DEEP☆KICK ZERO 182025年2月9日(日)大阪・176BOX
▼メインイベント DEEP☆KICK-60kg挑戦者決定トーナメント準決勝 3分3R延長1R〇上野コウキ(直心会)TKO 2R 1分05秒 ※レフェリーストップ×金剛 駿(Reborn kickboxing gym)※上野コウキがトーナメント決勝に進出。
メインとセミではDEEP☆KICK-60㎏第9代王者になった“ノーダメージ”GUMP(TEAM TEPPEN)への挑戦権をかけた挑戦者決定トーナメント準決勝が行われた。
メインでは同級2位の上野と同級6位の金剛が激突。両者は2022年9月の『DEEP☆KICK 63』で初めて拳を交わし、壮絶な打ち合いの末上野が1RKO勝利を収めている。それから3年の歳月が流れお互い成長しているだけに、前回の対決は参考程度にしかなるまい。とはいえ、勝った上野に精神的なアドバンテージがあるのは確かだろう。
しかし、今回は2RKOで上野が金剛を返り討ちにした。1R開始早々、上野は左ミドルを軸に攻め込む。対する金剛は右フックで対抗するが、じわじわと後手に回っている印象があった。そうしたさなか、上野は左ボディフックを効かせるや、一気にスパート。左のミドルとヒザ蹴りでダメージを負わせ、金剛をコーナーに追い込むやパンチを連打して先制のスタンディングダウンを奪う。
「ここが倒すチャンス」と察知したのだろう。その後も攻撃の手を休めず、金剛をコーナーに追い込むや2度目のダウンを奪う。金剛はラウンド終了のゴングに助けられた格好だ。続く2Rになっても上野の攻勢は続く。組んでからのヒザ蹴りの連打で注意を受けるが、それに動揺することなく、ヒザ蹴りで3度目のダウンを奪うや、最後は左のボディフックで粘る金剛に引導を渡した。
試合後、上野は「健真選手と闘うのは2回目。この前はしょっぱい試合をして勝ったけど、今回は白黒ハッキリさせたうえで勝ちたい」と内容が伴う必勝を誓っていた。
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▼セミファイナル DEEP☆KICK-60kg挑戦者決定トーナメント準決勝 3分3R延長1R×津留純平(FASCINATE FIGHT TEAM)延長R 判定0-3 ※9-10×3◯健真(BLACK☆Jr)※本戦の判定は30-30×2、29-30。健真がトーナメント決勝に進出。
健真といえば、本職はたこ焼屋でジムの後輩の子供たちと一緒に『元祖たこやきのうた』に合わせて踊りながら入場するコテコテの関西流のパフォーマンスで知られているが、試合の方はいたって堅実。いずれの試合もキッチリと調整したうえでリングに上がっていることがわかる。
対する津留はプロ戦績8戦6勝4KOを誇る倒し屋。プロデビュー直後は4連勝をマークするなど、ジムのプレーイングマネージャーでもある原口健飛の期待も大きい。
健真はこのところ2連敗を喫しているだけに、戦前の予想では「津留が有利」という声の方が大きかった。
案の定、1R試合を優勢に進めたのは津留の方だった。右のカーフキックを効かせるなど、健真の動きをよく見て仕掛けている。対蹠的に健真は手数こそ多いものの、適正打が少ない。
2Rになっても、津留の攻勢は続き、右フックで健真がバランスを崩す場面も。しかしながら3R中盤以降、スタミナに自信を持つ健真は猛然と反撃を開始。ワンツーやハイで攻勢に出る。
判定は1-0(健真)で勝負は延長戦へ。ここまでも健真は左フック、あるいは右のテンカオ+左ストレートを決めるなど、試合を優勢に進め、3-0の判定勝ちを収めた。
試合後は「去年僕は上野選手に負けている(3月31日の『DEEP☆KICK 69』で敗退)。しっかりとリベンジを果たす」と宣言した。勝利の女神は努力家の存在を忘れてはいなかった。
上野が勢いで健真を再び呑み込むのか。それとも健真が“ウサギと亀”ではないが、最後は着実な一歩で上野越えを果たすのか。王者GUMPにとっては気になるトーナメント決勝になりそうだ。
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▼第6試合 DEEP☆KICK-57.5kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R延長1R◯松山 瞬(TEAM TEPPEN)判定3-0 ※29-27、29-28、30-27×安部宏聖(EX ARES)※松山瞬がトーナメント決勝に進出。
DEEP☆KICK-57.5kg第4代王者の啓斗が王座を返上。それに伴い、昨年12月からスタートした挑戦者決定トーナメントが王座決定トーナメントに繰り上がることとなった。すでにもうひとつの準決勝では牧野騎士(FASCINATE FIGHT TEAM)が一足先に王座決定戦に駒を進めている。
そんな牧野が待つ決勝戦進出をかけ、この日松山と安部が拳を交わした。松山は勝っても負けてもKOが多いことで知られるファイターで、RIZINへの出場経験もある。対する安部はアマチュア修斗関西大会で準優勝の実績を持つ二刀流ファイターで、昨年9月にキックボクサーとしてはデビューしたばかりだ。
試合が動いたのは2R終了間際。松山が右ストレートで先制のダウンを奪った。安部が倒れた刹那、ダウンかスリップかを迷ったレフェリーは一瞬判断を躊躇したかのように見えたが、ダウンを宣告した。
続く3R、窮地に立った安部はワンツーを主体に自ら仕掛ける展開に。リングジェネラルシップと手数では明らかに安部のラウンドだったが、ダウンしたポイントが響き、松山が3-0の判定勝ちを収めた。
試合後、リングに立った牧野は「このトーナメントは僕が優勝するために開催されたものだと思っている。しっかり倒して王者になって、その1週間後に試合がある(ジム代表の原口)健飛さんにつなげたい」と語った。 負けじと松山も「DEEP☆KICKは(プロ)デビュー戦からやらせてもらっていて、自分の中でも思い出のある舞台。そこで王者になって自分の力で盛り上げたいという気持ちは強い。決勝まであと1か月、しっかりと仕上げて王者になる」と宣言した。KO決着必至の王座決定戦になるか。
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▼第5試合 DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント Bブロック準決勝 2分3R延長1R◯坂田実優(FASCINATE FIGHT TEAM)延長R 判定3-0 ※10-9×3×Sero(NJKF健心塾)※本戦の判定は30-29、30-30、29-30。坂田実優がトーナメントBブロック決勝に進出。
「今日のみぃは過去一強いですから」
試合前、筆者の元に坂田のセコンドを務めるRISE QUEENミニフライ級王者の小林愛理奈(FASCINATE FIGHT TEAM)が訪れ、不敵な微笑とともに坂田の勝利を予告した。競り合う試合をしながら判定勝負になると負けることが多い。ジャッジに印象点を認めてもらうのが下手といってしまえばそれまでだが、過去の坂田にはそんなイメージがある。
しかし盟友・小林に引っ張られるかのように実力の方は少しずつアップしてきたのだろう。RISEの予想屋・一馬がプッシュするほどの選手になった。一方、開幕戦で対峙したSeroはNJKF健心塾所属の16歳。拠点とする同塾の伊勢支部は女子の選手が多く、その中で揉まれて強くなってきた選手だ。まだプロでは結果が出ていないが、ポテンシャルは高いといわれるだけに初戦を突破して勢いに乗りたいところだ。
1R、坂田はいつになく積極的に攻めに出る。サウスポーからタイミングよく繰り出す左ミドルを軸にインローやフックもヒットさせていく。ラウンド終了間際にはインローでSeroのバランスを大きく崩した。
ところが2Rになると、Seroが反撃に出る右のテンカオからバックハンド。さらに右の連打で攻勢に出る。案の定、2Rまでのオープンスコアは二者がイーブン、一者が10-9でSeroを支持していた。
劣勢を余儀なくされた坂田は3R、左ボディフックの連打で反撃に出る。この攻撃によってSeroは後退を余儀なくされる。ここぞとばかりに坂田はさらにボディフックを打ち込んだ。明らかに坂田が優勢なラウンドだったので、スコアは三者三様のイーブン。
試合は延長戦へと突入した。ここで14戦目(坂田)と4戦目(Sero)の差が如実に現れた。3Rの勢いをそのままに坂田はボディフックで勝負をかけると、Seroは下がる以外に選択肢はなかった。ひとり目に続きふたり目ジャッジも坂田の勝利を支持すると、Seroは泣き崩れた。このトーナメントにそれだけ懸けていた証左だった。
試合後、桃花・シンデレラとともにリングに上がった坂田は「自分はこれが3年ぶりの勝利で、ここまで支えてくれた小林選手とジムのみんなに感謝したい」と涙ぐんだ。続けて「今日の出来のままだと全然なので、準決勝までの1か月ちょっとで仕上げて勝ちたい」と冷静に語った。みぃの意地か、桃花の勢いか。
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▼第4試合 DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント Bブロック準決勝 2分3R延長1R◯桃花・シンデレラ(山口道場)判定3-0 ※30-28×2、30-29×山﨑愛琉(TEAM TEPPEN)※桃花・シンデレラがトーナメントBブロック決勝に進出。
この日行なわれたDEEP☆KICK QUEEN-46㎏初代王座決定トーナメント開幕戦で勝ち上がった4名の中でMVPをあげるとするならば、“もうひとりのモモカ”こと桃花・シンデレラで決まりだろう。これまでのプロのキャリアはわずか1戦ながら、そのパンチ力は女子キックボクサーの新人の域を超えているのだ。開幕戦を争った山﨑愛琉も決して悪い選手ではない。伸びのある前蹴りやハイキックには高いポテンシャルを感じずにはいられない。
案の定、1R、山﨑は桃花を相手に右のクロスやカウンターの左を決めようとするなど果敢にやり合う。しかし山﨑の善戦もここまで。2Rになると、桃花の切れ味抜群のワンツーの前に後退を余儀なくされ、ロープやコーナーを背にする時間が増えていく。
ラウンド終了間際、桃花は左ローでダウンを奪うも、インターバル中にミスジャッジと判断され、スリップダウンと訂正された。それでもオープンスコアは三者とも20-19で桃花。3Rになっても、桃花の手は止まらず、ワンツーやストレートで追い込んでいく。終盤になると、ボディフックも駆使して山﨑を追い込んだ。判定は三者とも桃花を支持。キャリアだけをみれば、まだ新人ながら開幕戦が終わった時点で桃花は優勝候補に躍り出たといっていいのではないか。
坂田実優がSeroを破り準決勝進出を決めると、桃花はもう一度リングイン。石川県で祖父母が震災に遭遇したことを打ち明け、「このトーナメントをとるのは私。みんな桃花・シンデレラという名前を覚えてほしい」と力強く優勝を宣言した。
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▼第3試合 DEEP☆KICK-65kg契約 3分3R◯竹市一樹(MA二刃会)判定3-0 ※30-26×3×溝口裕也(TEAM BEYOND)※溝口に「バッティング」、「組み付き」×2で減点1。
竹市と溝口の“タトゥー対決”は竹市に凱歌が上がった。
1Rから竹市は左のストレートやカーフキックで勢いよく攻め込む。左がクリーンヒットすると、溝口の足が止まる場面も。ラウンド終了間際にはパンチの連打で先制のダウンを奪った。竹市のKO勝ちは時間の問題かと思われたが、2R以降の溝口の粘りはすさまじかった。竹市に攻め込まれても倒れる素振りを見せない。逆に竹市が攻め疲れしているようにも見えた。
3R、溝口は組み付きで減点1を課せられ、竹市のヒザ蹴りでフラつくも、残り30秒になると、どこにスタミナが残っているのか、果敢に打ち合った。判定は三者とも30-26で竹市を支持したが、溝口のタフネスぶりも光った一戦だった。
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▼第2試合 DEEP☆KICK-53kg契約 3分3R〇大輝(DK9)TKO 1R2分51秒 ※レフェリーストップ×ゆいら(NJKF健心塾)※ゆいらが300gオーバー。両陣営と主催者の協議の結果、減点1とグローブハンデで試合実施。
ゆいらは計量で300gオーバー。規定時間内にクリアできなかったため、協議の結果、ゆいらに減点1とグローブハンディを課したうえで試合は成立することになった。1R開始早々、大輝は左ハイを連打してゆいらの右腕を殺しにかかる。
さらに左の三日月をボディに突き刺したかと思えば、続けざまにテンカオを決めるなどボディへの攻撃も忘れない。その後も左の攻撃を畳みかけ、とどめは左ストレート。なんとか立ち上がってきたゆいらだったが、足元がフラついていたので、レフェリーは試合を止めた。1R2分51秒、大輝のTKO勝ちだ。
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▼第1試合 DEEP☆KICK-57.5kg契約 3分3R◯荒川ルシファー大夢(NJKF心将塾)判定3-0 ※30-29×2、29-28×クレイジーハスキー尚吾(REVOLT)
ルシファーvs.クレイジーハスキー。リングネームだけで判断すれば単なる色モノ対決ながら、そうならないところにマッチメークの妙味はある。
1R、サウスポーのルシファーは左のミドルやミドルハイ(肩口を狙った打点の高い蹴り)を連打して相手の右腕を殺しにかかる。しかしそんなことはお構いなしにクレイジーハスキーは十八番の右フックを打っていく。2Rになると、ルシファーの攻撃はさらに加速。左ストレートやテンカオを織りまぜながら、ハスキーを攻略しにかかる。
しかし、九州からやってきたハスキーの根性はホンモノ。顔色ひとつ変えず右ストレートをヒットさせ、ルシファーがよろめく場面も。2R終了した時点でのオープンスコアはふたりが19-19、20-20とイーブンで、残るひとりが20-19でルシファーを支持するという僅差だった。
こうなると、3Rが勝負だ。ルシファーはさらに左のミドルやミドルハイを打ち込んでいく。これまでガードすることなくカウンターを狙っていたハスキーだったが、さすがに腕にダメージが蓄積してきたのだろう。ラウンド終盤にはコーナーに釘付けにされたうえでパンチを連打を許し試合終了のゴングを聞いた。
判定は文句なしに3-0でルシファー。この試合のテーマに挙げていた「圧倒」はできなかったが、相手の利き腕を殺すという仕事ぶりはきちんと遂行していた。敗れたハスキーもきちんとガードすることを覚えたら、もっと勝率が高くなるタイプだろう。
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〈オープニングイベント〉NEXT☆LEVEL提供試合
▼OP第3試合 -30kg契約 1分30秒2R◯石塚虎之介(一心会)判定3-0 ※20-18×3×鍵山翔生琉(ツクモジム)※鍵山に「組み付き」×2で減点1
▼OP第2試合 -47kg契約 1分30秒2R×甲斐田虎我(BKジム)判定0-3 ※19-20×3◯山崎金太郎 (フリー)
▼OP第1試合 -52kg契約 1分30秒2R◯山田十魂(山口道場)判定3-0 ※20-18×2、20-17×山脇仁汰(PSKムエタイ大阪)※山脇に「組み付き」×2で減点1。
文・布施鋼治/写真・石本文子