空道
レポート

【空道】日本女子空道の悲願を背負う小野寺玲奈、中井祐樹直伝キムラロックでの秒殺劇は真の世界制覇へのプロローグ

2025/06/02 14:06
全日本空道連盟2025北斗旗全日本空道体力別選手権大会2025年5月25日(日)東京・豊島体育館地下競技場 2025年5月25日(日)東京都豊島区の豊島体育館にて、一般社団法人全日本空道連盟主催『2025北斗旗全日本空道体力別選手権大会』が開催された。  今大会では、ワールドカップ(7月にブルガリアで開催)日本代表に選出されている中上悠太朗・目黒雄太・林洸聖・小野寺玲奈と、今秋日本で開催されるアジア選手権への出場権獲得を目指す国内のトップファイターたちが熾烈な闘いを繰り広げた。  空道ルールは、道着・拳サポーター・頭部防具を着用し、頭突き・肘・膝を含む打撃と、投げ技・寝技によって争う。階級別大会では、身長センチと体重キロを足した数値(体力指数)によって、男子5~6階級、女子2階級にクラス分けを行う。一本(打撃によるKO、絞め・関節技によるタップアウト)のほか、効果=1ポイント、有効=2ポイント、技あり=4ポイントによるポイントの多寡により、勝敗を決し、両者ポイントのない場合は、旗判定で決着をつける。1試合の試合時間は本戦3分+延長3分(+決勝のみ再延長3分)。 ▼女子-220クラス決勝戦〇小野寺玲奈(大道塾帯広支部)本戦 一本 ※腕絡み×西田美玖莉(大道塾日進支部)  2023世界選手権優勝以降、国内では2024体力別&無差別と連覇を重ねてきた小野寺が、今大会でも危なげなく優勝を遂げた。  準決勝では廣田晴香(大道塾富田林同好会)を、決勝では西田美玖莉(大道塾日進支部)を圧倒し、いずれも本戦で勝利。廣田戦では空道の真骨頂ともいえる道着を掴んでの打撃を駆使し、西田戦では、帯広から上京して、日本柔術界のレジェンド・中井祐樹氏から学んだというキムラロックを極めてみせた。 【写真】空道ならではの技術、頭突きを駆使する小野寺(写真は準決勝、廣田戦) 国内では独走状態といえるが、2023世界選手権はロシア&ウクライナの選手が戦争問題により出場しておらず、昨年のヨーロッパ選手権では、小野寺は決勝でロシア人選手に敗れている。小野寺は7月のワールドカップへの出場が決定しているが、この大会には、ウクライナの選手は出場するが、WADAの制約等によりロシア選手は再び欠場を強いられる見込みで、ロシア選手が国際大会の舞台に復帰するのは、2年後の世界選手権からとなる可能性もありそうだ。  空道界において、国際大会での実績国トップ3は、ロシア・日本・ウクライナであることから考えて、小野寺には、まずは来たるワールドカップでウクライナの選手を倒し、続いて次回選手権で、日本人女子選手初となるロシア人選手撃破を成し遂げ、あらためて、欠けたピースのない世界を制したいところだ。 [nextpage] ▼-230クラス決勝戦〇目黒雄太(大道塾長岡支部)延長 優勢勝ち×大西凜駿(大道塾総本部) 【写真】ハイキックに首投げ。目黒が大西を圧倒する 2015、2016、2017、2018、2019、2021、2022、2024年と8大会連続優勝の目黒雄太(大道塾長岡支部)は、U19全日本優勝経験のある山田凌雅(22歳、大道塾仙台東支部)、全日本空道連盟指定強化選手の田中脩斗(21歳、大道塾日進支部)を寄せつけず、決勝では、4歳からの空道歴と、高校レスリング競技実績をもち、大学生時にはキックボクシングやMMAにも取り組み、大学卒業後、大道塾総本部内弟子となった大西凜駿(22歳)にもつけ入る隙を与えず。離れてはハイキック、組めば、上段膝蹴り~豪快な首投げ、寝かせてはマウントパンチ(効果1)と、時間経過とともにワンサイドゲーム度を高め、延長戦終盤には大西を諦めの表情に至らしめた。  目黒は、プレスを掛けて相手を叩き潰すようなスタイルでもなく、堅実にカウンターを拾うようなスタイルでもなく、柔道出身で投げが強いとか、ムエタイに傾倒しているとか、柔術の寝技を網羅しているとかいうようなこともない。ただ、スローカーブのようにタイミングを外す……フッと相手の気が逸れる瞬間をつくって攻め込む、そんな力の抜き差しが抜群に巧いように見受ける。  得てして観る側は、フィジカルや表面的な技術に頼らないこのようなスタイルを〝武術的〟といった言葉で評し、そこに神秘的な身体操作が介在するかのように夢見がちだが、おそらく本人にそういった方向の鍛錬の経験はなく、単純に長年の実戦経験の中で身に付いた、環境適応(エコロジカルアプローチ)型の能力なのだろう。  これで目黒はV9。全日本選手権の開催されなかった2020年(コロナ禍のため)、2023年(世界選手権実施のため)も含めて考えれば、11年間、王座に君臨し続けていることとなる。32歳と、まだまだスピードやスタミナを維持できる年齢だけに、どこまで記録は伸びていくのか。 [nextpage] ▼-250クラス決勝戦〇中上悠大朗(大道塾総本部)本戦 効果優勢勝ち×鈴木浩佑(小杉道場)  昨年(2024年)、空道競技のための稽古を専門に行う大道塾以外の団体の所属選手でありながら、柔道弐段とキックボクシングアマチュア全日本大会優勝の技術を活かし、このカテゴリーの王者となり、話題を呼んだ鈴木浩祐(小杉道場)が、今年も決勝進出を果たした。  迎え撃つ中上悠太朗(大道塾総本部)は、昨年のこの大会をケガ(肩の脱臼)のため欠場していたが、半年前に競技復帰するや、全日本無差別選手権を21歳にして制し、一躍日本空道界の新たな顔となった選手。  ミドルキックで距離を取る鈴木に対し、中上は強いプレスを続け、サバ折り気味の小外刈でのテイクダウン、ヘッドスリップしながらの右フックなどで、攻勢を維持し続ける。本戦のうちに効果2を得て、本戦決着で優勝を決めた。 [nextpage] 【その他の階級の入賞者】 男子260+優勝 松岡陽太(大道塾大田支部) 男子-260優勝 麦谷亮介(大道塾行徳支部) 準優勝 林洸聖(大道塾佐久支部) 男子-240優勝 曽山遼太(大道塾岸和田支部) 準優勝 伊東宗志(大道塾日進支部) 女子220+優勝 小関沙樹 (大道塾仙台東支部)
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