(C)Jeff Bottari/Zuffa LLC/UFC
2019年10月26日(土)シンガポール・インドア・スタジアムにて「UFC Fight Night: Maia vs. Askren」が開催された。
メインイベントで実現したデミアン・マイアとベン・アスクレンによるグラップラー対決は、マイアが3Rリアネイキドチョークで一本勝ちして勝負が決し、セミメインイベントとして行われたマイケル・ジョンソンとスティービー・レイのライト級マッチは3Rフルラウンドのバトルの末、レイがマジョリティ判定勝ちを収めた。
次回、UFCは日本時間11月3日(日)に米国ニューヨーク州ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンにて"UFC 244"を開催する。ホルヘ・マスヴィダルとネイト・ディアスが激突するメインイベントのウェルター級マッチほか、ミドル級のケルヴィン・ガステラム対ダレン・ティル、ウェルター級のスティーブン・トンプソン対ビセンテ・ルーケなど激闘必至の高カードが多く予定されている。UFC公式サイトではコーリー・アンダーソン対ジョニー・ウォーカーがトリを務めるプレリムの全試合をライブ配信予定。
【メインイベント】
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— UFC (@ufc) October 26, 2019
メインイベントではウェルター級・5分5Rで、ブラジリアン柔術の強豪デミアン・マイア(ブラジル)と、元五輪レスラーのベン・アスクレン(米国)が対戦した。
マイアは2002年、2003年、2005年コパドムンド黒帯優勝。05年にはムンジアルでもメイオペサード級3位になるなど、柔術界で名を馳せた後、MMAに転向。2014年5月から2017年5月のホルヘ・マスヴィダル戦までUFC7連勝をマークするなどMMA27勝9敗。
2017年7月にはタイロン・ウッドリーを相手にUFC世界ウェルター級王座に挑戦したものの判定負け。続くコルビー・コヴィントン、カマル・ウスマンに判定負けで3連敗を喫したが、2019年は2月にライマン・グッドに一本勝ち、6月にアンソニー・ロッコ・マーティンに判定勝ちと現在2連勝中だ。
対するアスクレンは、NCAAディビジョン1で2度王者となり、オールアメリカンに4度選出されるなどカレッジ・レスリングで活躍し、2008年北京五輪ではフリースタイルレスリングで米国代表となっている。MMA19勝1敗。
BellatorとONEで世界ウェルター級王者に輝いた後、2018年11月、UFCとONEとの間でデメトリアス・ジョンソンとのトレードの形でUFCと契約。
2019年3月のUFCデビュー戦でロビー・ローラーと対戦し、パウンドでTKO寸前まで追い込まれるも、1R終盤にブルドッグチョークで見込み一本で逆転勝ち。
同年7月の前戦では、ホルヘ・マスヴィダルと対戦し、アスクレンのタックルにマスヴィダルがカウンターの跳びヒザ蹴りを合わせ、UFC史上最短となる開始5秒の失神KO負けで、キャリア21戦目にして初黒星を喫していた。
マイアの柔術は、上でも下でも相手を抑えてその際で絞め・サブミッションで極めるグラップリング。ガードになってもパウンドがある中で護身し、相手の姿勢を崩しスイープを狙う。
アスクレンのグラップリングはフォークスタイル・レスラーのコントロール。テイクダウンからトップポジションを奪い、身体を使って抑え込みながらパウンドを打つことが可能だ。下から脇を差して煽るマイアのスイープの展開にも「レスリングの展開」と自信を持っている。そしてその展開に持っていくスタンドで優位に立つのは?
▼ウェルター級 5分5R
〇デミアン・マイア(ブラジル)
[3R 3分54秒 リアネイキドチョーク]
×ベン・アスクレン(米国)
1R、オーソドックス構えのアスクレン。サウスポー構えのマイア。右ジャブを突くマイアに組み付くアスクレン。2度突き放すマイア。3度目は四つ組みもヒザを互いに突き、続く組みもマイアは突き放す。
左を差したマイアだがテイクダウンにはいかず。右でーバーフックするアスクレンだが突き放すマイア。続けてスタンドでがぶるアスクレンだが、マイアは頭を抜く。
アスクレンの右に左を当てるマイア! アスクレンもクリンチから右アッパーを連打する。中間距離になると左ミドルも当てるマイア! アスクレンはシングルレッグからバック狙いつつ正対するマイアをボディロックからテイクダウン! 跳ね上げるマイアだが返せず。
下からマイアはストレートアームバー狙い。さらに足関節狙い。またいで外したアスクレンは亀のマイアに鉄槌もゴング。
2R、蹴りから左右を突くアスクレン。組み付くがマイアは左で差して突き放す。マイアの左ストレートに右アッパーを合わせるアスクレン。圧力を強めるアスクレンは右で差すが離れる。
右目尻周辺から出血するマイアは肩で息をする。しかし右ジャブ。互いに前手を触りながら右ストレートのダブルはアスクレン! 下がるマイアだが打撃を浴びる。マイアもジャブを突くが上体が立ったところにアスクレンはダブルレッグテイクダウン!
下のマイアは腕十字、三角絞め狙いからオモプラッタ! アスクレンを前転させて上に! しかしアスクレンも下から上体立て、スイッチ。下になったマイアはキムラロック狙い。しかしまたいだアスクレンが胸で圧力かけてパウンドでゴング。
3R、詰めたアスクレンにニンジャチョークを狙うマイア。しかし左で差して後方にそり投げはアスクレン! しかしマイアもシングルレッグから立つ! クリンチからアッパーはマイア。さらにテンカオも当てるが圧力かけるアスクレン。腰にくみつき手がかかるがマイアは切る!
アスクレンは高いダブルレッグも腹下に置くマイアが凌ぐと、右を後ろ頭にかけたアスクレン。突き放すマイアは右ストレートをヒット! さらに右ジャブ。
アスクレンは詰めるも両脇を差すマイア。ならばと首投げの形で右で差した腕を頭後ろに回し、さらに右足をマイアの左足に外掛けしたアスクレン。その手を外して正対したマイアの左足にシングルレッグから今度は左手を肩口にかけて呼び戻す形でテイクダウン!
しかしすぐにマイアが右で脇差し、下から跳ね上げてスイープ! 外ヒールフック狙いから立ち上がり上に! そのままマウントを奪うと背中を見せてヒザ立ちの亀になるアスクレンのバックを奪い、すかさず4の字ロックからリアネイキドチョークへ! 左手を喉下に右手を組みたいマイアだが、その手を掴むアスクレン。クラッチできないマイアは、ワンハンドで肩を抱き絞め上げると、アスクレンは力なくマイアの腿を1度タップした。
勝者はケージの上でガッツポーズをしてから、敗者のもとに駆け寄りハグ。3連勝を決めたマイアは試合後、「打撃戦になると思っていた。世界最高のグラップラー相手に削り合いになると思っていたよ」と語った。
デミアン・マイア「アスクレンはハーフガードから動くのを待っているだろうと思ったから、困惑させようと他のことを練習していた」
「今回の試合は自分にとってかなり興味をそそる試合だった。どうなるかまったく分からなかったしね。スタンディングではうまくやれていたと思うし、自分が下になったときは向こうが手強かった。彼は素晴らしいレスラーだけど、こっちはもう何年もやってきた柔術のトレーニングで使うトリックを生かせた。向こうは自分がハーフガードでさっと動くのを待っているのだろうと思ったから、困惑させようと他のこと(煽りから足関節スイープなど)を練習していたんだ。自分の打撃はうまくつながっていたと思うし、向こうもいけていたけど、こっちの方がより効果的だったから、このまま攻めていけば自分より相手の方が早く疲れるだろうと考えた。自分にとっては最高の勝利。個人的には彼も自分も最高のグラップラーだと思っているし、グラップリング技を披露する真のグラップラーだと思っている。ただ、たったひとつの技を効果的に使う俺のようなヤツはいないはずだ。そして彼は主にレスリングの代表格だ。つまり、面白い対決だったわけだ。何を期待すべきか分からなかったけれど、自分の戦いはとても信頼している」