キックボクシング
インタビュー

【RISE】キックボクシング復帰の吉田実代「打ち合いはガンガンいって引かないという部分と、17年のキャリアと、ずっとやってきたボクシングのテクニックも見せられたら」

2025/10/27 21:10
 2025年11月2日(日)東京・両国国技館『RISE WORLD SERIES 2025 FINAL』にて、約12年ぶりにキックボクシング復帰戦を行うプロボクシング第5・7代WBO世界スーパーフライ級王者・吉田実代(Bread winner NYC)のインタビューが、主催者を通じて届いた。  吉田は多数のタイトルマッチ経験を持つベテランの美斬帝(=みきてぃ/テツジム)と-52.5kg契約3分3Rで対戦する。 海外でMMAのオファーがあったんですけど… ――“元ボクシング世界王者”としてRISEに参戦することになりました。大きな反響があったかと思うのですが、ご自身ではいかがですか? 「元々キックボクシングをやっていた頃から知ってくれていた人たちは、『戻ってきた!』みたいな感じですごく喜んでくれました。ボクシングで私を知ってくれている人たちは、私がキックをやっていた事を知らない人も多かったりするので『大丈夫なのか』って心配する人もいれば『え? ボクシングだけやっていてほしかったです』って言う方たちもいて」 ――ボクシングとキックボクシングのファンで、それぞれ意見に違いがあったんですね。 「日本ではボクシングと他の競技の掛け持ちが禁止なので、そういうところも含めていろんな意見を聞けました。でも自分が今住んでいるのはニューヨークなので、JBCも抜けているし、試合をどんどんやっていきたいという気持ちがありました。あと何年かで悔いなくやりたいと考えると、こうやって出場できる機会をもらえて本当に良かったなと思います。あと、RISE事務所に最初に来た時に友だちを売り込みに来たら、結局自分が出ているっていうのも面白いかなと思っています(笑)。20歳で上京してきてTARGETでお世話になって、今試合に出るっていうのは、運命というかご縁も感じています」 ――“闘う”という部分では他にも選択肢があったと思うのですが、MMAも経験したことがある中で、改めてキックボクシングのRISEを選んだ事に具体的な理由はありますか? 「やっぱり競技性が高いというのが1番強くて、実は海外ではMMAのオファーがあったんですけど、そっちに出てしまうと契約の縛りがあるので、多分他の競技に出れなくなってしまうんですよ。っていうのを考えた時に、自分がMMAとボクシング以外で心残りがあったとしたらキックボクシングだったんですよね。『もうちょっといけたんじゃないか』っていう心残りがあった競技でもあったので。  ボクシングに転向してからも海外のスパーリングパートナーとして呼ばれて、キックボクシングとかの打撃をやっていく中で、『あれ、本当はまだできるのに』みたいに思うところもあったんです。その中で芽依(宮本)とか友だちも出ているっていうのもありますし、RISEの競技性の高さやレベルの高さを感じた時に、日本でやるならRISEに出たいなと決めました。  昔からの関係性もありますし、伊藤さん(RISE代表)のことをすごく尊敬しているので、ボクシングのことも寛容的で『頑張れ』って言ってもらえる中で、キックにも挑戦させてもらえるっていうのは安心感がありました」 ――元々の伊藤代表との関係性というのは、格闘技を始めたきっかけがTARGETだったからですか? 「元々は20歳の時に人生を変えたくて、ハワイに格闘技をやりに行って、その後に上京することになるんですけど。『日本の方が女子格闘技が盛り上がっているから東京にいた方がいいよ』っていうアドバイスをもらって、そのまま東京に上京するときに、私が鹿児島出身で薩摩3373さんが先輩なので、いくつかジムの候補があったんですけど、そのままTARGETに行ったらみんな良くしてくださって。  まだアマチュアで4戦しかやっていないペーペーで訛りもすごい20歳の小娘だったんですけど、そこからMMAにいったりジムが変わったりボクシングに転向したりしたんですけど、節目でご挨拶をさせてもらっていたので関係性は続いていたんですよ。練習をしにジムに行ったりしていて状況や近況は全部分かっていて、あとは自分のボクシングのトレーナーがTARGETでボクシングのコーチをやっているというのもあって、その人とも仲が良くてっていう。  ずっと良好なリレーションシップがあったので、そういう意味でも安心だなと思えました。海外ではいろんな契約の問題とかで試合ができないというところで、ビザのスポンサーや興行主とかと難しい問題があるので、だったら安心できるし信頼できる人と一緒にやりたいなっていう気持ちが大きかったです」 ――20歳で格闘技をハワイで始めて、キックボクシングもMMAもやって、ボクシングでは2階級制覇もしていますが、それでもまだまだモチベーションを高く保ち続けられている秘訣は何ですか? 「やっぱり格闘技に人生を変えてもらった部分がすごく大きいですね。本当に不器用でそんなにセンスもないんですけど、やり続ける事とか前向きだったり諦めないところが他人よりすごくあって、自分がこんなに長く続けることは、自分含めて周りも思わなかっただろうと思います。  人間としても年々歳をとって子供も生まれて、体力が落ちてきたりして若さに負けてしまうところもあるかもしれないし、年齢的に考えるとあと数年でピークかなっていうのも自分でも分かっています。だけど経験と人間としての成長力が増してきて、まだ練習もしっかり頑張れていて、新しいことをまだできるようになったり強くなっているので、好奇心や向上心が人より高いのかもしれないです(笑)」 ――そういう部分は、日本を飛び出してニューヨークに拠点を変えたというのもそこに繋がっているんですね。 「そうですね。ちょっとネジが飛んでいるみたいな(笑)。英語も喋れないのによく娘と移住したなと思います」 ――言葉の壁などあると思いますが、ニューヨークでの生活はどうですか? 「ほぼゼロベースで娘と一緒に行ったんですけど、娘は日本人学校にいれていないので、“ニューヨーク生まれ”って言われるくらいネイティブに喋れるようになりました。あとは日本で格闘家として生活をしていって娘を育てるとなった時に、娘には自分と違った教育とかをさせたかったっていうのがあって、教育とかも考えると時間が全然なくて。  自分が本当にやりたいことで娘を今10歳まで育てたんですけど、自分の人生でもあるけど娘の人生でもあるので、自分が一生懸命人生をかけてきてやってきた事で娘にも良い恩恵を与えられたらと思った時に、日本で長年頑張るというのはそれこそモチベーションとか、これ以上同じような感じでやっていくのが限界だったので、辞めるかどうするかと考えました。  その時に1番自分が目指していたビッグマッチとかアメリカでやっていきたいという気持ちと、アメリカに移住すれば良い教育環境で自分がやりたいことで娘もハッピーになれるんじゃないかなって思ったんですよね」 [nextpage] 自分がどうアジャストして動ければいけるか ――ちなみにキックの試合に向けての練習というのは12年ぶりになりますか? 「12年ぶりです。ちょっとだけ夏にやりましたけど」 ――ボクシングの試合に向けて追い込むのとは違いますか? 「全く違いますね。新入りのつもりでやっています(笑)」 ――具体的にはどの辺りに違いを感じますか? 「間合と重心が全く違うので、正直もっとボクシングのテクニックを使いたいんだけど、そうするとローキックでやられちゃうし。今度は蹴りを重視するとボクサーがキックで対抗したところでっていう感じなので、その上手い塩梅を狙いつつ、元々やっていた経験があるので、そこの感覚をちょっとずつ取り戻しています。ニューヨークはムエタイが流行っていてキックボクサーがほぼいないので、向こうで練習してきたんですけどテンポが全然違うので、一気に今週2回スパーリングをしました。昼夜昼夜みたいな(笑)」 ――いろんな所に行って練習していますよね。 「行ってます。同じ階級とか少し小さい階級の選手とかもいるんですけど、テンポの速い選手たちとバンバンやって慣らしていってます」 ――まだ残り1週間くらいありますが、いつぐらいまでスパーリングをするんですか? 「ガチのスパーリングはとりあえず金曜日(24日)が最後になっているんですけど、軽く慣らしでエリカちゃん(神村)とか芽依(宮本)が付き合ってくれるので、ずっと対人練習はして感覚だけはしっかりやっておけば問題ないかなと思っています。スタミナも問題ないので」 【写真】シュートボクサーとして2011年8月に神村エリカと対戦している吉田――心強いメンバーがサポートしてくださっていますね。 「だから最初にRISEに出ようってなった時も1回聞きましたね。『大丈夫かな? いけますかね?』みたいな。エリカちゃんとは20歳から1番付き合いが長いので『ぶっちゃけどう思う?』って相談して、『やる気があるなら上目指しましょう』って感じで言ってもらえて。彼女に言われるとちょっといけそうな気がするんですよね(笑)。何が足りなくてどうなのかっていうのもあったので、日本に帰るまではキックボクサーとスパーリングができていなかったので心配な部分があったんですけど、アジャストできてきました」 ――ファイトスタイルはボクシングで培ってきたパンチを主体としたスタイルになりますか? 「どっちもできるようにという感じで、3つぐらいパターンを用意しています。手数が多くて乱打戦になると思うんですけど、セコンドの指示は経験上聞けるし相手のセコンドからの指示も入ってくるので、その中で3パターンくらい用意していて、それに1番あったものを選んで1ラウンド目もしっかり取れれば、2・3ラウンドは自分の動きができるのかなっていう。3ラウンドしかないのでそこの判断ですよね」 ――ラウンド数の違いは戦術的な部分で変わってきますか? 「そうですね。5・6年くらい10ラウンドでしか戦っていないので。でも逆に試合感も戻るし良い経験になるかなと思います。3ラウンドしかないっていう中で決め切るとかもそうですし、逆に2分しかないと動きが雑になってしまうから3分はあった方が良いし、自分のスタミナは圧力とかフィジカルもある方なので、逆に相手が削れてくれて良いかなと思います」 ――相手の美斬帝選手の印象はありますか? 「長くずっとやっているのが分かりますね。映像を見させてもらったんですけど、調子良く乗せないようにしたいです。波に乗ると長いリーチでパンチを打ってきて、6オンスなので当たれば効くだろうし、警戒しなければいけないところはあります。でも色んな人が映像を見て分析してくれたり、自分も映像を見たりして、あとは自分と照らし合わせながらやっていこうと思っています。相手がどうなっているかよりも、今回は自分がどういう風にキックボクシングにアジャストして動ければいけるかっていうのを考えています」 ――自分の動きができればという感じですね。 「12年ぶりというのもあるので、やってみないと分からないところもあるんですけど、すごく良いファイトキャンプもできているし体調もすごく良いです。久しぶりに52.5kgに体重を落とすんですけど、52kgでも落とせそうな感じがしていて、適正は52kgかもしれないなと感じています」 ――ボクシングでランキング1位に入っている状況ですけど、今後も定期的にRISEに参戦していきたいという気持ちはありますか? 「その気持ちはありますね。やってもいないのに大口も叩けないんですけど(笑)。やっぱりテッサ選手が王者で今日本にベルトがないという事で、愛三(小林)ともこの間会って喋っていたんですけど、出るからには盛り上げたいなと思うので、自分がしっかりアジャストできればそこも狙っていきたいです」 ――今回初めて吉田選手の試合を生で見るお客様もいらっしゃると思うのですが、吉田選手のどんな部分を見て試合を楽しんだらいいですか? 「打ち合いはガンガンいって引かないという部分と、17年のキャリアと、ずっとやってきたボクシングのテクニックも見せられたらいいなと思っています」 ――最後にいつも応援してくれているファンの皆様にメッセージをお願いします。 「本当にいつも応援してくださっているファンの皆様には感謝しかないです。どんどん挑戦して進化していっているんですけど、それでも進みたい道に『悔いなく頑張れ』っていってくれているファンの皆様ばかりで、その人たちや娘にも背中を押してもらいながらここまで来れた17年です。このまま走り切りたいなと思っています。また応援よろしくお願いします」
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