2025年3月30日(日)東京・後楽園ホール『Krush.172』に出場が決まった上野奏貴(kickboxing gym SHINYUUKI+)は、K-1甲子園2023 -60kg王者として2024年7月に『K-1 WORLD MAX』でプロデビュー。現在まで3戦3勝3KOと快進撃を続けている。
今回は4勝(1KO) 1敗の原田翔貴(拳心會館)との対戦。18歳のホープは北海道初のK-1王者を目指す。
塚本徳臣に憧れて
――昨年はデビューから3戦3勝3KOのパーフェクトレコードでしたね。
「戦績的に言ったら綺麗な形で終われましたが、まだまだ課題もあってここからなので。次からは本戦に出られると思うのでここからどう見せるかを大事にやっていきたいと思います」
――空手の蹴り技による衝撃的なKOが多いですが、空手は何歳から?
「3歳からというか、ほぼ生まれた時からですね。自分の父親が先生なので、ずっと空手の練習とか会場に行ってたので生まれた時から空手は身近にありました」
――空手選手は顔面パンチに慣れるまで苦戦することが多いですよね。上野選手はどうアジャストさせたんですか?
「でも最初は顔面の恐怖もあったし、顔面にパンチが来るのが見えなかったんですけれど、自分たちの空手はフルコンタクト空手なんですけれど接近戦ではなく、父の教えで自分の距離をしっかり保って蹴る空手なんです。キックボクシングとはまた違うんですけれど、距離をとっての攻撃なので蹴りはキックの距離で全然入りますし、距離感で言ったら空手が活きている部分があります」
――空手の蹴りはキックボクシングよりも多彩じゃないですか。それをK-1の試合でも活かしていきたい?
「そうですね。蹴りは空手をベースに。今も空手の練習はやっているので、そこが自分たちのベースですね」
――実際、空手の蹴りとキックボクシングの蹴りは違いますか?
「全然違います。空手の蹴りは芯に効かすというか。一撃必殺というのもあるんですけれど、喰らった時の感じが全然違うんです」
――よく“点”で蹴ると言いますよね。
「当てる場所もピンポイントで狙っています」
――空手時代に憧れの選手はいましたか?
「塚本徳臣選手です」
――やはり。スタイルを見てそうじゃないかと思っていました。
「塚本選手の試合は本当に毎朝、早起きして一人でずっと見ていました」
――塚本選手の空手要素は取り入れていますか?
「接近戦よりも距離をとって当てるところですかね」
――ちなみに、まだ見せていない技もいっぱいありますか?
「あります」
――大技で倒すと気分はいいですか?
「めっちゃ気分はいいです。でも、狙っているというよりかは、練習もしていますけれど、本当にその場の直感でいつも出てくるんです。デビュー戦の二段ヒザ蹴りも、12月の後ろ廻し蹴りも、頭の中にパッと出てきて身体が勝手に動きました」
――その12月の試合ですが、1Rは競った内容だったのが、2Rにいきなり後ろ廻し蹴りでダウンを奪って急にスイッチが入ったかのように見えたのですが、あれは意図したものですか?
「そうです。試合前から今回の相手は技の掛け合いというか、技術の対決も出来ると思ったんです。1戦目と2戦目は勢いのある選手だったので、そこでの経験を積んで今回は1Rは倒さないと決めていて。冷静に1Rはしっかり試合を作る、2Rから行こうとセコンド陣と決めていました。でも、行きすぎましたね(笑)」
――昨年は一足先にプロデビューしたお兄さんの上野空大選手が、5戦目にしてゴンナパーに挑む大勝負がありました(3R19秒、ゴンナパーのTKO勝ち)。
「試合前にもいろいろあったし、(ゴンナパーの)計量オーバーもあったんですけれど、それでも前日も当日も絶対に倒してやるって気持ちがメチャクチャ伝わって来ましたし、試合前もこれに人生賭けて絶対に勝って上がってやると言っていたので、試合でああいう結果になって本当に悔しかったですし、初めて試合を見て泣いたというか。自分が負けるよりも悔しいというか、複雑な気持ちになりました」
――ご自分もそういう大勝負をやってみたい気持ちは?
「いつでもやりたいですね!」
――即答でしたね。勝てば得るものは大きいですが、危険な賭けでもあります。
「それでも強い選手とやりたいです」
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金子晃大と出稽古でスパーリング
【写真】タイトルマッチを控えた金子と出稽古でスパーリングを行った(C)上野奏貴――1月下旬には金子晃大選手の元へ出稽古に行ったとお聞きしました。これはどういうきっかけで?
「K-1ジム大宮の代表にご紹介いただき、ガチスパーをやらせていただきました。金子選手の試合もメチャクチャ自分は見ていたので、対人して“ああ、金子選手だ”と思っていました(笑)。パンチの重さは想像以上で、脳が揺れるくらいの重さでした」
――階級は金子選手の方が下ですよね。それでも重たかった?
「重かったです」
――金子選手と手を合わせて見て、トップ選手と今の自分の違いは感じましたか?
「細かいところの強さはあると思うんですけれども、自分もやっていけば敵わなくはないと思いました。……いや、倒します」
――おおっ、凄い自信ですね。今年の試合予定はどうですか?
「3月のKrushで原田翔貴選手と決まりました。今回から本戦なので新しいスタートですけれど、やる事は変わらないですし、試合前に積み上げていくことはいつも通り基礎をしっかり固めて。その中で対面したら毎回ぱっとひらめきもあったり、自分を信じて今回もやりたいと思います」
――3連勝3連続KOとなると、次もKOが期待されますよね。それがプレッシャーになることは?
「プレッシャーですけれど、自分も倒したいという気持ちがありますし…プレッシャーになりますね(笑)。試合前になったらプレッシャーに感じると思います。でも記録で凄いと思われたいので。KO率100%だったら凄いじゃないですか。そう甘くはないと思いますけれど、それを目指して今回もやっていきたいです」
――年内の目標は?
「まだタイトルは厳しいと思いますが、20歳までにはベルトが欲しいです」
――いま18歳ですよね? あと2年もあるじゃないですか。
「出来るだけ早く欲しいです(笑)」
――3月に高校卒業となりますが、その後はフルタイム・ファイターになるんですか?
「高校を卒業して4戦目が終わったら、いったんタイに修行へ行こうと思っています。一人で1~2カ月くらい」
――一人で1~2カ月ですか。
「母にも1回1人で外の空気を吸って来いって言われまして(笑)。人間として成長して来い、みたいな。もちろん練習して強くなる目的もあるんですけれど、人間力を成長させて帰ってこれたらと思います」
――海外の経験はあるんですか?
「ないです。一発目が一人です(笑)」
――ムエタイを長く学ぶと、ムエタイのリズムや距離感が身に付いてしまう恐れもあります。
「ベースは変わらないので大丈夫です。ムエタイの選手に自分の蹴りを喰らわせたいです(笑)。道場破りの気持ちで行きます」
――北海道ってキックボクサーは多くはないですよね?
「そうですね。基本、兄とジムのアマチュア大会に出ていた会員さんとスパーリングはしています。あとはボクシングジムへスパーリングに行ったり」
――その環境についてはどう考えているんですか?
「自分たちが北海道を変えていきたいですね。今まで北海道在住でK-1・Krush王者になった選手がいないので、自分たちが変えていきたいと思います」
――いずれは海外の選手とも戦ってみたいですか?
「戦いたいですね。強い選手とやりたいので。空手の時に国際大会に出たことがあるんですが、外国人選手と当たったことはなかったんです」
――最近、和島大海選手・小田尋久選手を筆頭に空手出身選手の活躍が目立ちます。
「空手は強いからです。攻撃一発一発の質がキックボクシングだけの選手とは違う思います」
――最後に、今年の豊富を。
「一戦一戦KOを積み上げて、どんどんタイトルに近づけるようにやっていきたいです。一撃必殺を見せたいです」