MMA
インタビュー

【UFC】水のごとく──女王ジャン・ウェイリーがシェフチェンコとの階級を越えた戦いに「全てはタイミング次第」

2025/02/10 13:02
 2025年2月8日(日本時間9日)豪州シドニーのクドス・バンク・アリーナにて『UFC 312: Du Plessis vs. Strickland 2』(U-NEXT配信/UFC Fight Pass配信)が開催され、コメインの「UFC世界女子ストロー級選手権試合」で、王者ジャン・ウェイリー(中国)が恐るべき組み力を見せて、ワールドクラスレスラーのタティアナ・スアレス(米国)を完封、打撃でも攻勢となり、判定3-0(49-46×2,49-45)勝利。3度目の王座防衛を果たした。  王者はこの試合、アンダードッグだった。  挑戦者スアレスは2008年東京レスリング世界選手権で55kg級銅メダリスト。2010年の世界選手権では準々決勝で吉田沙保里に敗れたものの、敗者復活戦を勝ち抜いて再び銅メダルを獲得。柔術黒帯でさらにパートナーが、堀口恭司に勝ったBellator王者のパッチー・ミックスという生粋のグラップラー。大怪我を克服して復帰した直近の2試合はいずれも伝家の宝刀ギロチンチョークを極めている。  試合前オッズはウェイリーが王者になって初めてアンダードッグとされるなど“最強挑戦者”と言われてきた。  しかし、試合では序盤こそ、スアレスにテイクダウンを許したものの、パスを狙うハーフのスアレスにきっちりフルガードに戻す柔術の進化を見せた。  さらにスクランブルの立ち際をがぶりから必殺のギロチンチョークを狙うスアレスに対し、ウェイリーはクローズドガードの中に入らず、定石通り、抱えられた首とは対角に飛んで極めさせず。トップから肩固めも狙って初回を終えている。  2R以降はテイクダウンディフェンス、そこからの切り返しも圧巻だった。トップレスラーのダブルレッグを右で差し上げて、逆にテイクダン。上から削り、潜ろうとするスアレスを剥がしてパウンド、ヒジ。これぞMMAレスリングと言うべき、打撃を融合させたグラップリングで、文句無しの判定勝ちを収めた。  中国のUFC PIのみならず、これまで米国で北京五輪金のヘンリー・セフード、さらにNYのハイパーアーチファシア(筋膜)トレーニングのチョン・ジィコーチらについてフィジカルを内側から鍛え、タイのバンタオムエタイ&MMAでは、それらの動きを連動させてきた。  みたびベルトを巻いたウェイリーは、ケージの中で英語で「ベストコーチたちとフルキャンプをしてきた。アンダードッグだったことは気にしない。怪我から復活したタティアナのことをリスペクトしている。みんな、ありがとう」と語り、18,537人のシドニーの大観衆とともに「オージー、オージー、オージー!」のコール&レスポンスを行っている。  その姿に解説席のダニエル・コーミエーは、「以前は英語を話せなかった彼女はいま英語でファンたちとコールしている。彼女の性格や魅力が本当に伝わってきます」と中国本土を出て、周囲とコミュニケーションし、強さを獲得してきたウェイリーを称賛した。試合後のウェイリーのインタビューは以下の通りだ。 [nextpage] ウェイリー「最大の対戦相手は自分自身」  試合後、会見場に現れた王者は、冒頭で「タティアナがこの試合を受けてくれたことに感謝しています。二人で女性ファイターの実力をしっかり見せることができました」と感謝の言葉を語り、自身のパフォーマンスに満足感を示した。  10勝無敗だったタティアナの無敗記録や優れたグラップリングについては、「タティアナのグラップリングは素晴らしく『こんなに優れたグラップラーと戦ったことがない』と多くの人が言っていましたが、それについて心配はしていませんでした。周りが何を言おうと気にせず、自分のことに集中しました」という。  誰もがグラウンドに寝かされてきたタティアナの強力なテイクダウンをほぼ防いだのは、「彼女のレスリングとグラップリングを徹底的に研究し準備してきました。テイクダウンだけでなくギロチンのディフェンスも。コーチやトレーニングパートナーのおかげで、試合では頭を空っぽにして自分の身体の動きを信じることができました」と、計画通りの戦いができたと語る。  4Rに見せた肩固めについても、「試合中は特定の技を狙うことはなく、自然な流れでそのポジションになっただけです」と、試合前に引用したブルース・リーの「Be water(水のように)」の言葉通りに柔軟に対応したとした。  ストロー級1位のスアレス、2位のヤン・シャオナンに完勝し、UFCで敗れた唯一の相手ローズ・ナマユナスはフライ級に転向したいま、階級変更の可能性とストロー級でのモチベーションを問われると、「最大の対戦相手は自分自身です。どんなスタイルの相手と戦っても学ぶことができ、自分を成長させることが最終目標です。」と述べ、常に自己向上を目指していることを強調している。  また、現UFC世界女子フライ級王者のヴァレンティーナ・シェフチェンコとの階級を越えた戦いについて問われたストロー級王者は、「後でダナと話します。全てはタイミング次第です。お互いにとって良い時期が来れば、試合は実現するでしょう」と前向きに答えた。  試合後会見で、ダナ・ホワイト代表もシェフチェンコ戦について、チームと話し合うことを明言しており、今後の展開が注目される。 「世界最強女子ファイター」について「正直に言うと、誰がナンバーワンかは気にしていません。重要なのは、自分がどれだけ成長できるかです」と、パウンド・フォー・パウンドのランキングよりも、自身の成長が重要だと答えたウェイリー。  今後については、「まずはアイスクリームを食べます! 減量が大変だったので、少しリラックスしたいです」と語り、特にチョコレートとバニラのアイスクリームを楽しみにしていることを明かししている。
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