キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】龍聖が立ち直った母の言葉と使命感「魔裟斗さん、HIROYAさん、僕という流れで日本のキックボクシングの血が流れている」

2024/12/28 22:12
【KNOCK OUT】龍聖が立ち直った母の言葉と使命感「魔裟斗さん、HIROYAさん、僕という流れで日本のキックボクシングの血が流れている」

6月に久井に敗れて以来の再起戦で、ISAKA世界王座に挑む龍聖(C)KNOCK OUT

 2024年12月30日(月)神奈川・横浜武道館『KNOCK OUT K.O CLIMAX 2024』(U-NEXT配信)にて、ISKA世界スーパーフェザー級(K-1ルール)王座決定戦3分5Rをブライアン・ガビオ(アルゼンチン)と争う、龍聖(Team KNOCK OUT)のインタビューが主催者を通じて届いた。

 6月の代々木第二で久井大夢にプロ初黒星を喫して以来の再起戦が世界王座決定戦となったが、龍聖はこの試合をどのような心境で迎えているのか。そして何を見せようとしているのか?

基礎から見つめ直してきました


──6カ月空いての復帰戦となりました。この期間は、主にどう過ごしていたんですか?

「基本ずっと練習してましたね。体は元気で練習もできてるけど、いろいろあって試合はできなかったので」

──相当、ストレスが溜まったんじゃないですか。

「まあ、なかったわけじゃないですけど、これまでもいろいろあったので神経が図太くなってて、今回は全然大丈夫でした(笑)。周りで支えてくれた人もいっぱいいますし」

──でも6月に負けた後は、落ち込んだりショックだったりもあったのでは?

「もちろん、かなりショックでしたよ。でも、思ったよりは落ち込まなかったですね。もっともっと下がって、死にたくなるだろうと思ってたので。試合が終わった瞬間は意識もうろうとしながら、『終わったな……』とか『これからどうしていこう……』みたいな思いがよぎりましたけど、3~4日ぐらいでまたすぐ前を向くことができました」

──そうなんですか。

「そこからは『絶対アイツにやり返してやる』という思いになりました。そこで二つ考えたんですよ。まず一つは、子供の頃からノップ先生に見てもらっていて、一度は離れたんですけど、そこからは栗秋和輝先生に教えてもらっていて。前回の試合はまたノップと一緒にリングに上がれたんですけど、今までは負けたこともなかったわけじゃないですか。やっぱり自分の中で本当に心強かったし、ノップに教わっていれば本当に完璧というか、どうやって負けるのかも分かんないという感じだったんです。なのに久しぶりに組めたあの試合でまさか負けてしまって。負ける姿とか倒れる姿をノップに見せたし、栗秋先生にも申し訳なくて、『俺、どうしよう……』と思って」

──申し訳なさだったんですね。

「やっているのは僕ですから、僕が決めることですけど、すごく落ち込んではいたんですね。そこに2人から『また頑張りましょう』みたいな言葉をもらったんです。自分の先生2人から同じような言葉をもらって、『ここで俺が腐っててもな』と思ったんです」

──なるほど。

「もう一つは母親の話なんですけど。ウチは父親が格闘技、K-1が大好きで、父親の影響で子供の頃にキックボクシングを始めたみたいな感じなんですね。でもお母さんに関しては、たぶん自分で腹を痛めて産んだというのもあるんでしょうけど、学生の時から『格闘技は危ないから、やめて普通に大学に行って、普通に就職してほしい』という感じだったんです。で、僕がチュームーシーフー戦で初めてダウンした時も本当にやめてほしいみたいな感じで本当に心配されて。今までは全然負けてなかったから何も言われてなかったですけど、久井戦で負けたから、『もういいんじゃない』って言われると思ったんです」

──今度こそやめなさいと。

「そう思ってたら、『このまま腐ってる姿は見たくない』っていう予想外のことを言われたんです。『やり返せよ』みたいな。そんなこと言われるとは絶対思ってなかったので、ビックリして。お母さんって、すごく特別な存在じゃないですか。お母さんがいなかったら生まれてきてないわけだし。そのお母さんからかけてもらった言葉が自分の中ですごく響いて、『頑張ろう』と思えましたね」

──そんなことがあったんですね。では、「やり返す」という新たな目標もできたし、周りの人の気持ちもより分かったという感じなんですね。

「そうですね。それと、格闘技っていうのがどういう競技なのかということをより考えるようになりました。チュームーシーフー戦までの僕は、練習でも試合でも、腹とか足以外で、脳を揺らされて効いたということがなかったんですよ。だから『俺って打たれ強いのかな』と思ってたんですね。それはガードが固かったというのもあるんですけど。それがあの試合でダウンを食らったんですけど、その後に盛り返せたわけじゃないすか。そこですごく味を占めてたっていうのもあるし、あのダウンからあんまり学習してなかったんです」

──なまじ逆転勝ちできただけに。

「でも久井戦みたいに2回ダウンを取られたら、もう取り返すのは難しいなと。改めて、本当に体にもよくないなと思いましたし、お母さんを含めて親とか親族が自分の体を心配してくれてるのを見て、勝ち負けとかじゃなくて、そういうことも含めてやっぱりもらっちゃいけない競技なんだなと改めて思いました」

──気付かされたわけですね。

「それもあって、ガードの手の位置とか、本当に初心者がやるような、ゴムをつけて体を上げる練習だったり、アゴの下にボールを入れてアゴを引く確認とか、そういう基礎をちゃんともう一回やってみようというところで、見つめ直してきました」


──なるほど。子供の頃からガードの練習などはずっとやっていたと思いますが、いつの間にか攻撃優先になってしまっていた部分があったという感じですか?

「そうですね。本当にいつの間にかそうなってしまっていて、『オフェンスだけで、ディフェンスのことは何も考えてないよね』っていうのはすごく言われました」

──では試合が半年空いたのも、そういうところをやり直すのには、ちょうどいい期間だったと。

「本当はこの期間に1試合挟みたかったなというのはありますけど、この半年で対人練習での距離感とかも以前のよかった頃の感覚に戻ってきました。人間って過去の栄光が忘れられなくてすがることが多いと思うし、自分もよかった時の自信みたいなものがどこかにあったんですけど、その感覚を忘れてしまっていたというか。以前はジャブとかボディーとか、これでやれば絶対勝てるという距離感があって、体が覚え込んでいる絶対的な感覚への自信みたいなものがあったんですね。でも最近しばらく、その距離が分からなくなってしまっていたんですけど、それがこの半年の練習でほとんど戻ったというか、『あ、掴んだ!』みたいなのがあって」

──おお。

「で、今回の練習期間の最後の方に、古木誠也君と練習させてもらったんですよ」

──そうなんですか!

「地元も相模原で一緒だし、彼のトレーナーが僕の同級生のお父さんということで、以前から交流もあって。彼が今度の僕の相手にちょっと似てるところもあるので練習させてもらったんですけど、そこでもすごくいい感覚がありました。まあ試合してみないと分からないですけど、いい半年だったのかなと思いますね」

──その今回の相手、ブライアン・ガビオ選手ですが、どういう印象ですか?

「強いし、ものすごくいい選手だなと思います。まず一瞬のキレというか、瞬発力がすごいですよね。あとガードがいいですね。その二つは見ててすごく思います」

──そういう相手に、どう戦おうと思っていますか?

「今回は本当にしっかりと、KOだったらゴングが3回鳴るまで、判定なら5R終わるまで、どれだけ勝っていても気を抜かず集中し続けるということが一つ。もう一つは試合中にしっかり考えながら動いて、自分で手札を選びながら戦っていくことを本当に徹底していこうと思っています。その中で僕は絶対に倒せるものを持っているので、最初から倒すことばかり考えるんじゃなくて、以前みたいにしっかり考えて選んでいく、そしてその中で油断しないで戦っていきたいなと思っています」

──そうして、最終的にはKOに持っていければと?

「そうですね。しっかり考える延長で、『あ、これが当たりそうだな』というので今まで倒してきたんですよね。久々にノップと一緒に過ごしたことで、そういう部分も改めて、『ああ、こういうことか』とか『こうやってたな』とか思い出していて。TRY HARD GYM時代はそれしかやってこなかったし、ずっとノップに教わってきて、それが当たり前というか、日常になってたんですけど、離れていると、人間って忘却の生き物だから、忘れていくんですよね。それを一つひとつ思い出してきた感じです」

──なるほど。

「今、いろんなイベントの試合とかを見ていても、『この選手はここが足りないんだな』とか、『ここは考えていなくて、相手の方が考えてるんだな』とか、そういうことも分析して見るようになりました。今回の相手の映像を見ていても、『自分だったらここでどう考えて戦うかな』とか、そういう感覚が今はあるので、試合もそういう感じでやれたらいいなと思っています」

──最終的に倒すイメージは、いくつかできていたりするんですか?

「今回はあんまりないですね。今までだったら何個かあったんですけど、今回本当に、自分の昔のスタイルでやるというか、一回本当にリセットして戻したいってのがあるんですよ。まあハイキックは当たるのかなとか、ヒザとかもボディーとか、手札はいっぱいあるから、どれかが当たればいいなっていう感じですね」

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