キックボクシング
インタビュー

【REBELS×KNOCK OUT】“超攻撃型ムエタイ”スアレックの知られざる「強さの秘密」に迫った=10・6雅駿介と王座決定戦

2019/10/04 14:10
【REBELS×KNOCK OUT】“超攻撃型ムエタイ”スアレックの知られざる「強さの秘密」に迫った=10・6雅駿介と王座決定戦

日本に定着し、REBELSを主戦場に戦っているスアレック

2019年10月6日(日)東京・後楽園ホール『REBELS.63×KNOCK OUT』のメインイベント(第10試合)で、ムエタイオープン・ライト級&スック・ワンキントーン同級王者の雅駿介(PHOENIX)とREBELS-MUAYTHAIライト級暫定王座決定戦を争う元REBELS-MUAYTHAIスーパーライト級王者スアレック・ルークカムイ(スタージス新宿)のインタビューが主催者を通じて届いた。

 スアレックは日本語が堪能だが、シャイな性格もあってなかなか「踏み込んだ話」ができない。そこで、今回はスアレックのすべてを知る江口真吾・スタージス新宿代表との対談で、ムエタイ選手らしからぬ「超攻撃型スタイル」を貫いてきた理由、スーパーライト級から1階級下げた訳など、スアレックの知られざる「強さの秘密」に迫った。

取材・文 茂田浩司

■再来日後、なかなか試合が組めなかった。「REBELSで育てて貰いました」(江口代表)

 江口代表は2012年よりスタージス新宿ジムで代表を務めている。2015年11月に「スアレック招聘」をしたのは、ジムの会員からもたらされた情報がきっかけだった。

江口代表「ウチの会員さんがタイでロン(スアレックの愛称)と出会って『日本に来たがっているタイ人トレーナーがいる』と紹介されました。来た時は結構おとなしくて、ホントに喋らなかった(笑)。仕事はとっても真面目で、ご飯を食べに行って飲んだらよく喋るようになりましたね(笑)」

スアレック「(笑)」

 スアレックは、2010~2012年に日本でトレーナーをしながら試合に出て、ムエローク杯59kgムエマラソンJapan2011優勝、M-1ライト級王座獲得などの実績を残している。

 再来日後、スタージス新宿でトレーナーを務めながら、再び試合をすることを望んでいたが、なかなか試合が組めなかった。

江口代表「半年以上、ずっと試合が組めなかったです。やっとJ-NETWORKで翔・センチャイジムと試合したんですけど(スアレックTKO勝ち)、その後もなかなか決まらなくて。山口さんがREBELSに出してくれるようになって、それからコンスタントに試合に出れるようになって。だからロンはREBELSさんで育てて貰いました」

スアレック「試合ができなかった間は練習だけしてました。会長は真面目な人で、ちょっとボクが練習をサボると『あれ、練習は?』って(笑)」


 REBELSでは、ハードパンチを武器に日本人トップ選手たちを次々とKOし「超攻撃型ムエタイ・スアレック」はエースとなった。

江口代表「日本人だと試合をたくさんして調子が上がったりしますけど、翔の時が3年ぶりの試合?」

スアレック「5年ぶりです」

江口代表「それだけ空いてるのに凄い試合をして、ブランクはまったく関係なかったんです。子供の頃から試合しているから経験が違いますし」

 スアレックの「凄さ」について、江口代表は「柔軟性」だという。

江口代表「パワーとかそういうことじゃなくて、なんでも吸収しようとして、こっちが『こうじゃないの?』というとなんでもやってみる。本人の引き出しも多いんですけど『いや、自分はこうだから』は無いですね。日本人だと練習して積み上げて、練習してきたことだけを試合に出しますけど、ロンは試合前に教わったテクニックをパッと試合で使ってしまう。運動神経が凄くいいのもあると思うんですけど」

スアレック「ボクは、見ればすぐ『こうすればいい』『ここを直せばいい』と分かります。相手の試合を見たら、パンチとかキックの強さ、クセも分かります。あと、ボクシングが好きだから、パッキャオとか有名な選手の試合やミット打ちの動画をいつも見て、打ち方とかを勉強してます」


 スアレックの柔軟性はトレーナーとしても発揮されている。スタージス新宿には、期待の重量級ファイターでデビューから4連続KO勝利中の吉野友規がいる。剣道で国体優勝、実業団でも活躍した後、29歳でキックを始め、昨年12月に32歳でプロデビューした異色中の異色、超遅咲きのキックボクサーである。

江口代表「ロンは、吉野にはムエタイはまったく教えてないですよ。前蹴りとか教えた時ある? 左ミドルは?」

スアレック「はい、教えてないです(笑)。ヨシノは体が硬いから(苦笑)、パンチをたくさん教えてます」

江口代表「練習では結構蹴らせたりはしてるんですけどね(笑)。試合前は『今日は左でいきます』というんですけど、試合が始まると右、右、右で(笑)」

スアレック「(笑)右のパンチは強いです」

 今年からスアレックはライト級に下げており、今回は2階級制覇を狙う。

 スーパーライト級(63.5kg)で圧倒的な強さを見せたスアレックが1階級下げたのは理由があった。

江口代表「スーパーライトだと身長180㎝ぐらいの相手が出てきたり(苦笑)。ロンは63.5kgだと減量らしい減量もないので、正直、63kgではやらせたくないなとは思ってました。ベストは62kgかもしれないですけど、ライト級までは落ちるというので。選手も多いので、どんどん試合をしたいからライト級の方が、とは前から言っていたんですけど」

スアレック「今、普段は67kgぐらいで、今日(試合1週間前)でラストのランニングが終わると65kgぐらいです。だいたい試合の3日前から落として、ライト級は全然問題ないです」


 現在、33歳。パワーは健在だが、怖いのは怪我。

スアレック「パワーはまだまだ、全然大丈夫ですね。ただ、お酒はちょっと弱くなってます(笑)。前みたいに一杯飲むと、頭が痛かったり、肩が痛くなったり(苦笑)」

江口代表「パワーはむしろ前よりも上がってるんじゃないかな。その分、拳を痛めたりもしてますね。前回の翔・センチャイジムの時(8月の「REBELS.62」)は、試合2週間前にスパーリングで拳を痛めて、それから全然練習でパンチが打てなくて」

スアレック「試合中にも拳を痛めて、蹴ったら足も腫れてきたから、2Rが終わって『どうしたらいいかな?』って(苦笑)。それで3Rは組みでいきました」

江口代表「いつもならもっと倒しにいくんですけど、あれ以上やると壊れちゃうんで(苦笑)。ダウンも奪ってるし、ロンは首相撲も本当に上手いので」

 最近は日本人選手から「スアレックとやりたい」と名指しされることも多くなったが、江口代表からすれば「え?」と思う。

江口代表「前はこっちが無名で、ロンが頑張ってくれて試合もアグレッシブに、有名になるために『タイ人』という概念を壊す試合をしてきて。それで今、日本人の選手がいきなりツイッターで『やりたい』と言ってきたり。向こうはキャリアの糧になる相手でモチベーションが高いだろうけど、こっちからしたら『知らないよ』っていう(苦笑)。そういう選手とやるのは面倒くさいですね。だから、やりたい選手たちでトーナメントでもやって貰って、勝った選手とロンがやるとかしてほしいです」

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