勝2敗のタン・リーは、父からテコンドーを、ライアン・ホールから柔術を習ったというベトナム系米国人ファイターだ。
TUF、ダナ・ホワイト・チューズデーナイト・コンテンダー・シリーズ(DWTNCS)、UFCと関係が深いLFAと進みながら、ONE Championshipを選んだリーは、ロシアのグラップラー ユーサップ・サーデュラエフ(2019年5月にリーが右ヒザ蹴りでKO。サーデュラエフは11月に竹中大地にスプリット判定勝ち)、日本の朴光哲をいずれもKOで下している強豪だ。
対する高橋は現在MMA8連勝中。2019年5月のONEデビュー戦ではケアヌ・スッパに右ローを当て、スッバの左ローによる自爆を誘っての1R TKO勝ち。7月には修斗でも高橋孝徳を得意の右ローを当てて2R TKO勝利を収めている。
「今回の試合のオファーが来たときは、タン・リーのイメージがまったく出来なかったんです。“どうしようかな”と思うくらい。それで過去の米国(LFA)の映像を見たときに、いろいろ見えてきた。“ああ、なるほどね”と。あとは(リーと試合した)朴さんに“こう動くとこう動いてくる”とかいろいろアドバイスを受けて、そういった要素を組み合わせて、おそらく自分のプラン通りになるであろうというイメージが、いまはだいぶ出来ています」と、リー戦の自信を語る。
ユサップ戦ではオーソドックス構えながら、過去のLFAの試合ではサウスポー構えから右のサイドキック、右ミドルから歩くように左のパンチも打っているリー。高橋は得意のローを蹴って当たる距離で戦えるか。
「リーはおそらくオーソ相手にはサウスポーに、サウスポーの相手にはオーソに、喧嘩四つで構えている。選択肢が多すぎて、試合直前にどう行くかしっかり決めていかないといけないですけど、相手がサウスポーに構えてきたら、自分もサウスポー構えになってヒザ下のローキック、カーフキックが狙えますし、そのままオーソドックス構えで戦い続けるか、そこの試合の入りは悩みどころだと思います」と、序盤の入り方から注意しているという。
ローを得意とする高橋に対し、テコンドーをバックボーンとするリーは、半身気味の構えからサイドキック、バックスピンも得意としている。
「バックスピンは一番警戒しています。ただ、ウチのジムの後輩に『格闘代理戦争』に出ていたスソン(元テコンドー日本代表)がいて、リーと全く同じ流派のテコンドーをやっていたんです。スソンは『テコンドーのファイターは廻し蹴りとか速く打つことで注目されるけど、動きがすごく繊細で“このタイミング”っていうときじゃないと打たない』と言うから、廻し蹴りやバックスピンを“連発”することはほぼ無いかなと考えていて、その部分では普通に戦えるかなと感じています」と、警戒しながらも想定済みであることを語る。
現在、KRAZY BEEには田中路教、元谷友貴ら強豪が出稽古に来ており、高橋自身も出稽古に行っているという。
高橋遼伍の弟の昭五(警視庁)はアマチュアレスリングの強豪。12月22日の全日本選手権ではグレコローマンレスリング67kg級で優勝し、東京オリンピック出場に近づいている。「弟にオリンピック出場の枠を獲ってメダルも獲ってもらい、自分もしっかり勝って年内にはONEのベルトを獲ることがベスト」という高橋は、今回の試合に向けて、EXFIGHTや日体大のレスリング部に出稽古を敢行している。
「弟とオリンピックレスリングをやったら、もう競技レベルに差がありすぎて練習にならない。だから自分は弟に教えてもらう形で練習をしています。毎週、日体大のレスリング部に出稽古に行って、弟と取っ組み合いをしたり、学生さんたちにも相手してもらっています」
持ち前の強いスタンドに加え、兄弟で切磋琢磨するレスリング。目指すは、「世界で勝つ」ことができるファイターだ。2019年10月のONE両国大会では、海外選手に勝利した日本人選手の活躍に刺激を受けたという。
「両国大会では、強い外国人選手と試合をする日本人ファイターが多かったので、単純に日本人ファイターには勝ってもらいたかったです。重たい階級で日本人が勝つことはほぼ無いなかで、手塚(裕之)選手は勝っていた(元UFCのエルナニ・ペルペトゥオに判定勝ち)、ああいうファイトを僕もやっていかないとなと思いました」
海外の強豪と戦い勝利することで、多くの日本人選手が突き当たる“国内以上・海外未満”の壁を越えられるという自信を、確信に変えるつもりだ。
「やっぱり日本人ファイターで一番多いのは“国内以上海外未満”という、国内では勝っても海外で負ける選手が多い。その一線を越えるのはすごく難しいんですけど、やっぱりそこを越えていかないとピックアップされることもないし、“国内以上海外未満”になってしまう。そこの限界を超えていきたいです。僕にとってそれを確認できるのがタン・リーという相手。自分も半信半疑なんですよ。自信はあります。でも結果を出さないと意味が無い。自分の自信が確信に変わればいいと思っています。まあ、変わると思います」と、高橋は気負いのない表情で語った。
試合に向けたファンへのメッセージでは、「解体ショーですよ。ちょっとずつ人が壊れて行く様子を見てください。日本で道具使わずに素手で人間をバラせるのは自分だけなので、その変わったファイトを期待してください」と、いつも通りの自信を見せた高橋。兄弟そろって黄金のメダルを首にかけることができるか。
高橋遼伍「しっかり兄弟で結果を残したい」
(会見での一問一答)
──1月10日、バンコク大会で、米国のLFAからONEに参戦し2連勝中のタン・リー選手と戦います。まずは意気込みを。
「タン・リー選手と試合をするんですけど、いつもどおりローキックを蹴って、相手方が足を引きずって痛がっているのを見てたら興奮するんで。しっかりアメリカ人が痛がって足引きずってる姿を見せたいですね。いつもどおりローキックで戦って……多分ローキックで勝ったら自分に酔って気分が悪くなってくるかなと(笑)。だから、タン・リーに勝って、気分が悪くなって、インタビュー中とかにゲボを吐いて、世界中にインパクトを残す(笑)。いままでインタビュー中とかにゲボ吐いてる人は見たことないんで、禁断の扉をちょっと開けたろうかなと(笑)。勝っても負けてもKO決着で、自分がサクっと終わらせようかなと思います」
――ワールドクラスの強豪選手が相手ですが、試合が決まったときの感想は?
「オファーが来て『ハイ』って言った後に『対戦相手はタン・リー』って言われたんです(笑)。倒置法、時差がありましたね(笑)。でもまあ、やる相手とは思っていて、なんとなくイメージはしてたんで、取り組みやすかったなと思います」
――タン・リー選手は打撃の選手で、ミドルキックからの追い突きで相手を倒してもいます。どのような対策をしてましたか。
「自分も健太さんとちょっと練習の取り組み方とか思想が似てて、相手に対して対策するんじゃなくて、自分の攻撃が当たり続けるっていう練習をしてるんで。相手の対策をしてる時点で練習から負けてるなって思うんで。例えば、強いレスラーに対して寝かされて立ち上がる練習。それは悪くないんと思うんですけど、寝かされて立ち上がるっていう練習してる時点で寝かされてるじゃないですか。その考えが良くないんで、自分がローキックを当て続けるって練習をやってます。だから対策はちょっとあんまりやってないですね」
――相手のローは当たらないけど、自分のローは当てられる?
「そうですね」
――KRAZY BEEの先輩である朴選手が負けている相手と戦うことになって、朴選手からはどんなアドバイスを?
「えーっと……『頑張ってね』って一言だけ(笑)。朴さんには『余裕で勝てるよ』って言われてるんですけど、朴さんが負けてるんで、説得力があるかって言ったら無いんですけど(苦笑)、日本でも人口が1億2000万人いて、タン・リーと戦ってる日本人って朴さんしかいないんで、そのへんの戦術とかのアドバイスはもらっていて、それを考えながらトレーニングしました」
――「カーフキックはもらわない」という言葉がありましたが、その中で高橋選手が当てられる理由は?
「……才能とかですかね、控えめに(笑)。結構色んな人に言われるんです。『高橋のローは当たるのになんで俺らのローは当たらないの?』って。やっぱり……才能……? やっぱ自分はローキックでさんざんライバルを蹴落として勝ってきているので、攻撃する分、ディフェンスの練習もしていて。これよく言うですけど、例えばクロン・グレイシーが三角絞めのやり方を知ってて、ディフェンスの仕方を知らないっていうのは絶対ないと思うんですよ。攻撃も防御も理解して初めて技になる。そこにスペシャルを加えて武器になるんで、みんな自分が蹴ってることばかりに目が行ってるけど、実はディフェンスもすごい研究してるっていう、ただそれだけです」
「弟(昭五・警視庁所属)のオリンピック出場を懸けた試合が始まります(※12月22日の全日本選手権グレコローマンレスリング67kg級で優勝し、アジア予選代表の座を獲得)。弟に優勝してオリンピック出場の枠を獲ってメダルも獲ってもらい、自分もしっかり勝って年内にはONEのベルトを獲ることがベスト。『ONEのチャンピオンの弟がメダルを取った』『オリンピックでメダルを取ったレスラーの兄貴はONEでベルトを持ってる』っていうのが一番いいので、しっかり兄弟で結果を残したいと思います」
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