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インタビュー

【RIZIN】フライ級GP1回戦勝者・扇久保博正「僕にとってタックルは逃げじゃない」×ホセ・トーレス「この気候がなければ体重を落とせていなかった」=『超RIZIN.4』

2025/07/30 15:07
 2025年7月27日(日)さいたまスーパーアリーナにて『超RIZIN.4 真夏の喧嘩祭り』が開催され、本戦第1試合から第5試合まで、「RIZIN WORLD GP 2025 フライ級(57.0kg)トーナメント 1回戦」が行われた。  当初の8人トーナメントから、2選手が追加されて変則の10人トーナメントとなった今回のフライ級GP。9月28日の名古屋・IGホール大会での準決勝に進むのは、1回戦5人の勝者から4人のみ。「ファンおよび識者による投票で1人が脱落する」と事前に発表がなされている。 ▼第1試合 RIZIN WORLD GP 2025 フライ級トーナメント 1回戦 5分3R〇元谷友貴(アメリカントップチーム)[判定3-0]×ヒロヤ(ジャパントップチーム)  第1試合では、バンタム級から9年ぶりにフライ級に戻した元谷が、篠塚辰樹TKOから米国合宿帰りのヒロヤと対戦。元谷がスタンドでテイクダウンのフェイントからジャブ&ロー、アッパーも織り交ぜて組ませず。近づいても首相撲、バック奪取。最後は打ち合いでも上回り、判定3-0で完勝した。 ▼第2試合 RIZIN WORLD GP 2025 フライ級トーナメント 1回戦 5分3R×ホセ・トーレス(米国)[判定0-3]〇扇久保博正(THE BLACKBELT JAPAN)  第2試合では、元UFCで神龍誠に判定勝ちの強豪トーレスを初戦で指名した扇久保が、再三のシングルレッグからテイクダウンでコントロール。切られても組み続けるタフファイトを制し、判定3-0で熱戦を勝利。 ▼第3試合 RIZIN WORLD GP 2025 フライ級トーナメント 1回戦 5分3R〇伊藤裕樹(ネックス)[判定3-0]×エンカジムーロ・ズールー(南アフリカ)  第3試合は、ララミーに打ち勝ち神龍に敗れた伊藤が、堀口と渡り合ったズールーを指名。蹴りも混ぜた長い距離のズールーに対し、伊藤はステップと回転の速いパンチで、ズールーの組みも完封。判定3-0で勝利した。 ▼第4試合 RIZIN WORLD GP 2025 フライ級トーナメント 1回戦 5分3R〇アリベク・ガジャマトフ(ダゲスタン)[3R 2分39秒 TKO] ※左フック→鉄槌×征矢 貴(THE BLACKBELT JAPAN)  第4試合は、5勝無敗のダゲスタン戦士ガジャマトフと、ドッドソン戦の勝利でトーナメントに異例の追加参戦を果たした征矢が対戦。榊原CEOの「塩試合禁止令」にもかかわらず早々にタックルを仕掛けた征矢が組みを混ぜての打撃で前進も、ガジャマトフが拳で打ち勝ち、3RTKO勝ち。 ▼第5試合 RIZIN WORLD GP 2025 フライ級トーナメント 1回戦 5分3R〇神龍 誠(神龍ワールドジム)[1R 2分55秒 ギロチンチョーク]×山本アーセン(KRAZY BEE/NAUGHTY HOUSE)  そしてGP最後の第5試合では、ともに組みを武器とするなか、神龍がアーセンに両差しで組まれるとジャンピングガード。最後はクローズドガードに入れてのギロチンチョークを極めて貫録の一本勝ちを収めている。   GP第2試合後の勝者・扇久保、敗者・トーレスとの一問一答は以下の通り。 扇久保博正「僕のスタイルを最後まで貫こうと」 ──ホセ・トーレス選手との試合を終えた、率直な感想をお聞かせいただけますか。 「そうですね、あの勝てて良かったです、はい。ちょっと疲れました」 ──その疲れは、トーレス選手のスタミナであるとか、3Rやりきったことからとか、どういった部分からですか? 「そうですね。寝技で今日は一本取ろうと思っていたのですが、腰が強かったですね」 ──ホセ・トーレス選手と実際に戦って、試合前のイメージと違ったところなどあったら教えていただけますか。 「思ったより、腰が強かったです」 ──腰の強さ以外は特に、想像と変わりないということですね? 「そうですね、はい」 ──フライ級の1回戦突破した選手は扇久保選手にインタビューしている現時点で、元谷選手、伊藤選手です。この結果をどう思いますか。 「思った通りの人が勝ち上がっているなという感じですね」 ──自ら望んで対戦したトーレス選手と15分戦ってみて、自分が“もっとこうできたら”というようなものはありましたか。 「本当に今日は寝技に自信があったので、一本取りたかったのですが、やっぱりディフェンスと、あと腰ですね、すごく強く感じました」 ──打撃にフェイントも織り交ぜていましたが、冷静に戦えていましたか。 「打撃散らしながら要所要所でタックル入って寝技に持っていこうと思っていたので、もっともっと背中を着けさせて、もっと攻めたかったですね」 ──ヒザを触るフェイントは、試合前から出そうと考えていましたか。 「そうですね、はい」 ──5人中4人だけが準決勝進出できます。ご自身はそこをどう考えていますか? 「どうですかね……? ちょっとそこはわからないですね、でもいけるんじゃないかなと思います」 ──トーレスという、強い対戦相手によって拮抗した試合になった部分もあるでしょうか。分析としてはプラスに捉えていますか。 「まあ、トーレスに勝てたということは自分の中でも大きいんですけど、まああとはファンが決めることなんで、そこはしっかり待とうと思います」 ──2回戦は9月と言われていますが、コンディションは問題なさそうですか。 「怪我はないので、ここからまた減量も始まるので気を抜かずにやっていこうと思います」 ──なかなかテイクダウンできなかった心境はいかがでしたか。「なかなか倒せないな」あるいは「組めているから大丈夫」なのか、どんな感じでしたか? 「そうですね、あそこから右手ごといつもなら一気に引っこ抜いてテイクダウンできていたのですけど思ったより差し返しがすごく強くて、そこで凌がれたっていう感じでした」 ──それでもしつこく組みに行った心境はどのようなものですか。 「あれが僕のスタイルなので、とにかく最後まで貫こうと思っていました」 ──食べるほうの「塩」をプロデュースし、アピールはネタ的な部分もあると思います。ファイトでも自分のスタイルを「塩を楽しんで味わってもらいたい」というのはありませんか。 「そうですね、でも本当に、あれが僕のスタイルなので。あそこからもっともっと、ホセ・トーレスも強いので、もっとあそこからフィニッシュできるように、ここからまた頑張らないとなという気持ちがあります」 ──技術解説をやって魅力をやっていただけませんか。 「自分でですか? なるほど」 ──「塩がおいしい」ところを伝えてほしいです。 「わかりました、はい」 ──試合前、ホセ・トーレス選手は過酷な減量が話題になりました。実際に組み合って、あるいは見合って彼の減量をどう感じましたか。 「最初、リング上がって見たとき、昨日よりすごい巨大化しているなとは感じました(笑)」 ──やっぱり嫌ですか。 「嫌ではないですね。昨日は同じ体重だったので、そこは関係なくやりました」 ──組み合ってみていかがでしたか。 「組み合って、本当に思ったより腰が強くて力も強かったですね。やっぱりトップファイターの力を感じましたね」 ──今回トーナメントのプレッシャーやブランクのプレッシャー、年齢的なプレッシャーなど、何か感じたものがありましたか。 「全部プレッシャーありましたね(笑)。常に全部プレッシャーあるんですけど、そこは乗り越えてやっていこうと自分で決めているので、そこはもう覚悟していますね」 ──ほとんど休まずに2回戦への調整に入りますか。 「1週間ぐらいちょっと休んですぐ練習に復帰したいと思っています」 ──最後10秒になったときに、シングルレッグでなく、あそこは殴り合うと決めていたのですか? 「そうですね、殴り合ってました? 最後ちょっと記憶がないんですけど、最後行くしかないと思って戦っていました」 ──海外の試合もですが、最後に組みに行くと、逃げているように捉えられてしまうので、殴り合うのが流行っていると思います。それは意識にありましたか。ここで勝ち上がるためにも。 「それはないです。僕にとってタックルは逃げじゃないので。攻めなので。そこは全然ないですけど、今日は無意識で殴っていたのかもしれないですね」 ──次戦への意気込みやファンへのメッセージをお願いします。 「今日はフィニッシュしたかったですけど、2回戦はフィニッシュできるように、もっと頑張ります」 [nextpage] ホセ・トーレス「片足を掴んで倒したころでその先が何もなかったから──」 「今まで負けた後にインタビューを受けたことがないのでなんだか新しいですね(苦笑)」 ──試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。 「まだ現実をしっかり受け止めている最中ですが、率直に言えば、自分に対して不満があります。自分自身に関しては、思ったより、自分が望んでいたほどアグレッシブにできなかったですし、本当に言い訳みたいなものを言い出したらキリがないので、あまり言わないようにはしますけれども、本当に今回、体重を落とすのはすごく大変で、それだけはちょっと言わせていただきたいんですけど、実際それも影響したと思うので。  試合自体は、扇久保選手がすごく賢い戦いをしたなと思いますし、非常にテクニカルな試合だったと思います。試合後半で、ダメージにならないだろう、みたいなコツコツした打撃を出してきていて、ああいう細かい部分も、やっぱり自分がアタックする、攻撃をすることを阻むために手を出していたものなので、ああいうものは効果ないように見えて、実はすごく効果があったと思います。本当に素晴らしい選手だなというふうには思いますし、扇久保選手は本当にいい選手だと思う反面、この試合はやっぱり自分が勝ったのかなというふうに思っていましたし、2、3Rにいい打撃を当てていて、彼はサバイブする、生き残るのに必死だったという感覚もあったのですが、そういった中で、まあいろんな現実を受け入れるのに今、時間がかかってるんですけども、まあ体は無事ですので、前を向いて進むしかないと思っています」 ──扇久保選手の対戦前のイメージと実際に戦ってからイメージが違ったところはありますか。 「一つ予想外だったものは、まったく様子見をせずに扇久保選手がボディを狙ってきたことが本当に予想外でした。自分はプレッシャーをかけながら戦うファイターなので、当然そのボディを狙って、ガス欠を狙うっていう部分はセオリーではあるので、非常にそういう部分でも賢いなと思いますし、あの最初の3発、本当に様子見もせず、いきなりボディに直接打ってきたので、そこは完全な予想外で、いつもみたいな動きが見られなかったので、そこにはちょっと面食らったという部分もあります。  その後、1Rの途中から自分は扇久保選手が何やりたいのかに気づいて、そこに対応してから、扇久保選手もハイを入れてきたりとか、対応してきたんですけれども、やっぱり1Rの途中から作戦を変えてからはそんなに僕はダメージはもらってないと思うんです。頭に1、2発ぐらいもらって。あとは足への攻撃だったりはありましたけれども、基本的には何にもされてないな、という気持ちあるんですよね。で、あとはグラップリングの展開でも、もう少しポジションを変えたり、隙間ができるように、自分がミスするように誘うための動きをするのかな? と思ったら、意外とそんなに動かなかった。  テイクダウンしてからもそこに押さえつけるっていうことをしたんですけれどもそこも予想外でしたね。それが自分の柔道だったり、バランスだったりという、その能力があるからこそ動けなかったのか分からないんですけど、もしかしたらカウンターで出すヒザが脅威だったのかも分からないんですけれども、多分彼がクリンチに来た時に、よりダメージを負ったのは自分自身だと思うんですね。彼の方がクリンチを仕掛けてきて。で、そこに自分が打撃を与えて、彼がダメージを受けて、またリセットっていう形になったと思うので、本当に先ほども言いましたけれども、やっぱり現実をちょっとまだ受け入れる作業だっていう感じなので、本当に彼はクリンチをして、賢く戦って、勝ちを得たのですけれども、まあ残念ながら自分としては負けてしまった上に、ちょっとつまんない試合になっちゃったのかなということで、残念だと思います」 ──減量のSNSが注目されたことが、扇久保選手のチームの目に触れ、それで向こうに作戦を変えられてしまった可能性はありますか? 「まあその可能性はあるか分からないですけど、いずれにしろ彼はすごく賢い選手なので、彼はいつも接戦での判定ですごい僅差で勝てる理由は彼が賢いからだと思います。技術で勝っているとかではなく、すごく頭脳で戦うからだと思います。自分も、もし自分自身と戦うのであれば、いろんな予定だったり時差だったり、ウェイトカットだっていう部分を考慮するとプレッシャー・ファイターに対してボディを狙っていくことは自分でもそうやりますし、扇久保選手はそれを実践しました。非常に賢い選手だと思います。  当然メラブ(・ドバリシビリ)とやるんだったら、頭を狙うよりもやっぱりボディから攻めていかなければいけないと思いますし、そういう意味で、彼はもともと賢いし、そういう戦略をやったのだと思います。あとは、日本は本当に美しいところですが、夏で暑くてすごく湿気が多いですが、この気候がなければ自分は体重を落とせていなかったと思います。土曜日に日本に来た時は70キロあったんですけど、そこから毎日、1日2回、朝と夜に走って13キロ落としました。一度もジムで練習はしてません。なのでそういった気候の部分もあって、今回減量できたのですけれども、本当にキャリアのなかで一番辛い減量だったと思います。  一箇所、東京を走っていた道があるんですけれど、すごい上り坂があって。もう本当に最後の一本がどうしてもできず、体がもう、筋肉が動かなくてできないと、途中でやめてしまうかと、もう全部をやめようかなっていうふうに思った時もあるんですけれども、チームと一緒にそこを乗り越えて、日本の坂も乗り越えて、ここまで来れたとは思いますので、本当にとにかく厳しかったですし。あと日本ではフアン・アーチュレッタが体調オーバーして、すごく嫌われているような印象があるんですけれども、アーチュレッタは自分の良き友人なんですけれども、自分と彼は違う。体重は約束したら必ず作ります。そういう思いも込めて今回は戦いました」 ──あの判定はすごく難しいとは思いますが、見ていて思ったことがひとつあり、扇久保選手はすぐシングルレッグに入って、シングルをずっと取れていたので、自分のリズムが作れたかな、と思います。逆にトーレス選手はあそこまで掴ませてレンジとかでコントロールせずに足を取らせたのは、なぜなのでしょうか。 「そうですね。基本的には自分は怠け者なので、そこの対応はあんまりしないという感じだったのですが。でも自分のスタイルとしては、すごく前屈みな前重心のボクシングタイプのスタイルで打撃を出すのが好きなので。あと基本的に自分の前足を掴むというのは一番簡単な作業になると思います。  ただ彼はその、掴んだところで何もその先がなかったという部分がありますので、彼が掴んでる間に自分は何発も打撃を当てて削っていたと思っているのですが。時にはすごく手応えのあるヒザとかも当てましたけど、そこの、彼がしてきたことに対して、自分ももう少し色々とできたら良かったかなとは、後付けで思いますけれど、まあ実際、体が重くて思うように動かなかったという部分はありますので、彼としては、いい拾い勝ちというか、いいように使ったんじゃないかなと思います」 ──今後の展望・目標を教えてください。 「格闘技に関しては、プランは無いですね。ただ、日本にあと3日間いますので、31日に帰国するんですけども。自分としては5月30日に戦って、実家に戻って、で、しばらく休めるかなと思っていたところ、RIZINから電話がかかってきて、すぐファイトキャンプに入ったので、自分としてはまだここのところ全然休めていないっていう部分があるので、本当にあの一日だけでもいいから、何もしない日を作りたいなというふうに思っていて。自分としては、何もしないで食べて太って、気分が良ければ、ええ、それがいいのかなと。そういう日にちが1日でも2日でももらえればいいかなと思いますし。自分はそうする権利があるのかなというふうに思ってますんで。そういう日を楽しみだなっていうふうに思います。  まああとはRIZINの次戦の投票システムがどうなるのかちょっと分からないんですが、もしかしたら敗者復活みたいのがあるのかもしれないという話も聞いていますので、そこに期待をしながら、自分は本当に負けたと思っていないので、あとは自分が今、Xの方で、判定についてトレンドしているという話も聞いたので、そもそも自分がこのグランプリに入れたのも、Xの数のおかげですし、まあ、今回この判定でXがバズっているのだとしたら、またもしかしたらそういうチャンスをもらえるのかなと思いながら、今は過ごします。  追加の情報なんですけど、8月2日は自分の誕生日でして。えっと、23歳でプロデビューしてから10年間、一度も誕生日に家族と過ごしていなくて。今回初めて、10年ぶりに家族と誕生日を過ごせると思いますので、それはひとつの自分に対してのプレゼントだと思ってます。日本でちょっとした休暇を楽しんでから実家に帰って母親の料理を食べて、1週間ちょっと過ごしてからメキシコシティに戻って、次の試合のために準備したいと思います」
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