2024年10月12日(日本時間13日)米国ネヴァダ州ラスベガスにて『UFC Fight Night: Royval vs. Taira』(U-NEXT配信/UFC Fight Pass配信)が開催。フライ級コンテンダー争いともいえるメインイベントで、同級1位のブランドン・ロイバル(米国)と対戦し、5R判定の末、スプリット(48-47×2、47-48)で敗れた同級5位の平良達郎(日本)が、再起を誓った。
試合後、平良は「沢山の応援本当にありがとうございました。そしてアメリカまで来て支えてくれるチームの皆に感謝です。負けてしまい色んな感情が込み上げる中で、必ずUFCのチャンピオンになって、少しでも皆に恩返ししたいと強く感じました。前を向いて必ず強くなって戻って来ます」(平良)
サウスポー構えのロイバルの打撃と、組み技・寝技のコントロール、極め力に長けた平良の戦い。試合は、5Rフルラウンドに渡る死闘だった。
1Rと3Rは、有効打とダメージでロイバルのラウンドに。初回からロイバルの左を被弾した平良は出血。特に3Rは、平良のダブルレッグを受けたロイバルがヒジ打ちを落として大きなインパクトを残した。
2Rと4Rは、平良のラウンドに。2Rにバックを奪った平良はコントロールからリアネイキドチョークを狙うが極め切れず。1、3Rと取られた平良だったが、4Rにも果敢なテイクダウントライからバックを奪い、ボディトライアングル(四の字ロック)でコントロール。勝負を最終Rに持ち越した。
ジャッジは1Rこそ割れたものの、この段階で2Rずつを取り合って2-2のイーブン。
最終5Rは、互いに消耗戦となるなか、初の4Rを乗り越えていた平良は右を当てて果敢にテイクダダウン。バックは取らせないロイバルに上四方で抑えたが、バック、ボディトライアングルで固定されないロイバルは下からレッスルアップ。スタンドでヒザ蹴り、さらに平良の組みに得意のギロチンチョークを後方に回してマウント。さらに腕十字と、巧みな攻勢を仕掛け、勝負のラウンドをモノにした。
ボクシングが強化され、強みの寝技もロイバルのスクランブルを止めるボディトライアングルでラウンドを取り返した24歳の平良だったが、それを上回る32歳のロイバルの経験値が、平良のテイクダウンをディフェンスし、有効打を当て、大一番を制した。
平良は初の敗戦。
しかし、これまで5R制の試合は行っているものの、最大3Rまでに試合を終えていた平良にとって、初のチャンピオンシップとなる4R、さらに5Rを最後まで諦めずにファイトした平良は、チャンピオンとなる資質を備えていることを見せた。
試合後、ロイバルは「期待どおりだったか」と問われ「いやもっとすぐに極められると思った。正直、接戦になるとも思ってなくて、すごい試合だった。平良、トレーニングしたいならいつでもコロラドで俺を頼ってくれ、お前のためなら何でもやるよ。君はいつかチャンピオンになれる」と、かつて練習もともにした平良のサポートまで申し出、未来のチャンピオンとなると断言した。
また自身の今後については「次はタイトルショットだ。(12月7日に)朝倉海が勝つなら日本に行ってやる、(王者の)パントージャが勝つならブラジルに行ってやる」と語っている。
2018年のプロデビューから6年、17戦目の初黒星となった平良は、世界最高峰に立つ王者に挑戦するためにUFCで6つの白星を積み上げ、1位のロイバルとの対戦機会を得て、5Rを初めて戦い抜いた。
届かない部分と、あと一歩の場面も作った平良は、再度、頂を目指すことになる。その可能性について、ロイバルは試合後、U-NEXTのインタビューに下記のように答えている。
「日本のみんなに謝らなきゃいけない場だよね? マジで達郎は漢だよ。これまでで一番ハードな相手の一人、彼を称えて日本のみんなには謝らないと。全く持って楽な試合じゃなかった。平良達郎は将来的にチャンピオンになるよ。トレーニングパートナーが必要になれば、彼のために何でもするよ。あの子は世界中から敬意を持って見られる。
(チョークの時は?)正直言うと覚えていない、ただおそらく“ヤバいかも”と心配になるくらいは時間が残っていた。
達郎とは以前に一度、練習したことがあって、とにかく俺の人生で会ったことのある人間で最高にいいやつ。彼がチャンピオンになる姿を見届けたいんだ。本当に素晴らしい選手だ。人格的にもよく出来ていて謙虚ですべてにおいて優秀な子だ。
(12月のパントージャvs.朝倉海は)クレイジーな試合になるだろうね。パントージャは朝倉海をやり込めるだろうな。とにかくグラウンドではガチ強だから。パントージャのレベルが朝倉より上だと思う。ただ、朝倉はスタンドでは素晴らしい。その点で打撃戦では朝倉がパントージャより上。だからこの試合は、どちらが自分のやりたいことををやりきれるか。
俺は別に何においても自信があるってわけじゃなく、ただ、自分はレベルアップしていて誰とやっても倒せるし、何だってやってやるんだ。前にも話したけど日本の選手が好きなんだ。平良達郎は俺のハートにブッ刺さった。自分のMMAのキャリアに最も影響を与えたのは青木真也で、日本がこの競技にもたらしたことすべてに感謝している。ハートの部分も人柄もカルチャーも。ずっと言っていたけど、日本で試合をするのはデッカイ夢のひとつだよ」(ロイバル)
プライムタイムを迎えたロイバルを相手に、タイトルコンテンダー争いで明確になった課題。同時に、5Rの死闘のなかでこれまで見られなかった強さと可能性も示した平良。そのスタイルを研究されるなか、24歳の超新星は周囲の予想を超える成長も見せている。
激闘の傷を癒し、あらたな挑戦に向け、平良は沖縄へと帰国する。