弥益「(岡田は)どんな逆境でも辛い選択をして、キツいことをやって、這い上がっていく選手」
──岡田選手との試合が決まった経緯を。
「本当に選択肢というか、自分が戦いうるであろう相手のレパートリーの中には(岡田は)完全になかった。もちろん階級も違いますし、出てる団体も違いますし。お互いの状況も鑑みて、思考の外からやってきたオファーではあったんですけど。ずっと岡田選手はここ数年『引退する』と言いながら活動されていたと思っておりますが、その引退を決めたという事実に対して、数年前のことなので、試合の話が出る前だったんですけど、岡田さんという選手が引退を見据えているという事実に、自分はすごく悲しさと寂しさ、そして自身への居心地の悪さみたいなものを感じていました。
さっき岡田さんもおっしゃった通り、自分も岡田さんも大学を出させていただいて、国立の大学院まで出て、なのに殴り合ったりする競技をしているというのが、“国に申し訳ないな”と常々思っているんですけど、そんな中で自分は企業に就職し、格闘技から距離を取った一方で、岡田さんは格闘技の道に全てを賭けて進んだ。その姿に、嫉妬でもなく、ただの憧れに近い感情を抱いていました。なので、そんな選手が強い思いを持って、終わりを見据えて活動しているという事実に、自分は情けなさを感じていたし、岡田さんの気持ちに対してずっとモヤモヤした感情がありました。
この試合のオファーをいただいた時、今までで一番、ボールを受け取ったまま投げ返せずに1週間ぐらい悩みました。だいたいオファーをいただいた時ってその試合のことを考えるんですけど、自分は“岡田さんの最後が自分でいいのか”という不安がすごくあって。岡田さんという素晴らしい選手の最後は自分でいいのかっていう葛藤が非常にありました。ただ、自分自身のことを考えて、(試合から)距離を取って1年以上経っている中で、この引退試合の相手という役割を与えていただいたことで“それなら俺もやりたい”と思えました。とても光栄で、稀な機会をいただけたと思っております。この機会に受けさせていただいて、岡田さんの最後にふさわしい試合ができるよう、今までにないくらい自分を追い込みたいと思っております」
──ファイター岡田遼の印象は?
「ここ数戦、岡田さんも厳しい試合が続いていて。ただその厳しい状況の中でも信じられないくらい頑張る、泥臭さを見せてくれる。岡田さんのイメージって頭が良くて、人間関係もうまくやって、すべてスマートにこなしていそうなイメージなんですけど、試合を見るとどんな逆境でも辛い選択をして、キツいことをやって、這い上がっていく。そういう姿に心を打たれるというか、本当に努力の人だなと感じます」
──久しぶりの試合で、弥益選手自体も今後続けられるのかどうかファンも心配してた感じもあったかなと思うんですけど、ご自身としては今後についてはどのように考えられますか。
「いや、なんですかね、あんまり格闘家としての今後みたいなのは、自分を深く考えてない人間なので。あくまでうん、自分の周りの環境ですとか、あのあとは自分自身の気持ち次第っていうところがあります。今回はありがたいことに試合をするっていう熱量が超えさせていただいたっていう機会なので。試合をさせていただくっていう形ですかね。別に試合しないと生きていけないわけではないので。生きていく上で、うん、なんですかね。活力になるというか、自分の人生を豊かにできるような試合が、もしありがたいことで、あればという形で今後もやっていきたいと思っています」
──どんな試合になりますか。
「どんな試合か……。やっぱり岡田遼の最後の試合にふさわしい、キツい試合にできたらいいかなと思っております」
──弥益選手、今回、平日の開催ですけど、会社側とはお話は大丈夫でしょうか。
「そうなんです。聞いてください。オファーを受けた。で、オファー受けてから、よく見たら平日開催だったっていう。あの、ハメられたと思いました、岡田遼に。まあ本日含めて、あの試合当日、計量でもう三つ有給とかしてますんで、こっちは。この有休3日分を乗せて殴りたいと思います」



