MMA
インタビュー

【UFC】髙阪剛が語るUFC注目2カード「ウィテカーの“マジック”はガステラムにとっても脅威」「アンデウソンvsアデサニアは新旧天才同士の闘い」=2月10日(日)『UFC234』豪州

2019/02/07 09:02
2月10日(日・日本時間)、豪州メルボルンにて『UFC234』が開催される。 メインイベントでは、UFC世界ミドル級タイトルマッチとして、現在9連勝中の王者ロバート・ウィテカーにケルヴィン・ガステラムが挑戦する。 さらに、かつてミドル級絶対王者の名をほしいままにしたレジェンド、アンデウソン・シウバが3年ぶりにオクタゴンに復帰、総合格闘技15戦全勝の超新星ストライカー、イズラエル・アデサニアと対戦する。 この注目の2試合の見どころを、WOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。 剛柔流空手を学んだウィテカーは、左右どちらでも構え、鋭い飛び込みからの上段、中段、下段の突き・蹴りを武器とし、特に右ハイは1発で相手を劣勢に追い込むことが可能なタイミングと破壊力を誇る。 さらにレスラー相手にも高いテイクダウンデフェンス能力と立ち力を発揮し、たとえ被弾しても「相手の打撃を食らってから立て直すのが非常に早い」(高阪)、高いリカバリー能力でピンチを切り抜けてきた。 2014年11月のミドル級転向後、ブラッド・タヴァレス、ユライア・ホール、ハファエル・ナタウ、デレク・ブランソン、ホナウド・ジャカレ、ヨエル・ロメロなど強豪たちを次々と退けている。 対するガステラムは2017年7月にクリス・ワイドマンに敗れたものの、以降は元王者マイケル・ビスピン、ホナウド・ジャカレイを破り勢いに乗っている。サウスポーから繰り出されるワンツー、特に切れのある左ストレートで対戦相手をマットに沈めてきた。 高阪はガステラムについて「タイミングが合えば、ウィテカーをとらえることができる瞬間もあると思う。一度ラッシュを凌がれた後、どういう攻撃を仕掛けていくのか、どういう対策を練ってきているのかがポイント」と語る。 5分5RのUFC世界ミドル級選手権試合を制するのは、ウィテカーかガステラムか。 また、アンデウソン・シウバvsイズラエル・アデサニアの新旧の天才同士の異次元対決については、「自分の制空圏を持った者同士、どっちが主導権をにぎるのか」(高阪)注目だという。 「ウィテカーのリカバリー能力は、世界で最もレベルの高いUFCの中でもナンバーワン」 ──まずは『UFC234』のメインイベント、王者ウィテカーvs挑戦者ガステラムのUFCミドル級タイトルマッチについて聞かせてください。王者ウィテカーは現在9連勝中、ミドル級では負けなしですが、その強さの秘密はどのあたりにあると思いますか? 髙阪 ウィテカーは全体を通してタフな選手なんですが、とくにリカバリー能力が高いんです。スタミナももちろんあるし、打撃の攻撃力もすごい高いものを持っていることに加えて、相手の打撃を食らってから立て直すのが非常に早いんです。そこが相手からすると脅威だと思います。 ――これまでも、現在ミドル級ランキング1位のロエル・ロメロをはじめ、攻撃力には定評があるトップコンテンダーたちが、倒すことができなかった。 髙阪 そのロメロとの試合も、昨年6月の『UFC225』でやった時は、途中で何度かダウンを奪われて、しばらく脚がいうことをきかないくらいのダメージだったと思うんですが、そこを凌ぎきりましたからね。普通、ダウンするぐらいのダメージを受けたあと、ロメロのような爆発力がある選手に畳み掛けられると、身体もそうですけど心が折れるんですよ。それがウィテカーの場合、そこから立て直して、逆に打ち返して追い込んでいきますから。ウィテカーの崖っぷちから戻ってくるタフさは、世界で最もレベルの高いUFCの中でもナンバーワンだと思いますね。 ――“土俵際”で最も強い男がウィテカーだと。 髙阪 裏を返せば、UFCチャンピオンクラスの中では比較的、隙が多い選手でもあるんです。当然、打撃を喰らわないようにして闘ってはいるのですが、ウィテカーは前傾姿勢の構えなので、顔がどうしても前に出るため、パンチをもらいやすいんです。おそらく、それは本人も認識しているので、蹴りを多用しているのも、顔に打撃をもらわないようにするための方法の一つとして、見出した部分もあると思います。 ――遠い間合いでも闘えるように、蹴りを多用したスタイルになっていると。 髙阪 それでも、やっぱり打撃をもらってしまうことが多々見られるんです。そうすると相手は、「ここがチャンスだ!」と思って攻め込んでいくわけですが、ウィテカーのリカバリーが早いために、逆に攻め疲れをしてしまう。そういったことが起こってるんじゃないかと思います。 ――仕留めるチャンスだったはずなのに、自分の体力が奪われて、一転してピンチに陥ってしまうと。 髙阪 だから、あれは“ウィテカーマジック”ですよね。相手からすると、「ヤッター! いける!」と思ったあと、どん底に叩き落とされるわけですから。これは精神的にも相当なダメージを受けると思います。脳にダメージを受けると、どうしても脚に力が入らなくなるから、パンチも軽くなってしまうことが多いんです。でもウィテカーの場合、逆に後半になるほど、強いパンチを打ってくることがある。それは相手にとって脅威ですよ。 ――そんな王者ウィテカーを倒すための、挑戦者ガステラムが取るべき対策とは何でしょうか? 髙阪 おそらくガステラムサイドも、そういうことを認識した上で試合のプランを立てていると思います。ここ最近のガステラムは、技術がまとまってきているイメージです。分かりやすく言うと、綺麗な打撃を打つし、綺麗なタックルをやるし、洗練されたMMAをやれるようになってきた印象があるんですよね。特にまっすぐ伸ばしてくる左のストレートとか、ものすごくいいと思います。 ――マイケル・ビスピンをそれでKOしましたし、ホナウド・ジャカレイからも決定的なダウンを奪ったりと、決定力もある印象を受けます。 髙阪 だからタイミングが合えば、ウィテカーをとらえることができる瞬間もあると思うんです。ただ、ウィテカーを一発でKOするというのは、なかなか考えにくいところがありますが……。 ――ほかの選手なら、一気にKOまで持っていけても、ウィテカーはそこからが強いわけですからね。 髙阪 だからガステラムが、一度ラッシュを凌がれた後、どういう攻撃を仕掛けていくのか、どういう対策を練ってきているのか。そこが僕としては、注目すべきポイントのひとつだと思っています。 ――どんな二の矢、三の矢を用意しているのか、ということでしょうか。 髙阪 とはいえ、5ラウンド制の試合で、後半の4~5ラウンド目が伸びてくるという選手はなかなかいないので、ガステラムサイドからすると、対策が難しい試合になることもまた間違いないと思います。ガステラムはこのところ、非常に状態がいいので、自分の試合をやりきって勝ちたい、チャンピオンになりたいと思っているはずです。そこを貫けるのか、それともウィテカーにグシャグシャにされるのか、その辺がポイントだと思います。 ――でも、ウィテカー相手に自分の試合をやりきって勝ったら、これは本物ですよね。 髙阪 もしこれに勝って、3連勝目でチャンピオンになれば、相当な自信になりますよね。それにガステラムはUFCですでに10戦以上こなしながら、いまだ伸びしろを残していると思われる節がある。だから、その高いポテンシャル、潜在能力がさらに開花したら、すごいことが起こるんじゃないかと思っています。 ――このところ一気に伸びてきた、“未完の大器”であるガステラムが、どこまで覚醒するか、という部分も注視すべきポイントであると。 髙阪 そうでしょうね。ウィテカーは自分の闘い方がしっかりと確立されていますから。勝負の行方はガステラム次第だと思います。 「アンデウソンvsアデサニアは自分の制空圏でしっかり闘うことができる異次元レベルの戦い」 ――続いて、アンデウソン・シウバvsイズラエル・アデサニアの一戦ですが、髙阪さんはアデサニアに以前から注目されていましたよね? 髙阪 そうですね。「こいつはタダ者じゃないな」と強く思ったのは、2018年7月にやったブラッド・タヴァレス戦です。自分の“制空圏”を明確に持っていて、そこに相手を入れさせない、自分の距離で試合をやり通すことができる選手だなと、強く印象に残りました。総合格闘技における自分の世界に、相手を追い込んでいくというか、ハメていくというか。その試合の作り方が、すごくうまいなと感じました。それは相手がわかっていても、だんだんそこに入っていってしまう類のものなんです。 ――いつの間にか、アデサニアのペースに巻き込まれているという。 髙阪 だから、あの試合でもタヴァレスがプレッシャーをかけていこうとしても、アデサニアはまったく意に介さず、ペースを崩そうとしない。そして一瞬でも自分の距離になったら、一気に畳み掛けるように打撃を打つ。それでいながら、相手が変に組みついてこようとしたら、「ここは自分の距離じゃない」ということで、深入りせずに引いていく。まさに“自分のやりたいことだけ”を徹底して実行しています。昨年11月「UFC230」でのデレク・ブランソン戦では、そのタヴァレス戦と同じことをやっていて、さらに勢いもついていたんです。要はノッてきている状態だと思うんですよ。すでにUFCミドル級王座というものが、彼の視野にすでに入ってきているんだと思います。 ――いよいよそのタイトル戦線に向かうタイミングで、アンデウソン・シウバというレジェンド中のレジェンドと対戦することになりました。 髙阪 アンデウソンもまた、アデサニアのような「自分の制空圏で闘う」ことがしっかりできる選手なんです。自分のMMAというものがアンデウソンの中にあって、それをやりきる、そしてチャンスと見るや畳み掛けるのが強い。だから自分の制空圏を持った者同士、どっちが主導権をにぎるのか、どっちが先に仕掛けるのか、それとも僕らにはわからない相手のミスに付け入るのか……そんな異次元っぽい試合が起こるんじゃないかと思います。 ――これまでとは次元が違うMMAが見られるかもしれないと。 髙阪 例えば、お互いが何も攻撃を出さずに、向かい合っているだけのように見えるのに、両者の間ではものすごい駆け引きが行われていたりとか。アンデウソンの試合で言えば、ビクトー・ベウフォート戦がそうでしたよね。ほとんど手を出さずに、アゴへの前蹴り一発で仕留めてしまったという。そういうことを起こせる選手同士が、それをお互いでやりあったら、どんな試合になるのか、ものすごく楽しみですね。 ――どちらかが隙を見せた瞬間に、そこで終わるかもしれないわけですね。 髙阪 ただ、やりにくさは必ず起こると思うんですよ。似たような相手なので、自分自身と試合をしているような、そんな錯覚に陥るかもしれない。 ――アンデウソンからしたら「若かった頃の自分」と闘うことにもなると。 髙阪 だから新旧の天才同士の闘いで、今回、世代交代が起こるのか。それともアンデウソンが、再びタイトル奪回に向けて前進するのか。UFCの今後を大きく左右する一戦であることは間違いないですね。(提供=WOWOW、取材/文=堀江ガンツ) ◆WOWOW『UFC-究極格闘技-』放送スケジュール『生中継! UFC‐究極格闘技‐UFC234 in メルボルンミドル級王者ウィテカー初防衛なるか!? 2年ぶりのアンデウソン・シウバ復帰戦』2月10日(日)午後0:00[WOWOWプライム]生中継WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信ゲスト:宇野薫
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.316
2021年9月22日発売
表紙は10.2「RIZIN LANDMARK」で対戦する朝倉未来×萩原京平。創刊35周年企画として「王者たちが選ぶ、魂が震えた名勝負」を78選手が語る! また「コロナ禍のJ-MMA」では各団体代表が登場。
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント

関連する記事