2025年5月22日(木)&23日(金)の2日間に渡り20時から、4階級32名の選手が出場するトーナメント、『ROAD TO UFC シーズン4』オープニングラウンド(U-NEXT配信)が開催されている。
日本からは8選手がトーナメントに出場。また、非トーナメント戦のワンマッチで2選手が参戦中で、初日の22日の「エピソード1&2」では、トーナメント戦は中村京一郎がKO勝ち以外は日本人選手は1勝3敗。ワンマッチでは松田亜莉紗がスプリット判定で昨年準優勝シャオツァンに勝利している。
2日目の「エピソード3&4」はエフェヴィガ雄志、神谷大智、井村塁、伊藤空也がトーナメントに出場。佐藤生虎がワンマッチを戦う。その中から、バンタム級で伊藤空也(BRAVE)のインタビューがU-NEXTから届いた。
▼第3試合 バンタム級(61.2kg以下)5分3R伊藤空也(17勝8敗1分、日本)135.5lbs/61.46kgシン・カイ・シオン(6勝1敗、シンガポール)134.5lbs/61.01kg
伊藤空也は17勝8敗1分の28歳。BRAVE所属。GRACHAN王者として2021年のRIZINバンタム級GPに出場するも初戦で金太郎に判定負け。2021年12月に手塚基伸に一本負けで王座陥落したが、そこから7連勝中。2024年6月に豪州のEternal MMAでロッド・コスタにスプリット判定勝ちでバンタム級王座獲得。2024年12月のGRACHAN HELIOSでTSUNEにもTKO勝ちで2冠となった。
対するシンガポールのシン・カイ・シオンは、現UFCのイ・チャンホに2022年のBRAVE CFで判定勝ち。唯一の黒星をつけた。2023年のROAD TO UFCフライ級ワンマッチでピーター・ダナソーと対戦し、跳びヒザで1R KO負け。今回は階級を上げての出場となる。
全然、サイコパスじゃない。『感情がない』とかいろいろ言われるんですけど──
──RTUトーナメント出場が決まった時の心境は?
「正直、今回のRTUに選ばれることには全然期待はしていなくて、オーストラリアのEternal MMAのベルトを獲ったから、今年はその王座を防衛するのかなって感じでいました。そういうなかで決まったので、自分でも正直びっくりしたんですよね。だから決まった以上はもうやるしかない。本当にこんなチャンスは僕のこれからのキャリアで考えたらもう二度とないかもしれないなというのがあったので、僕にそういう巡り合わせが来たんだなと思って。決まったからには意味があると思いました。だから“やるしかない!”って感じですね」
──期待こそしていなかったけれど出たい気持ちは常々あった、と理解しましたが、今回チャンスが巡ってきたUFCというのは、伊藤選手のなかでどのような位置付けでしたか?
「UFCって、出たくて出られるもんじゃない。まずもう、本当にまず弱いやつって。絶対いないから、全員が超人だと思っているので。本当にそういう意味では夢の舞台というか、そこに出られるだけですごいと思っているんです」
──バックボーンである空手の経験について教えてください。
「実は保育園の頃から、空手を無理やりやらされてたんです。そこを休会して何もやってなかったんですけど、小学6年、中学上がる頃にもう1回やってみようとなって、今に至るって感じですね。最初は、今振り返ってみても運動がそんなに好きじゃない子だったんですけど、運動一家だったので、親の方針で近所の空手道場に連れて行かれていた感じだったのだと思います。再開した頃というのは周りがみんなスポーツをやっているなかで自分は何もなかったから、もともと空手をやっていたからといのと、プロレスや格闘技を見るのは好きだったので、縁があったというか、自分もやってみてもいいかなと思って、休会していた空手道場にもう1回通い始めた感じですね」
──どんな選手が好きだったのですか? また、そういう選手に憧れて、自分も格闘家になりたいと思い始めていたのですか?
「宮田和幸会長や山本KIDさんがテレビに出ているのも見ていたし、ミルコやシウバ、ヒョードルみたいな、デカい選手に憧れを持ったりしていましたね。その当時は、格闘家になりたい! というのはなくて、趣味でできればいいかなくらいでしたけどね」
──そういうモチベーションだった習いごとの空手を経てMMAの世界に入り、そしてプロに至った経緯は?
「当時通っていた空手は、禅道会空手という、どちらかというとMMA寄りの空手の流派だったんですよね」
──なんでもありのバーリトゥードを武道の基本理念として置いているのですよね。
「だから、先輩たちがDEEPやZSTに出ているような選手ばかりで、自分もそれを見て影響を受けて、そういう舞台に出て試合してみたいなと憧れるようになり、仕事をしながらプロになったというきっかけですね」
──ご自身や先輩方が空手の道場から総合格闘技の世界で活躍できた、それは具体的にどういった面が大きいと思いますか。
「今はいろいろあると思いますが、昔は顔面ありの空手があまりなかったというのもあって、顔に当てることに抵抗なくやっていたのはMMAでは活きてきたと思います」
──そこからBRAVEへ移籍することになった経緯というのは?
「自分の弱点でもあり、今後MMAでやっていくうえで必要なものとしては絶対にレスリングであり、グラップリングであると、そこは自分にとっての穴だったので、僕がこれから先ベルトを狙っていくにしても、上へ行くためには絶対的な穴であるから、だったらそこが強いジムに行ったほうが早いなということで、移籍を決め、宮田会長に連絡しました。
宮田さんにとっては多分、移籍で入ったのが僕が初めてだったと思うので、そういう戸惑いはあったでしょうね。あと、僕は弟子入りという形で入ったので、今はもうジムの若い選手たち、地方から来るような子たちは寮とかあるんですけど、当時は寮がなくて、僕、ジムに住んでたんですよ(笑)。そういう意味で、生活そのものが格闘技、という意味で整っていたので、いろいろ面倒を見てくれました」
──BRAVE勢にはレスリングのイメージを抱きがちですが、今さまざまな団体で打撃ベースの選手たちが活躍していますよね。伊藤選手ご自身も2団体のベルトを持っています。
「僕自身はやっとこうやって形になってきたというか、レスリングの強みがやっと出てきましたよね。結局レスリングやグラップリング──つまり寝かされる状況になってもそこで自分には自信があるわけだから、思い切って打撃で行けるというのはあるかもしれないですよね。僕と、たとえば野村駿太や木村柊也のような選手たちはスタイルが違うかもしれないですけど、僕の場合あまりKOパンチのようなものはなくて、削って削って、そこで最後凌ぎ勝つっていうスタイルだから。そういう面ではもう彼らはモロに伝統派空手育ちですから、今、形になって花咲いてるんじゃないかなって感じがしていますよね」
──バックボーンがストライカーの伊藤選手はレスラーの皆さんと、どう技術交換をしているのですか?
「練習では、結局みんなが一緒になってやるので、そこはもうお互いないものを吸収し合ってるっていうか。まずヘッドコーチの宮田会長が仕切るんですけど、レスラーでも打撃はもうそれなりにできる選手たちなので、みんな一緒にやっていて。それでやっていくうち、僕もそうなんですけど、相手の弱点が分かってくるので、レスラー、柔術家たちと戦う時にじゃあこうやって戦えばいいなっていう対策のようなものが感覚的に大体分かってくるんですよ。そういう意味で、いい取り組み方ができてますよね」
──先ほど子どもの頃好きだった選手、というお話を伺いましたが、UFCファイターでも好きだった選手はいるのですか?
「昔から好きでかぶりついて見ていたのはジョゼ・アルドで、世代は全然違うんですけど。GSP(ジョルジュ・サン=ピエール)も好きです」
──前者はストライカーの伊藤選手のチョイスとして納得ですが、対極な名前が挙がった印象です。
「そうですね。本当に、(好きになるのは)自分の理想系か、あるいは自分にないものという感じですよね。ジョン・ジョーンズもそうです」
──現在のご自身の階級で気になる選手はいますか?
「ピョートル・ヤン選手ですかね」
──MMAストライキングの技術を存分にぶつけ合いたいですか。
「そういう試合はしてみたいですよね」
──サイコゾンビという煽りVで使われた呼称をご自身のプロフィールにも記載されていますが、持ち前の無尽蔵のスタミナ、そして先ほどご自身のファイトスタイルとして仰っていた、削って凌ぎ切るという、相手をどこまでも追いかける戦い方に合っているなと感じていますか。
「僕、結構いじられるんですよね、YouTubeで。宮田会長から勝手に『サイコパス』と呼ばれるようになって、そうやって煽られる試合前からずっと(笑)。全然、僕、サイコパスじゃないんですけどね(真顔)?『感情がない』とかいろいろ言われるんですけど、日常的に何を見てそう思うのかなっていうのがね……、分からないですけど、練習を見て思ったというところですよね」
──日常生活を見て思ったわけではないと思います、が……。一方、対戦相手であるシンガポールのシン・カイ・シオン選手はフリーニンジャ・スタイルと言われていますよね。この『フリーニンジャ』についてはどう解釈していますか?
「『フリーニンジャ』って多分、僕もそれを試合見ていて思ったんですけど、結構何でもできる選手ですよね、とにかく動くんで、そういう面じゃないかと思います。打撃だけじゃなくて、そこからテイクダウン来て、テイクダウン来たかなと思ったら、今度は寝技行って、また打撃に戻って、みたいな。結構トータル的に何でもできるというか、止まることがなかったから、そういう部分を称したのかなって思いますね」
──そういう選手を対戦相手として見たときに、どんな印象ですか。
「ああ、でも、すごい噛み合うんじゃないかなって思いました。何でもできるし、全然何で勝負しても大丈夫っていうか。そういう練習を僕はしてきてるので、やってみたら面白いかなと思いました」
──展開は速いながらもしんどいフルラウンドを戦い抜くようなイメージを持っていますか。
「そうなってもいい練習はしてきています」
──どんな試合をしたいと思っていますか?
「結構キツい試合になると思うので。で、見てもらう人たちには、気持ちの強さとか、最後に粘り勝つような部分、そしてエキサイティングな試合が見せられればいいと思います」
──応援しているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
「日本代表として試合が決まりました。アツい試合を届けますので、画面越しになるとは思いますが、当日は日本から応援よろしくお願いします!」