ボクシング
ニュース

【ボクシング】那須川天心に初黒星をつけた井上拓真「顔色一つ変えずに、淡々と最初から最後までやるのが作戦だった」

2025/11/25 14:11
【ボクシング】那須川天心に初黒星をつけた井上拓真「顔色一つ変えずに、淡々と最初から最後までやるのが作戦だった」

(C)GONG KAKUTOGI

 2025年11月24日(月・祝)、江東区のTOYOTA ARENA TOKYOで行われたボクシングのWBC世界バンタム級王座決定戦(12回戦)で、同級1位の那須川天心(帝拳)と、同級2位の井上拓真(大橋)が対戦

 試合は12回フルラウンドの末に判定3-0(116-112×2、117-111)で井上が勝利判定。キック、MMA、ボクシングを含めて公式戦53戦全勝だった那須川に、キャリア初の黒星をつけた。井上は、24年10月に堤聖也(角海老宝石)に判定負けを喫して王座陥落して以来、約1年1カ月ぶりの再起戦で再び世界王座に返り咲いた。

 1、2Rに間合いを取って角度をつけての攻撃で攻勢となった那須川に対し、そのパンチ力を見定めたか、井上は3R以降、接近戦で勝負。キックやムエタイであればストッピングの蹴りや首相撲ヒザ、MMAであればテイクダウンもある距離で、ボクシングでは2つの手だけで戦わなくてはならない。そのボクシングならではの近い間合いでの「接近戦の練習はあまり上手く行ってなかった」(浜田剛史代表)というなか、いつもよりアップライトに構えた那須川は足を使うよりもブロッキングで井上のパンチを受けるように。そこで後手に回り、得意の左も効果を発揮できず。経験豊富な井上の接近戦のパンチの手札の差もあり、打開できなかった那須川に対し、井上は12Rを通して動き続け、1者が6ポイント差をつける判定3-0で勝利した。

 試合後の井上と陣営の一問一答全文は以下の通りだ(※那須川天心、試合後コメント全文)。

天心が相手だから俺もここまでやってこれた

──試合を終えた率直な感想を。

「ホッとしてる。もうこれに尽きます。本当に」

──ベルトを手にしたときの気持ちを振り返って。

「ベルトが戻ってきたっていうよりは、本当に天心選手に勝てたこと。それが一番大きな喜びですね」

──今回、公開採点でしたけど、最初の4R後はイーブンでした。

「ドローか、もしくは“1ポイントぐらい取られてるかな”くらいで始まって、まあドローだったんで、まあその4R終わった時に自分のいい感じのペースになりつつあったんで、もうこのまま上げていけばいけるっていう、自信はありましたね」

──8R後の公開採点では2者が拓真選手リードを聞いたときは?

「ポイントは取ってるかなっていうのは、自分自身もあったんで、本当にそのまま上げていけば出ていけるっていう感じでした」

──大橋会長にも伺いたいと思います。天心選手との試合を振り返っていかがでしたか

大橋 やっぱり第1Rの天心選手の左フック、第2Rの右のカウンター、もうすごい強くて。前回よりも数段強くなったので、“これはちょっと、この試合厳しいんじゃないかな”っていう、2Rが終わった時点でその不安がまず第一に来ましたね。2Rが終わって、3、4R後の公開採点で、“若干、もしかして負けてるのかな”と思ったんですけど同点だったので、“あっ、これならいけるな”っていう。“ちょっと厳しいな”から、4R終わった公開採点で“あっ、これは勝てる”っていう確信に変わりました。

井上真吾トレーナー 1R目の出だし、ちょっと拓真が硬いなっていうのは感じていて。その中でやっぱりいいパンチをもらって、2Rに行って。そこでもう“とりあえずリズム作ろうよ”と。3、4Rでいい感じでちょっとリズムが取れてきて。公開採点の時に、3、4Rで取り返して取っただろうと。だったらここから色濃く持って行けば、しっかりポイントに繋がるのかなと思って、そういう感じで指示していました。

──拓真選手にうかがいます。途中、動きを切り替えたのは?

「切り替えたっていうのは、やっぱりその1、2Rのペースだったら、もう自分は絶対ポイント取れないと思ったんで、もうペースを変えて相手を崩す。いろいろパターンを想定してたんですけど、(1、2Rで)ポイントが取れてないのも分かったんで、自分から攻めるっていうパターンに切り替えただけですね」

──那須川選手が下がってカウンターボクシングで来ることは想定していた?

「そうですね。それも想定してましたし、相手が出てくるのも想定していました。いろんな想定で準備してきたので、そこで切り替えられたのかなっていうのはありますね」

──右を当てて、逆に天心選手のワンツーの左は外に外した、あの辺は?

「それはもうずっと練習の時からやっていたことを自然と出せた。自然と身体が反応したっていう感じです」

──試合後にリング上で那須川選手とどんな話を?

「終わった後ですか? いやもう本当に『天心とだから俺もここまでやってこれたし、もう本当にありがとう』っていうことを話しました。向こうも『本当にありがとう』って、お互いに感謝し合っての話ですね」

──もし天心選手がリベンジを求めてきたら?

「それはもちろん。やっぱり向こうもまた上がってくるっていうのも分かってるんで。それは、その時はもちろんやります」

──天心選手は事前のイメージの印象りだったのか、いざ対峙してみて違った印象があれば教えていただけます。

「やっぱりそうですね……まあ思った以上に距離が遠い、やっぱり目がいいっていうのは感じましたね。やっぱり映像見てても距離感もスピードもあって、すごい上手いなっていうのは感じてたんですけど、対峙してみてやっぱり目がいいなっていうのは率直に感じましたね」

──今まで戦ってきたボクサーと那須川選手とでは全く違うものもありましたか。

「そうですね。やっぱりずっと無敗で来てるだけあって、やっぱり勘もいいし。まあなんせ目が良かったですね。その絶妙な距離感で外す。やっぱり今までにないタイプでしたね」

──試合の途中で那須川選手が疲れを見せたり、焦りを感じるような場面はありましたか。

「そうですね。自分のプレッシャーになんか嫌がってるなっていうのは感じてたんで。もう自分は“顔色一つ変えずに、もう淡々と最初から最後までやる”っていうのが、今回のお父さんとの作戦であって、それを実行しただけですね」

──那須川天心選手に無敗の初黒星をつけたということに対する充実感というのは、いまお持ちでしょうか。

「充実感というより、やっぱりこれだけの強敵に勝てたことが、やっぱり本当に『練習は嘘をつかないな』っていうのは感じました」

──ペースを変えて、試合をご自身のものにしたと思いますが、那須川選手ももっとキャリアを重ねていけば、自分と同じような試合運び、戦略が実行できるようになる考えられますか。

「まあ……そうですね。キャリアを積んでけば、やっぱりもっともっと強くなるなっていうのはありますね」

──井上真吾トレーナーに伺います。この試合を超えたことで、さらに拓真選手が強くなっていけるという手応えは?

井上 いや、もう十分あります。今回、この試合に向けて、自分なりにやっぱり相当、拓真の限界を広げていったっていうのはあるんで、それにしっかりついてきたんで、それがこれから今後ってなればもっともっと変化するっていうのは全然感じますね」

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.341
2025年12月21日発売
大晦日決戦に臨むシェイドゥラエフと朝倉未来ほか「特集◎大晦日を読む」では、5大タイトルマッチのインタビューと川尻達也らが試合解説。UFC平良達郎、40周年記念・水垣偉弥インタビューも
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア