2025年9月3日、新K-1プロデューサーに就任した須藤元気。プロデューサーとして迎えた最初の大会である9月7日に東京・国立代々木競技場第二体育館で開催された『K-1 WORLD MAX 2025~-70kg世界最強決定トーナメント・開幕戦~』を終え、何を思ったか。プロデューサーとしてこれからやろうとしていることとは?
『ゴング格闘技 No.340 2025年11月号』に掲載されたインタビューを前編・中編・後編の3回に分けて特別掲載!
K-1とKrushのヒエラルキーが必要
【写真】後楽園ホールで開催されているKrush──軸を作って、そこから広がりを持って行けば分かりやすい世界観は構築できる可能性がありますね。それを考えると、試合数にぶち当たるのは当然かもしれません。大会数を増やすことは?
「来年の枠組みは、すでにほぼ出来上がっていると聞いていますので、ここから増やすことはないと思いますが、K-1とKrushのヒエラルキー(階層性)が必要なのではないかと考えています」
──簡単に言うと差別化ですか。
「Krushの大会名に、すべてK-1をつけるとか」
──K-1 Krushとかですか?
「例えば、そんな形です。あとはK-1JAPANにするとか。Krushは日本人中心の大会にして、その中から選ばれた選手がK-1に出場して海外の選手と戦う。そういうことをもっと明確に打ち出してもいいのかなと思っています」
──序列を分かりやすく提示するのは、見る側に訴求しやすいですね。これまでは、Krush王者になったから次はK-1王者になると発言する選手もいたり、KrushはK-1の下じゃないと反発することもありました。
「それぞれプライドを持っていていいと思いますが、目的を明確にした方がみんなに伝わりやすいと僕は思います」
──それにはピラミッド構造が一番ということですね。
「あくまでも僕の案なので何も決まっていませんが、あとは自主興行も考えています」
──自主興行?
「K-1の名前を貸していただいて、K-1EXPOをやりたいなと。物事を大きく変えるには非論理的なことが必要なので、既存の価値観を壊さないといけない。そのためのEXPOですね」
──ファイター同士の騎馬戦をやりたいと発言していましたが、それも一環だと。
「赤城乳業の『ガリガリ君リッチコーンポタージュ味』って一時期話題になったじゃないですか。アイスにコーンポタージュ味を使おうと思った発想力、それを商品化まで持って行った経営陣、そして話題になってある程度ヒットしました。本当に素晴らしいと思いましたね。なんだこれ? という衝撃が、マッチメイクにおいても必要で、それがライト層に届くことに繋がる」
[nextpage]
個性が見えるカードも加えていく
──個性豊かな選手の起用は、衆目を集めるための基本の戦略ですね。
「昔の話ばかりで恐縮ですが、ブルース・リーを真似して黄色のトラックスーツを着て出てきた選手とかいたじゃないですか」
──トニー・バレント選手ですね。
「アフロヘアーでコヒさん(小比類巻貴之)と戦ったカンフーの選手。あとはグルグル回って回転技ばかり出してくるセルカン・イルマッツ選手とか。ああいう覚えやすい選手が出てくると、注目されやすいですよね。もちろん実力もないとダメなんですけど、本格派と異色を対決させるとか。そういう組み合わせも可能になってくる」
──試合前からワクワクする対決ですね。
「格闘イベントはスポーツでもあり、エンターテインメントの側面があります。AメロがあってBメロがあって、サビにつながる音楽のように、お客さんを楽しませるように奏でないとダメなんですよね。今は平均的なカードが並んでいるように見えるので、個性が見えるカードも加えていく必要があると思います。例えば空手家ならば、道着で試合をするとか。ビジュアルで分かることも提示できればいいなと思います」
──空手着で試合するとルールがとか、いろいろな問題は浮上すると思いますが、昔は普通にやっていましたね。
「まあ、そうしたルール上の問題が出てくるのでEXPOかなと思ったのですが、まずお客さんをワクワクさせたいですね」
──ぶっ壊してきますね。
「既存の価値観を壊すために、僕はK-1プロデューサーになりましたので、忖度なく言いたいことをいって、できる範囲でやっていきたいと考えています」
──須藤プロデューサーは現役時代もそうですが、価値観を壊すことをテーマにしていましたよね。
「僕自身、今回のK-1プロデューサー就任については何か楽しいことができればいいなと思ったので受けさせてもらいました」
──K-1の歴史は破壊と創造なので、まさに今回の就任は適任なのかもしれません。
「俯瞰で見る目と話題性とニッチな視点の両方を持つようにすれば、大きく間違うことはないかなと思っています」
──成功するために必要なことは何ですか。
「K-1の価値を高めることができれば、すべてが解決していきます。魅力のあるイベントになれば主力選手が抜けることも、契約問題が指摘されることもなくなるはずです。諦める前に、考えられるすべてのことをやってみませんか? というのが、僕からの提案です。やれないことはない。ただやっていないだけだと、僕は思っています」