2025年1月25日(土)、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ・コカコーラアリーナにて『Bellator Champions Series: Nurmagomedov vs. Hughes』の開催が決定。現Bellator世界ライト級王者のウスマン・ヌルマゴメドフ(ロシア)とポール・ヒューズ(アイルランド)のライト級世界王座戦が決定した。一方で、試合が決まれないBellatorファイターたちから不満の声も挙がっている。
▼Bellator世界ライト級選手権試合 5分5Rウスマン・ヌルマゴメドフ(ロシア)王者・18勝0敗ポール・ヒューズ(アイルランド)挑戦者・13勝1敗
MMA18勝無敗、ダゲスタン出身で兄にウマル(UFCバンタム級2位)、従兄弟に元UFC王者のハビブを持つウスマンは、2024年9月の前戦で最強挑戦者アレクサンドル・シャブリーを5R 判定で下し、2度目の王座防衛に成功したばかり。26歳。
対する豪州出身、アイルランドFIGHT ACADEMY IRELAND所属のポール・ヒューズは、MMA13勝1敗の27歳。Bellator2連勝中。Cage Warriorsフェザー級王者からライト級に上げて2024年6月のBellatorデビュー戦でボビー・キングにテイクダウンからヒジでTKO勝ち。
10月にAJ・マッキーJrと対戦し、強烈なヒザと右ストレートで追い込み、スプリット判定勝ち。Bellator2戦目にして、元王者を下している。
スイッチしての上下・左右の蹴りから強いテイクダウン&サブミッションと死角の無いウスマンに対し、オーソのヒューズもAJのテイクダウンを切ってのヒジ打ち、スタンドでは近い距離の打ち合い、右の蹴りもシャープで、シングルレッグから肩口に持ち上げてのテイクダウンと粗削りながら勝負所を逃さない強さがある。
強い圧力を持つヒューズに、ウスマンはいつもの距離で戦えるか。間合いを制すれば王者のものになる。
このUAEドバイでの大会は、ドバイ経済観光省(DET)およびドバイ・スポーツカウンシル(DSC)が、Bellatorを買収したPFLと複数年パートナーシップを締結し、「ドバイをMMAの世界的な拠点と位置づける」ための大会としている。今後、PFLは「ドバイでチャンピオンズシリーズ&世界タイトルイベントである『ROAD TO DUBAI』を毎年開催し、将来のUAEチャンピオン・ファイターを育成する」という。
このパートナーシップにより、他のチャンピオンズシリーズ・イベントもすべて『ROAD TO DUBAI』として共同ブランド化され、各大会のクライマックスはドバイでフィナーレを迎えることになる。
今回の『ROAD TO DUBAI』で3度目の王座防衛戦に臨むウスマンは、「僕は常に最高のアスリートとの対戦に興奮しているし、ポール・ヒューズを価値ある相手と見ている。ドバイ史上初のMMAメインイベントになることを誇りに思う」とコメント。
対するヒューズは「チャンピオンシップは常に僕の計画の中にあったが、ウスマンと対戦する1月に実現することになった。1月25日に新チャンピオンとしてドバイを発つことは分かっている」と、王座奪取に自信を見せている。
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サウジアラビアの「リヤドシーズン」、UAEの「ドバイ33」──オイルマネーとMMAの関係
PFLは、2024年10月に『PFL Super Fights: Battle of the Giants』として、2年10カ月振りMMA復帰のフランシス・ガヌーとヘナン・フェレイラのPFLヘビー級スーパーファイト王座戦を実施したばかり。これは、サウジアラビアの首都リヤドで、サウジアラビア総合娯楽庁の主催で毎年開催されるエンターテイメントの祭典『リヤド・シーズン』の一環として行われたもの。ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者の井上尚弥が大型スポンサー契約を結んだのも、この『リヤド・シーズン』だ。
こういった中東諸国では、MMAのみならず、ボクシング、サッカーやゴルフ、eスポーツなどにも多額の投資を行い、スポーツを使ってオイルマネーの国のイメージを変え、原油一辺倒の経済からの脱却を図るなど、政治的な策略が含まれている。
今回の『ROAD TO DUBAI』も、「ドバイを世界有数の商業都市、投資ハブ、観光デスティネーションにする」というドバイ経済アジェンダ『D33』の目標に沿ったもので、PFLのみならず、MMAビッグマッチの中東大会の増加は、さまざまな背景から増加傾向にある。
しかし、PFLが買収したBellatorは、2024年11月16日にフランス・パリのアディダスアリーナで開催予定だった「Mix vs. Higo」をキャンセルしたばかり。さらに、企画段階だった大晦日Bellator日本大会も暗礁に乗り上げており、試合が決まらないファイターたちからは不満の声も挙がっている。
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パトリシオ「日本とは上手くいかなかった。じゃあ、別の場所でショーをやればいいじゃないか」
パリ大会がキャンセルされたパッチー・ミックスはXに「僕はこの半年間、無駄にトレーニングを積んできた。キャリアの全盛期なのに、11月の試合がキャンセルされて悔しいよ。そしてまた、1月のドバイのカードから外されると言われているんだ。僕は世界最強で、それを証明するために戦いたいんだ」と投稿。
それを引用する形で対戦相手のレアンドロ・イーゴも「これはとても悔しいことだ。2試合連続のキャンセルで、いつ戦えるか全く分からない。この試合は時間が勝負だから、プライム(タイム)を傍観して無駄にするわけにはいかない。僕はタイトルを取るために、お金と汗と血を使って頑張っている。どうなってる?」とコメントした。
イーゴの投稿に、鈴木千裕との再戦をアピールしていた現Bellator世界フェザー級王者のパトリシオ・ピットブルは、「2月から試合をしていない。今年は3回試合をしたかったんだけど『12月31日まで待たないといけない』と言われ、ネットで対戦相手が他の選手と戦うことを知ったんだ(鈴木vs.クレベル・コイケ)。その後、代わりの選手が決まり、僕は人(スパーリングパートナー)を連れてきて、キャンプでお金を使ったが、試合はない。
彼ら(Bellator)は、日本とは上手くいかなかった。『自分たちのせいではない』と言った。分かったよ。じゃあ、別の場所でショーをやればいいじゃないか。少なくとも年に2試合、ファイターに試合をさせられないプロモーションなんてあるのか? 今年まだ試合をしていない選手もいる! Bellatorはかつてビッグだった。物事は上手くいき、常に答えがあった。ただ試合をキャンセルして、いつ試合が組めるか分からないなんてことはなかった。地方のプロモーションでさえ、すでに来年の4月の日程が決まっているというのに! この合併はMMAというスポーツにとって災難だった。
一方、我々はトップがソーシャルメディア・パーソナリティやセミリタイアしたファイターに数千万ドルを提供することを話しているのを見なければならない。他方で、ロースターの90%をカットし、30歳以上のファイターには高すぎると言っている。イベントも開かず、ファイターにギャラも払いたくないのに、どうやって世界ナンバーワンになれるんだ?
Bellator、そしてMMA全般の将来がとても心配だ。今年、試合にも出られなかったファイターや、ショーが作れないから、あるいは高いからという理由でカットされたファイター、そして減給を余儀なくされたファイターたちがとてもかわいそうだ。
これは間違っている。我々には答えが必要であり、ファイターとファンが尊重される必要がある。これはゲームでも、単なるビジネスでもない。真剣なプロモーションなら、ファイターが健康であれば、少なくとも年に3回は戦うチャンスを与えるはずだ」と、大会開催と試合オファーを待ち続けている状況を明かした。
また、現Bellator世界ライトヘビー級王者のコーリー・アンダーソンは「温かいチーズのように年老いて、 PFLからの電話を待っている。でも誤解しないで。我々はまだ誰に対してもストラップ(ベルト)を守る準備ができています! 若くても歳をとっても!!」と投稿。
現Bellator世界女子フェザー級&現PFL世界女子フェザー級スーパーファイト王者のクリス・サイボーグは、「私はPFLのベルトを獲得した後、Bellatorのベルトを守る準備ができています。オーバータイム(コーリー・アンダーソン)と同じカードに載せてください」と、10月PFLでのラリッサ・パシェコ戦に続く試合を望んだ。
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セルジオの師匠ルーファス「日本からオファーを受けたばかりだが──」
さらに、RIZINにも参戦したセルジオ・ペティスの師匠デューク・ルーファスが、11月21日にインスタに投稿。
「セルジオ・ペティスは昨年11月17日からBellatorで戦っていない。今年6月3日に許可を得てRIZINで試合をしたが、それは契約になかった。そしてまた日本からオファーを受けたばかりだが、それもRIZINの試合で、日程は決まっていない。コミュニケーションが必要だが、PFLは静かだ。選手は待っている。フェアじゃない。私は小さいMMAプロモーターだが、来年4月のイベントをすでに予定している。メジャーイベントが来年の日程が未定で選手に答えられないということがあるだろうか? 誰か教えてくれ」と、スケジュールを出すように求めている。
2024年6月『RIZIN.47』では、減量が間に合わずバンタム級で堀口恭司と再戦し、判定負けに終わったセルジオだが、果たして日本ではフライ級での試合もあるか。2025年夏以降には、RIZINでフライ級ワールドGPの開催も予定されているが……。また、GPや対抗戦ではなく、ワンマッチとしてBellatorファイターが日本に参戦する機会はあるか。
2025年1月25日のドバイ大会以降、『ROAD TO DUBAI』はどうなっていくか。PFLは、今週末の11月29日(日本時間30日)に、シーズンフィナーレとなる『PFL 2024 Championships』(U-NEXT配信)をサウジアラビアのリヤドで開催する。
▼PFL2024 女子フライ級決勝 5分5Rダコタ・ディッチェバ (英国)タイラ・サントス(ブラジル)
▼PFL2024 フェザー級決勝 5分5Rブレンダン・ラフネイン(英国)ティムール・ヒズリエフ(ロシア)
▼PFL2024 ライト級決勝 5分5Rブレント・プリマス(米国)ガジ・ラバダノフ(ロシア)
▼PFL2024 ウェルター級決勝 5分5Rシャミル・ムサエフ(ロシア)マゴメド・ウマラトフ(ロシア)
▼PFL2024 ライトヘビー級決勝 5分5Rインパ・カサンガナイ(米国)ドブレジャン・ヤクシムラドフ(トルクメニスタン)
▼PFL2024 ヘビー級決勝 5分5Rデニス・ゴルツォフ(ロシア)オレグ・ポポフ(ロシア)
中東で、100万ドル(約1億5千万円)を賭けた、6階級の決勝戦で優勝者が決まるなか、2025年のさらなる展望も明らかとなるか。