キックボクシング
インタビュー

【REBELS×KNOCK OUT】栗秋祥梧「2、3年後に東京ドームのリング上で女優にプロポーズします」

2019/10/01 19:10

■栗秋はいつも厳しい相手とマッチメイクされてきた。「『楽な相手だ』と思うと練習しなくなるから(笑)」(山口会長)

 山口会長の、栗秋に対するマッチメイクには一貫した方針がある。

「栗秋にはいつも『これは厳しいかな?』という相手を当てるようにしています。相手を見て『これは楽に勝てる』と思うと絶対に練習で手を抜くから(笑)」

 そのことは、栗秋も当然分かっている。
「REBELSに初めて出して貰った時が沖縄のTENKAICHIのチャンピオン。それからずっとチャンピオンとやらせて貰ってます。特に東京に来てからはどんどん相手のレベルが上がってて(苦笑)」

 上京後、REBELS王者の古谷野一樹と八神剣太を倒し、KING強介とは激しい打ち合いを演じて、延長で判定負けを喫したものの、栗秋の強打でKING強介は怪我を負って次戦を欠場した。


6月の安本戦

 そして迎えた6月の「REBELS.61」。ジュニア時代に24冠を達成した19歳の若き怪物、安本晴翔(橋本道場)とのREBELS-MUAYTHAIフェザー級王座決定戦。栗秋にとって上京後、初のタイトル獲得のチャンスだったが、多彩なテクニックを駆使して試合を支配する安本の前に、栗秋の強打はほぼ完封された。

 唯一の見せ場は3R。栗秋がヒジ打ちで安本の目尻を切り裂き、一瞬、動揺した隙に必殺の左フックを打ち込むことに成功。

 さすがの安本もグラついたが、直後にドクターチェックが入り、試合再開後はなおも倒しに掛かる栗秋に対して、平常心を取り戻した安本も反撃。4R以降は、栗秋のスタミナが切れて、安本が危なげなく勝利をおさめて栗秋はベルトを逃した。

「3Rは『いける』と思ったんですけど、あそこでストップが掛からなくて自分自身が折れました(苦笑)。ヒジで切って、ドクターが見てる時に『試合を止めてくれ!』と思ってて、再開した時はパンチで仕掛けたのに倒せなくて。インターバルでもセコンドの声が頭に入らなかったです。頭の中はずっと『オレのパンチで倒れねえし、止められなかったし』って。そこで結構、自信を無くしたというか、4・5Rは気持ちが折れてました(苦笑)」

 安本戦から学んだことは多かった。

「倒す力は確実に付いてきてるんですけど『継続して手数を出していくこと』から逃げてたな、って。やっぱり疲れてしまうんで、そこから逃げてしまってたことを安本選手と戦って改めて思いました。

 安本選手はすごい戦いにくかったです。僕のパンチの距離でハイキックを出してきたり、モーションが小さいんで蹴り技のタイミングも読みにくくて。でもそこでビビッた自分の負けだなって思います」


 移籍後、初の完敗だったが「栗秋には厳しい相手」という山口会長の方針は変わらない。8月の『REBELS.62』では、ムエタイの元ルンピニー9位、ジョー・テッペンジムと対戦。現在は那須川天心のトレーナーとしてミットを持っているが、まだ25歳と若く、今年1月までタイで試合をしていたほぼ現役の選手。しかも、試合はムエタイ選手が得意とする「ヒジ打ち、首相撲ありの」REBELS-MUAYTHAIルールになった。

 ところが、栗秋は「それどころではない状態」に陥っていた。

「試合の2週間前からまったく練習ができなかったです。右足に肉離れを起こして、左でずっと練習してたら左の足首のスジを痛めて。日菜太さんは経験があるから『動かさない方がいいよ』って言ってくれてて。仕方なく上半身だけを鍛えてたら、日菜太さんに『お前の気持ちを見せろよ。そういう試合をしろよ』って。その言葉で救われました」

 ジョー戦が「ヒジありのREBELS-MUAYTHAIルール」だと気づいたのは試合の3日前。

「ずっと、ヒジなしの『REBELSルール』だと思ってて、何気なく対戦表を見たら『REBELS-MUAYTHAIルール』って(苦笑)。タイ人相手にヒジありか、と思ったんですけど『逆にチャンスだな』って。足は使えないし、かえっていいチャンスだってプラスに考えて。

 試合まで1発も蹴れなくて、試合で1発蹴ってみたらジョー選手にスウェーでかわされて、軸足の左足のスジが『ピキッ』って。それで痛くて蹴れなくなったんで『もうパンチしかない』って。開き直ってパンチを打ったら倒れてくれたんです(笑)」

 ジョーからダウンを奪った渾身の左ボディ。会場を震撼させた強烈な一撃は、栗秋がこの試合のために用意した「秘策」だった。

「あのボディの打ち方は、トレーナーさんに教えて貰ったんです。足の使い方、力の抜き方、当たる瞬間のインパクトの残し方を細かく教わって、それだけをずっと練習してました」

 ヒジ打ちのカウンターが世界一上手いムエタイ選手相手に、踏み込んでボディを狙うことはリスクが高い。だが怪我をして蹴りが出せない以上、パンチで勝負する以外にない。


 加えて、栗秋はひそかにこの試合を「背水の陣」で臨んでいた。

「安本選手に負けて、ここでジョー選手にも負けて連敗したら、REBELSに出す顔がないです。連敗して第1、第2試合で戦ってる同じフェザー級の人と試合するぐらいなら辞めよう、って。僕は他団体に行くつもりはないんで、腹を括って九州に帰ろう、と」

 怪我していて満足に蹴れないことに加えて「連敗したら辞める」と決めただけに、強いプレッシャーが栗秋を襲った。が、その背中を支え、力強く前に押したのは日菜太の言葉だった。

「入場の前はちょっと怖くて、日菜太さんに『怖いです』と言ったら『1R目にパンチを思い切り振って、自分の気持ちを見せてこい!』って。それでスイッチが入りましたね。あと『ここで負けたら、お前、ただのポエマーだからな』とも言われて(苦笑)」

 栗秋は、1Rに強烈なボディでダウンを奪った。ジョーは2Rに形勢逆転を狙い、首相撲で勝負を仕掛けてきたが、栗秋の縦ヒジがジョーの目尻を切り裂いてドクターストップのTKO勝利。引退と「ただのポエマー」に成り下がる危機を回避した。

「インターバルで会長に『相手はお前のパンチ力が分かったから、2Rから徹底して組んでヒザで来るぞ』と言われて、隣でうなずいてたウーさんが『そこに縦ヒジだよ』って。その通りになりました(笑)」

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