(C)Hazuki photography/GONG KAKUTOGI
2024年12月7日(日本時間8日)、米国ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催された『UFC 310: Pantoja vs.Asakura』(U-NEXT配信)で、朝倉海(日本/JTT)がUFC世界フライ級王者アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル/ATT)に挑戦。2R 2分05秒、リアネイキドチョークでパントージャが朝倉に一本勝ちし、3度目の王座防衛に成功した。
敗戦後、12日に帰国した朝倉海は自身のYouTubeを更新。また、王者もアリエル・ヘルワニの番組に出演し、試合を振り返っている。王者から対戦を指名されたデメトリアス・ジョンソン(DJ)の言葉も含め、主に試合の動きにフォーカスして、本誌のインタビューも併せて、紹介したい。
試合から4日後、朝倉はパントージャについて、「思っていたより“強かった”というより“上手かった”。さすがだなと。まあちょっと派手に狙いすぎた。正直、狙いすぎたっていうのはある。それが俺だから仕方ないんだけど“とにかくKOで勝ってやろう”っていうのを狙いすぎた」と、スタンドの動きが大きく雑になっていたと振り返る。
その“上手さ”とはどこにあったのか。
MMAはスタンドから始まる。ともにオーソドックス構えから。朝倉はいつものようにワイドスタンスで構えると、いきなり王者はその前足に堀口恭司戦同様に、右カーフをヒットさせる。
さらに右ストレートを突いて詰めるパントージャに、朝倉は下がりながらもカウンターの跳びヒザ蹴り。その蹴り足を掴んでバックテイクしたパントージャだが、ここは朝倉がクラッチさせずに正対、突き放しに成功。
しかしすぐに間合いを詰めるパントージャは右のダブルから左を当てて金網に詰めてダブルレッグへ。ここもすぐに差し上げた朝倉は、尻は着かずに立ち上がり、左で差して体を入れ替え押し込み。ここで最初のテイクダウンを奪われている。
【写真】パントージャは小手巻きから釣り手と引き手の組み手に変えて足払いでテウクダウンした。朝倉にとってはバックテイクのチャンスでもあったが……。
それは、朝倉が予想していなかったパントージャの足技だった。
1回目は1R序盤。パントージャに金網を背負わせて頭をアゴ下につけて押し込む朝倉に、パントージャは右の小手巻きを解除し、右釣り手で奥襟を掴むように後ろ頭を引き寄せ、引手の右手も掴むと、その組み手を嫌った朝倉が腰を引いて離れると、そこにパントージャは右の小外がけを合わせて見事にテイクダウンを奪っている。
ここは背中を着かされた朝倉が、フルガードから右腕でオーバーフック。パントージャが上体を上げた動きに合わせて足を引いて立ち上がることに成功した。
パントージャは打撃に対して1ミリもビビってない(朝倉)
間合いが空くと、右のスーパーマンパンチ、左インローの連打、右ボディストレートと自身の打撃の距離で戦う朝倉。
右を見せてパントージャの打ち返しの左を誘うと、ここにカウンターの左ヒザをヒット!
このテンカオの動画を見たデメトリアス・ジョンソンは、朝倉のヒザを「肝臓に突き刺したヒザ蹴りは見事だった。美しいショットだった。パントージャは中に入る瞬間に食らったね」と評価する。
表情が変わり一瞬、動きが止まったパントージャだが、苦しい時に前に出るのが王者だ。さらに右ボディストレートで腹を突く朝倉を歩いて詰めると、左右で顔面を叩いて前に。
そこに再び右の跳びヒザ蹴りを腹に狙った朝倉だが、ここはパントージャも当てさせず。朝倉の間合い・リズムになりかけたところに右の関節蹴りを出している。
試合後、パントージャは「彼のヒザに繰り出した関節蹴りが有効だった」という。
「ジョン・ジョーンズのように関節を蹴ったときに、彼の出鼻を挫くことが出来ると気付いたんだ」(パントージャ)
朝倉も右のフェイントからの左を当てるが、決定打にはならず。パントージャが詰めると、テイクダウンを警戒する朝倉はバックステップで一気にケージを背に。入り際のカウンターの打撃を警戒するパントージャはここでも関節蹴りを使っている。
パントージャの右をかわして圧力をかける朝倉は、オーソから鋭い左ハイ。
DJは、「朝倉海のハイキックが速くて美しい、掴めない。海の悔しさを晴らしたいね。彼は動きが速くて目もいい」と賞賛も、「でも“戦い”なんだよね。アスレチック競技ではなく格闘競技なんだ。ハイキックも彼のブロックの上だった。もしこれがもう少し高ければ、頭頂部に当たったかもしれないが、パントージャは大袈裟に反応せずにブロッキングしたのも上手かった」と王者がグローブ1枚挟んでいたこと、すぐに右のミドルを打ち返していることに着目している。
「パントージャは必ず蹴りをかまして終わらせる。なぜなら相手が自分から離れようとしている時、パンチを出そうとしないことを知っているから」(DJ)
ブラジルムエタイで20戦無敗のパントージャは、関節蹴りのみならず、足を上げてのチェック、ガードも巧みで、蹴り返しも左右で打てるのが強みだ。
朝倉は、「パントージャの関節蹴りは別にそんなに何とも思わなかったけど、やっぱり向き合ってみて強さを感じた。打撃に対して1ミリもビビってないし、“もらってもいいよ”という感じの雰囲気もあるし、攻撃力の重さもある」と、パントージャの打撃の圧力を語る。