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インタビュー

【UFC】マネル・ケイプがポルトガル語で語ったこと(後篇)「RIZINで“なんだよ”Tシャツが3千枚完売」「堀口恭司戦後にATTに誘われたけど」「朝倉海との2試合は」「最高のファイトIQは、俺」

2026/01/10 17:01
 現UFC世界フライ級2位のマネル・ケイプ(アンゴラ/ポルトガル)が年明け、ポルトガル語のポッドキャストに出演。前王者アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル)の骨折や靭帯損傷が無かったことを受けて、「パントージャ対ジョシュア・ヴァンの勝者を待つだけ」と、ダイレクトリマッチの勝者に挑戦する構えであることを語った。  また、同番組では、アンゴラのルアンダ生まれで、幼少時に家族と共にポルトガルに移住し、ボクサーだった父の影響でボクシングを始め、ブラジリアン柔術も学び、MMAへと移行した“スターボーイ”の半生が語られている。本誌取材のインタビューで補足し、後篇では、RIZIN初参戦以降の“知られざる”マネル・ケイプの姿を紹介したい(※前篇からの続き)。 堀口恭司に敗れ、ATTからの誘いを固辞 ──アンゴラに帰国し、マラリアにかかり生死の間を彷徨い、その間2年半、公式戦を行えませんでした。 「そんな時、フランスの友人からメッセージが届きました。『日本のRIZINが、ヨーロッパや世界中から、少なくとも2つか3つのベルトを持っている選手を探している。61kg(バンタム)級のトーナメントのためだ』と」 ──2017年の「RIZINバンタム級トーナメント」への出場オファーですね。 「そこから従兄弟との練習に火がつきました。練習相手はたった一人。そして日本へ行き、初戦で勝ちました(※2017年10月「RIZINバンタム級トーナメント1回戦」で山本アーセンを1R TKO)。何の練習環境も設備もない状態から、たった一人の練習相手と勝ち上がったんです」 ※本誌の取材では、当時の練習環境について「アンゴラでは夜遅くまで練習すること すら叶わなかった。暗くなったら盗賊に襲 われるかもしれないんだから。そいつらは 銃を持っている。夜間に強盗被害に遭うと か、撃ち殺されるなんて日常茶飯事だ。楽な環境ではなかった。でもね、本当に何かを成し遂げたいと強く願うなら、そのために努力を重ねるしかない。そして僕の場合、試合に勝ってお金を稼げば、自分の練習環境自体を良くすることもできるはずだと思っていた。だから道場に灯りが無いなんて関係なかった。不平を言わずにベストを尽くすだけだったんだ。不平を言うのはルーザー(負け犬)なんだよ。『自分にはあれもない、これもない』ってね。僕だって満足に食事ができず、一日一食で空腹のまま練習したこともあった。でも文句を言わずにトレーニングに打ち込んだ。結果を出せば僕や兄弟の環境を改善できると言じてね。このハードワークを貫く意志の力こそ、僕が成功できた理由だと思っているよ。ハードな練習をしていると分かっているから、試合に向けてプレッシャーも感じないし、対戦相手のことも何とも思わないんだ。氷のように冷たい感情しかないんだよ」(『ゴング格闘技』2020年3月号) ──RIZINと契約し、初戦に勝った。そのお金でタイへ行ったんですか? 「初戦に勝ち、2戦目(イアン・マッコールを1R TKO)も勝ちました。そして準決勝で堀口(恭司)と当たりました。3Rまで戦いましたが、負けました。その時、(堀口のセコンドだった)マイク・ブラウンが私に声をかけてくれたんです。彼は私が何度も日本に来ているのを見て、顔を覚えてくれていました。日本のファンも初戦から私を気に入ってくれて、すぐに契約を提示してくれました。私はマイク・ブラウンに説明しました。『今はアンゴラで、たった一人の練習相手と犠牲を払って練習しているんだ』と。すると彼は『アメリカン・トップチーム(ATT)に来て練習しないか? 君を別のレベルに引き上げてやる。君がたった一人の相手と練習しているのは見れば分かる』と言ってくれました。でも私は心の中でこう思いました。『いや、俺はさっき負けた相手(堀口)よりも優れているはずだ。環境がなかっただけで、あいつらの方がコンディションが良かっただけだ』と。だから私はATTには行きませんでした」 ──対戦した堀口の練習仲間(パートナー)にはなりたくなかった? 「ええ。私はRIZINでもう一度彼と戦って、捕まえてやりたかったんです。試合で得た賞金で、もっと良い練習環境を整えられるようになりました。しかしその時期、アンゴラで母が亡くなりました。母が亡くなり、私は休暇でタイへ行きました。当時の私はタイに格闘技の文化があることさえ知りませんでした」 ──ATT行きを断った後に、タイへ行ったんですね。当時、ハイレベルなトレーニングができる場所のあてはなかったんですか? 「いえ、ありませんでした。本当は日本に残るつもりだったんです。すでにいくつかコネクションがありましたし、叔父が大使館にいたので日本に滞在することも可能でした。でも、休暇でタイに行ったんです。そこで“クソッ、ここにはMMAのジムがたくさんあるし、選択肢も設備も素晴らしいじゃないか”と気づきました。タイで最初の練習をした時、連中に『おい、こいつはいいぞ。ここにいろよ』と言われました。マイク・スウィックやグラシーニャと話して、彼らを代表する選手として留まる契約を提示されました。そこで最高のサポートを受けることができ、私はそこに残ることにしました」 ──それでみんなをなぎ倒していったわけですね。 「ええ。そこで非常に強固なサポート体制を手に入れました」 (C)RIZIN FF ──あなたが最初に本当に、世界レベルでタフになったのはどこだったと思いますか? 「タイです。タイで最高の環境を得ました。数試合した後、あそこでアパートを買い、バイクを買い、自分自身と自分のキャリアに投資し続けました。そしてありがたいことに、一人の友人に会いました。友人というか、今は私の師(グル)である“トゥバロン(サメ)”ことアレックスです。彼はブラジル人、リオ出身ですがバイーアに住んでいました。彼はグラシーニャの友人で、よくタイに練習や柔術をしに来ていました。彼はアマウリ・ビテッチの親友で、カーソン・グレイシーの流派の出身です。オズワルド(・アウベス)先生の系統ですね。トゥバロンは黒帯で、私を助けてくれました。彼は日本にも長く住んでいて、商売に非常に長けた人でした。彼の子供たちは日本人です。私が日本(RIZIN)で戦っているのを知って、『お前の家に行くよ、そこに泊まるよ』という感じで、非常に良い友情が芽生えました。彼が日本を離れてタイに来る時は、今でも私のアパートに泊まりますし、私が日本に行く時は彼のところに泊まります。最初は日本語も少し教えてもらいました。彼は格闘技以外のビジネスも教えてくれて、ブラジルへの投資も始めました。あまり知られていませんが、彼を通じて私はブラジルにかなり投資をしています。そうやって格闘技以外の基盤を築き始め、同時に格闘技でも自分のチームと構造を作り上げました」 ──そこが分岐点だったんですね。海外では私だけでなく、私の世代の誰もがRIZINでのあなたを知り始めた時期です。 「そうです。あそこでかき回し始めました。RIZINの連中にも言ったんですよ。『俺には環境さえあればいい。そうすればここで全勝してやる。誰も俺には勝てない』って。ただ、堀口恭司に負けた時のあの悔しさは残っていました。UFCにいた彼に勝てたはずだという苦い思いがね。日本の人たちは私のことをとても気に入ってくれて、その後、良い契約を結んでくれました。朝倉海とは2回戦いました」 [nextpage] 朝倉海との2戦、なんだよTシャツが完売 ──1勝1敗でしたね。 「いや、2回とも勝ちですよ。日本にいる誰もがあれは“大強盗”誤審だったと知っています」 ──Sherdogではそういう戦績になっていますが……。 「最大の強盗でした。だから最後の試合では海をノックアウトしたんです。朝倉海とのタイトルマッチ、あの夜は那須川天心も同じリングに上がっていました」 ※本誌の取材では、朝倉海との初戦の敗戦について、「判定が下される時の顔を見ても分かるだ ろう。朝倉はまったく自分の勝利を確信できない様子だったし、実際に勝者とコールされて信じられないという表情をしていた。奴も負けたと思っていたからだ。誰に聞いても僕の勝ちだと言うし、なんであんな結果が出たのか分からない。でも結局、受け入れることにしたんだ。この世で起こる全てのことには理由があるって僕は信じているからね。今から考えても、あの負けは必然だった。あのとき僕は負ける必要があったんだ。いかなる悪い出来事も、未来においては幸運となると僕は知っている。もしあのとき僕が朝倉に勝っていたら、次の大晦日にリベンジすることはできなかったんだ」と語っている。──後にフロイド・メイウェザーと戦った天心ですね。 「そう。天心も同じ夜に戦っていましたが、メインイベントは私と朝倉海でした。さいたまスーパーアリーナには3万人の観客がいました」 ──そして、堀口恭司、佐々木憂流迦を1R TKOに下すなど6連勝中だった朝倉海をTKOに下した。 「朝倉は長い間合いでの戦いを好みます。長距離から強い右を当ててくるのが危険でした。でも僕が距離を詰めてしまえば、彼は蹴りを使えない。入ってしまってからならヒザも出せないし、効かせるパンチも打てなくなる。僕が距離を詰めたとき、彼はプレッシャ ーを感じていたはずでした。『オー、マネル・ケイプは俺のパンチを恐れずに中に入ってきやがる。いったい何をするつもりなんだ』って。距離を詰めたところから、右のショートを当ててダウンさせた。いいタイミングを捉えて当てました。朝倉が堀口にやったことを僕がやったとも言えます」 ──そのままパウンドのラッシュで朝倉をフィニッシュすると、すぐに解説席にいた堀口恭司のところに行きキスをしましたね。 「ハハハ! 堀口に感謝の意を示したかったんです。このチャンスを与えてくれてありがとう、ってね」 ──日本であなたは本当に有名なんですか? 以前、「自分は日本で朝倉海や平良達郎よりも有名だ」と言っていましたね。 「平良達郎はあっちでは誰も知りませんよ。日本のファンはRIZINの選手を知っているんです。RIZINのチャンピオンになれば……RIZINが選手のマネジメントをする時、よりカリスマ性のある選手を選びます。カリスマのある選手の場合、RIZINはイメージ、商品、CMなどのマネジメント(エージェント業務)も行います。私のグッズはいつも真っ先に売り切れました。大会が始まる前から、私のアリーナのTシャツは完売でした。だから私はある日本人と一緒に自分のブランド『Nandayo(なんだよ)』を立ち上げたんです」 ──「なんだよ」の意味は、「何が望みだ?(What do you want?)」といった感じですか? 「挑発です。相手を挑発する時に使いました。彼らはその“クソ野郎”な感じが好きだった。あの言葉は日本で荒っぽい連中が使う言葉ですよね。それがウケたんです。だから試合後のマイクで『ナンダヨ!』と言うと、みんな熱狂しました。商品は売れに売れました」 ──それがさいたまスーパーアリーナだったんですか。すごいな。 「私はさいたまには何度も上がりました。東京ドームだけはまだですが、朝倉海に勝った後のタイトル防衛戦は東京ドームでやる予定だったんです。結局別の試合になりましたが。福岡、東京、静岡……日本の主要なスタジアムはすべて回りました。RIZINのマネジメントを受けるのは簡単ではありません。メディア露出のある日本人選手が中心です。外国人でRIZINがプロモーションに力を入れたのは、ヴァンダレイ・シウバ、ボブ・サップ、エメリヤーエンコ・ヒョードルくらいでしょう。彼らはテレビCMにも出ていました」 ──彼らはPRIDE時代からの歴史もありますしね。 「そう。私は彼らとマーケティング契約を結び、グッズやTシャツの売上のパーセンテージを受け取っていました。朝倉との決勝前、スタッフがこう言いました。『マネル、お前のTシャツはすでに3,000枚売れたぞ』と。3,000枚! アリーナに入る直前ですよ。彼らはそれを現金(キャッシュ)で払うんです。ホテルの封筒に私の取り分を入れて手渡されました。『3,000枚、完売だ』って。あれは高価なTシャツだったのに」 ──RIZINでは幸せでしたか? 「とても。素晴らしい環境で、尊敬され、歓迎され、待遇も最高でした。王様のように扱われました。日本のファンは格闘家を大切にするという話は本当です」 ──他と比較にならないほど? 「比較すること自体が失礼なレベルです。アメリカ人、ブラジル人、ポルトガル人……誰よりも(日本のファンは)素晴らしい。アメリカ人は勝者しか評価しません。明日負ければ、もうゴミ扱いです。それがアメリカの文化です。“勝つこと”がすべてで、敗者の居場所はない。でもRIZINの文化は、たとえ負けても、良い試合、良いショーを見せれば受け入れてくれます。また呼んでくれます。『良い試合だった、素晴らしいショーをありがとう』と言ってくれる。彼らはショーに重きを置くんです。だからRIZINには9連敗していてもクビにならない選手がいたりします。でもUFCでは2連敗したら“さよなら”です。日本には常に“人間的な側面”があります」 ──君のキャラクターや話し方、売り出し方は日本のファンに好かれたんですね。 「ええ。私はオーセンティックでしたから。自分以外の何者かになろうとしたことはありません。時間が経つにつれて、ファンも“これがこいつの性格なんだな。ちょっとおかしな奴だけど、最高のショーを見せてくれるし、楽しませてくれる”と理解し、人間味を感じてくれるようになりました。ポルトガル人、アンゴラ人、ブラジル人は、ある意味で似ています。私は時々、驚愕することがあります。サポートがある時と、無い時の差にね。負けた途端、『やっぱりな、お前はダメだ』とか『お前はアンゴラ人じゃない』とか叩かれます」 [nextpage] 「自分自身であれ」。明日負けても、誰も飯を食わせてはくれないから ──そんなことを言われるんですか? 「聞こえてきますよ。でもブラザー、私はこう言いたい。『お前こそ自分の国のために何をしたんだ?』と。『お前が私よりアンゴラ人だと言うなら、お前は国のために何をしたんだ?』と。『私はここにいて、国の旗を掲げている』。それなのに、引きずり下ろそうとするコメントや、腰抜け呼ばわりする声が聞こえる。ブラジルのファンがブラジル人選手を叩くのもよく見ます。私はそういうことに影響は受けません。全く気にしない。勝っても負けても私は私のままだし、稼ぐ額も変わらない。でも、私は“みんな”ではありません」 ───はい。 「私はいつも、相手の立場に立って考えます。もっと繊細な選手もいます。私たち(ポルトガル語圏)は似た文化を共有していますが、多くの選手が自分自身でいられなくなっています。オーセンティックになれないんです。なぜなら、国民からの、自分たちの文化からのプレッシャー(要求)があるからです。“こんな振る舞いをしたら、生意気だと思われるんじゃないか”“謙虚じゃないと思われるんじゃないか”と。私たちの文化は宗教とも深く結びついていて『謙虚な人こそが良い人だ』『謙虚な人こそ報われるべきだ』と考えがちです。でも、もし“報われる(ふさわしい)”かどうかが基準なら、建設現場で汗水流して働いている人たちが数百万ドル稼いでいるはずでしょう。このスポーツは“ふさわしさ(メリット)”で決まるものではありません。これは“結果”と“何を提供できるか”の世界です。多くの選手が自分を出すのを怖がっているのを見かけます。テレビの外、格闘技の世界の外では強い個性を持っているのに、カメラの前では萎縮してしまう」 ──世間の反応が怖いからだと? 「もちろんです。だから言ったように、みんなが私のように強いメンタルを持っているわけではないし、私生活とプロ生活を切り離せる教育を受けているわけでもありません。だからコメントを恐れ、“自分のイメージが悪くなるんじゃないか”と怯えて、結局“ニュートラル(無難)”な方を選んでしまう。口を閉ざし、自分を抑え、自分自身を構築できなくなっています。  カメラの前で“謙虚なブラジル人”を演じている連中をたくさん見てきました。でも裏ではとんでもない“クソ野郎(Filha da puta)”だったりします。トレーナーを騙したり、友人を裏切ったり、練習仲間に金を払わなかったり。そういう場面を何度も見てきました。トレーナーだって謙虚なフリをしていることがありますが、実際は違います。みんな、そっち側に流されがちなんです。“こいつはスピリチュアルだ、神を信じている、神の名において勝つと言っている”……でも現実は違う。逆に、ネットで叩かれている選手こそが真面目だったりする。でもSNSでは『あいつは調子に乗っている』『生意気だ』『ボコボコにされればいい』と叩かれる。ジェアン・シウヴァの例もそうです」 ──今、彼の名前を出そうと思っていました。 「ジェアン・シウヴァは連勝に次ぐ連勝をしていました。それなのに、人々は彼が負けるのを望んでいました。『今に見てろ、負けるぞ』って。……悲しいよ。いいえ、悲しいという言葉では足りない。そんな逆風の中で、どうやって家に帰り、自分に敵対している人々や国家を代表するメンタルを保てというんだ?『勝手にしろ』と言いたくなるのも当然です。だからみんな、本心を隠して政治的に振る舞うようになる。タブーを破るのを恐れているんです。ジェアン・シウヴァは素晴らしいファイターですよ。モンスターです。あんな次元の選手が自分の国にいるなら、ファンはもっと『行け、やってやれ!』と後押しすべきです。彼がもっと謙虚であるべきかどうか、そんなことは彼の勝手です。明日、彼が負けても、誰も彼に飯を食わせてはくれないんですから。私が言いたいのは、自分自身であれ、ということです。彼がキャラクターを演じているのかどうかは知りませんが、私たちは自分自身であるべきだし、ファンは応援すべきです」 (C)Zuffa LLC/UFC ──彼はディエゴ・ロペスと戦いました。性格は正反対の二人です。 「互いに嫌い合っていても、それは構わない。彼らには嫌い合う権利がある。ジェアンが挑発し、ディエゴが不快に思った。それでいい。友達である必要はない。オクタゴンの中で解決すればいい。それが彼らの仕事です。でもファンは……あんな素晴らしい試合、誰もが足を止めて見入ったはずです。私の意見を言わせてもらえば、ディエゴ・ロペスを初めて見た時、“こいつはクソ強いチャンピオンになるぞ”と思いました。UFCに入る前、テキサスでのFury FCの試合だったかな。私は思いました。“おい、このマナウスの柔術を使いこなす連中……こいつがUFCに行ったらチャンピオンになるぞ”と。私にはそれを見抜く目、予感があるんです。これは神から授かった才能だと思っています。ビジネスでも格闘技でも、5分話せば、その人のエネルギーが自分と合うか、その人が何者かを感じ取れるんです。ディエゴを初めて見た瞬間、“こいつはトップになる”と確信しました。今でもその考えは変わりませんが、あの試合、私はジェアンが彼を叩く(勝つ)と思っていました」 ──ジェアンが勝つと? 「私の頭の中では、ジェアンが勝っていました。ただ、ジェアンは少し急ぎすぎました。不注意でした。全力で突っ込みすぎた。突っ込む時は、相手からも何かが返ってくるのを待たなければいけない。ディエゴ・ロペスは非常に賢かった。突っ込んでくるジェアンに合わせて、あのバックスピン(回転)エルボーを出した。非常にインテリジェントです。ジェアンは2Rで“もう自分のものだ”と感じたのでしょう。1Rは危なかったですが、打撃ではジェアンの攻撃が当たるたびに相手にダメージを与えていました。相手がいつ倒れるか、時間の問題でした。残念ながら、彼は焦りすぎてしまいました」 ──二人は再戦すると思いますか? 「あり得るね。私は二人とも仲が良いですよ。でも、もちろん私の応援はジェアンでした。彼とは良い友人関係にあります。彼にはチャンピオンになってほしい」 ──先ほどの「みんなが恐れている個性」の話に戻りますが、それがスポーツ全体を邪魔していると思いますか? 質問の意図を説明させてください。今、私たちは2026年1月にいます。動画プラットフォームは、格闘技のコアなファンではない層を取り込むために、映画やドラマのようなエンターテインメント要素を求めています。キャラクターが必要なんだと。喋りが立ち、注目を集める選手が。あなたの言う通り、選手がマイクを恐れて自分を抑えてしまうことは、自分の商品価値を下げるだけでなく、結果的にスポーツ全体にとっても良くないことに? 「もし、キャラクターを演じている、フェイクなら問題ですが、オーセンティックなら何の問題もありません。自分自身であるべきなんです。私が言いたいのもそこです。本物になれない人たちが、世間の目を気にして自分の商品を台無しにしている。アメリカ人のことは分かりませんが、私たちの文化圏の話です。良くも悪くも、ポルトガル、アンゴラ、ブラジルは共通点が多い。特にブラジルとアンゴラはね。正直に言いましょう。私は自国(アンゴラ)よりも、ポルトガルからより多くのポジティブなサポート、ポジティブなコメントを受け取ることが多いんです」 ──そうなんですか。 「ポルトガルは本来、他人のものしか応援しない(他人の芝生は青い)ような国民性なんです。他国のものは良いと言うけれど、自国の選手には懐疑的だったりする。それでも彼らは応援してくれます。ただし、叩く時は徹底的に叩く。そのコメント欄の荒れ方は共通しています。ロシアを見てください。誰かがチャンピオンになればどう扱われるか。アメリカでオリンピックに勝てばどう扱われるか。ロシアでは国家が総力を挙げてサポートし、ファンは俺たちの誇りだと熱狂します。カザフスタン人と戦った時、私の写真のコメント欄には何千ものカザフ語の誹謗中傷が並びました。『お前は負ける』『死』『この黒人野郎』……」 ──人種差別ですか。 「ええ、猿の絵文字を並べたりね。私は先ほども言ったように、そんなことで傷ついたりはしません。むしろ面白いとさえ思います」──でも、それは度が過ぎていますよ。 「度が過ぎれば過ぎるほど、彼らはもっとやってやろうと思うんです。私がアスー(アルマバエフ)を倒した時、私はこれまでに3人のカザフスタン人と戦って3人とも倒したはずです。ある時、一人からメッセージが来ました。『インシャラー(神の御心のままに)、いつかカザフスタン人がお前を倒す』と。私はこう返しました。『インシャラー、だが今世(この人生)では無理だ』と。彼らのサポートは凄まじい。たとえ負けても『気にするな、次は勝てる』と励まします。選手がすがるような道徳的、心理的なサポートがある。 (C)Zuffa LLC/UFC  対して、私たちの国の連中は叩くことしかしない。『疲れてやがる』『最初から分かってた』『もう辞めちまえ』。以前、誰かのページで、ある選手がUFCをリリースされたという投稿を見ました。あまりに悲しいコメントがありました。私は感情的になる方ではありませんが、そのコメントには胸が痛みました。『遅すぎた』というコメントです。『もっと早くクビにすべきだった』という意味です。『遅すぎた』だって? その選手には養うべき家族がいる。支払うべき請求書がある。格闘技が彼にできる唯一のことかもしれない。人間が他人の不幸(失業)を喜ぶなんて。もし自分が同じ立場でクビになったら、何て言うんですか?『上司はクソだ』『国が助けてくれない』と被害者面をするはずです。  これは人々が想像するより複雑な問題です。誰かが職を失うのを拍手喝采して喜ぶなんて。その同じ人間がネットでは『イエス・キリスト、神が第一、神の祝福を』なんて書いている。プロフィール欄に聖書の一節を載せている。偽善者ですよ。他人の不幸を願いながら、聖書では『隣人を自分のように愛せ』と言っている。選手の解雇を祝うことが、自分が優れた人間である証明になるとでも思っているのか。UFCにいるからといって、みんなが大金を稼いでいるわけではありません。大多数はそうではない。大金を稼いだり、副業を持って資産管理ができているのは、ほんの、ほんの一握りです。それなのに人々はそれを嘲笑う。“クソ野郎”だよ」 ──非常に鋭い観察です。 「選手には家族がいて、娘がいて、車のローンがあって、食べさせなきゃいけない子供がいる。今、このスポーツはUFCに独占されている。そこをクビになったら、一体どこで金を稼げばいい? ベアナックルにでも出るか? あそこはボロボロになる。ストリートで戦ってきた私でさえ、あんな場所には行きたくない。歯を折り、保険もなく、傷だらけになる。アメリカで暮らすのは金がかかるんです。ブラジルにいても同じです。私は時々、自分の国のファンが発するそんな蛮行を考えてしまいます。ブラジル人ファンを叩いているわけではありません。私の国でも同じようなひどいことを言う連中がいるんです。『あいつはアンゴラ人じゃない』『もう負けたんだから消えろ』『お前は絶対にチャンピオンになれない』。そんなコメントを見て、私は思うんです。『俺は一体、誰を代表して戦っているんだ?』と。 ──ジェアン・シルバの名前が出ましたが、ディエゴ・ロペスの例も。「彼はメキシコ人だ、ブラジル人じゃない」なんて言う連中がいます。勘弁してくださいよ。彼はどこで生まれた? ブラジルですよ。家族はどこに住んでいる? ブラジルですよ。血は何だ?ブラジル、マナウスの血ですよ。 「今はメキシコ代表として戦っているからでしょう。現地に住んで市民権を持っている。両方を代表している」 ──「メキシコ人だから」と叩くのは愚かです。彼はメキシコでより多くのサポートを得ているのかもしれない。メキシコ人は「お前はブラジル人だ、自分の国へ帰れ」なんて言わないでしょうから。 「ポルトガルで『黒人、自分の国へ帰れ』なんて言われたことは一度もありません。人それぞれ経験は違います。私は自分の経験がすべてだとは言いませんが、少なくとも私はポルトガルでそんな差別を受けたことはありません。ただ、私たちが被害者意識を持ちすぎると、そういう方向に流されてしまいます。だから、私はコメントなんて気にしません。私の人生は、感情的にも、経済的にも、友人関係も、精神的にも、非常に強固に確立されています。私は別のレベルにいます。どれほどネガティブなことを言われても、私を揺るがすことはできません。知ったことか。私は私のままだ」 [nextpage] モカエフと何があった? (C)Zuffa LLC/UFC ──今、最高のフェーズにいますね。 「あらゆる面でね。でも、私は“みんな”ではありません。私は何かをする時、常に相手の立場になって考えます。自分が優れているとか、誰かより上だとかいうことではなく、理由が何であれ、常に相手の身になって考える」 ──選手の解雇が祝われたという話、ムハンマド・モカエフが解雇された時を思い出さずにはいられません。君と彼の間には、戦ったという因縁の歴史がありますね。 「一つの側面を言いましょう。オクタゴンの中で戦う時、その選手の本性がよく現れます。戦いは自己表現です。知的で戦略的な人間は冷静に状況を見極め、チャンスを逃さず打ちます。逆に、攻撃的で短気な性格の人間は、何も考えずに突っ込み、何も考えずに言葉を発します」 ──そうですね。 「何も考えずに喋ることで、人を傷つけてしまう。もっと慎重になるべきですが、それがその人の個性なんです。賢者や経験豊富な人間は、“思っていることをすべて口に出す”ことはしませんが、“口に出すことはすべて考え抜いて”います。不幸なことに、多くの選手はそうではありません。穏やかな選手もいれば、爆発的な選手もいる。ミックスされています」 ──モカエフの発言には腹を立てましたか? 「いえ、腹は立ちませんでした。怒ったわけではないんです。ただ、なぜ私が彼について言及するのか。それは彼の本性が“偽善的”だからです。信用できない人間。私の足の指が折れた時、私はそれを直そうとしましたが、彼はそれを利用しようとしました。それが試合に現れています。アイポーク(目突き)をし、私が背を向けても(反則をアピールしても)襲いかかってきた。私が彼を極めようとしていた時……ヒザ十字固めを仕掛けていた時です。彼がテイクダウンを仕掛け、私が足を取りに行った。ジャフェル・フィーリョが彼を極めかけたのと同じ技です。私は戦略として知っていました。もし彼がタックルに来るなら、私は足を取りに行く。取りに行った時、あいつ(モカエフ)は何をしたと思う? 俺のショーツを掴んだんだ。もしあそこで一本取れていたら、試合の結末も、世間の見方も全く違うものになっていただろう。俺はまともに戦おうとしていたのに、あいつは汚い手ばかり使っていた。  ネットでの挑発については、俺は別に何とも思っていなかった。プロモーションのために何を言っても自由だ。だが、あいつが俺にDMを送ってきた時から話が変わった。『おい、俺と戦いたくないのか? 何も言い返さないのか?』ってな。俺はこう返した。『坊や、お前に言うことなんて何もない。自分の道を行け。試合が決まれば戦うだけだ。だが、路上でお前を見かけたら……』、そしたらあいつが『路上で会ったらどうするんだ?』なんて言ってきた。俺は言ったよ。『お前はアスリートだ。キャリアに集中しろ。路上に来れば、お前の知らない世界がある。そこは俺の慣れ親しんだ、得意な場所だ。その世界で俺に会いたいなら、構わないぞ』とな。  その後、PI(UFCパフォーマンス・インスティチュート)で会った時にケリをつけた。俺はあいつに『男に殴られる時は手を上げろ(ガードしろ)、手を下げたまま殴られるなよ』と言ってやった。何発か殴って教育してやったよ。ヒジも一発入れてな。その後マンチェスターで、あいつが挨拶に来たんだ。『サラム・アレイコム(あなた方に平安がありますように)」と言ってな。イスラムの挨拶をされたら、こちらも手出しはできない。『マネル、元気か? 神の平和があらんこと『』と言われ、俺も『元気だ。お前にも平和を』と返した。そしたら『写真を撮ってもいいか?』と聞いてきた。『いいぞ』と言って、あいつが肩を組んで写真を撮ろうとした瞬間、俺を殴ろうとしたんだ」 ──それはいつのことですか? マンチェスターで、試合前に? 「そうだ。イギリスでの試合前、PIでの騒動の後だ。PIの後は一度和解したはずだった。あいつは謝罪してきたし、自分が間違っていたと認めていた。境界線を越えるべきじゃなかったとDMを送ってきた。だから解決したと思っていたんだ。マンチェスターに着いた時、俺たちの間にわだかまりはないと思っていた。俺は周りの連中に『もう終わったことだ。マカ(モカエフ)を叩くのはやめろ。あいつも同じ宗教の兄弟だ』とまで言っていた。それなのに、あいつは計量前のあのタイミングで騙し討ちをしてきた。だから計量の時はあんなに殺気立っていたんだ。パンチはここ(顔)に一発当たった。階段にいたから俺は足を踏み外して、あいつが上に重なった。そこで揉み合いになった。俺のスタッフとあいつのスタッフが駆け寄って引き離したが、あいつはすぐに車に逃げ込んだ。すべて計画的だったんだろう」 ──それは水曜日か木曜日ですか? 「計量の前日だから、木曜日か水曜日だったな。あいつはそういう『汚いゲーム』をする性格なんだ」 ──それが解雇の決定打になったと思うか? 「そう思う。俺はUFCのスタッフと話した。その日の夜に彼らは言ったよ。『試合をキャンセルしたいか? 減量中だし、こんなことがあって大丈夫か?』と。俺は『いや、試合はやめない。絶対にやる』と答えた。彼らに伝えたよ。『あいつは卑怯で裏切り者だ。気をつけろ』と。それだけじゃない。あいつはカメラが回っていないところで、UFCの従業員に対して傲慢な態度を取っていた。自分より上の立場じゃない人間、裏方のスタッフたちにひどい態度を取っていたんだ。それも原因の一つだろう。俺の親父がよく言っていた。『社長に媚びるのは簡単だ。だが、本当に大切なのは末端の人間をどう扱うかだ』とな。謙虚なフリをしているアスリートはたくさんいるが、裏ではスタッフを顎で使ったりしている。ダナ(・ホワイト)やハンター(・キャンベル)の前では良い顔をするくせにな。一昨日もハンターと食事をしたが、マカ(モカエフ)の件についても話した。解雇の理由の一つは、あの夜の出来事だとはっきり言っていたよ(※モカエフは25年11月にBRAVE CFフライ級王者に)」 ──その食事の支払いはどっちが?(笑) 「ハンターだよ。彼が払ってくれた」 ──なるほど。アデサニヤの件についても聞かせてください。今は和解しているんですか? 「ああ、今は大丈夫だ」 ──あの会見の時、アデサニヤとの体格差はすごかったですよね。あなたはブランドン・ロイバルとの試合を控えていて、さらに目の前にいたカイ・カラ=フランスとやり合っていた。そこにアデサニヤが割って入ってきたんですよね。 「あいつ(アデサニヤ)が呼ばれてもいないのに首を突っ込んできたんだ。自分のチームメイト(カラ=フランス)を庇おうとしたんだろうが、黙って座っていれば恥をかかずに済んだものを」 ──状況を整理すると、あなたは本来カラ=フランスと戦うはずが、彼が怪我で欠場し、フェリペ・ドス・サントスが代役で受けた。でもカラ=フランスはなぜか記者会見の最前列に座っていた。そこで君が彼を罵倒し始め、アデサニヤが言い返してきた。 「俺がカラ=フランスに水のボトルを投げたからな(笑)。アデサニヤが『何でボトルを投げたんだ』とかなんとか抜かしやがった。『お前には関係ねえ、失せろ』って話だ。あのデカい体で俺を威圧できると思ったのか?絶対に無理だ。俺はストリートモードのスイッチが入っていた。路上じゃ相手の体重なんて選べないだろう? デカい奴と戦うなら、目突きでも噛みつきでも何でもありだ。あいつはそういう修羅場に慣れていない」 ──売り言葉に買い言葉、絶対に引き下がらないんですね。 「決してね。引き下がったら眠れないよ……俺は半分ブラジル人みたいなもんだ。だからこうしてカピタン(ブラジル人マネージャー)やリチャードたちブラジル人とつるんでいるんだ」 ジョシュア・ヴァンは棚ぼたチャンピオン (C)Zuffa LLC/UFC──そして、ブランドン・ロイバル戦の勝利、おめでとうございます。素晴らしいパフォーマンスでした。1Rで彼をノックアウトしたのはモレノに続いて2人目です。 「ありがとう。そうですね」 ──これでタイトル戦線に浮上しました。堀口恭司はすでに試合(2月7日、アミル・アルバジ戦)が決まっていますよね。パントージャについては、彼のマネージャー(パルンピーニャ)が「骨折も靭帯損傷もなかった」と投稿していました。復帰は早まりそうです。 「それは俺にとっても良いニュースだ。彼が早く戻ってくるなら、俺が挑戦する権利がある。間違いない。堀口に試合があるなら、俺はパントージャ対ジョシュア(・ヴァン)の勝者を待つだけだ」 ──その間、他の誰かと戦わずに待ちますか? 「もちろんだ。勝つのが分かっている相手や、ランキング2位の俺にとって意味のない相手と戦う必要はない。パントージャたちが戦う間、俺はゆっくり休んで、これまでのトレーニングで溜まった微細な怪我を治すよ。この数カ月、ロイバル戦のためにずっとキャンプを続けてきたからな。去年(2024年)の5月くらいからずっとロイバル戦の準備をしていたんだ。試合が二度流れて、正直、練習に飽き飽きしていた」 ──本来は7月に戦うはずでしたが、あなたが足の怪我をしてジョシュア・ヴァンが代役で入り、ロイバルに勝ちました。 「当初は4月に対戦するはずが、彼が脳震盪で流れた。その後7月に決まったが、今度は俺が足を骨折した。それでジョシュア・ヴァンにチャンスが回ったんだ。彼は棚ぼたでチャンピオンになったようなもんだ。人生の巡り合わせだよな。チャンスが目の前を通り過ぎる時、それを掴んだ奴が勝つ。それがスポーツだ。だが、俺はもう長いこと、具体的な目標(試合日)が決まらないまま練習し続けてきた。それは精神的に疲れる。だからパントージャが戻ってくるのを待つのは、俺にとって好都合なんだ」 ──ラマダン(断食月)の時期に試合のオファーが来たらどうしますか? 「練習も儀式もこなして、試合に出るよ。ハビブ(・ヌルマゴメドフ)は最後の方は儀式を完全にはこなしていなかったようだが、俺は両立させる。断食が試合の妨げになることはない」 ──パフォーマンスに影響は? 「まあ、食べ物の面で多少はあるかもしれないが、大きな問題じゃない」 ──ハンターとの食事でも、契約面の話をしたんですよね。 「ああ、契約内容についてはかなり寛大な条件を提示されている。俺にとって重要なのは、自分が納得できる数字(契約金)だ。それが俺を笑顔にする。それ以外のことは、後から付いてくる。無理に追いかける必要はない。この1年で3試合、3連続KOだ。良い仕事をしている自負はある」 ──ボーナスはいくつ貰いましたか? 「2つだ。本当は3つ貰えるはずだったが、1つは非公式だった」 ──ロイバルとの試合も1R TKOという最高の結果でしたね。次がタイトルマッチだという確信はありますか? 「正直に言って、その話はまだしていない。今は休暇を楽しんでいる。タイトル戦になろうがなるまいが、今はどっちでもいいんだ。」 ──満足している、ということですか? 「今、波の頂点(crista da onda)にいる。最高のフェーズだ。自分自身に満足しているよ」 [nextpage] パントージャとの再戦は全く別物になる ──ブラジルのファンに向けて。パントージャとのベルトを賭けたリベンジマッチ、5ラウンド戦うとなったら、前回とは何が変わりますか? 「全く別物になるだろう。一番の変化は“適応”だ。ロイバル戦でも見たと思うが、俺は(足が滑らないように)オクタゴンに水を撒いた。ロイバルもそれを真似して水を撒いていたな。俺はそれを見て“ああ、やっぱり滑るんだな”と納得した。パントージャとの初戦は良い試合だった。技術的にどちらかが圧倒していたわけじゃない。差がついたのは“ボリューム(手数)”だ。彼は非常にタフだ。それは認めざるを得ない」 ──彼はUFC史上最高のフライ級選手だという説もある。防衛記録はデメトリアス・ジョンソン(DJ)に及びませんが、勝利数や試合数では上回っていますね。 「数字で見ればその通りだ。同意するよ。最もテクニカルか、見ていて美しいかと言われれば別の話だが、彼は結果を出している。結果こそがすべてだ。今のフライ級はかつてないほどレベルが高い。DJが王者だった頃は階級が新設されたばかりだったが、今はランキングに10カ国以上の選手がひしめいている」 ──そして、君にはKOパワーがある。この階級でKOできる選手は少ない。 「誰もが“パパ”(マネル)の番が来ればこうなると思い知るだろう」 ──軽量級でそれほど重いパンチを打てる秘訣は何ですか? 「遺伝(ジェネティカ)だよ。親父も一撃が重かった。もちろん練習もするが、生まれ持ったものだ。パントージャが組む力、アイソメトリーが強いのと同じだ。……あまり知られていないが、俺の本職は柔術なんだ。グラウンドになった時、俺はスクランブルなんてしない。すぐに一本を獲りに行く。テストしたい奴がいれば受けて立つが、自分から寝技には行かない。KOパワーという武器があるからな。だが、本職は寝技だ。いつか“フライング・トライアングル(飛びつき三角絞め)”を見せてやるよ。俺の得意技だ」 俺がロイバルをどうノックアウトしたか見たか? ──それは楽しみです。ここからは、アンケートを。現役のUFC選手の中から選んでください。「最強のストライカー」は? 「俺だ。ストライキングは視力、距離、KO、姿勢、反射神経……あらゆる要素が含まれる。イリア・トプリアはボクシングだけ、アレックス・ペレイラはキックボクシングとパワーだ。俺の強みは『格闘IQ』と『予測不能さ』だ。脳をどう使うか。アデサニヤにKOされた時のペレイラのように、あんな場所に長居はしない。ガードを下げて大きなパンチを狙い過ぎたんだ。ボクシングを知っている奴なら、打って、打って、相手が絶望して振り回してくる一発のリアクションが来ると分かっている。それに対して外に出るか、カウンターを合わせるかだ。俺はいつ下がるか、いつ入るかを知っている。統計と根拠に基づいた、俺のストライキングが最強だ。……まあ、ペレイラのファンだけどな。彼は別格だよ」 ──「最強のグラップラー」は? 「現役なら……チャールズ・オリベイラと言いたいところだが、マカチェフに負けたからイスラム・マカチェフかな。一本負けした事実は変えられない。でもチャールズがMMAの寝技でやっていることは異常だ。トプリアも実は寝技が凄く強い。ストライキングより寝技の方が上なんじゃないかと思うほどだ。ヴォルカノフスキーの足を取りかけたしな。ジョゼ・アルドも寝技はめちゃくちゃ強い。だが、結果を重視してイスラムにするよ」 ──「最強のレスラー」は? 「ロシア人を贔屓していると言われそうだが、イスラムかな。メラブ(・ドバリシビリ)は柔道に近い。……いや、(ハムザト・)チマエフだ。あいつに捕まったら最後だ」 ──「最強のカーディオ」は? 「メラブだろうな。あいつは遺伝だ。子供の頃からアドベンチャースポーツばかりして、氷の中に頭から突っ込むようなイカれた奴だからな(笑)。体がアドレナリンに慣れきっているんだ。ただ、スタミナは複雑だ。恐怖心に支配されるとスタミナは40~50%削られる。未経験な選手がすぐに疲れるのはアドレナリンを制御できないからだ。メラブは極限状態を日常にしているから、脳が疲労を感じないんだ」 ──「最強の顎」は? 「KOされたことがない選手……俺にしておこうか」 ──「最強のトラッシュトーカー」は? 「俺だ(笑)」 ──半分以上があなたじゃないですか(笑)。「最強のパンチ」は? 「ペレイラだ。あの左は死を招く。あれも生まれ持ったものだ。力んでいるわけじゃない、洗練された技術とレバレッジだ。ストロングマンがMMAをやっても全員をKOできないのは、パンチ力が筋力だけじゃないからだ。ペレイラのパンチは天性だね」 ──「最高のファイトIQ」は? 「それを俺に聞くのは野暮だろう(笑)。俺だ。俺は分析的な人間なんだ」 ──自信満々ですね。ディエゴ・ロペスはヴォルカノフスキーを挙げていました。 「根拠があって言っている。ヴォルカノフスキーがもし本当にファイトIQが高いなら、トプリアにあんなKO負けはしなかったはずだ。ヴォルカノフスキーは後ろに下がりながらオープンな体勢でクロスを打つ癖がある。だが、あんなオープンな体勢で下がれば、戻るのに時間がかかる。だから顎を捉えられたんだ。……俺がロイバルをどうノックアウトしたか見たか? あいつの足のポジションを見抜いていたからだ。俺が予測不能なのは、脳みそをうまく使っているからだ。  パントージャとヴァンの試合でもそうだ。同じスタンスのまま頭を蹴りに行けば、足を掴まれる確率は高い。格闘IQが高ければ、あの状況でその選択はしない。俺は自分の脳みそを信じている。柔術だってそうだ。アームロックに行く時に足をかけて閉じなければ、相手に逃げられる。ストライキングも同じ理屈だ」 ──さて、雄弁なアンゴラ系ポルトガル・ブラジル人といってもいいマネル。相当なドラマ好き(ノヴェレイロ)だそうですが、ブラジル史上最高のドラマは何ですか? 「それは難しい質問だ! ノヴェーラ(ドラマ)の話をするのは、宗教やサッカーの話をするのと同じくらい熱くなるぞ。今でもYouTubeで名シーンを見返したりするんだ。俺が好きなのは……『Chocolate com Pimenta(チョコレートとピーマン)』。あとは『Avenida Brasil(アベニータ・ブラジル)』。それからコメンダドール(司令官)が出てくるやつ」 ──『Imperio(インペリオ)』ですね。 「そう、それだ! マリーナ・ルイ・バルボーザが出ていたやつ。あれは本当に良かった」 ──『Proxima Vitima(次の犠牲者)』はいかがでしたか。 「それもいいな。ブルーナ・マルケジーニが出ていた『Caminho das Indias(インドへの道)』も好きだ。彼女が盲目の少女の役をやっていたのを覚えている」 ──そんなドラマもありましたか。 「あったんだよ! あと、パオラ・オリベイラの大ファンなんだ。彼女がMMAファイターの役を演じていたドラマがあっただろう?(※『A Forca do Querer』)。ポリアナ・ボテーリョと共演したシーンがある」 ──ポリアナ・ボテーリョがドラマに出ていたんですか? 「そうだ。それから、すごく皮肉屋なゲイのキャラクターが出てくるドラマ……名前は何だっけ。黒髪で、ミームにもなっていた奴だ。ポルトガルでも賞を獲るくらい有名だった」 ──『Amor a Vida(愛の生活)』の「フェリックス」ですか? 「そう、フェリックス(マテウス・ソラーノ)だ! あいつは最高だった。あのキャラクターはあまりに良すぎて、世界的に有名になった。俺のイチオシだね」 ──ドラマ好きで、ファッショニスタで、格闘家……マネル・ケイプは何でも持っていますね。ファンにあなたのことをもっと知ってもらえて良かったです。最後にメッセージを。 「考えていないことを口走っちゃうかもしれないけどいいか?(笑) いや、冗談だ。今日話せて本当に楽しかった。皆、このレゼーニャ(雑談)を楽しんでくれたかな。また次回の試合、あるいは次回の雑談で会おう。もっと俺の話が聞きたければ、また呼んでくれ。呼びたくなければ……まあ、またどこかで会うことになるだろう。Tamos juntos(共に戦おう)!」
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