MMA
インタビュー

【RIZIN】扇久保博正、現役を語らず「自分が憧れた、昔見てた格闘技の戦い方で倒したかった」。神龍には「誠、ほんとうに強くなったな」

2026/06/09 13:06
 2026年6月6日、宮城県・ゼビオアリーナ仙台にて『RIZIN LANDMARK 14 in SENDAI』が開催され、チケット完売の4,564人満員の観客のなか、メインイベントで「RIZINフライ級(57.0kg)選手権試合」扇久保博正(THE BLACKBELT JAPAN)vs.神龍誠(神龍ワールドジム/ATT)が行われた。試合後のコメント、さらに扇久保のYouTubeから、東北大会のメインで打撃戦に打って出た扇久保の心情をひもとく。 国歌斉唱の時、お客さんが一杯見えたんですよ、これは行かなきゃなって  岩手県久慈市出身の王者・扇久保と、地元・宮城県仙台市出身の挑戦者・神龍による「東北ダービー」のタイトルマッチ。  試合は、序盤からパンチ勝負に出たのは王者だった。いつになく左右を強振する扇久保の大きな振りを潜った神龍が先にテイクダウン。シングルバックからハーフネルソンで固めてコントロール。神龍は自ら組みを仕掛けながらも深追いしすぎずにコントロール。最終回も打撃で前に出る扇久保に、神龍がカウンターの縦ヒジでカットさせてクリンチで優り、判定0-3(29-30, 27-30, 28-29)で勝利。扇久保を破り、新チャンピオンに輝いた。  試合後、扇久保は「いや、悔しいっすね。悔しいけど負けちゃいました。パンチで倒したかったっスね、今回は。もう今回はとにかく前出ようと思って。仙台の東北大会のメインだったんで、やっぱりいい試合をしたかった。倒したかったですね、でも強かったです、神龍が。  最初コールされた時、すごい僕にも声援すごくてすごい嬉しかったですね。ケージの中からお客さんが見えて、なんか“やらねえとな”って思いました。特に国歌唱の時、見えたんですよ。お客さんがいっぱい。立ち見の人も見えて“これは行かなきゃな”って“もう相手の顔だけ狙って戦おう”と思いまして。顔だけ狙って殴ろうと」と、今回のスタンド勝負に至った思いを明かす。  なかでもパンチへのこだわりが強かった。いつもの近距離での上下・左右の蹴りは減り、打撃のなかで組んで倒して押さえて削る、扇久保盤石のスタイルも封印した。 「パンチで倒したかったですね。自分が憧れた、昔見てた格闘技の戦い方っていうか、それを、今まで40戦やってるんですけど、“1回もやった時ねえな”と思って、“こいつをブッ倒してKOしてやるって思いながら戦ったことがないな”と思ったんで。年齢的にももう引退も近いなと思ってたんで、。色々やり残したこととか考えていくうちに、その中がやっぱり“KOを目指してパンチで行く”っていうのをちょっと今回はテーマに掲げて戦いましたね」と、地元に近い仙台での満員の観衆を目前に、スイッチが入ったという。 “KOしてやる”という気負いはパンチに現れ大振りに。神龍はそれを巧みにいなして組んでコントロール。前ががりになる扇久保にカウンターの打撃を当てた。 「やっぱ難しかったっですね。やってみて。距離詰める分やっぱり僕ももらうし。タックルにも入られて切りづらかったりしたんで。打撃でガンガン行ってタックル切るスタイルの人ってすごいんだなって、今日やっていて思いました」と、扇久保はジョシュア・ヴァンスタイルの難しさも語る。 【ジャッジ】植松直哉 27-30 (1R 9-10/ 2R 9-10/ 3R 9-10)石川喬也 27-30 (1R 9-10/ 2R 9-10/ 3R 9-10)橋本 貴 28-29 (1R 9-10/ 2R 10-9/ 3R 9-10)  判定は2Rこそ1者が扇久保を支持も、それ以外は神龍がフルマークに近い判定勝ちでベルトを巻いた。 格闘技はナマ物「たら・れば」は無い 「(手応えは)2ラウンド目に1発、左ぐらいかな。(判定スコアに)まあ、でもそんなに今日はもう判定のことはあんまり考えてなくて。もうとにかくパンチで決着つけたかった。メインでしたし。お客さんにやっぱ満足してもらって、“今日来てよかった”って思って帰って欲しかったんでとにかく攻めようって思って戦いましたね」  試合後、9針縫った。それは神龍の縦ヒジによるものだった。 「最初“バッティングなのかな”と思ってたらヒジだったみたいで。しっかり対策されてたってことですよね。ヒジを合わせられたってことは」と、組際でなく打撃戦の中での神龍の「狙っていた」ヒジ打ちを称賛した。  入場曲はプロ修斗で10戦目まで使用していた吉田拓郎の『人生を語らず』。「チャンピオンになって心機一転、替えました」という。それは自身と神龍にも「超えて行け そこを」と鼓舞するものだった。  元同門の先輩・後輩の因縁をストーリーに、向き合うごとに小突き合い、試合まで注目を高めてきた。 「いや、不思議なもんですよね。人生って。あんなキッズクラスで教えてた子なんで、その子とこうやってやって最後、最終的に超えられるっていう。世界で俺だけじゃないですか、教え子と2回もやるって。受ける方の精神の削れ方、マジでキツいです。生徒の方はいいでしょうけどね“倒してやる”って」と苦笑する。  かつて地元の体育館で総合格闘技の練習をしていた扇久保は、満員の東北大会の観客を見て、当時“なりたかった自分の試合”をしようとKO勝負に出た。「もしスタンドプランでなく寝技プランだったら勝ったと思うか」という問いには、「“たら・れば”は無いんですよ、格闘技はナマ物ですから。その時その時の“これをやってたら勝てた”とかっていうのはないんです。それを証明するにはもう1回やるしかない。それが格闘技です」と、いう。 1個、目標があるとすれば『RIZINでフィニッシュすること』 「証明するには、もう1回やるしかない」が、そのモチベーションを作り上げるのが、39歳の扇久保のとって酷な作業となっている。 「やっぱ去年(フライ級GP優勝)相当頑張ったんです。疲れもあるし。今回もだいぶ色々プレッシャーとかもあったんで、ちょっとメンタルを回復させないと。僕のファイトスタイルはメンタルが大事なんで。もしやるならね。ちょっと今後どうなるかわかんないですけど」と、引退も示唆する。  神龍とのラバーマッチの期待の声もあるが、「それは分かんない。僕が現役っていうか、これから戦ってくんであれば、また3連勝ぐらいしなきゃ多分、ベルトまでたどり着けないと思うんで。もしやるんであれば、目の前の戦いをまた一戦一戦やることになる」と、現役続行に慎重だが、「1個、目標があるとすれば『RIZINでフィニッシュすること』かな。フィニッシュして終わりたいですね」と、心残りがあることも語った。  セミでトニー・ララミーが、GP準優勝の元谷友貴に判定勝ちし、次期挑戦者候補に躍り出たが、そのララミーは1年3カ月前に伊藤裕樹に判定負けを喫している。フライ級も混沌としてきたなかで、「いいんじゃないですか、混沌とした方が。そして気づいたらまた僕が……」と、再起への意欲も見せる。  9月10日には京セラドーム大阪で『超RIZIN.5 浪速の超復活祭り』が待っていることを指摘されると、「“復活祭り”……オファー来そう。いやさすがにもう決まってんじゃないですか、カード」と苦笑する。  今回の試合後、ベルトを巻いた神龍は、「扇久保……先生。あなたのことを嫌いだったし、いろいろあったけどあなたのおかげで強くなれました」と感謝を語り、扇久保は「誠、ほんとうに強くなったな。いままでいろいろ言ってごめん。これからRIZINフライ級を世界一の階級にしよう」と返している。  その言葉の意味を問われた扇久保は、「結局続けるんスよね、たぶん」と、笑顔で会見を終えている。ベルトを手放した“打・投・極・根性”の扇久保が再びマットに立つ日は──。下記は会見での扇久保との一問一答全文。 [nextpage] 扇久保「僕の戦う姿を見て『俺もやりたい』って思ってくれる若い人たちが一人でも出てくれれば」(試合後会見) ──神龍選手との試合を終えた率直な感想をお聞かせいただけますか。 「そうですね。うーん……“負けたな”と。そういう気持ちです。はい」 ──再戦となりましたが、今回戦った印象を教えてください。 「やっぱりやってみてスピードもすごい速いし、寝技も強いし、本当にいいファイターだなと、そう思いましたね」 ──今回は、岩手出身の扇久保選手と仙台出身の神龍選手との対戦で、会場もかなりの熱を持って、両選手の名前がコールされていました。地元開催で地元のファンがあのように応援してくれたことをご自身ではどう受け止めていますか。 「いや、本当に……(涙をこらえながら)勝ちたかったですけど。まあでも嬉しかったですね」 ──試合を終えたばかりですが、今後の目標、展望を教えてください。 「うーん……、ちょっと今負けた直後なんで、今後どうするかっていうのは、はっきりとは言えないですけど、一回ちょっと家に帰って休んで。ゆっくり考えたいなと思ってます」 ──相手が思ったよりも来なくて、扇久保選手に何度か組むチャンスがあるなかで、自らそこに固執せずに打ち合いに行ったようにも見えました。それは何か、今回の試合に懸けるもの、打撃で打ち勝とうという思いもあったのですか。 「そうですね。今回はもうとにかくKOしたかったですけど、まあちょっと大振りになりすぎましたね」 ──それでも、途中から少し修正しつつ、神龍選手を上回ろうとしていました。思ったよりもできなかったことというのは、どんなことでしょうか? 「もっとしっかりテイクダウンを切って、もっと丁寧に戦えば、また違う展開だったのかもしれないですけど。うーん、まあでもとにかく今日は前に出て、倒したかったんで。うーん、まあ神龍選手が本当強かったです。はい」 (※自身のYouTubeでは1R、バック取られた展開を「こっちの(左)腕をなんか変な形(ネルソン)で取られてて“何狙ってんのかな”って思って様子を見てましたね。(コツコツは叩かれて)あれは全然大丈夫でした。まあ、でも印象悪いだろうなと。1R目でまだ疲れてないんで力もやっぱり強くて。だから振り向き際のギロチンとかもちょっと警戒しながらだったので、もうちょっと早い段階でもっと動いていけば良かったのかな、と今になれば思います」と振り返り) ──「今日はKOをしたかった」というのは、RIZIN東北大会でこの試合を見て(MMAを)始めるような人もいるかもしれません。そういう中で、前に出てファイトする姿を見せたかったのでしょうか。 「そうですね。もう次の世代にやっぱりどんどん繋いでいかなきゃいけないんで。ま、今日は本当、僕の戦う姿を見て、“俺もやりたい!”ってね、思ってくれる若い人たちがね、一人でも出てくれればいいなと思って戦ったんで。また新たな選手が出てくれればいいですね」 ──顔が傷だらけです。特に効いた攻撃は? 「顔面はなかったんですけど、ボディのヒザが効きましたね」 ──頭部からの流血も出血量が多かったと思います。 「あれはちょっと“これで止められなきゃいいな”っていう、その気持ちでいっぱいでしたね」 ──ダメージはあまりなかったのですか。 「顔面はなかったです」 ──神龍選手のお父さんがケージに入ったときに何か会話をされてるようでした。どんな話をしたのですか。 「まあまあ、あの『色々言ってすみませんでした』みたいな、そういうことは伝えさせてもらいました。『おめでとうございます』と」 ──試合後、神龍選手を祝福されてらっしゃいましたけども、やっぱりそれは試合を通じて神龍選手の強さを感じることができたから出た言葉なのか、それともある程度は試合前から言おうと考えていたのでしょうか。 「まあどっちもですね。まあ元後輩ですから。……うーん……。お互いに嫌い合って別れたっていう感じでもなかったので。……うん。そうですね……、まあでもやっぱり昔教えてた可愛い後輩ですよ、やっぱり」 ──これで一勝一敗になりました。三度目の試合は考えますか。 「今はちょっと考えられないですけど、家帰ったら悔しくなってきて、なるかもしれないですね」 ──ベルトへの思いとして、トーナメントを勝ち抜いて獲得しながら、初防衛戦で手放してしまったベルトというものは、扇久保選手にとってどんなものですか? もう一度、取り返すべきものですか? 「そうですね。これからまた続けていくんであれば、やっぱりベルト取り返さなきゃダメだと思うんで、うん。そこは……、もしまた続けるんであれば、また取り返すために頑張っていきます」 ──ということはもう続けないという選択肢も選ぶかもしれないですか? 「それはちょっとまだ分かんないです」 ──39歳、ここまでやってきて「なりたかった自分の試合」と「防衛するんだ、勝つんだ」っていう気持ち、どっちが大きかったですか? 「“なりたかった自分の試合”をしたかったです、今日は」 ──そうすると、勝率、勝ち目がやっぱりちょっと下がるかなとは思います。それでもやっぱり今日はそれを貫きたかった? 「そうですね。今日はもうそれを貫いて、とにかく倒したかったです。はい」 ──東北で試合ができて、乱闘もして、流血もして、やり残したことが少なくなってきたかもしれないですけど、まだ「やりたい!」っていうものがあったら何か残っていますか? 「……うーん……、うーん、やりたいこと……。……うーん。……でもKOできなかったんで、やっぱりKOしたいっスね(笑)」 ──今日、チームメイトのほとんどが某・岡田さん(岡田遼)の結婚式で、これを見ているか分からないです。ここまで下も育ってきたことも踏まえて、もう一度しつこいようですがこれからやっていくことに、後進の指導とかも、そろそろ頭に浮かんでるようなことは、ありますか? 「そうですね。それは本当に思ってます。これからやっぱり、もうここまでずっと自分のことだけ考えてやってきたんで。これからは次の世代も育てていかなきゃなっていう、そういう思いは、この試合前からありましたね。はい」 ──「なりたい自分に」と、パンチで行ってKOしたかったのは、チャンピオンだからということもありましたか。 「……チャンピオンだからっていうことは、そこまで意識はしてなかったですけど、やっぱり自分自身に問いかけて、やっぱり……なんか今まで“これ、やれなかったな”っていうのを考えた時にやっぱり“パンチでKOとか、そういうことをできなかったな”と、ずっと思ってたんで。それをしたいなって思ってました」 ──入場曲を変えたというか、『人生を語らず』に戻しました。その心境というのはどんなことだったんでしょう? 「そうですね。ま、チャンピオンになったので心機一転っていうのもあるんですけど、歌詞にもあるように『越えて行け、そこを』っていう歌詞があるんですけど、自分自身にもそうだし、誠にも少し伝わればいいかなと思って、変えました」 ──そういう意味では、いろんな選手がいる中でもし仮にベルトを失う相手がいるとしたら神龍選手だろうなみたいなことは、少しはあったのでしょうか。 「いや、別に戦う前にそれはないですけど。それはないですね。はい」 ──マイクで「一緒に盛り上げていこう」って声かけたんですよね。 「言ってました?」 ──「一緒に」って聞こえたような気がして、ちょっと確認したかったんです。ということは続けられるっていうことなのかなって思ったんですけど。 「結局続けるんすよね、アハハハハ(笑)たぶん(笑)」
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