10月13日(日)のONE Championship「ONE:CENTURY 世紀」朝の部で2人の日系女子ファイターが両国国技館で試合を行う。
日本と米国のハーフのジャネット・トッドと、日本とタイのハーフのイシゲ・リカだ。
彼女たちはいかにしてマーシャルアーツと出会い、プロとしてONEで戦うようになったのか。
──2019年2月のONEで、いまや2冠女王のスタンプ・フェアテックスを5R判定負けながら大いに苦しめたジャネット・トッド選手です。トッド選手はお母さんが日本人で厳格な家庭に育ったそうですね。お昼休みのお弁当箱の話もビデオで拝見しました。
「(日本語で)そう。ちっちゃい頃はみんな同じものがいいから。サンドウィッチとかサ、普通持っているのに、私はお弁当箱。ちょっと笑われたし、恥ずかしかった。みんなと違ったから。当時はみんなと同じになりたいと思っていたのね。大人になったら、そんなことはないけど(苦笑)。“なんでみんなと同じになりたい?”と思うけどね」
──そのことについて、当時、お母さんに何か言ったのですか。
「言ったけど、やっぱりまだ弁当箱で(笑)。パンになってもこうして切って弁当箱に入れてました(笑)」
──なかなかのお母様ですね。
「ちっちゃい頃から、いつも日本の勉強とか学校の勉強が厳しかったから。小さな頃はそろばんもやっていましたね。暗算もちょっとできるし。アメリカでもLAでコンテストがあったから、私と妹で出ていました。三段か五段くらいまで行っていたんじゃないかな」
──日本語もお母さまから習ったのですか。
「おばあちゃんやおじいちゃんが日本語しか喋れなかったから、一緒に話して過ごすためにお母さんが日本語を私に教えていたの。土日にアメリカの学校がない日に、一緒に座って漢字とかも習ったけど……使ってないとサ、忘れちゃうから(苦笑)」
──お父さんやお母さんは何かスポーツやっていたのでしょうか?
「お母さんはやっていないね。お父さんは大学でジムナスティックをしていました。だから私も高校生から体操をやって。床と平均台。長い手足では体操はあまり良くなかったけど、ムエタイをやるためにバランスが良くなったのは、体操から来たんだとたぶん思う。それにお母さんが教えてくれた、それと同じ規律を持ってトレーニングをしていました」
──ムエタイでは“みんなと同じ”でなくてよかった?
「そう、“みんなと同じ”じゃない方がいい。私にはとてもよかったの」
──そのムエタイでは“殺しのキッス”センティアンノーイさんに習ったことがあるそうですね?
「はい。私のコーチが、センティアンノーイから習っていて、アメリカに2回くらい来ていて、自分は2015年に1カ月くらいタイに行った時に習いました。でも難しくて……体が壊れるかと思った。3時間から4時間の長いセッションで、朝も夕方も。長いセッションにあんまり慣れてなかったから難しくて、それでもやったから!」
──センティアンノーイさんは元気?
「元気元気! 5月の戦いでコーチと一緒にコーナーにいてくれましたよ」
──センティアンノーイさんと言えば、ラモン・デッカーとルンピニーや日本でもすごい試合をしています。ご覧になったことはありますか?
「うん。動画で。だから私も長いセッション、頑張ったよ」
──いまはフルタイムファイターなのですか?
「宇宙工学を大学で勉強して、物理学の延長みたいな学問なんですけど、それをいまでも仕事にしています」
──ムエタイをやりながら宇宙工学のエンジニアの仕事もしている? 180度違う仕事ですね。
「違う。でもそれでバランスが取れていると思う。ムエタイをやっていると、あんまり頭で考えずに体が動くけど、仕事では論理的思考が求められるから、そのバランスが私にはいいんです」
──仕事をしながら練習はどれくらい?
「毎日4時間くらい。土曜日はちょっと少なくて2時間から2時間半くらい。夜の6時くらい10時までやっている」
──毎日4時間? センティアンノーイさんの指導みたいじゃないですか。
「はい(笑)。仕事場からジムが10分の距離なので出来るのかもしれない」
──トッド選手はONEでリングとケージ、オープンフィンガーグローブとボクシンググローブ、すべて経験してますね。どう違うと感じていますか。
「ケージはリングより広いし、リングと変わってポールがないからこうやってコーナーに……」
──詰められない?
「そう、詰められない。もうちょっと足を使わないといけない。MMAグローブとボクシングのグローブの違いは、ブロッキングをもっとしっかり練習しなくてはいけない」
──ブロッキングでも隙間を縫ってねじこんでくるときも。距離で外したりは?
「距離で外せるけど……私はやっぱりどうしてもムエタイでも前に出るスタイルだから」
──ボクシンググローブだと?
「パンチをしたって拳が痛くならない。重さも出る。小さいオープンフィンガーグローブだと、こうやってしっかり返してパンチを当てないと、指とか痛くなっちゃう」
──トッド選手はどちらが好き?
「両方。どっちでもいいの。私はファイターだから」
──ONEが出来たことで、女子のキックボクシングも少しずつ状況が変わっていると感じますか。
「はい。昔はあんまり人気がなくて。今はアメリカはまだ発展途上で、たくさんの子供がトレーニングし始めていて市場が大きくなって盛り上がる過程にあると思います。これから目指す人のために、そのロールモデルになれればいいと思う」
──トッド選手のこれからの目標は?
「負けるのが好きじゃないから、スタンプと再戦したいですね」
──日本で試合することについては?
「すっごい嬉しい! 母の家族もいるし、やっとここで戦えて本当に嬉しい」
──日本の女子格闘技の状況は知っていますか。
「知ってる。KANAうまいね。練習したことはないけど。でもアメリカに来たのは知ってる。1カ月くらいいたでしょ。会いたかったな。あの子、すごいうまいと思う。それに日本の伊原道場で練習したの。エバタツィンズ、すごいね! 速くて、教え方も上手くて」
──トッド選手がそんなに日本の格闘技も知っているとは驚きました。最後に日本のファンにメッセージを。
「皆さん、朝早いですけど、応援して私をサポートしてくれたら嬉しいです! 会場やテレビで、日曜ぜひ見てください!」