「RISE NORTH」2019年11月10日(日)北海道・札幌ホテルエミシア
北海道初のRISE公式大会『RISE NORTH』は11月10日、札幌ホテルエミシア3Fパレスホールで行われた。会場は那須川天心が昨年大晦日以来のエキシビションマッチを行うということもあって756名(超満員札止め)の観客が詰めかけた。
リングサイドには元イングランド代表で現コンサドーレ札幌のジェイ・ボスロイドの姿も。また『ONE Championship JAPAN』の秦アンディ英之代表も視察に訪れた。
場内の熱気に押されてか、試合は熱戦の連続。来年以降もRISE NORTHが開催されるムードが漂っていた。(取材・文・布施鋼治)
▼メインイベントフェザー級(-57.5kg)3分3R延長1R〇山川賢誠(kickboxing Academy Sapporo/RISEフェザー級7位)判定3-0 ※30-29、30-28、30-29×クワート・スラチャット(タイ/元タイ国北部スーパーバンタム級王者)
メインイベントは″北のエース候補″でフェザー級7位の山川賢誠が元タイ国北部スーパーバンタム級王者クワートを迎え撃った。
元王者といっても、クワートは現役バリバリのムエタイ戦士。今年になってからも地元チェンマイやルンピニースタジアムでコンスタントに試合を行っており、3勝1敗という好成績を残している。
那須川天心に続く二番人気で入場してきた山川はやる気満々。1R開始早々クワートのローブローを食らって悶絶する場面もあったが、その後はアッパーを含むワンツーを放ったあと、相手のハイキックをスウェーでよけるなどテクニカルな攻防を続ける。2分30秒すぎには左ストレートや左のテンカオで試合の流れを掴みかけた。
2Rになると、サウスポーの山川に対してクワートは右ミドルで攻略しにかかる。このミドルをかわして山川はワンツーでやり返す。一進一退の攻防が続く中、3Rになると山川は右フックをクリーンヒット。その後もワンツーからのテンカオや飛びヒザ蹴りでクワートを追い込み、終わってみれば3-0の判定で難敵を下した。
試合後、山川は「今回初めてRISEが北海道に初上陸ということで、めちゃくちゃ気合が入っていたけど、倒そうという気持ちが強すぎて闘志が空回りしてしまった」とうなだれた。「ただ、ジャブをついて自分の距離をとるということはできた。相手はミドルが重たかったけど、怖い部分はそんなになかった。自分の攻撃で効いていることもわかったけど、ごまかすのがうまかった」
それから山川はひとり闘いたい相手がいるとラブコール。「以前対戦が決まっていたのに(2017年7月RISE118)相手の怪我で流れた森本″狂犬″義久選手です。場所はどこでもいい。これからは狂犬のことだけを考えたい」
果たして北のエース候補の思いはRISEに届くか。
▼セミファイナルフェザー級(-57.5kg)3分3R延長1R×津田鉄平(新宿レフティージム/フェザー級10位)判定3-0 ※30-29、30-29、30-28〇拓也(蹴空ジム/RISEバンタム級4位)
セミファイナルではフェザー級4位の津田とバンタム級4位の拓也のフェザー級公式戦が組まれた。両者は2017年1月28日の『RISE 115』で初対決を行い、津田が勝利を収めている。
左ジャブで試合を組み立てようとする津田に対して、拓也は左ボディフックに活路を見出そうとする展開に。2Rになっても、拓也は左ボディフックで削りに行く。津田も負けじとボディ攻撃などで反撃するが、見た目の印象点では拓也に分があったか。 3Rになってもお互い手を休めない。拓也がカウンターのヒザ蹴りで前に出れば、津田も右のテンカオを返していく。このラウンドも、手数では拓也の方が勝っていた。津田もところどころで相手にダメージを与えていると思われるが、もっとジャッジにアピールする攻撃が欲しかった。
判定は3-0で拓也。リベンジに成功するとともに、今年3月以来の勝利を飾った。試合後、拓也は「今回はフェザー級に上げてやってみたけど、次回からはまたバンタム級に戻してベルトを狙っていく」と宣言した。
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▼エキシビションマッチ 3分1R―那須川天心(TARGET/Cygames/RISE世界フェザー級王者)エキシビションのため勝敗無し―安斎 宙(Kickbox ing Academy Sapporo)
あのフロイド・メイヴェザーJr戦から11カ月、那須川が再び激しすぎるエキシビションマッチをやってのけた。天心が花道に登場するだけで、観客席からは大声援が飛ぶ。間違いなくこの日会場では一番人気だ。
そんな天心に対して安斎宙(kickboxing Academy Sapporo)は戦前「天心選手にとってはただの1日かもしれませんが、僕にとっては大勝負の日です」と語っていた通り、右ミドルからの右ストレート。さらに左ローとガツガツ攻め込む。
そんな安斎に対して天心は左のテンカオをボディにぶちこみ、グラつかせる。そのまま攻撃の手を休めず、今夏スアキムを流血TKOに追い込んだ一撃を彷彿させる胴廻し回転蹴りで安斎から先制のダウンを奪った。
立ち上がってきた安斎に対しても、天心は容赦ない追撃を加える。後ろ回し蹴り、左ハイ、右フック。そしてトリケラトプス拳。とどめというべき一撃はフェデリコ・ローマ(2019年3月、RISE WORLD SERIESの1回戦)をKOした、右半身を傾けながら飛ぶ変則のハイキックだった。これで安斎は2度目のダウンを奪われたが、なんとか立ち上がって左ハイキックを返したところで試合終了のゴングが打ち鳴らされた。
試合後、マイクを握った天心は饒舌だった。
「北海道のみなさん、こんばんは。那須川天心です。北海道には2年ぶりに来たんですけど、寒いですね。ダウンジャケットをもってきてよかったと思います。今日相手をしてくれた安斎選手、本当にありがとうございました。若さあふれるファイトで気持ちをこめて前にでてきてくれた。そのおかげで盛り上がりました。エキシとしては成功したと思うけど、もっともっと強くなりたいと思ったら、俺のそばにこれるように一生懸命努力してください」
▼第4試合スーパーライト級(-65kg)3分3R〇畑中健太(蹴空ジム)KO 1R 1分03秒×吉田 敢(BRING IT ONパラエストラAKK)
今年9月の『BOUT』で1年10カ月ぶりにリングに上がり、1RKOで再起を果たした畑中。それから2カ月、早くも再起2戦目を迎えた。対戦相手は北海道恵庭市出身の吉田。
勝負は呆気なかった。1R開始早々、畑中が会心の一撃でダウンを奪う。何とか立ち上がってきた吉田だったが、ダメージが残っていることは明らか。畑中は会心の右をクリーンヒットさせ、吉田に引導を渡した。
試合後、畑中は「勝った、勝った」と大喜び。「復帰戦して2戦2勝。どっちも1RKO。次はRISEの後楽園大会でランカーとの一戦をお願いします」とマイクアピールした。リングサイドで観戦していたRISEの伊藤隆代表もインパクトのある勝ち方に「今日のMVPは畑中」と絶賛したので、2020年早々RISE後楽園大会で畑中のランキング戦の実現が濃厚となった。
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▼第3試合 -59kg契約 3分3R×嶋田将典(Stay Gold/RISEスーパーフェザー級16位)判定3-0 ※三者29-27〇大澤辰徳(蹴空ジム)
高校を卒業後、日本一周の旅へ。その際に訪れた北海道が気に入ってしまい、そのまま札幌に居つき、蹴空ジムに入門したという個性派の大澤。昨年3月のプロデビュー以来、5戦4勝(3KO)1無効試合と波に乗っている。
今回はRISEスーパーフェザー級16位と格上の嶋田と激突した。1R、嶋田は右ローをベースに大澤に襲いかかる。大澤は左のクロスで場内をどよめかせるが、嶋田に大きなダメージを与えるまでには至らない。
2Rも一進一退の攻防が続く。大澤はスーパーマンパンチやロープに押しての右に活路を見出そうとするが、嶋田は左フックやプッシュしての右ミドルで一歩も引かない。
このまま判定決着になるかと思われた3R、大澤は起死回生の飛びヒザ蹴りでダウンを奪いシーソーゲームに終止符を打った。大澤の勝負強さだけではなく、嶋田の頑張りも印象深い一戦だった。
▼第2試合-54kg契約 3分3R×谷村愛翔(kickboxing Academy Sapporo/P's Lab札幌)判定0-3 ※三者とも28-29〇加藤 真(魁塾)
17歳vs16歳。北海道初のRISEで注目の北海道VS関西の十代対決が組まれた。
最初に試合の主導権を握ったのは大阪からやってきた今回がプロデビュー戦という加藤だった。176㎝という恵まれた身長から繰り出す前蹴りや右のテンカオで、地元の谷村を追い込む。
1Rが終わった時点で谷村の体は真っ赤に腫れ上がっていた。加藤のKOは時間の問題かと思われたが、2Rになると失速。左フックやバックハンドで会場をわかす場面もあったが、1Rの勢いはない。逆に加藤の攻めのタイミングがわかったのだろう。谷村は単発ながらも右をクリーンヒットさせるなどして反撃の狼煙をあげる。
そして3Rになると、加藤は度重なるホールディングでついに「減点1」を宣告されてしまう。セコンド魁塾・林塾長から「アホか、コラッ!」という怒号も飛んだが、試合の流れは変わらない。結局2Rまでの貯金がモノをいって加藤が薄氷の勝利を収めたが、最後まで勝負を諦めなかった谷村にも温かい拍手が送られた。
▼第1試合 フェザー級(-57.5kg)3分3R〇夏井広夢(エスジム)KO 2R 2分10秒×周葉(TARGET SHIBUYA)
今年9月のプロデビュー戦では右ハイキックで衝撃的なKO勝ちを飾った周葉がプロ2戦目を迎えた。対戦相手は地元(札幌)のエスジムで元WPMF日本王者・野呂裕貴の指導のもと研鑽を積む夏井。
周葉は相手を呑み込むかのようなプレッシャーをかけ、1R終盤には早くも夏井を窮地に追い込んだ。そのまま周葉のペースになると思いきや、2Rになると夏井は痛烈な左ボディフックで試合の流れを変える。
周葉はローやテンカオで相手の前進を止めようとするが、地元の大声援を受けた夏井は左ボディフックからの右フックで周葉をKOした。現在札幌の大学4年生という夏井。卒業後はすでに東京での就職が決まっているが、キックボクシングは続ける意向だ。
▼オープニングファイト -54kg契約 3分3R×がんばれ!ふるかわくん(GRABS)反則勝ち 2R 2分10秒〇平賀正孝(TEAM URESPA)
このところMMAで2連勝と好調の平賀がキック3戦目を迎えた。対するは今回が2年2カ月ぶりの復帰となるふるかわくん。
1R開始早々、平賀は前に出てプレッシャーをかける。そこでふるかわくんのローキックがローブローとなってしまい試合は長い中断を迎えてしまう。結局故意ではなかったが、大きなダメージを負ったとしてふるかわくんに減点1が与えられた。
その後、平賀がワンツーやハイで怒りの反撃を見せると場内は大いに沸く。続く2R、ふるかわくんはテンカオ(カウンターのヒザ蹴り)で試合の流れをたぐり寄せる。そうした最中平賀はバッティングを受け悶絶。試合は再び長い中断に入ってしまう。 結局、試合続行不可能と判断され、平賀の反則勝ちが宣告された。
◆RISE伊藤隆代表総括コメント
「MVPは畑中健太選手。華もあるし、闘い方も良かった。来年はナンバーシリーズでの起用を考えたい。ケガが多い選手だけど、63kgがベストだというので、それまでにしっかりとフィジカルを鍛えてもらいたい。まだ22歳だし、畑中選手のような選手は地方でも説得力がある。拓也選手と大澤選手に関していえば、今まで見てきた2人とはちょっと違っていた。今まではふたりとももっと思い切りの良さがあったけど、ちょっとまとまりすぎ。今回は地元開催ということで勝ちに徹していたんですかね。
メインに出場したタイ人はうまかったので、山川選手もやりづらかったと思う。でも、そこで倒せるかどうかがメインイベンターの仕事。勝ちは勝ちだけど、今後さらに頑張ってもらいたい。
エキシに出場した那須川天心選手はさすがの一言。素晴らしいエキシになったのは対戦相手の安斎選手が臆することなく攻めたからでしょう。安斎選手が持っているものを出し切ったから、那須川選手がそれに応えた感じだと思う。試合中彼はファンサービスとしていろいろな必殺技を出していたので、さすがRISEのメインイベンターだと思いました。
イベントとしてはもう少しクオリティをあげないといけない。モニターの位置など、細かい部分でお客さんを受け入れる体制が足りなかった。ここの部分を徹底的に改善して、お客さんに『また来たい』と思わせるものを作らないといけない。前日会見も含め、もっと選手のモチベーションを上げる努力をしていかないといけない。第2弾があるとすれば、そういうところを引き立たせていきたい」
写真/RISE NORTH